著者
戸田 香 戸田 秀彦 對馬 明 矢澤 浩成 宮本 靖義 富永 敬三 細川 厚子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.F0617, 2008

【目的】ヒトの骨格筋を持続的に振動させると、緊張性振動反射によりその筋の緊張は増大する。しかし、振動は筋出力を減少させるとの報告もあり、刺激方法により効果が異なる可能性が考えられる。本研究は、筋腹への振動刺激が筋活動に与える影響を確認することを目的とした。<BR><BR>【方法】健常者13名(年齢22±5歳)を対象とした。大腿四頭筋(以下QF)と中殿筋(以下GM)に振動刺激を与え、QFでは最大筋出力、GMでは筋仕事量への影響を確認した。対象者には研究の主旨説明を行い同意を得た。振動刺激には明光通商社製、RAYMAX VITER(VR-303)を用い、両筋とも振動周波数55Hz、刺激時間は5分間とし、着衣上から2~3cm/secで移動させて筋腹全体を刺激した。刺激側は両筋とも右側とし、対象側を左側とした。測定は対象側への振動刺激の波及効果を考慮して、左側の測定を先行した。QFとGMは別の日に順不同で測定した。<BR> QFの最大筋出力の測定には米国CSMI社製、CYBEX NORM(CN77)を用い、坐位で膝関節屈曲60°の等尺性収縮を3回反復し、最大値を記録した。左側を5分間隔で3回、その後5分間の休憩を取り、右側は振動刺激の前後及び5分後の計3回で測定した。GMの筋電図の測定には日本光電社製、基礎医学研究用システム(LEG-1000)を用い、側臥位で40°の股関節外転を1分間継続する課題を行わせ、前方の筋腹から筋電図を導出した。左側は5分の間隔で2回、その後5分間の休憩の後、右側について振動刺激の前後で2回の筋電図を導出した。左右の筋電図から15秒毎の積分値を解析した。<BR><BR>【結果】QFの体重1kgあたりの筋出力は振動側で有意に上昇し、振動側の変化率は11.7%増大、対象側は1.1%であった。刺激から5分後は、振動側で12.8%の増大が維持され、対象側は4.2%であった。刺激の5分後も効果の持続が確認された。GMの筋電積分値は、振動側で低い傾向が見られ、振動後から15秒間の積分値は反対側に比べて有意に低値を示した。また、反対側では30秒経過後の積分値が有意に高かった。<BR><BR>【考察】QFとGMはともに抗重力筋であり、QFは最も筋紡錘を多く含む筋群の一つであることから、振動刺激に対する感度が高いと考え被験筋とした。GMは自重による持続性収縮においてQFよりも筋疲労を得やすいため、筋仕事量の変化を確認するために被験筋とした。振動刺激はQFの最大筋出力を増大させた。振動によるIa群感覚信号が脊髄固有反射を促通し、脊髄内の興奮性が高まったことにより、多くの運動ニューロンを活動させられたと考える。そして、興奮性の増大は5分間は持続した。GMにおける持続性収縮では、刺激後の15秒間は積分値が低く、少ない筋活動で運動が可能であった。また、運動後半の積分値の増大が生じない点から、筋疲労の抑制効果があったと考える。<BR>
著者
渡辺 純哉
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.246-254, 2021

<p>厚生労働省が,平成29 年度から令和元年度において実施した「老朽化した生産設備における安全対策の調査分析事業」<sup>1)~3)</sup>では,約500 事業場のデータから経年化した設備の労働災害リスクの要因として,「設備の老朽化」と「保護方策不備」の二つを挙げている.本稿では,当該報告書に記載されたデータを用いて,経年化した機械設備の保全方式や点検方法,労働災害防止のための保護方策などの安全対策について多変量解析を行った.経年化設備の点検箇所や点検項目について解析した結果,安全装置や安全装置の機能との相関性が高い解析結果が得られた.また,経年化設備では,安全装置の最新レベル化の点でも保護方策の不備による安全対策上の問題点があることが明らかとなった.解析結果について報告する.</p>
著者
山本 好和 熊沢 敦子 坂田 佳子 木下 靖浩 片山 明
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.27-31, 2002-04-30
参考文献数
8
被引用文献数
2

