著者
新谷 尚紀 関沢 まゆみ 三橋 健 比嘉 政夫
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、ブルターニュとプロヴァンスという遠く離れた二つの地方の、聖人信仰と民俗行事の伝承、とくに復活祭前の二月に行われるカニヴァルと五月の春迎えを示す「五月の木」と呼ばれる祭礼行事、また夏の祭りとしてのサンテロワの馬祭りに注目した。かつて、A.V.ジェネップが調査した19世紀末から20世紀初頭のころには、「五月の木」はフランス各地にその伝承がみられたが、現在ではわずかにブルターニュのロクロナンとプロヴァンスのキュキュロンという二つの町のみに伝承されていることが判明した。そのキュキュロンの伝承で注目されたのは、まず「五月の木」という民間習俗が存在していたところに、後に聖人信仰が付着したという歴史であった。一方、カニヴァルについては、ニースの都市祭礼が有名だが、キュキュロンの2月の灰の水曜日に行われるサバやショバル・プランという村の2月の灰の水曜日に行われるベルとエルミットの祭りなどでは、より素朴な形態のカニヴァルの伝承の存在が明らかになった。そして、前回の科研調査で判明している敬虔な聖人信仰のブルターニュと比較して、プロヴァンスのカニヴァルにおいては聖人への信仰的要素が希薄で、娯楽的要素が強いという点が特徴的であった。また、夏の祭りとしての、サンテロワの馬祭りについて、ブルターニュのパルドン祭りと、プロヴァンスの馬祭りのパルドンなど聖人に因む民俗行事が一定地域ごとに特徴的な分布を見せている現状が明らかとなった。また、ブルターニュで最も主要な聖女とされているサンターヌへの信仰も、その本拠地であるサンターヌ・ドレーにおける熱心な信仰行事に対して、プロヴァンスの本拠地アプトという町のそれはやや世俗化の中にある。たがいに古い民俗行事を残し伝えているブルターニュとプロヴァンスの両者の関係について、さらに追跡すべき研究視点をえることができた。
著者
吉村 健太郎 菊野 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.295-302, 2009-04-15

多機能化,多品種化を続ける組込みシステムにおいて,ソフトウェア開発の重要性は年々高くなっており,多くの開発技術が提案されている.ソフトウェアプロダクトラインエンジニアリング(以下,SPL)は,特に多品種製品向けに技術要素を体系化した開発方法論である.本稿では実験事例に基づいて,組込みシステム開発におけるSPLの位置付けとその導入戦略について解説する.
著者
中山 満子 野村 晴夫 池田 曜子 東村 知子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ママ友関係について調査検討を行った。ママ友への役割期待では、自律性、類似性、支援性の因子が得られた。特に支援性への期待が高く、女子大生の友人関係と似ていることも示唆された。同時に自律性への期待が女子大生より有意に高いことも特徴であった。悩みの類型では、子ども関連群、ママ友パーソナリティ関連群、多様群が得られ、この類型により関係のとらえ方傾向、対処方略に差異が認められた。
著者
河西 瑛里子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、1)スピリチュアリティという宗教的実践の身体経験によって生じた人生に対する価値観の変容に着目し、スピリチュアリティのもつ癒しの機能について明らかにし、2)癒しの視点から、スピリチュアリティという実践を宗教と医療の両領域から総合的に考察することを目的としている。最終的には、心療内科系疾患の患者に対して、スピリチュアルな身体経験を通じた癒しの可能性を提唱することを目指している。本年度は以下のような活動を行った。1、研究成果の発表2008年度に実施した宗教的実践としてのスピリチュアリティに関する現地調査の結果を2本の論文にまとめ、出版された。さらに、現代英国におけるスピリチュアリティの実践について、日本文化人類学会で報告した。2、英国グラストンベリーでのフィールドワーク・2009年4月~5月:公的な医療制度の中でのスピリチュアリティの実践の調査のため、公的な医療従事者へのインタビューと、チャプレンなど病院における宗教的活動の実践に関して、観察を行った。・2009年6月:英国人のスピリチュアリティについてよりよく理解するため、英国の一般的な日常生活に関する調査を行った。具体的には、銀行・郵便局・定期市のしくみやサービスの種類、庭づくりに関する考え方などを調査した。・2009年7月~8月(科学研究費補助金使用):当地でおこなわれたヒーリング・ワークショップにおいて、参加者に対してスピリチュアリティ体験のインタビューと参与観察を行った。ヒーリング関係の雑誌の調査をおこなった。・2009年8月~:コミュニティと癒しについて探るため、二つの宗教的なグループ及び夏に参加したヒーリング・ワークショップの定期的な集まりに継続的に参加し、そこで交わされる会話について参与観察をおこなっている。また、文化人類学等の基本文献の精読、図書館において当地の歴史的資料の収集も実施している。また、調査を行いながら、データの整理と分析も同時に進めている。
著者
気象庁予報部予報課
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.428-431, 2008-05-31

平成19年の梅雨入りは九州南部を除いて平年より遅く,梅雨明けは南西諸島や九州南部を除いて遅かった.梅雨前線は, 6月中旬にかけて南西諸島から本州の南海上に位置することが多く,活動が活発となった.その後は本州付近に停滞することが多く, 7月中旬にかけて引き続き活動が活発だった.梅雨時期の降水量は,西日本から東日本の太平洋側や東北南部で多く,九州南部ではかなり多かった.奄美,九州北部,東北北部では少なかった. 6月中旬にかけて梅雨前線が本州の南海上に離れて停滞することが多く,四国や九州北部の降水量がかなり少なかった一方で,沖縄では降水量が平年より多くなった. 7月は梅雨前線が本州付近に停滞し活動が活発になったことや台風第4号の影響により,西日本から東日本の太平洋側で降水量がかなり多くなった.また, 9月中旬には台風第11号の影響により東北地方に停滞する前線の活動が活発となり,東北北部を中心とする大雨があった.
