著者
大峰 巌 笹井 理生
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

水は化学反応で用いられる最も一般的な溶媒であり、かつ電子的、動力学的に大きな溶媒効果を反応に及ぼす。従って水の動的性質を知ることは非常に重要である。また水自身幾つかの特異的性質を持ち、多くの研究によってその物理化学的性質が明かになってきている。しかしミクロレベルの水の動力学的性質についてはまだ未解決の部分が多い。特に水溶媒中での化学反応系とのダイナミカルな相互作用では、個別運動と集団運動との動力学的な結合を明らかにする必要がある。ここでは、水のもつ多体系としての力学が陽に現れる事が多い。水素結合によって結ばれたある集団的な運動が水の運動の基本となっており、この相関の強い運動の記述が重要である。この水の動力学を理解するためには、水の運動に係わるポテンシャル・エネルギ-面の特徴を調べ、反応経路に於ける山の高さ、曲率などを調べ、集団運動を引き起こすPhaseーSpaceの大きさを調べる。分子動力学法に基ずくトラジェクトリ-計算を行い、その解析により、集団運動の時間的、空間的スケ-ルを調べるなどを通じて水に於ける基本的構造の変化の性質を理解する必要がある。我々は水の多体的相互作用の様相を調べる為に、まず水の基本構造をQuenching法によって求め(定義し)その時系列の変化をしらべた。その結果、20ー40個の水分子のLocalな集団運動が、水の変化の基本単位となっている。基本的な構造変化には、変位の大きなものと小さなものがある。即ち水の系はある長さの時間(サブ・ピド秒間)小さな変位を繰り返した後、大きな変位を起こして変化して行く。大きな構造変化はどの様にして起こるのであろうか。この事を調べる為、我々は、まずTrajectoryに沿ったいわゆるReactionーcoordinate(反応座標)を決定した。また大きな変化に伴うエネルギ-の山は一般に小さく2ー3Kcal/mole程度である。この事は、一般に水の基本的構造変化は、PhaseーSpase上であるminimaの郡から次のminimaの郡への細いPathを見つける時間によて制限されている。この様な水の集団運動に依って生ずる大きな揺らぎはその中での化学反応のダイナミクスに大きな影響を及ぼすことが分かった。
著者
末森 薫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

中国甘粛省の麦積山石窟および敦煌莫高窟の壁画を対象として、1)壁画彩色材料光学情報の可視化、2)壁画制作材料・技法の非破壊分析、3)千仏図描写法の解析を進めた。1)では、狭帯域LED光源を用いた光学調査法を確立し、壁画表面の光学情報の抽出に有用であることを明らかにした。2)では、X線回折分析、蛍光X線分析、顕微鏡観察により、麦積山石窟壁画片に用いられた彩色材料や技法を同定・推定した。3)では、敦煌莫高窟の北朝期(5~6世紀)に描かれた千仏図が持つ規則的な描写表現を解析し、石窟空間における千仏図の機能を明らかにするとともに、千仏図の変遷より北朝期の石窟造営の展開について一考を提示した。
著者
佐藤 加代子
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