マダガスカル島原産の観賞用植物であるハナキリンを組織培養することによって生産された単一のアントシアニン (シアニジン-3-アラビノシド) で, アニオン化された絹を染色した。被染素材としてアニオン化された絹を用いることで, 鮮やかな赤色を呈するフラビリウムカチオンが濃着染色されること, およびカチオン色素が繊維中で安定化することを明らかにした。また, フラビリウムカチオンが染色したアニオン化絹に対する種々の金属塩による後媒染および耐光性への影響を調べた。
著者
嵯峨 寿
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.69, pp.106-109, 2005-03

正月、今年もまた箱根駅伝に見入った。順大の今井君が5区の山登りで颯爽と11人を抜き去り、区間新記録をたたき出した。最後まで気力みなぎるその走りに、興奮した。 早大生時代、花の2区を走った篠田正浩さん(映画監督)は駅伝をみる楽しみを次のように解釈しておられる。 ...
著者
根本 千聡
出版者
法政大学国際日本学研究所
雑誌
国際日本学 : 文部科学省21世紀COEプログラム採択日本発信の国際日本学の構築研究成果報告集 = International Japan studies : annual report (ISSN:18838596)
巻号頁・発行日
no.18, pp.164-139, 2021-02

This paper has the aim of clarifying the transmission of Sino-Japanese lute (biwa/pipa) in the early Heian period (ninth century). In Japan, Fujiwara no Sadatoshi (807-867) has long been respected as the founder of the tradition of Japanese biwa music. He was a minor public servant, and crossed the sea in order to study the biwa as a member of the Japanese mission to Tang China in the Jōwa era (834-848). Sadatoshi did not go to Changʼan, the capital of Tang; however, a biwa master Lian Chengwu gave him lessons in biwa music at Yangzhou. The results of these lessons were compiled in the score Biwa sho-chōshi-hon (ʻVarious lute tuningsʼ) and brought into Japan. Nevertheless, in spite of Sadatoshiʼs great achievement, past studies have not investigated this aspect satisfactorily.The introduction explains background information and the significance of this study.The second section surveys the relation between Japanese musicians and the Japanese missions to Tang China. Ōto no Kiyokami (Yoshie no Kiyokami, ?-839) participated in this mission with Sadatoshi in the capacity of Onjōchō (Head Musician). He was the most outstanding Japanese composer and arranger, as well as superb flute player, of those times. But, according to Nihon sandai jitsuroku (ʻVeritable records of the three reigns of Japanʼ), on his way back to Japan, Kiyokamiʼs ship drifted to the southern seas, where he was killed by barbarians. Although he probably learned some new elements of Tang music, they were lost forever along with his life. This section considers what Kiyokami may have been bringing back, and, at the same time, examines Sadatoshiʼs arrangements of biwa performance based on his experience on the mission.The third section studies how Sadatoshi has been regarded as the founder of the tradition of Japanese biwa. Though several genealogies of the Japanese biwa tradition exist in Japan today, all of them have several doubtful points. For instance, despite Prince Sadayasu (870-924) being born after the death of Sadatoshi, they record that Prince Sadayasu was taught by Sadatoshi. It is thought that this problem arose from later efforts to bring the transmission historical authority.This section includes one more significant topic. There are perhaps six factors why biwa performance became extremely popular after the Jōwa era: first is the reorganization of biwa tunings by Sadatoshi; second is the delay in flute transmission due to Kiyokamiʼs death; third is the influence of Tang poetry; fourth is the beginning of instrumental performance by the Japanese nobility; fifth is Prince Sadayasuʼs interest in the piece Ōshōkun; and sixth is the influence of the sitting repertoire of the erbuji (ʻtwo kinds of musicʼ) of the mid-Tang.The fourth section reaches the following conclusion. Sadatoshi came to be respected as the founder of the tradition of Japanese biwa music not primarily because of his achievements, but due to a range of factors that combined to lead to his ʻdeificationʼ.
著者
河崎 哲嗣
出版者
京都教育大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.75, pp.9-13, 2004-03-05

本校はスーパーサイエンスハイスクール(以後SSHと記す)に認定され、今年度で2年目を迎えている。3年間の数学カリキュラムの内容を数学IA,学校設定科目(「解析」,「代諏幾可」,「確率統計」,「現代数学研究」,「応用数学I」,「応用数学II」)とし、単元を組み替えた構成での指導を実施している。また独自の教科内容・教材づくりを進めているが、今回の報告では「代数幾可」(第2学年次)について、1学期に実施した内容(空間ベクトノレ「空間図形への応用」)について実践報告をする。
著者
日置 幸介 齋藤 昭則
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

