著者
土肥 直美 篠田 謙一 米田 穣 竹中 正巳 西銘 章 宮城 弘樹 片桐 千亜紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、南西諸島先史時代人の地域差の問題に、形質、遺伝子、年代、生業、考古などの側面から総合的な解明を目指した。南西諸島の先史時代人については、先島諸島の保存良好な人骨が未発見という課題が残されているが、本研究ではまず、沖縄諸島を中心に形態変異の解明に取り組んだ。沖縄先史時代人の基礎データ収集と整理が進んだことが成果である。また、石垣島では更新世人骨の他、縄文時代相当期(下田原期)、弥生~平安相当期(無土器期)の人骨が発見され、今後の分析によってさらに地域性の解明が進展する可能性が広がった点は大きな成果である。
著者
山岸 智子 鎌田 繁 酒井 啓子 富田 健次 保坂 修司 飯塚 正人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、これまでのステレオタイプ的なシーア派観はもとより、シーア派が「問題化」する構造を解明するために、構築主義的な観点を導入し、シーア派の哲学思想・宗教実践・社会集団化のコンテクストを分析することを課題とした。研究分担者・研究協力者が会合を持って、これまでの研究を振り返り、自らの研究の取り組みについて議論したのみならず、英国・イラン・アメリカ・アラブ首長国連邦・レバノンから一線級の研究者を招聘して意見交換をし、交流の道を開き、こちらからも10カ国以上に赴いて資料収集・現地調査・研究発表などを行った。こうして得た成果は多岐にわたるが、以下のようにまとめられるだろう。1.多様性:さまざまな例が示され、シーア派とはいっても、その集団としてのありようや位置づけが多様であることが、明らかになった。それは、立場の違い(サラフィーヤ主義者とシーア派信徒)や国・地域の違いのみならず、一つの地域・家族でも状況の変化によるシーア派アイデンティティに変化があることが分かった。2.新しい学問的アプローチ:思想研究に歴史的観点を導入する、「人」という観点から思想の展開や指導者の条件を見直す、思想の中のモチーフの見直し、などアプローチや観点を変えることで、新たな知見を得た。3.ローカルとグローバルのインターフェース:宗派として国民国家のなかに位置づけられる際にも、国際的な力学や国家を越えるネットワークが関連すること、宗派の絆のグローバルな経済活動への活用、信徒や学者の国を越えた移動の実際、などが明らかとなった。4.これまでの研究の空白を埋める:そしてシーア派としての制度・知の再生産にかかわるイスラーム法学者のありさまや教育の実態、宗教的慣行など、十分に解明されてこなかったピックも本研究で考察の対象となり、さまざまな発見があった。
著者
落合 秋人
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究代表者は近年、イネの種子から歯周病菌の増殖阻害に関与する2種類のタンパク質成分OsHsp70N (Hsp70ホモログ)とAmyI-1 (α-アミラーゼ)を見出した。本研究課題では、ヒト病原菌に対するこれらのタンパク質の増殖阻害活性の効果範囲(スペクトル)を明らかにした。また、X線結晶構造解析によりそれぞれのタンパク質の立体構造を決定した。得られた構造生物学的知見と分子間相互作用解析などにより、AmyI-1はグラム陰性菌細胞壁外膜を構成するリポ多糖(LPS)と相互作用することを明らかにするとともに、AmyI-1と可溶性デンプンの分解物が協奏的に作用して歯周病菌の増殖を阻害する可能性を示した。
著者
安田 智美 吉井 忍 道券 夕紀子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