<研究目的>抗がん剤を含む細胞毒性薬剤の取り扱いの危険性に関しては、医療従事者の抗がん剤曝露を最低限に抑えるために、曝露防止に関して様々な検討がなされており、世界的にガイドラインが作成されている。本邦でも抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針として「抗がん剤調製マニュアル」が出され、医療従事者における抗がん剤曝露に関する注意喚起がなされている。しかし、マニュアルやガイドライン、様々な曝露防止に対する検討がなされているのは、ほぼ注射剤の抗がん剤調製に関する事であり、同様に曝露の危険性が高い散剤についての詳細な検討はない。そこで今回、同じ分包機を使用することによる他剤への汚染、また、汚染された散剤を服用することによる他の患者への影響を最小に抑えることを目的とした。<研究方法>6-メルカプトプリン製剤を自動散剤分包機で分包後、洗浄剤として重曹、酸化マグネシウム、乳糖で洗浄を行った。それぞれの洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量した。<研究成果>洗浄散剤中に含まれる6-メルカプトプリン量は重曹で3回目には検出限界以下、酸化マグネシウムで4回目には検出限界以下、乳糖では5回目でも6-メルカプトプリンが検出された。以上の結果より、洗浄剤として炭酸水素ナトリウムを使用し3回以上洗浄することが最も確実に抗がん剤を洗浄できる方法であることが明らかとなった。当院では、抗がん剤を分包する際は、他の散剤の分包が無い時に行っており、分包後清掃を行っている。効果的な洗浄剤の種類と使用法を明らかにできたことで清掃作業者への影響を最小に抑えることが出来ると考えられる。
著者
南 正康 恵 答美 李 卿 稲垣 弘文
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.バイオロジカル・モニタリングの研究4名の患者の尿検体が被曝から約3週間に渡って採取したものが保存してあるのでそれについてサリン及びその合成時の副生成物の代謝物を測定して被曝の実態を解明した。多数の副生成物に被曝されていると思われる。さらにサリン代謝産物の一つメチルホスホン酸は、これが全てサリンに由来するとなると致死量を大幅に越えていたのであるが、我々が取り扱った患者4名の中1名は被曝後1年で死亡したが残り3名は2002年3月に至るも1名も死亡していない。その上このメチルホスホン酸値は症状が重症な程、尿中総排泄量が少なかった(Hui and Minami, Clin.Chim.Acta 2000,302:171-188.)。2.サリン被曝に依る中枢および自律神経系への影響1998年に当時、被曝者の救命救急に携わった消防士及び警察官にたいしてケース・コントロール研究を被曝者56名、対照者52名について行った。其の結果、数値の逆読みテストが被曝者群で点数が低かった。しかし、この結果は所謂PTSDの症状を持っこととは無関係であった。またBenton visual retention testも被曝者群で点数が低くかった。これらは記憶の機能の慢性的な低下を示唆するものである。(Environ.Hlth Perspect.2001;1169-1173.)3.現在進行中の研究i)サリン及び其の合成時の副生成物への被曝者の尿中8-ハイドロキシデオキシグアノシン(8-OHDG)の測定は1つの発癌のリスク評価となるが現在迅速に多数の検体を測定する方法を検討中である。ii)有機リンを代謝する酵素の一つパラオキソナーゼの従来から知られている酵素以外に至適pH6.5を持つ新しい酵素を発見した。これについても詳細を検討中である。
著者
西村 睦 古牧 政雄
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

重水素透過誘起元素生成反応で用いられてきた複合膜の重水素透過特性を明らかにした。ガス透過法で、圧力が高いほど生成物の収率が向上することを明らかにした。電気化学的に重水素透過した試料をSIMSおよびICP-MS法で分析し、133Csから質量数139,140,141,142の物質への変換を示唆する結果が得られた。またWをイオン注入した複合膜においては、質量数190の物質への変換を示唆する結果が得られた。
著者
小出 慶一
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

出現頻度の高い日本語のフィラー「あのー」「そのー」「このー」「こう」「まあ」「もう」「なんか」「で」「えーと」「えー」及び母音延引形フィラーについて、話し言葉コーパスを利用して出現実態を調査し、それぞれのフィラーが談話行動においてどのような役割を果たしているかを記述した。また、フィラーには、指示詞、副詞などから派生したものと、フィラー専用のものがあるが、それぞれに異なる役割を持つことも明らかにした。
著者
鈴木 哲也 大木 明子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は摂食・嚥下障害患者に対して用いられる舌接触補助床(PAP)のメカニズムを調べることを目的としている。健康な成人に5mmの厚さのスプリントを装着させ、実験的に固有口腔を拡大した。PAPの装着による効果を、水およびゼリー嚥下時の口蓋に対する舌圧から検討した。スプリントを装着することで舌圧が低下した被験者が、PAPを装着することで舌圧の増加が認められた。PAPは舌と口蓋の接触が損なわれた患者に対して有効であることが示唆された。
著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