著者
林 上
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は,近代以降における都市の発展過程を明らかにするさいに,交通基盤の建設や整備が果たした役割の重要性に着目し,交通発展と都市構造の形成の相互関係を明らかにする点にある。2年間にわたる研究の結果,名古屋市とその周辺地域において,鉄道敷設,港湾建設,道路建設など進められた結果,都市や地域の空間構造が段階的に変化していったことが明らかにされた。具体的には,東海道線をはじめとする幹線鉄道,これと連絡する私設鉄道が貨客輸送の面で重要な役割を担った。鉄道ルートの決定はその後の都市発展を左右するに十分であり,とくに名古屋駅の開設位置が市街地構造の形成に及ぼした影響は顕著である。鉄道交通とならんで特記されるのが港湾の建設・整備である。とりわけこの地域にとって重要なのは名古屋港の開港である。後背地域の経済発展に後押しされるかたちで開港したが,その後は港湾が産業発展の必須条件となり,両者は一体的に発展していった。さらに陸上部での道路建設は,名古屋市とその周辺地域を結ぶ役割を近世とは比べようもないレベルで果たすようになった。基本的には近世までの交通ルートを踏襲したといえるが,個々の道路が都市間の連絡や地域発展しに対して果たした役割は多様である。いずれにしても,近代都市・地域の空間的発展を考えるさいに交通が果たした役割の重要性は十分に検証されたといえる。
著者
杉山 敏子 丸山 良子 柏倉 栄子 小笠原 サキ子 田多 英興
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,看護の諸場面におけるケアの効果を,種々の指標によって多面的に評価するための指標の開発をすることと,同時にさまざまなケアを行うことによって人の身体あるいは心にどのような変化が起こるのかの基礎研究である。看護場面での生理指標として,内因性瞬目の可能性を検討した。また,睡眠と活動量についての相関について検証を行った。内因性瞬目については,乳児から高齢者まで看護の指標となるよう基準値が得られるよう測定を行った。その結果,乳児は平均0~2回/分,成人~高齢者は20回/分前後であった。また,女性の瞬目率は40歳以降になると男性よりも有意に多かった。また,内因性瞬目は近年発達障害の指標としても使用されており,看護の中でも状態の観察の一項目として有用な指標と考えられた。睡眠については,夜間の病棟内の騒音と睡眠の程度について調査を行った。夜間の音の大きさは外科病棟,内科病棟ともに40~47dBで,患者が目覚める原因となる音は大きさよりも,ナースコールや救急車の音であり,非日常的で病院特有な音が原因となっていた。また,患者の日中の活動量と睡眠状態の関連性については,療養高齢者の睡眠は,睡眠時間が長く,睡眠型は良好で,睡眠習慣が規則的である。療養高齢者の睡眠習慣と活動状況には,負の相関がある。療養高齢者の睡眠の質に対する主観的な評価と客観的な評価は異なっていて,客観的には悪いのだが,主観的には良好としている。
著者
篠原 ひとみ 兒玉 英也 吉田 倫子 成田 好美
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.9-15, 2008-10

乳児期の夜泣きに関して母親211人に対しアンケート調査を行い, 児の夜泣き経験をもつとの回答のあった64人を対象として, 本研究では夜泣きの重症度に関わる要因を検討した. 夜泣きの重症度を測る尺度として「一週間の夜泣きの総時間数」を設定した. 夜泣きの重症度は, 平均6.8±10.1時間(0.09〜42.0時間) で, 10時間を越えると, 母親の「寝不足感が常にある」, 「疲労感が常にある」との回答が多くみられた. 夜泣きの重症度は出生体重と関連があり, 10時間を越える児の出生体重は有意に少なかった(p<0.05). また, 10時間を越える児では, 日中に30分以上持続する泣きがみられる頻度の高い傾向があり(p=0.08), 昼寝の回数が有意に少なかった(p<0.01). 本研究から, 夜泣きの重症度が10時間を越える場合は, 何らかの看護介入を考慮する必要があると思われる. 夜泣きの重症度は児の出生体重や日中の睡眠パターンとの関連が認められる.