在宅では血液検査や身体計測などによる栄養評価は困難である。そこで、非侵襲的かつ簡便で、介入点がわかりやすいスクリーニング表を作成した。75歳以上の444名の在宅療養者及び施設入所者を対象に、食事環境、食生活、口内環境・嚥下、体調・身体状況に関する34項目の質問と、上腕筋面積の測定を実施した。JARD2001による上腕筋面積の年齢別中央値を100とした対象者の上腕筋面積の割合を算出し、質問34項目との関連を検討した。さらに、判別分析にて項目数と配点を検討し、男女別で34項目の質問からなり、要介入、要注意、良好の3段階に分類できる在宅栄養スクリーニング表(Home Nutritional Screening Test ; HN-test)が完成した。このスクリーニング表の感度は男性93. 3%、女性90. 6%であり、高い確率で低栄養状態の判別が可能となった。
著者
大関 泰裕 安光 英太郎
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究成果の概要(和文):従来知られていなかった全く新規な一次構造を持つα-ガラクトシド結合性レクチンMytiLecのアミノ酸配列を決定し、グロボトリオース(Gb3)糖脂質糖鎖結合性、Gb3発現Raji細胞に対する増殖抑制を見出した。SUEL/ラムノース結合レクチンファミリーでGb3に結合したナマズ卵SALレクチンは同細胞の増殖に影響せず、多剤耐性トランスポーター遺伝子の発現を抑制した。両結果を総合すると、同一糖鎖に結合するレクチンでも、その結合力や価数の違いから、異なるシグナルを細胞内に伝達することが判明した。細胞増殖の調節に応じて適切なレクチンを投与することで、細胞研究における機能制御が可能と示唆された。
著者
杉原 一昭 渡辺 弥生 新井 邦二郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,子どもの認識形成に直接経験・実体験がどの様な効果を及ぼしているかを探り、子どもの健全な発達をもたらす方略を見つけ出すことにあった。具体的には、(1)現在の子どもたちは、動植物についてどれくらい見聞、接触、飼育、栽培などの実体験をしているか、その実態を調査し、実体験の種類と量を規定している要因を探る(2)小動物に関するビデオによる認識形成と実体験による認識形成の差異を明らかにする(3)実際の動物(鶏)飼育経験が認識形成に及ぼす効果について検討することが目的であった。その結果、以下のことが明らかにされた。(1)園児は動植物にかなりの興味・関心を持っているが、実際に家庭で飼育しているのは金魚が多く、単に「見ている」か、せいぜい、「時々餌をやる」程度の接触である。動物との接触は、大都市の子どもほど、年少児ほど希薄である。(2)園児が積極的に飼育にかかわることが、認識形成に影響を及ぼす。(3)ビデオ視聴前(プレテスト)と視聴後(ポストテスト)の変化を見てみると、ビデオ視聴は、動物に関しての認識形成・知識の向上において、有効な手段である。(4)ただ漠然と動物を飼育しているだけでは教育的効果は薄い。動物飼育から幼児が何等かの学習をするためには、観察や接触を促すような働き掛けが必要である。(5)動物(鶏)の動作についての知識に関しては、その正確さにおいて、実体験前後で顕著な差が認められた。実際に体験することによって、動物の動作について、しっかり理解することができる。(6)絵や言葉だけではなく、実体験に裏打ちされた知識によって、しっかりとした認識の土台が形成される。
著者
長妻 努 国武 学 坂口 歌織
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

極域短波レーダ及び磁力計の地上観測網とNASAの内部磁気圏探査衛星を用いた地上-衛星同時観測により、Pc5地磁気脈動の励起特性に関する研究を行った。その結果、太陽風動圧急増時に太陽風中の速度と磁気圏境界の速度によって形成されるケルビン-ヘルムホルツ不安定性によって励起される圧縮性のPc5地磁気脈動が存在することを明らかにした。また、中規模の地磁気嵐時の回復相においてPc5地磁気脈動強度が増加している様子を捉えた。
著者
三上 喜貴 リー飯塚 尚子 永野 建二郎 永野 健二郎
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、科学技術に関する専門語彙の形成がどのように行われてきたかの分析を通じて、当該社会における技術移転の姿を明らかにすることができるのではないかとの仮説に基づく研究である。本研究を通じて、7つの基本語彙を対象に、またアジア、アフリカ、ヨーロッパの25言語を対象として比較研究を行うことができた。訳語形成パターンの解釈や、訳語の正確性や出典などについての追加調査など不十分なものではあるが、今後、訳語形成の過程を社会的歴史的文脈の中において理解することにより、当該社会においてその訳語の持つ意味合いがより明確に把握されるであろうことについてひとつの見通しが得られたことは本研究の成果である。
著者
板東 美智子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