原因側と結果側の「変数」の関係に着目することや, 一つの関係を調べるためには多くの変数を適切に制御したり, データを統計的に評価したりすることが科学の世界では重要であることを学習内容に組み込むことで探究する能力・態度の育成に効果が見られた。また, 変数を意識しながら, 関係する条件を一つ一つ明確にしていく教材を開発したり, 変数に着目させるための教師の問いを工夫したりすることで, 条件制御することの意味を実感させたり, 生徒の誤概念を修正したりすることにも有効であることが検証された。以下にその内容(全18時間)を示す。<基礎編(6時間)>1 : 「科学者は何をしているか」→探究学習の視点を与え, 変数に着目する重要性を知る2 : 「変数を見付けるには」→変数を見付ける活動をさせ変数同士の関係を見極める3 : 「パイプ音の高さは何に関係するか」→制御制御の仕方を身に付ける4 : 「画鋲が上を向く確率は」→データを繰り返しとると数値が安定していくことを学ぶ5~6 : 「温泉卵のでき具合は何に関係するのか」→二つの変数が交互に関係して自然現象が起きる作用(交互作用)や失敗を経験させることで, データ取得の重要性を学ぶ<実践編 : 紙グライダーの探究(12時間)>1~2 : 入力(独立)変数と結果(従属)の変数を選出し探究テーマの決定3~8 : 探究 例)「紙の大きさと滞空時間の関係」「羽根の角度と飛距離の関係」など9~12 : 発表の準備と発表会→発表者には入力・結果の変数, データの回数を意識させる<事後アンケート>本プログラム実施生徒45人(肯定的に答えた生徒の%)Q1 : 自ら研究テーマを設定するのは苦にならない方だ? 学習前45%→学習後73%Q2 : 探究の方法は心得ている方だ? 学習前78%→学習後98%理由 : 自分で変数を見つけ多くの変数を制御しながら関係性を見つけられるようになったから理由 : 先生が決めた変数や課題じゃないから, 先生も結果が謎でわからないのが面白い
著者
小柳 春一郎
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本の境界法理は,地籍境界を重視している。境界確定訴訟が筆界を明らかにし,地籍調査も地租改正にさかのぼる原始筆界の復興を目指す。問題は,地籍境界=筆界と所有権界との有機的関連がないこと,特に合意による解決が難しいことである。本研究は,フランス法では土地所有権界を中心とした境界法理があること,その境界確定訴訟は土地所有権界を明らかにするものであること,ナポレオン地籍に始まるフランスの地籍は,税の根拠となる点が中心であることを解明した。日本法においても土地所有権界を中心とした法理への転換の必要である。その際には,土地家屋調査士が,合意と筆界を結びつける役割を果たしうる。
著者
水島 郁子 山下 眞弘 木村 敦子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中小企業が事業承継をする際には、当該企業、その経営者や親族の利益であったり、税制上の利得が、優先されがちである。しかし、事業承継を円滑に行うには、創業者によって築かれた中小企業秩序を尊重し労使双方の利益に配慮することも必要である。本研究では労働法、会社法、家族法の観点から、法人格否認の法理、詐害行為取消権、会社分割など、法交錯領域のテーマの検討を行った。研究会を14回開催し、実務家との積極的な意見交換も行った。
著者
関村 誠
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

