著者
秋山 雄次 鈴木 輝彦 田中 政彦 小林 厚生 片桐 敏郎 石橋 俊子 北川 秀樹 今井 史彦 原 清 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.542-547, 1990

混合性結合組織病(MCTD)として経過観察中に強皮症(PSS), 全身性エリテマトーデス(SLE), 多発性節炎(PM), シェーグレン症候群(SjS)の重複症候群に進展した1例を経験したので報告する.症例は42歳の女性で18歳より日光過敏症があった.昭和61年レノイー現象, swollen hands, 関節痛が出現し, 抗RNP抗体81920倍, 抗Sm抗体陰性, 血清CPK値上昇を認めたため, MCTDとして経過観察を開始, 昭和63年多関節痛, 節痛の増強を主訴に入院.理学所見では開口制限, 皮膚硬化, 筋力低下, ラ音を認め, 検査所見では節原性酵素の上昇, LE細胞, 抗核抗体, 抗DNA抗体, 抗ENA抗体, 抗SS-A抗体を認めた.又, 皮膚生検でPSSに一致した組織所見, 節電図で節原性変化, 口唇生検で慢性唾液腺炎像, 腎生検にてメサンギウムの増殖性変化を認めた.MCTDの概念, 殊に重複症候群との差異は明確でなく, さらなる症例の蓄積・検討が必要である.MCTDの経過中にPSS, SLE, PM, SjSへ移行した報告は見当たらず, MCTDの研究上, 貴重な症例であると思われた.
著者
北原 啓司
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

前年度の先進事例の実態調査を受け、平成16年度には、大きく3つのアンケート調査を実施している。一つは東北地方に存在するすべての都市の都市計画担当者を対象とした、コンパクトシティ戦略および街なか居住施策に対するアンケートである。10万人以下の都市においては、依然として郊外拡大が継続されており、また、農業従事者による農地転用要求により、街なか居住施策の有効性が担保できない状況が明らかになった。また、10万人以上の都市においては、住宅マスタープランや中心市街地活性化基本計画と連動する形で、コンパクトな都市計画マスタープランが策定されてはいるものの、具体的な街なか居住施策がとられている自治体は非常に少なく、掲げる目標と実際の施策との整合性があまりとれていない現状がある。一方で、昭和40〜50年代に郊外に住宅地を求めた世帯の今後の住み替え需要と、街なか居住施策との関連性を探る目的で、現在、都市計画マスタープランにおいて、コンパクトなまちづくりを目指す八戸市郊外の住宅団地を対象とした住民アンケート調査を実施している。アンケートの冒頭では、特に将来的な危惧を抱いておらず住み替えをほとんど意識していない回答が大半であるものの、質問項目が進んで行くにつれて、将来に対する不安が増大していくこととなり、街なかの集合住宅居住を希望するものの、現在所有する住宅をどのような形で処分していくかが未知数であるために、現実的に住み替えを志向できない状況が明らかになった。また、郊外の市営住宅居住者に対して実施したアンケート調査に於いては、街なかの公営住宅の必要性と家賃との関連性についての意識を問うている。しかし、特に郊外の市営住宅階層は、長期的な居住を続ける高齢者層が多く、そのような郊外居住者の住み替え需要よりも、結婚や転勤等により新たに登場する若年層の需要に対応した公共住宅供給の必要性が明らかになった。
著者
川島 真
巻号頁・発行日
2006-04-22

