著者
進藤 聡彦 麻柄 啓一 伏見 陽児
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.162-173, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

これまで学習者の誤概念を修正するために, 反証例を用いる方法と用いない方法の2つのタイプの教授法が提案されてきた。しかし, これらの方法はそれぞれに短所を持つ。本研究ではこれら2つの教授法を組み合わせた新しい方法を提案した。それは以下の方法であった。まず, 誤概念を適用した場合には正しい解決ができない問題を提示する。続いて誤概念を持っていても解決可能な類似の問題を提示する。その問題での正しい解決に基づいて, 学習者に正しいルールを把握させ, さらにそのルールを一連の類似問題に対して適用できるようにするというものである。この方法と従来の2つの方法が誤概念の修正に及ぼす効果を検討した。76名の大学生が3群のいずれかに割り当てられた。被験者の多くは, 真空は物を吸い寄せるという誤概念を持っていた。実験の結果, 今回提案した方法は他の2つの方法より次の3点で優れていることが明らかとなった。まず, 学習者の誤概念を最も効果的に修正できた。また, 自分の知識が変化したという意識を学習者に持たせやすかった。さらに学習者の興味を喚起した。今回提案した方法は誤概念の修正に効果的であることが明らかとなった。この方法は「融合法」と名づけられた。
著者
海軍々令部 編
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1910
著者
野村 伸一 Nomura Shinichi
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書7 -アジア祭祀芸能の比較研究-=International Center for Folk Culture Studies Monographs 7 -Comparative Study of Asian Ritual Performing Arts-
巻号頁・発行日
vol.7, pp.19-66, 2014-10-01

祭祀は神を迎える行為である。神には中国でいう天神地祇(天地の神がみ)、人鬼(死者の霊魂)、祖霊などを含める。また朝鮮半島の雑鬼雑神、水中孤魂、妖怪(トッケビ)、日本でいう無縁仏や怨霊、悪霊も広い意味では神(かみ)である。これらの神(かみ)招きに伴う一定の身体行為を祭祀芸能とよぶ。それは狭義には神の振る舞い(神態かみわざ)だが、神(かみ)をよび招く特定の仕種、神歌、呪語の唱えも祭祀芸能である。東アジアではこうした祭祀芸能が多彩に展開されてきた。ところで、これを掬い取り、全体のなかに位置付けるためには基軸が必要である。筆者は先にそれを提示した(『東シナ海祭祀芸能史論序説』、2009年)。だが、批判も代案もなかった。それは何を意味するのか。祭祀芸能には庶民の精神世界が凝縮されているのだが、それを体系的にみようという意向がないということなのである。日本のアジア認識はまだ地域別、個別ということである。本稿ではそれを乗り越えるために新たに次のような基軸を設定した。全六章である。すなわち、「1.暦―神と暮らし」「2.担い手と伝承」「3.祭祀芸能の開始と末尾― 戯神、請神、神送り」「4.仏教、道教と祭祀芸能」「5.祭祀芸能の様態を特徴付ける要素 1)他界観の表現 2)祭場の光景 3)神・霊の表現 4)神のことば、祝願 5)性差 6)諧謔と悲哀 7)舞踊、振り、歌 8)火9)祭具」「6.まとめ―総括と課題」である。 以上のうち1 ~ 4 章はいわば総論、比較のための大枠提示である。一方、5章では個々の祭祀芸能の様態(芸態)を特徴付ける要素を取り上げた。これは各論に当たる。要素は仔細にみていけば限りがないが、ここにあげたものは基軸に準ずるものといえるであろう。6章では、課題として三点、記した。すなわち「1)東方地中海周辺地域と中国内陸部の文化の差異」「2)海、山、野の文化と祭祀芸能」「3)東アジア祭祀芸能の変容」である。1)は伝統的な比較の視点としていうまでもなく重要である。2)は、東方地中海周辺地域の文化を総体的に捉えるための視点である。琉球の御嶽(うたき)も朝鮮半島南部の堂山(ダンサン)も山(山神)、海(海神)とかかわる。つまり、この海域では「海、山、野の文化、とりわけそれらにかかわる祭祀は密接で不可分」なのである。3)では祭祀芸能の変容にとどまらない状況を「断絶した祭祀芸能の諸相」として述べた。都市はこの百年余り、一年中、「祝祭」をつづけるために神霊や無祀孤魂を語らないできた。しかし、その価値観は今、明らかに閉塞している。さいわい今日、東アジアの祭祀芸能はまだ基層のところで生きている。それを多くの人が想起できるようにしたい。基軸の提示はそのために必要である。これは本稿の結論でもある。同時にそれは容易ならざる課題でもある。
著者
小林 信義 山本 泰 明石 真言
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-330, 1998 (Released:2010-02-25)
参考文献数
44
被引用文献数
7 8

