著者
寺井 晃
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究において研究代表者は,期待インフレ率についての理論・実証分析を行った.まず,候補者の選好が選挙制度でどのような結果をもたらすのか,モンテカルロシミュレーションを行った.小選挙区制度では経験則として知られる「3乗法則」よりも議席数は偏り,比例代表制度は概ね有権者の選好を反映する議席数となる結果を得た.次いで,期待インフレ率の回答者の分布が「混合分布」から生じているのではないかと考え,当てはめを行った.こうして得た期待インフレ率の系列は,合理性の検定の結果,一定程度の優位性が認められた.
著者
内田 澪子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

鎌倉時代説話集『十訓抄』の作品研究を深めるための基礎研究として、現存する写本・版本の調査および本文研究、明治期以降に於ける享受の様相について調査・研究を行った。片仮名・平仮名写本および版本については、可能な限り原本調査を行い、これを一覧する基礎資料を作成するとともに、それぞれの関係について考察を行った。更にその分析の最初として『十訓抄』序文の構造や編者の編纂意識を分析する論考を纏め、成立契機として京都六波羅探題府の設置を注視する口頭発表を行った。
著者
遠藤 芳子 武田 淳子 大池 真樹 三上 千佳子 塩飽 仁
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、東日本大震災後の幼稚園、保育園に通園する子どもとその保護者・保育者の心身の健康の実態から支援ニーズを明らかにし、総合的支援をすることを目的として実施した。保護者・保育者において津波と地震の被害のあった沿岸部にPTSDハイリスク者が多かった。沿岸部の園児や施設職員に気になる症状がみられたが、施設長から支援希望は出されなかった。また、保護者の健康状態が幼児の心身症状の出現に関連があった。保護者は幼児の心身の変化への対応について悩みを抱いていた。研究結果から、対象者に対して総合的支援の必要性があっても相手の気持ちや状況などの個々のニーズに応じて実施しなければならないことが示唆された。
著者
兒玉 寛
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

「例外のない原則はない」。法律の条文も、本文と但書という形で「例外的な処理」に道を開いている。しかも、裁判官は、但書が規定されていなくても、「特段の事情がある場合は、原則を適用しない」という操作をする。本研究は、「特段の事情」による操作を裁判官に委ねてしまわずに、訴訟当事者の主体的な関与を確保するための枠組みを、法律学の歴史に立ち返って検討した。そして、「悪意の抗弁」を活用すべきであるとの見通しを得た。
著者
山下 修一 魚住 武司 日比 忠明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

植物で希少なDNAウイルスについて病原学的性状を探究した。一本鎖DNAウイルスでは双球状のGeminiviridaeのコナジラミ伝搬のサツマイモ葉巻ウイルス(SPLCV)の純化と理化学的性状の究明を試み、これらBegomovirusの遺伝子診断のためのプライマーをデザインしPCR診断を行った。また本邦で新たに発生したtomato yellow leaf curl virus(TYLCV)について、純化、細胞内所在、遺伝子診断などを調べた。Mastrevirusでは本邦で唯一のオギ条斑ウイルス(MiSV)の媒介者の探索と遺伝子解析を行った。また、小球状分節ゲノムを有するCircovirusではレンゲ萎縮ウイルス(MDV)をアブラムシ伝搬で増殖し純化、細胞内所在を探究し、さらにsubterranean vlover stunt virus(SCSV)との血清学的関係を検討した。二本鎖DNAウイルスでは大型球状の各種Caulimovirusを本邦各地より採集しそれらの構造・形態、細胞内所在を詳細に比較研究した。ウイルスの寄生性や遺伝子機能等を解明するために、ウイルスがコードする移行蛋白質に注目し、ダイズ退緑斑紋ウイルス(SoyCMV)の遺伝子操作を種々行い、またカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)との遺伝子キメラを作出し性状を調べた。また、両ウイルスのDNAプロモーターの生物工学的利用のために、これらを用いて病害抵抗性のための形質転換植物の作出を行った。桿菌状のBadnavirusではクジャクサボテン桿菌状ウイルス(EqBV)およびアオキ輪紋ウイルス(ARSV)について純化を行い、遺伝子解析を試みた。
著者
李 禎燮
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