地震や火山噴火に伴う電離圏擾乱はドップラー観測などによって以前から知られていたが、我が国の稠密GPS観測網であるGEONETによって電離圏全電子数(TEC)として手軽かつ高時間空間分解能で観測できるようになり、多くの知見が得られた。その一つが2003年9月26日の十勝沖地震に伴う電離圏擾乱で、震源から上方に伝搬してきた音波が、電子の運動と地球磁場の相互作用であるローレンツ力を受けて生じる擾乱伝搬の方位依存性が明らかになった。また正確な伝搬速度が初めて求められ、この擾乱が地表を伝わるレーリー波や大気の内部重力波ではなく、音波によるものであることが明快に示された。これらの知見を基礎に、スマトラ地震による電離圏擾乱から震源過程を推定するという世界初の試みを行った。その結果地震計では捕らえられないゆっくりしたすべりがアンダマン諸島下の断層で生じたことを見出した。その論文は米国の専門誌JGRで出版された。また2004年9月1日の浅間山の噴火に伴う電離圏擾乱が確認された。これは火山噴火に伴う電離圏擾乱の初めてのGPSによる観測である。アメリカの炭坑でエネルギー既知の発破を行った際に生じた電離圏擾乱が過去に報告されているが、それとの比較により2004年浅間山噴火のエネルギーを推定することができた。この研究は米国の速報誌GRLに掲載された。さらに太陽面爆発現象に伴って生じる電離圏全電子数の突発的上昇のGPSによる観測結果をまとめたものを測地学会誌で報告した。今年度は、2006年1月に種子島から打ち上げられたH-IIAロケットの排気ガスの影響による電離圏の局地的消失現象をGEONETで観測した結果およびそのモデルをEPS誌に発表した。電離圏の穴は電波天文学に応用可能であるだけでなく、GPS-TEC法による穴の探査は地球に衝突する彗星の発見にも応用できる将来性のある技術である。また地震学会の広報誌である「なゐふる」に地震時電離圏擾乱の解説文を掲載して、その普及に努めた。
著者
松井 潤 髙野 知行 龍神 布紀子 安齋 祐子 吉岡 誠一郎 竹内 義博 後藤 雄一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.363-366, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
13