本報告では、中国・台湾での档案史料(図書資料などにも言及する)の状況について、その所蔵・公開状況、档案行政について、利用者の目線で紹介した上で、またそれらの意義付け、アクセスにまつわるさまざまな課題についても触れていきたい。 周知のとおり、中国・台湾の档案の状況については、数多くの史料紹介文が公刊されている(坂野正高、金丸裕一、貴志俊彦、富澤芳亜、中村元哉、川島真。媒体としては『近きに在りて』、『中国研究月報』など)。特に中国東北部については、層の厚い史料紹介がなされてきた(中見立夫、井村哲郎ら。媒体としては『近現代東北アジア地域史研究会NEWS LETTER』など)。また、図書資料についても多くの紹介文が記され、日本語史料、あるいは日本関連史料については、九州大学の松原孝俊、国際日本文化センター(笠谷和比古、ブックロード)、また東京大学史料編纂所(保谷徹、東アジアの日本関連史料調査)などにより調査が進められてきた。 また、こうした档案や図書を、日本と中国、日本と台湾などで協力して整理、目録化、デジタル化するような事例も多く見られるようになっている。台湾では、中京大学の檜山幸夫のグループが国史館台湾文献館の台湾総督府文書の目録化、また整理(所在確定、復元作業)に携わり、国立台湾大学図書館では国文学研究資料館史料館との協力関係が見られる。中国でも、吉林省档案館とNHKの間のラジオ放送録音盤のデジタル化、第一歴史档案館と東京大学史料編纂所の間の档案のデジタル化計画などが挙げられる。 こうした変容過程の中で、多くの档案や档案館、図書や図書館に関する情報が数多く日本に流入し、人的交流も活発になっている。また、中国、台湾などでの政治改革、経済発展、ひいては社会変容の中で、当地の档案などが置かれている状況も急速に変化してきている。こうした中で、新しい問題、課題などもうまれてきているように感じる。ここでは、そうした論点もふまえながら議論を進めていきたい。

3 0 0 0 OA カント雑考

著者
桑木厳翼 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1924
著者
王 晋民
出版者
千葉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、内部告発に対する態度と行動傾向の影響要因を明らかにすることを目的とした。「公益通報者保護法」の効果に関して同法施行の前と後にそれぞれ1回社会調査を行い(有効回答数それぞれ1089人、845人)、不正行為への態度や反対行動・通報行動の影響要因については前述の社会調査や場面想定法を用いた実験のデータに基づいて検討した。分析の結果、次のようなことが明らかになった。(1)「公益通報者保護法」施行後、内部告発者を保護する必要性がより強く認識された。しかし、内部告発や内部告発者に対する態度の他の側面においては同法の施行前後の顕著な違いが認められなかった。(2)内部告発、内部告発者に対する有職者の態度は基本的に肯定的なものであるが、組織コミットメント、職業満足感、集団主義傾向の強い人が、否定的な態度を持たなくても、肯定的な反応が比較的に弱い。(3)不正行為の被害者になっていない場合、内部告発がより容易になされる可能性が示された。また、正当世界信念が強ければ、自ら反対行動や通報行動をとる可能性が低くなる。(4)内部告発した場合、上司や家族の支持が得られるという認識が強ければ、また、不正行為の制止が職務と関連性が強ければ、通報行動をする可能性が高くなる。(5)「内部告発者」、「内部通報者」と「公益通報者」に対する有職者と大学生のイメージは概ね肯定的であるが、人間性の評価では否定的な側面もある。また、「公益通報者」に対して正義性や積極性、重厚さ、気長さでの評価が他の呼称より高い。これらの結果と従来の知見を整理することにより、内部告発に対する態度と通報行動に対する法律の施行という社会環境要因の効果が実証的に示され、また内部告発の心理的メカニズムも一層鮮明になった。
著者
櫻井 美代子 田代 和子
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的:認知症の親を施設に預ける決心をするまでの家族の心理的変化を明らかにする。対象:親の施設入所を決断した都市部と農村部に在住する子介護者10名(女性8名、男性2名)。半構造的面接調査を行い、分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。結果:家族は自宅介護の限界を感じた時、社会規範による使命感と罪悪感に苦しみ葛藤する一方で、親との親密な時間を共有することにより親子関係が喚起されていた。この喚起体験が介護者の罪悪感を薄め、親の全てを受け入れ感謝する気持ちに変化していた。入所後も罪悪感を引きずらないためにも介護過程の中でこの気づきを体験できる家族支援の重要性が示唆された。
著者
久光 彩子 曽我部 陽子 寺田 剛 大隅 有理子 寺田 早百合 平野 綾香 杉田 麻衣 松尾 扶美 片山 涼子 荻野 直人 高見 晋一 桜谷 保之
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.43, pp.91-104, 2010