扁桃核は解剖学的に不安行動に関連した脳内の主要な部位であるが、この神経核においてはγ-aminobutyric acid(GABA)が神経伝達物質として重要な働きをしており、また縫線核からのセロトニン入力がこのGABA放出を制御している。我々は、機械的処理によりシナプス前神経終末付着単離神経細胞標本をラット扁桃核より作成し、ニスタチン穿孔パッチ法および薬理学的手法を用いて、自発的GABA作動性微小抑制性シナプス後電流(mIPSCs)を記録した。このGABA作動性mIPSCsの頻度と平均電流量を指標として、セロトニン(5-hydroxytriptamine;5-HT)のシナプス前神経終末およびシナプス後膜への影響を検討した。その結果、セロトニンはシナプス後膜のGABA_A受容体に作用することなく、シナプス前神経終末の5-HT_<1A>受容体に作用してGABA放出を抑制することが明らかとなった。さらに、セロトニンによるGABA放出抑制反応の神経終末内情報伝達経路の固定をおこなった。セロトニンは神経終末部のGTP結合蛋白介在型5-HT_<1A>受容体に作用し、アデニリルサイクレース(adenylyl cyclase;AC)-cAMP系を不活性化してGABA放出抑制を生じていた。この細胞内AC-cAMP系は、シナプス前神経終末に存在するカリウムチャンネル、電位依存性カルシウムチャンネルを介することなく直接的にGABA放出を減少させていた。
著者
反田 美香
出版者
近畿大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では、完全WKB解析の・もとでGauss超幾何微分方程式におけるParametric Stokes phenomenaについて研究を行った。すなわちGauss超幾何微分方程式に大きなパラメータを導入した方程式で考察を行った。Parametric Stokes phenomenaは形式解であるWKB解のパラメータに関するStokes現象の解明を行うものである。大きなパラメータを導入しているためParametric Stokes phenomenaはパラメータを無限に飛ばした時の漸近挙動を解析するために重要な関係式である。また、前年度では非退化のStokes幾何ごとにVoros係数のBorel和を計算したが一部のみだった。そのためすべての場合でVoros係数のBorel和を計算し、関係性を考察した。この結果によりあるinvolutionでパラメータを移したときのParametric Stokes phenomenaを直接計算せず、この関係性を利用して導き出せることができた。さらに超幾何級数のパラメータを無限に飛ばした時の漸近挙動は交通流モデルや力学極限を考察するために必要である。よって完全WKB解析と超幾何微分方程式との関係が明らかになれば、Parametric Stokes phenomenaを利用することにより交通流モデルや力学極限など物理の研究の発展にも繋がると考えている。また、超幾何微分方程式におけるWKB解のalien derivativeについても研究を行った。このことによりWKB解のBorel変換はfixed singularityと呼ばれる特異点を持つことが確かめられた。このfixed singularityを避けながらWKB解のBorel和の解析接続を考察することによりWKB解のalien derivativeを導きだした。また、WKB解のalien derivativeの定義を利用してParametric Stokes phenomenaを導きだせた。Parametric Stokes phenomena、WKB解のalien derivativeいずれも先行結果はWeber方程式、Whittaker方程式についてであるので、不確定特異点を持っ方程式についての結果である。一方、自身の結果はGaussの超幾何微分方程式について考察しているため確定特異点のみもつ方程式について結果を得ている。この結果が自身の結果の重要な部分であると考える。
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

わが国における情報通信分野における規制機関と規制手法の在り方につき、わが国において情報通信法制度を巡る様々な法改正の動きを前提として、活発な法律上の議論が行われた状況を踏まえつつ、学問的な議論を米国法との比較法的に深めた。情報通信分野における規制機関に関する議論は、米国に強い影響を受けた委員会制度の導入とその後の廃止等にかかる議論と密接不可分な関係を有している。現在の制度のまま独立性を高めた情報通信分野における規制機関の再検討を行うには、透明性の確保の問題以外にも、独立規制機関の設置に係る憲法上の問題点も慎重に検討する必要がある。
著者
亀井 敬史
出版者
公益財団法人応用科学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