Prussian blue, a blue pigment, belongs to the ferric cyanoferrate (II) group. It binds univalent metal ions, and the binding activity depends on their ionic radius. Prussian blue is not absorbed from the gastrointestinal tract in a significant amount. The cesium is entero-enteric cycled through the intestine. Prussian blue inhibits the reabsorption of the cesium. Many studies using experimental animals showed that the oral administration of Prussian blue increases the rate of the fecal excretion of radiocesium which results in shortening its biological half life. The accident in Goiania, Brazil, in 1987 showed that Prussian blue effectively accelerated the removal of radiocesium without toxicity. In the present review, we describe Prussian blue from a biological aspect and discuss its clinical application for the decontamination of cesium in radiation accidents.

2 0 0 0 OA 明治維新

著者
尾佐竹猛 著
出版者
白揚社
巻号頁・発行日
vol.上卷, 1944
著者
津留 宏
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-20,61, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)

小学校五年生を通してみた603世帯, 約3500名の家族相互の称呼において, 比較的多数を占めた呼び方は次の通りである。夫→妻1. 名前の呼び捨て (45%) 2. 「お母ちやん」「お母さん」 (合せて29%)妻→夫1. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて73%)子→父1. 「お父ちやん」 (67%) 2. 「お父さん」 (27%)子→母1. 「お母ちやん」 (78%) 2. 「お母さん」 (18%)父→子1. 名前の呼び捨て (83%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (13%)母→子1. 名前の呼び捨て (67%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (27%)父→祖父「おじいさん」「おじいちやん」 (合せて70%)母→祖父「おじいさん」「おじいちやん」 (合せて80%)父→祖母「おばあさん」「おばあちやん」 (合せて70%)母→祖母「おばあさん」「おばあちやん」 (合せて80%)祖父→父1. 名前の呼び捨て (60%) 2. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて25%)祖母→父1. 名前の呼び捨て (44%) 2. 「お父さん」「お父ちやん」 (合せて40%)祖父→母1. 名前の呼び捨て (80%) 2. 「お母さん」「お母ちやん」 (合せて24%)祖母→母1. 名前の呼び捨て (63%) 2. 「お母さん」「お母ちやん」 (合せて10%)兄→弟1. 名前の呼び捨て (71%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (23%)姉→弟1. 名前の呼び捨て (60%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (32%)兄→妹1. 名前の呼び捨て (66%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (32%)姉→妹1. 名前の呼び捨て (55%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (43%)弟→兄1. 「兄ちやん」「お兄ちやん」またはこれの付くもの (合せて62%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (17%)妹→兄1. 「兄ちやん」「お兄ちやん」またはこれの付くもの (合せて59%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (22%)弟→姉1. 「姉ちやん」「お姉ちやん」またはこれの付くもの (合せて63%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (17%)妹→姉1. 「姉ちやん」「お姉ちやん」またはこれの付くもの (合せて68%) 2. 名前または略名に「ちやん」付け (20%)尚, 調査結果全般を通し次のような傾向が看取される。1夫婦間の称呼は一般に甚だ不明確であり, 特に妻→夫の場合は瞹眛である。多くは子が父を呼ぶ呼び方を借りている。2一般標準語とされる子→父母の「お父さん」「お母さん」, 弟妹→兄姉の「兄さん」「姉さん」は意外に少い。一般に家族間は「さん」よりは「ちやん」付けが多い。但し「おじいさん」「おばあさん」はこの限りでない。3夫婦間及び子, 祖母の父に対する称呼よりみて, 尚母よりは父に対して敬意が強い。4きようだい間の呼び方は, よく家庭の教育的配慮の如何を反映している。5農村には全く不当な称呼がかなりみられる。住宅地にはこれがない。一般に敬称の点では農村, 工業地がより乱れている。6家族称呼は一般に子供本位の呼び方になろうとする。日本の家庭の子供本位的性格を表わしている。7家族称呼にも明らかに過渡期的様相がみられる。即ち従来の標準的な家族称呼が崩れて新しい称呼が生じつつある。旧い称呼の権威的, 序列的, 形式的なものが, より平等的, 人間的, 親愛的な呼び方にとつて代わられようとしている。恐らくこれは家族制度の変化と共に, 封建的家族意識の減退, 個人意識の昂揚等によるものであろう。8尤も農村と住宅地の一部では標準的な称呼に尚, 関心が強いようにみえる。これは次のように解せられる。即ち日本の家族称呼の標準語はやや保守的なものであるが, 農村はその家族制度の保守性からこれを残し, 住宅地の知識階級では保守的というのではなくむしろ教育的配慮から標準語に依ろうとしているのであろう。従つて両方の性格を欠く商工地では最も称呼の乱れがみられるのである。
著者
高橋 昌明
出版者
神戸大学
雑誌
文化学年報 (ISSN:02868105)
巻号頁・発行日
no.19, pp.33-102, 2000-03
著者
高橋 久光 セナン キャロル ハフフェイカ レイ C
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.22-27, 1993