Leigh症候群を発症後に, mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes (MELAS) を合併し, ミトコンドリア遺伝子の10191 T>C変異が同定された1例を経験した. 症例は26歳女性. 11歳時に外斜視で発症し, juvenile Leigh症候群と診断された. 26歳時に頭部MRIで血管領域に合致しない梗塞像が多発し, MELASを合併したと診断された. 文献考察からMELAS/Leigh overlap症候群の臨床像は発症年齢, 症状, 予後の点でLeigh症候群とは明確に異なる点が推測された. Overlap症候群の表現型の多様性はヘテロプラスミーを含めた多面的な遺伝要因の関与が推定された.
著者
吉本 麻美 千葉 哲也 松井 理絵子 渡邉 真巨 五十嵐 麻子 酒匂 啓輔 谷口 亜図夢 戸田 雄 菊池 佑至 松原 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0350, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】近年人工股関節置換術(以下THA)施行後の治療プログラムは、早期離床、早期荷重に移行している。当院では、2週間プログラムを施行し、術後2日目より歩行練習を開始し、歩行自立とともにADL動作の自立を目標に行ってきた。ところで荷重能力の改善は歩行自立にあたり重要な因子と考えられる。今回、荷重能力と股関節外転筋力、歩行能力、ADL動作の関係を検討した。【対象】2003年1月より2004年9月までに当院にてTHAを施行した88例(両側同時THAを除く)を対象とした。平均年齢は63歳、男性6例、女性79例であり、平均体重は55.6kgであり、全例、術後2日目より全荷重が許可された。【方法】術前および術後7日目の荷重能力と股関節外転筋力を測定し、術後の歩行能力、ADL能力を評価した。立位にて術側足底に体重計を設置し、体重に対する比として荷重能力を測定し、背臥位における股関節外転筋の等尺性収縮による最大筋力(Nm/kg)を外転筋力として測定した。T字杖連続歩行400m、階段昇降、床上動作、正座動作、靴下着脱動作については、その自立達成までの日数を各々記録した。なお、荷重能力80%を概ね荷重が可能となった時期と判断し、術後7日目に荷重能力が80%以上となった群(以下、可能群)と80%以下の群(以下、不十分群)に分け、比較検討した。【結果】外転筋力は、不十分群0.28Nm/kgに比し、可能群0.45Nm/kgと有意に可能群で高値を示した(p<0.01)。また、術前の非術側筋力ならびに術側筋力に対する回復率はそれぞれ不十分群35%、53%に比し、可能群71%、85%であり、いずれも可能群にて有意に高い回復を示した(p<0.05)。T字杖歩行は、可能群9.3日、不十分群14.2日、階段昇降は、可能群9.7日、不十分群13日、床上動作は、可能群12日、不十分群15.9日、正座は、可能群11.8日、不十分群15.3日であり、可能群で有意に動作獲得までの期間が短かった(p<0.05)。しかしながら、靴下着脱動作は、可能群9.7日、不十分群10.7日であり、両群間に有意差は見られなかった。【考察】可能群では不十分群に比し、股関節外転筋力の回復が有意に早く、T字杖歩行達成までの期間も有意に短かった。歩行自立と外転筋力の回復が、股関節の安定性をもたらした結果、早期に階段昇降、床上動作、正座動作も可能となり、ADL動作の早期自立が達成できたと考えられる。靴下着脱動作については、荷重能力とは無関係に11日以内に可能となり、2週間プログラムに影響は及ぼさなかった。当院では2週間プログラムを施行してきたが、術後7日目で荷重能力が80%以上可能であれば、T字杖歩行とADL動作の自立が2週間プログラム内でほぼ達成できた。このことから、術後7日目での荷重能力は、T字杖歩行やADL動作自立が2週間以内に達成できる有効な指標の一つと考えられた。
著者
秋山 雅彦
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-20, 2007-01-25 (Released:2017-05-16)
被引用文献数
4

地球温暖化は複雑系の科学であることから,その予測を困難にしている.大気中の温室効果ガスの増加が気温上昇をもたらす主な要因のひとつであることには疑う余地はないとしても,太陽活動による影響,とくに可視光以外のX線・紫外線の変動が気候に及ぼす影響についての解析は,まさに不十分であると言わざるを得ない.また,気温上昇にともなって生じる水蒸気の影響,雲量・アルベドの変化など,正または負のフィードバック機構の解析にも未知のことがらが多い.この論説では,地球史の最も新しい年代である第四紀の気候変動についての知識をもとに地球温暖化の現状を下記の順序で論述した.(1)第四紀における気候変動の歴史,(2)温室効果ガス,赤外吸収強度,放射強制力,太陽照射強度の変動,火山噴火・森林火災・黄砂による影響,(3)海洋中のCO_2濃度のフィードバック機構,アルベドの経年変化,宇宙線強度と雲量との関連.そして,結論として,地球温暖化ガスの増加にともなう正のフィードバック機構とともに,気候の人為変動に隠されている自然変動の解明が必要であることを強調した.
著者
渋谷 知美
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.447-463, 2001-03-31
被引用文献数
2

本稿では, 現代日本の社会学 (ならびに近接領域) において行われている「男性研究者による男性学」「女性研究者による男性研究」の問題点をフェミニズムの視点から列挙し, これをふまえて, 「向フェミニズム的な男性研究」が取るべき視点と研究の構想を提示することを目的とする.<BR>「男性研究者による男性学」批判においては, 男性学の概念「男らしさの鎧」「男性の被抑圧性」「男らしさの複数性」「男女の対称性」を取りあげて, 男性学がその関心を心理/個人レベルの問題に先鋭化させ, 制度的/構造的な分析を等閑視していることを指摘した.また, 「女性研究者による男性研究」批判においては, 「男性」としての経験を有さない「女性」が, 男性研究をするさい, どのような「立場性positionality」を取りうるのかが不明確であることを指摘した.<BR>そののち, 「向フェミニズム的な男性研究」の視点として, 第1に「男らしさの複数性」を越えた利得に着目すること, 第2に男性の「被抑圧性」が男性の「特権性」からどれだけ自由かを見極めることの2点を挙げ, それにもとづいた研究構想を提示した.