持続可能なエネルギーシステムの成立性を、サプライチェーン・マネージメントの手法を応用した評価法で検証する方法論を確立し、原子力や再生可能エネルギー、電気自動車などのエネルギーシステムに適用した。この結果、持続可能なエネルギーシステムに関わる物質(材料としてのレアアース、廃棄物としてのトリウムおよび使用済み核燃料、燃料としてのトリウム)の物量収支分析から、システムの最適化が可能であることが示された。
著者
小泉 潤二 春日 直樹 中川 敏 栗本 英世 石川 登 花渕 馨也 春日 直樹 中川 敏 栗本 英世 中川 理 石川 登 花渕 馨也 松川 恭子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、トランスナショナルな、つまり国家、国民、民族を超える現代世界の動態的現象を人類学的に把握し分析するために、「境界」に生まれるもの、つまり境界の生産性に着目した。中米、アフリカ、東南アジア、オセアニア、ヨーロッパなど各地で現地調査を実施して経験的資料を集め、国家や民族やモダニティなど多様な要因により複雑に構築される境界の理解を進めるとともに、その境界を越える人やモノの流れの現実を明らかにした。
著者
中谷 哲弥
出版者
奈良県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

今日、観光形態の一つとして定着しつつあるフィルム・ツーリズム(映画やテレビドラマなどの映像メディアの撮影地となったところを訪れ、映像の世界を追体験する観光)に関して、英国、ニュージーランド、米国の3カ国に関する国際比較調査を実施した。その結果、いずれの国においてもフィルム・ツーリズムが観光ビジネスとして確立され、各種のツアーが催行されていることや、その展開においてツアーガイドの役割が大きいことが判明した。また、フィルム・ツーリズムでは、映画等の追体験だけではなく、現地の歴史・文化や自然など、そもそも現地が有する魅力も合わせて堪能できることが継続性の鍵であることも明らかとなった。
著者
井手上 賢
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヒト染色体セントロメア領域を構成するSatellite I領域から産出されるノンコーディングRNAであるSatellite I RNAについて、その機能を解析した。Satellite I RNAをノックダウンした細胞では染色体分離の異常を示す。このRNAには染色体分離のキー因子であるAurora Bが結合し、そのリン酸化活性とセントロメアへの局在を制御されることを見出した。Satellite RNAに結合する因子を探索するため、Satellite RNPをプルダウンし、ともに沈降してきた因子を質量分析で同定した。そのうちRBMXのノックダウンは染色体分離の異常の表現型を示した。
著者
河邊 伸二
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

現在、情報化社会に移行し、電磁環境は非常に多様化、複雑化している。電波を安全かつ有効に利用するために建築空間用の電波吸収体は必要不可欠であり、建築材料の電波特性の研究が非常に重要になっている。また、近年ペットボトルキャップは大量に生産されているがリサイクル率は10%足らずであり、P.P.廃材の大多数は焼却処分されている。本研究では繊維化したP.P.と廃木材を原料に用いてリサイクルボードを作製し、さらに電波吸収特性をもつ炭素繊維の混入方法を比較検討した。電磁波障害が最も深刻で、広い範囲に利用されている2.45GHz帯に焦点をあわせ、高付加価値を有する電波吸収リサイクルボードを開発した。
著者
増田 喜治 浅野 涼子 キャンベル クレイトン
出版者
名古屋学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

2010年から人工内耳装用児者に対する英語教育が実施された。この研究の目標は、1)人工内耳を装用した中高生を対象とし、ヴェルボトナル法に基づいた英語授業をスカイプにより実施すること 2)ホームステイによる英語研修を実施すること 3) シドニー在住の人工内耳装用児者と交流し、継続的な英語での交流がスカイプによって可能となるように環境を整えることであった。日本のM さんとシドニー在住の大学生で人工内耳装用者のCさんとの交流が開始され、英語を媒体としながら、二人が英語と日本語を交えて自由に楽しく語り合う場がスカイプを通して実現され、人工内耳装用児者の国際交流のモデルが誕生した。
著者
北原 敦
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代シチリアの社会と文化を考えるにあたって、まずシチリアの大土地所有地帯の社会のあり方ということを問題に取り上げた。シチリアにおいては大土所有制が何世紀にもわたって持続しており、この事実からシチリアを変化のない動かざる社会だとするイメージが行き渡り、近代社会のなかでの遅れた地域ないし周縁の地域として位置付けられることが多い。しかし、大土地所有制の存続からただちにこのような判断を下すことはできないのであって、大土地所有の持続の意味とその性格の変化を歴史的に検討することが必要なのであり、そうした検討を通じて近代シチリアの社会と文化の具体的な理解がはじめて可能となるのである。こうした観点に基づいて、研究全体としては19世紀末のシチリア・ファッシの運動を具体的な手がかりとして課題の解明に努めた。また近代シチリアの社会と文化を考えるにあたっては、マフィア現象をどう捉えたらいいかという問題がある。シチリアの一部の政治家および知識人の間に、マフィアを犯罪組織としてよりは、シリチアのサブカルチャーとして意味づけようとする動きが根強く存在し、それがシチリア主義といわれるものと結びついて、シチリアの社会と文化の特殊性を強調する立場が生じており、そうした立場からシチリアについての一定のイメージが意図的に生み出されていることの分析も試みた。
著者
木立 雅朗 田中 聡
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