培養液中の異なるZn濃度および遮光がトマトの生育, 窒素含有量および硝酸還元酵素の活性に及ぼす影響について検討した.Znの欠乏は, 草丈の伸長を抑制した.<BR>葉部の全窒素含有量はZn欠乏区, 微量区および標準区でほとんど差異が認められず, その傾向は茎部, 根部においても同様であった.しかし, 葉部の全窒素含有量に占める水溶性窒素含有量は, Zn.欠乏区で高かった.<BR>葉部の硝酸還元酵素の活性は, 標準区で高く, Zn微量および欠乏区で低かった.その傾向は茎部および根部でも同様であった.なお, 根部の硝酸還元酵素の活性は, 葉部や茎部と比較して, 低かった.<BR>Zn欠乏作物の遮光実験下での植物体各部位の生体重および乾物重は, 各生育期間とも無遮光区で最も大きい値を示した.<BR>Zn欠乏作物の遮光実験下での葉部の硝酸還元酵素の活性は, 遮光によって低下し, 無遮光区で最も高く, 70%遮光区で最も低かった.根部の硝酸還元酵素の活性は, 4月12日と4月19日には無遮光区で高かったが, 他の部位と比較して, 全処理区ともその活性は低かった.
著者
古藤 真平 Shimpei Kotoh
出版者
同志社大学文化学会
雑誌
文化学年報 (ISSN:02881322)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.305-323, 2016-03

工藤和男先生 竹居明男先生 退職記念論文集
著者
長谷川 元洋 上野 顕子 新谷 洋介 清水 克博
出版者
日本消費者教育学会
雑誌
消費者教育 (ISSN:13451855)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.123-133, 2021 (Released:2021-10-27)
参考文献数
11