プロティノスにおけるアイステーシスの機能の明確化とその意味づけに努め、アイステーシス論が哲学的思索の中に組み込まれていることを示した。感性的な諸局面の議論に関して、プロティノスがプラトン思想をいかに解釈して引き継ぎ、あるいはいかに独自展開しているかを、両哲学者のテクスト批判を遂行して見極めることを試みた。その結果、アイステーシスのある種の働きが「判断」に連係して哲学構造に組み込まれて、感性と知性とを結びつける積極的な面をもつことを示すことができた。
著者
岡崎 彰 栗原 淳一 益田 裕充
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、デジタルコンテンツと理科室のモデル実験とを有機的に結び付けた教材を開発し、新たな視点から展開する天文学習指導プログラムを提案することである。当初の研究実施計画では、(1)「月の満ち欠け」と(2)「日食と月食」で教材開発とそれに基づく天文学習指導プログラムの開発、(3)「太陽の年周運動」と(4)「惑星の動き」で実際に観測された動画や画像を用いた教材開発をテーマに取り組むこととした。(1)「月の満ち欠け」では、月と太陽の離角を媒介として実際の観察結果とモデル実験とを有機的に結び付ける教材と学習プログラムを開発し、公立中学校で授業実践を行った。生徒の理解度の調査・分析の結果、開発した授業が学習内容の理解を促し、その定着を図る上で有効であり、観察記録とモデル実験結果の関連付けを図る上でも有効であることを明らかにした。(2)「日食と月食」では、予備的に開発した教材を用いて公立中学校でモデル実験の授業実践を行い、また、平成24年5月の金環日食では大学内で事前説明会と観察会を実施した。教材の改良と学習プログラムは期間内に完成していないが、本物の日食や月食とモデル教材との結びつきを生徒に実感させることの重要性やモデル教材の作成上の留意点等を考察した。(3)「太陽の年周運動」と(4)「惑星の動き」については、研究期間の短縮もあり次のように統合した形で進めた。恒星に対する太陽や惑星の動きを直接に観察できる素材として太陽観測衛星が太陽と惑星と恒星を同一視野に撮影した実写動画(NASAが公開)に着目し、中学校授業「太陽の年周運動」での利用の有効性を実践例に基づいて論じ、さらに高校地学の探究活動として、この動画を教材とする「合」付近での「惑星の動き」の具体例を提案した。このほか、関連研究として、天球の内側からと外側からとの視点移動を支援する実験用モデル教材作成についても考察した。
著者
藤本 高志 德永 光俊 渡邉 正英
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

離島経済を対象に,(1)n種類の産業から成る地域経済の所得決定をモデル化し,(2)ノンサーベィ法による地域産業連関表の推計手法を開発し,(3)それらを活用し,離島の地域所得を,中央政府の直接支出・移転支出,地域外からの純所得受取,移出,所得に依存しない消費・投資,が誘発する所得に分解し,離島経済自立の可能性を探るとともに,(4)離島経済の特徴とその形成要因を定量分析した.また, (5)離島の移出基盤産業である砂糖産業が離島地域内に生み出す所得を評価するとともに,(6)国産砂糖を守ることに対する人々の支払意思額を,表明選好法により推定した.
著者
ウィルソン ドナルド
出版者
産業医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