On 22 July 2009, partial solar eclipse was observed in most regions in Japan and a total solar eclipse was observed in the Southwest Islands. At the Nara Campus of Kinki University, located in Nara Prefecture, central Japan, the sun fell into eclipse at 9:46, the maximum eclipse occurred at 11:05 (82% eclipse) and the eclipse finished at 12:25. The weather was cloudy and occasionally the sun peeped through the clouds.At the maximum eclipse, the following phenomena were observed:1) The ratio of singing individuals of two species of cicada, Platypleura kaempferi, and Graptopsaltria nigrofuscata, singing in daylight was reduced, hereas he higurashi cicada, Tanna japonensis, which sings at early morning and evening, began to sing actively.2) The katydids, Gampsocleis buergeri ,which sing in daylight, were silent.3) Two species of bird, Hypsipetes amaurotis and Cettia diphone were silent.4) The activities of flight butterfly species, Zizeeria maha, declined.5) The leaves of the silk tree, Albizia julibrrissin., which normally close at night, begun to close.6) The amount of solar radiation decreased and the air temperature declined.The response of some animals and plants to the eclipse may be coused by these weather factors which caused by solar eclipse.
著者
三寺 史夫 大島 慶一郎 中村 知裕 小野 数也 小埜 恒夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

オホーツク海から北太平洋にかけての中層温暖化の実態を明らかにするとともに、熱塩(中層)循環の力学過程とその変動メカニズムの解明、および、その基礎となる高密度陸棚水(DSW)生成過程の解明を目的とした。北西陸棚域で生成されるDSWはここ50年間で約0.1PSU減少し軽くなっており、これが26.8-27.0σ_θでは温暖化シグナルとして現れている。数値実験の結果、DSWの塩分は、気温の上昇(海氷生成量の減少)、降水量の増加、風応力の変動の影響を受けて変動することが示された。一方、低緯度の亜熱帯循環中層では逆に低温化が顕著である。これは、70年代半ば以降、亜寒帯循環が強化され、親潮を通した亜寒帯から亜熱帯への低温水流入量が増加したためである。
著者
衣川 隆生
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、中上級レベルの日本語学習者の口頭発表におけるモニタリング能力を育成することを目標としてデザインされた教室活動の効果、妥当性を検証した。その結果、相互評価活動を繰り返し行うことで、モニタリングの基準の意識化が促進されることが示された。さらに目標設定、口頭発表、モニタリング、相互評価というメタ認知過程を繰り返すことにより、モニタリングの基準の精緻化、構造化が促進され、モニタリング能力も向上することが示された。
著者
高林 陽展
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.120, no.4, pp.461-495, 2011-04-20

This article offers a historical account of "mental hygiene" in England between 1890 and 1930, based on medical journals, newspapers and parliamentary publications, in order to document the process by which medico-political ideas and practice for the prevention of mental disease were established. Mental hygiene has been widely linked with the negative aspect of social exclusion, as seen in the persecution of the mentally disabled under the Nazi regime. However, it is a little known fact that the science of mental hygiene also aimed to increase mental productivity through preventive measures. In England, during the period in question, psychiatrists promoted programs for the "early treatment of mental diseases". "Early treatment" here specifically refers to the establishment of more accessible psychiatric facilities on an outpatient basis and a voluntary admission system, both of which were expected to encourage more people to use psychiatric services. In terms of the published discourse surrounding the subject of "early treatment", the author argues that books and articles were written and disseminated not only to maintain mental health for the sake of national productivity, but also to serve and strengthen the professional interests of psychiatrists, who had been forced to work under competitive market conditions due to the 1890 Lunacy Act. In this latter sense, the subject of mental hygiene became a verbal instrument for protecting the rights of members of the profession to earn a living.