The purpose of this study was to develop a consumer education lesson which enables deep active learning in online classes. We constructed the lesson using a matrix for designing lessons to realize “deep learning”, which was to ensure the lesson quality in online classes. In addition, information tools were selected and combined so that the students were able to do group work in the online classes. We used the text mining system to analyze and compare papers submitted by students who attended in-person classes in 2019 to ones handed in by students who attended mainly online classes for the same course in 2020. As a result, it was confirmed that deep active learning could be realized even in the online classes.
著者
北條 理恵子 坂本 龍雄 黒河 佳香 藤巻 秀和 小川 康恭
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.51-56, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

室内空気中の化学汚染物質による健康障害と考えられる,シックハウス症候群(SHS)と化学物質過敏症(CS)の発症や増悪には「におい」が関与することが報告されている.しかしながら,今までに室内空気汚染物質の健康影響を「におい」自体からとらえた実験研究はほとんどない.今後,労働衛生の重要な課題として不快な「におい」発生の予防と対策が必要である.我々は,職場で問題となる揮発性有機化合物(VOCs)および真菌由来揮発性有機化合物(MVOCs)の「におい」に焦点をあて,「におい」そのものが引き起こす健康影響を実験動物により検討する嗅覚試験法の確立を計画している.本稿では,近年問題となっている室内空気汚染物質による健康影響について解説したのち,嗅覚試験系の確立のため,我々が開発した基盤的な試験法を紹介する.
著者
下郡 剛
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.46, pp.263-275, 2012-09-28

院=上皇・法王の意志を奉者一名が奉って作成される院宣について、古文書学は、現存文書を元に様式論を生み出し、院宣は院司が院の意向を奉じて発給する文書とされてきた。しかし、日記の中には、意志伝達が果たされた時点で、文書としての機能を喪失してしまう、一回性の高い連絡に使用された文書が多く記載されている。それでは、現存文書に基づき成立した院宣様式論は、本共同研究の対象たる日記からとらえなおすと、いかなる姿を見いだせるのか、を本稿で検討した。
著者
徳永 純一郎 延永 尚志 中谷 龍男 岩崎 徹 福田 和廣 國武 吉邦
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.183, pp.45-52, 1998 (Released:2009-09-16)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

This paper proposes a new concept for the frictional drag reduction technique. The new technique makes use of a specific coating surface (Super-Water-Repellent Surface) which has a highly repellent effect and an ability to form a thin air film over it under water. When supplying a small amount of air to the specific coating surface from the outside continuously, the supplied air (secondary air) is absorbed in and joined with the primary air film and spread to form a filmy air flow along the surface. This technique reduces the frictional drag because of this phenomenon.A frictional drag test in the rectangular pipe flow and a resistance test of horizontal flat plate were carried out in order to verify the validity of this technique. As a result of these tests, it was confirmed that drag reductions of about 80% and about 55% were obtained for flow velocities of 4 m/s and 8 m/ s, respectively.
著者
大矢 繁夫
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1-9, 2008-12-11

商業銀行は、その本質的機能である信用創造によって、資産と負債の両側を同時に膨張させる。そのとき、やがて劣化が必然であるような資産も抱え込む。このことは避けられない。資産劣化は事後に判明するからである。劣化が必然的な資産とは、バブル的に価格上昇した資産やそれを担保にした貸出し等である。銀行の信用創造は、どこまで厳格な資産審査をできるかにもよるが、上のことを避けられない。信用創造は、銀行資産の「架空」化をもたらさざるをえない、という認識である。以上の認識を前提に、本論文では、まずドイツの銀行の信用創造能力の高まりを追った。銀行の信用創造能力を高めるのは、現金取引の縮減であり、それをもたらすキャッシュレス・ペイメントの進展である。まずこの状況を追った。次いで、ドイツの銀行は高められた信用創造能力によって、「架空」資産をいかに抱え込んだかを把握しようとした。銀行は「架空」資産の抱え込みに慎重でありうるとしても、それを完全には回避しえない。そうであるならば、金融当局は、そのことをどのように認識し、対応しようとするのか、最後にこの問題を検討した。