著者
苧阪 直行 池田 尊司 Naoyuki Osaka Takashi Ikeda 京都大学大学院文学研究科 京都大学大学院文学研究科 Department of Psychology Graduate School of Letters Kyoto University Department of Psychology Graduate School of Letters Kyoto University
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 = Journal of the Color Science Association of Japan (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.197-203, 2006-12-01
参考文献数
27

視覚的に呈示された色情報の短期的保持が言語(言語的ワーキングメモリ)に依存するのか、あるいは視覚(視覚的ワーキングメモリ)に依存するのかは、当該色が色カテゴリーの境界をクロス(跨ぐ)するかしないかで異なるというモデルを提案した。機能的磁気共鳴脳画像法(fMRI)を用いて、代表的なワーキングメモリ課題であるNバック課題を導入してモデルを検証した。色の記憶における言語と視覚のワーキングメモリの寄与について検討した結果、基本色名で定義される色カテゴリーをクロスする条件では、左半球の下前頭回や下頭頂小葉が強く活動することがわかった。左の言語半球のこれらの領域の活性化は色の名前を音韻ループで保持する言語性ワーキングメモリが働いていることを示している。一方、同じ色カテゴリー内に留まる色差の小さい色の場合は、右半球の下前頭回が強く活動すること、つまり視覚的ワーキングメモリは視空間的スケッチパッドで保持されていることが示された。記憶すべき色刺激が左の音韻ループ(言語性ワーキングメモリ)で保持されるのか、右の視空間スケッチパッド(視覚性ワーキングメモリ)で保持されるのか、その認知負荷のバランスは色カテゴリーの境界を手がかりとした認知的方略によることが明らかになった。脳は色差に応じて色をことばであるいは知覚イメージで短期保持するのである。We proposed a model that colors could be memorized either in verbal or visual working memory depending on the color category borders. Using functional magnetic resonance imaging (fMRI), the model was tested by introducing a 2-back working memory task. We investigated the involvement of verbal and visual working memory in color memory. Colors between (cross) the categories defined by basic color names strongly activated the left inferior frontal gyms (IFG) and left inferior parietal lobule (IPL) corresponding to the phonological loop as verbal working memory, while colors within the category boarder strongly activated the right IFG corresponding to the visuospatial sketchpad as visual working memory. The choice of colors to memorize might modulated the cognitive load balance between the phonological loop and the visuospatial sketchpad.
著者
林 浩恵
出版者
奈良女子大学
雑誌
叙説 (ISSN:0386359X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.40-59, 1989-10-01
著者
九鬼 克俊 柿木 達也 高宮 静男 前田 潔
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-53, 2001-12-20
被引用文献数
1

阪神淡路大震災の高齢者における精神疾患への影響を明らかにするため, 被災地中心部と周辺部に位置する総合病院精神科外来を受診した65才以上の高齢者の特徴を, 外来診療録をもとに後方視的に調査した。中心部, 辺縁部ともに痴呆・せん妄, 気分障害が多く, さらに, 中心部では身体表現性障害が, 周辺部では post-traumatic stress disorder (PTSD), acute stress disorder (ASD) を含む不安障害が多数を占めていた。地震後, 周辺部病院群ではPTSD・ASDの有意な増加がみられた。震災を契機に発症した例では, 痴呆・せん妄および身体表現性障害は周辺部病院群より中心部病院群において有意に高率で, PTSD・ASDは逆に中心部病院群より周辺部病院群において高率であった。被災地中心部では, 痴呆の顕在化に対処する体制が必要とされるとともに, 精神的ストレスが身体症状として現れることが多いため, 身体科と精神科の連携を強化する必要があると思われた。周辺部でPTSD・ASDの受診率が高かったことは, 避難先での精神保健活動の必要性が高いことを示唆していると考えられた。
著者