我々の実験結果が示唆するには、二酸化チタン粒子の溶かし方及び分散方法は粒子の赤血球や他の細胞への毒性に影響を与える。だから、的確な、そして標準な分散方法を使用して、もっと安定した粒子懸濁液(suspension)を用意する必要がある。現在まで行って来た二酸化チタンによる溶血の実験の結果が示すのは、二酸化チタン粒子のどの種類も溶血を起こす。さらに認められたことは、ヒト赤血球の場合は、二酸化チタンの粒子サイズより結晶構造が細胞障害を起こすのに、もっと大きい要因であると考えられます。この溶血に酸化ストレスの関与を検討するにはグルタチオンの影響及び脂質の過酸化を調べたが酸化ストレスの関与は確定出来ていない。電気泳動の結果、赤血球膜上に存在している低分子タンパク、コフィリン、の発現が抑制されることが示唆されたが結果に終始一貫的な再現性が見れなかったため、コフィリンを含む膜タンパクの同定には至っていない。A549 肺胞上皮細胞に曝露させた二酸化チタンの2種類の微粒子は用量依存性にアポトーシスを誘発し、IL-8 mRNAとIL-8タンパクの遊離をがわずかながら増加し、NF-kB DNA 結合の変化はなかった。
著者
田中エリス 伸枝
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はブレンデッドラーニングを教場とした第2言語(L2)学習者の話者のスピーチサンプルを分析する上で重要な点を明らかにした。始めに、本研究は語学クラスの企画者の意向と クラス内の実際のアクティビティの関係をActor-Network Theoryによって明らかにすることができた。また、学習者がブレンデッドラーニング教場でどのようにタスクを遂行するためにテクノロジーを使用したか明らかにした。最後に今までのCAF(複雑さ、正確さ、流暢さ)の測り方では第2言語レベルの低い学習者のスピーチは測るのは難しかったが、本研究ではhierarchical C-Unitという方法を作り測ることに成功した。
著者
中谷 純江 小松 久恵 豊山 亜季
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、インドを代表する産業資本家として知られる「マールワーリー」に焦点をあてて、南アジア地域社会を捉えなおした。これまでのマールワーリーについての研究は、彼らの経済的成功の理由、経済組織の特徴について論じるものが多く、地域社会の歴史的コンテキストに位置づけて彼らを理解する視点が欠けてきた。本研究はマールワーリーの出身社会(ラージャスターンの商業町)を拠点に、移住商人の集団マールワーリーのアイデンティティや表象について明らかにした。
著者
相馬 充 上田 暁俊 谷川 清隆
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本・中国・韓国・インド・越南に残る日食や星食の古記録を調査し,それらを用いて紀元1000年までの地球自転角パラメータの値ΔTと月潮汐加速項の決定を行った.また,日本で9世紀からの800年余にわたり使用された宣明暦について具体的な計算方法を調査し,問題点を明らかにした.日食や星食の予報を正確に計算するため,日本の月周回衛星「かぐや」とアメリカNASAの月周回衛星LROによる精密月地形データを使って月縁の凹凸の効果を計算する計算機プログラムを完成させ,実際の予報に役立てた.
著者
宮内 弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ラーキンを中心に、イェイツ、ハーディ、ヒーニー,テッド・ヒューズなどの詩作品に見られる形式、すなわち押韻形式、韻律、統語法などを分析し、これらの詩人が使用した形式が、彼らの個々の詩の内容を反映していることを実証した。次にこの研究をふまえて、上述の詩人の作品の際だった特質であると考えられる「重ね合わせ」と「埋め込み」の技法を、特に形式と内容との関係に注意を払いながら、考察した。
著者
中川 知佳子
出版者
東京経済大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、言語情報から構築される概念の記憶の比較を通し、第一言語と第二言語の理解プロセスの相違点を明らかにしようとするものである。例えば I don’t like that animal because it bit me when I was a child. という文の場合、dogという表象が構築されると想定される。日本人EFL学習者を対象として、日本語と英語のマテリアルを使用した語彙性判断課題を実施した結果、英語読解では明示ターゲットと推論ターゲット間に有意差がなく、オンラインでの推論が起こっていたことを示す結果となっていたが、日本語読解は全てのターゲット間に有意差がないことが示された。
著者
長崎 暢子 篠田 隆 粟屋 利江 石坂 晋哉 上田 知亮 舟橋 健太
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ガーンディーとガーンディー主義、アンベードカルと不可蝕民の運動、インド政治史の研究者が協力して、従来対立的に捉えられてきたガーンディーとアンベードカルの思想と運動を、より広い文脈において捉える試みである。両者には、非暴力的運動という方法や、差別の解消という目的だけでなく、「真の平等」を求める点でも共通点があった。歴史的には、ガーンディーが国際的差別解消としてのインド独立を実現したのに対し、アンベードカルは、ガーンディーの解決できなかった国内的差別解消としてのカースト制度の廃絶を目指し、自ら仏教に改宗することによって、ヒンドゥーイズムを超える、多様で平等な社会への道筋を示そうとした。