京都の伝統工芸について民俗調査・考古学的調査を行った。戦時中の信楽焼の陶器製地雷について聞き取り調査と現地踏査、京焼関連の近代資料の調査、桐箱製造業者の聞き取り調査、和鏡製造業社の聞き取り調査と近代資料の調査などを行った。また現代窯業遺跡の発掘調査と民俗調査を行い、近現代考古学の方法論を模索した。調査した伝統工芸は、アジア太平洋戦争において積極的な役割を果たし、それが戦後復興にも反映していることを確認した。
著者
杉田 征彦
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

エボラウイルスゲノムの転写・複製制御機構の分子基盤を解明する目的で、クライオ電子顕微鏡を用いたエボラウイルスNP-RNA複合体 (NP helix) の構造解析を行った。NP helixのクライオ電子顕微鏡画像を大量撮影し、コンピュータークラスタを用いて画像解析した結果、近原子分解能で詳細な三次元構造モデルを構築した。NP helix上では、隣合うNPが密に結合していた。また、C末端のαヘリックスはジッパーのように特徴的に並ぶ構造を有することが判った。これらの構造は、NP helixの形態形成およびウイルス感染環における構造変化のメカニズムを説明するための重要な知見となると考えられる。
著者
藤井 敏信 川澄 厚志 小早川 裕子 秋谷 公博
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

研究計画で対象とした地域において、調査を実施し得られた資料をもとに分析し、次のように結果を取りまとめた。第一に、タイでのスラムコミュニティ地区での自立的な住環境改善の試みについて、コミュニティ内で組織された小規模住民組織に着目し、この組織の活動がコミュニティ全体の開発に果たす役割を分析した。第二に、台北市市街地の用途混合地域について、立体的用途混合の形成メカニズムを都市化の速度、中国の生活文化、法規制等より明らかにした。歴史生成的に形成され活性化された都市環境では、結果として「安全性」「健康性」よりも「利便性」「持続性」を評価している。
著者
高屋 亜希 山下 一夫 千田 大介
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1990 年代末に出現した中国都市文化について、従来の研究では文化産業政策や消費の理論から語られることが多く、産業化以前の具体的な状況はほとんど解明されていなかった。中国都市文化の創作を動態的に理解するためには、産業化以前から文化活動に関わった若者たちの動きやその作品を把握する必要がある。本研究は、中国都市文化を都市の若者たちによる文化活動、若者たちが創り出す作品という観点から分析し、都市の若者たちがどのように海外の大衆文化に触れ、新しい都市文化を形成していったかを、ロックやライトノベルを例に明らかにした。
著者
佐佐木 智絵
出版者
近大姫路大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

慢性心不全患者が活動と休息のバランスを自らアセスメントするために必要なアセスメント項目を抽出する事を目的に、8名の慢性心不全患者を対象に質的探索的研究を行った。その結果、活動の仕方に関する4つの意味と11のアセスメント項目が抽出された。本研究からは、休息は活動の一つの仕方であり、活動と休息のバランスとは患者が活動の仕方を選択した結果得られるものであること、患者は活動の意味を達成するために活動をマネジメントしていると考えられるため、患者が持っている活動の意味に沿った指導の必要性が示唆された。しかし限られた対象者数からの結果であり、アセスメントツール作成のためにはさらに例数増やした検討が必要である。