井田 哲雄 MARIN Mircea
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

●折紙の理論を構築し,国際雑誌Journal of Symbolic Computationで発表した.この理論では,面の集合と面同士の隣接関係と重なり関係からなる構造により,抽象折紙を定義し,抽象折紙の折り操作を抽象書換え系の書換え操作でモデル化する.さらに,コンピュータの実装に向けて,抽象折紙をラベル付きハイパーグラフで表現し,抽象書換え系をグラフ書き換え系で実現する.さらに,この理論を実装し,本研究の前年度までに構築されているEos(E-Origami System)に組み込んだ.グラフ書き換えのアルゴリズムについても,新たに開発するとともに,アルゴリズムの正当性の基礎になるいくつかの定理を証明した.グラフ書き換えによる折紙の構築過程を可視化することに成功するとともに,折紙をグラフとして見たときの構造の特徴をも明らかにした.●折紙定理のコンピュータによる自動証明の高速化のために,Eosの定理証明モジュールに様々な方法を組み込んだ.たとえば,証明で用いるグレブナ基底の計算に折紙構築履歴に依存した単項式順序を組み込むこと,折紙幾何に特化した証明ドキュメントの自動生成がある.これらの改良により,折紙定理証明の効率は著しく向上した.たとえば,Morleyの定理の自動証明には当初17時間もかかったが,10分程度で完了するようになった.●上記EOSシステムのウェブ・インタフェイスの構築研究を継続して行い,ウェブ・インタフェイスの改良をおこなった.●藤田による折紙の公理をウー・リットの方法で代数的に解釈し直し,折紙の構築の基本操作を与える藤田の公理の代数的な性質を解析した.ウー・リットの手法で用いる特性集合を調べることにより,藤田の公理が記述する幾何の縮退条件を代数的に求めることができた.
著者
玉木 宗久 城田 愛 林 光緒 堀 忠雄
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.99-108, 1998-12-28

This study investigated attitudes toward daytime nap on the 470 aged people (M=73.7 years old) by two measures. One measure was 13 items-scale on an attitude toward positive effects of daytime nap (AE). Another measure was 15 items-scale on an attitude toward napping person (AP). A factor analysis confirmed that AE consists of 3 dimensions of effects of daytime nap : effects on work, physical effects, and psychological effects, and that AP consists of 2 dimensions of beliefs about napping person : belief about taboo and belief about rest. The survey results clearly show that most of the aged people have positive attitudes toward daytime nap. So far, it has been proposed that there are social pressures which inhibit daytime nap in Japanese country and that daytime nap in the aged people is harmful to their health. The results of present study were, however, inconsistency with these previous issues.
著者
保福 一郎 大島 邦夫
出版者
東京都立産業技術高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の最終目的は、研究代表者が今までに開発し提案してきたランキング法の総括を行うことであるが、そのためには3年間の研究期間内に以下の3つの未解決な問題を解決しなければならない.(1)多岐選択問題におけるランキングの決定法について(2)多群間における混合ランキングの決定法について(3)今までに開発したランキングの特性研究について課題(1)〜(3)については平成16年度,平成17年度にある程度完成させることができ,今年度の主な研究目的は,代表者らが今までに開発し,提案してきたランキング法の総括を行い,様々な学会での発表を行うことである.総括を行うためには,代表者らの提案してきた多種多様なランキングを下の(1)〜(3)の項目に基づいて大域的にまとめる必要がある.(1)構成集合の数を確定する.(2)あらゆる現象から導かれる通常ランキングを類別し,多数の同値類を作成する.(3)同値類1つに対し,競技・試技の特性及びデータの種類を類別する.この手法により今までに代表者らが提案してきた様々な独自の特性を持つランキングを系統的にまとめることが可能となり,ランキング生成に至るアルゴリズムの効率化に成功した.外部機関への報告として学会発表では,国際会議「INFORMATION」で発表し(1件),国内では,4つの学会において発表することができた.論文においては,掲載された論文が1本,投稿論文が2本となり,多くの研究者に対し,研究代表者らの研究成果を周知することができたと確信する.
著者
牛尼剛聡 渡邉 豊英
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.72, pp.285-292, 2004-07-14

ライフログは個人の活動を記録したデータである。ライフログを構成するデータの例として、個人が送受信した電子メール、視聴したTV番組、デジタルカメラで撮影した記録画像等があげられる。ライフログの特徴として、同一の活動が複数のメディアで記録されていることがある。それぞれのメディアには特徴があり、表現可能な内容には限界がある。メディアを統合化することにより、同一の活動を様々な視点から捉えることが可能となる。統合化されたライフログは、個別のデータ単体では表現できないコンテクストを相互に表現していると考えられる。本研究では、異種メディアで記録されたライフログを統合化し、コンテクストに基づいた検索を実現することを目的とする。統合化の際に問題となるのは、異種メディアの対応付けを厳密に行うことは困難であり、不確実性を伴う点である。本論文では、この問題に対応するために、推論ネットワークを拡張した検索モデルを提案する。なお、検索対象の例としてデジタルカメラや携帯電話などで撮影された記録画像を想定し、記録画像のコンテクストの推定には、利用者が送受信した電子メールのメッセージを利用する。The life-log is the data that records activities of a person. Examples of life-logs are the e-mail massages that he/she sent and recieved, TV programs that he/she watched, and photographs that he/she took, and so on. One of the most important characteristic of life-log is that the same activities are represented in different media types. Each type has its own characteristic features, and the limitation on its content representation ability. The integration of life-log in different media types enable to represent the same activities from various viewpoints. Integrated life-logs represent contexts each other that are not able to represent in single. The goal of our research is to integrate life-logs in different media and to search them based on their contexts. A problem of the integration is that it is difficult to make correspondences between life-logs in different media types strictly and the correspondences consists uncertainty. In this paper, we introduce a framework based on Bayesian Network. We suppose to search the photographs taken with digital camera based on their recorded contexts, and use e-mail messages for context estimation.
著者
松山 秀人 島津 彰
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/ジエチルフタレート系について、膜中に有機化クレイを添加し、有機-無機コンポジット膜の作製を試みた。得られた構造は二層連続構造であり、液-液相分離による構造の可能性が示唆されたが、DSCによる詳細な検討の結果、相分離機構はあくまで固-液型であり、溶液中のクレイが結晶核となって構造が形成されることがわかった。得られた中空糸膜が、従来の2倍程度の引っ張り強度と伸度を有することが明らかとなった。TiO_2を含む膜では主に光触媒反応による膜表面付着物の分解について検討されてきたが、ここではTiO_2の超親水化に着目し、ポリサルホン(PS f)/TiO_2コンポジット膜の作製と膜特性評価を行った。用いたTiO_2は粒子径180nmのナノ粒子である。TiO_2をPS fに対して2倍量添加した場合にも良好な中空糸膜が得られた。XPS測定により表面には有効にTiO_2が存在することが確認された。また、TiO_2の添加により、膜の弾性率は向上したものの、透水量はほとんど影響を受けなかった。得られた中空糸膜にUV照射後、その膜表面接触角を測定したところ、TiO_2添加による膜の親水性化は16日以上に渡って維持されることが明らかとなった。さらにUV照射TiO_2含有膜をブラックライト照射下で保存したところ、7日後には接触角は約10°と顕著な親水性を示した。中空糸膜をタンパク質(BSA)溶液に浸漬することにより、膜の劣化特性の評価を行った。UVを照射しない場合においてもPSf/TiO_2コンポジット膜は、PS f膜と比べ低劣化性を示した。UV照射後ではコンポジット膜の劣化特性はさらに抑制されることを見出した。従って、低ファウリング特性を有する膜の開発に成功したと言える。
著者
佐々井 祐二
出版者
津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、大島インターネット天文台を用いて、大島商船高専学生に対する物理科目の実験授業実施、近郊小学校児童に対する公開講座実施による科学教育を行っていた。引き続き、インターネット天文台計画を津山から発言できるよう最善を尽くしたい。本研究のもう1つの柱である計算機シミュレーションの科学教育への応用については、数回実験授業を行った。具体的には以下の通りである。1「インターネット天文台」計画第2ステージ津山において「超小型インターネット天文台」の構築作業を行っている。ドーム開閉を伴わないシンプルな構造とするため、球面収差を考慮した1辺80cmの透明アクリル四角錐を載せたアルミケースの中に、口径12.5cmマクストフカセグレン式望遠鏡、小型ファンレスpc(Linux)などを装備している。本科研費による計画内容を噛矢として、今後は、断熱対策や公開へ向けた作業と教育的応用を目指したい。2計算機シミュレーションによる物理現象視覚化コンテンツの作成Flashによる視覚化コンテンツe-Physicsについて、大島商船高専と呉高専で行った実験授業をまとめた。最新の計算機シミュレーションを用いたプログラム開発はこれからであるが、そのための科学的知見を得るため、宇宙初期や中性子星内部で実現される高密度状態に関連する計算機シミュレ「ションをスーパーコンピュータ上で行い、幾つかの研究成果を得ることができた。学生と共に可視化コンテンツ作成を続ける予定である。