・日本語のテンス形態素の意味構造と過去時制を持つ使役文の意味構造の包括的記述結果状態をキャンセルできる読みをもついくつかの使役詞文が報告されているが、キャンセルの可/不可は、動詞の使役意味構造のどの部分に焦点が当てられているか(Event Headedness)という観点から説明がなされている。また、その結果状態をキャンセルする読みをテストするには文を過去形にする必要があることから、使役他動詞文のEvent Headednessと「た」の関連性を述べ、それぞれの意味構造を表すとともに、両者の関連性の形式化を行った。・日本語心理動詞のアスペクト的意味構造とその動詞を持つ文のアスペクト的意味構造の包括的記述日本語心理動詞と共起する「に」名詞句と「を」名詞句の使い分けと、その動詞および文のアスペクトとの関連性を指摘した。また、共起する名詞句の特徴によって同じ心理動詞でもアスペクトが異なる現象から、レキシコンには実現可能なアスペクトの候補が記載されていることを仮定した。・多義派生の仕組みとその形式化他動詞「締める」「絞める」「閉める」の意味的連続性が動詞の語彙概念構造と目的語名詞句の特質構造の組み合わせから生じていることを形式的に示し、レキシコンにおける「しめる」の多義性派生のメカニズムを提案した。・本研究の教育・語用論の分野への応用の試み附属養護学校中学部の国語の授業の会話から時間表現に関するコミュニケーションギャップを観察し、その要因を時間の理解の難しさから生じている可能性を検討した。また、劇中のユーモア分析から、時間をもった文脈の解釈をわざと取り違えることによって生じるユーモアがあることを指摘した。
著者
山本 利春 笠原 政志
出版者
国際武道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本取組では、日本の体育系大学における「学生選手におけるスポーツ医科学的健康管理」と「スポーツ医科学サポートを担う人材(以下トレーナー)育成」を結合した新たな学生教育システムの遂行を試みた。このシステムを通じて、学生は専門知識の習得だけではなく、様々な実地訓練から運営・実行に必要な実践的な経験を積むことができた。つまり、この体育系大学での実習経験は、スポーツ界および広く国民の健康づくりのサポートができる人材育成に寄与すると期待される。
著者
中島 勝住 中西 宏次 四方 利明 尾崎 公子 李 月順 ウスビ サコ
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

市町村合併に伴い各地で進行している学校統廃合は、特に過疎傾向にある地域社会にとっては、さらなる過疎を進めることになる。一例を挙げればそれは、その地域に雇用が存在したとしても、児童を持つ家族世帯の流入・定着を阻害する要因になるからである。また、小規模、少人数ながら、あるいはそうであるが故に可能であった、その地域に根ざした特色ある教育が失われることを意味する。学校と持続可能な地域の関係を再考すべきときであろう。
著者
和泉 薫 遠藤 八十一 小林 俊一
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

雪崩危険地を多く抱える市町村に残る、地名、言い伝え、伝説、災害体験記録、慰霊碑、山林禁伐の掟など雪崩の災害文化に関しての調査研究を行った結果、平成11年度には次のような知見が得られた。江戸時代から、山林の乱伐によって集落が雪崩に襲われ被害を受けたために、集落背後の森林の伐採を厳しく禁じてきた歴史が各地に残されている。そのような災害文化も長年月経って風化してしまうと禁伐林が伐採され、そのため集落雪崩災害が再び発生していることがわかった。禁伐林の歴史は、雪崩災害発生防止には森林が有効であり、その保存・管理が大切なこと、それを忘れて伐採するといつか雪崩災害が発生することを伝えている。かって雪崩災害で多数の犠牲者が出た日を忌み日として精進したり、その日に犠牲者を弔う「講」を行ったりする行事が各地にあることがわかった。また雪崩に襲われても助かるという謂われから旧暦の11月晦日・12月朔日に団子や餅を食べる年中行事を行っている所があることもわかった。これらの行事の時期は雪崩の危険性が考えられる頃で、昔の人はこうした行事を通して雪崩を意識し警戒を喚起したものと考えられる。雪崩にまつわる伝説も各地に数多く残されており、雪崩の発生場所、雪崩埋没時の対処法、表層雪崩の恐ろしさなどを伝承している。実在の雪崩災害の話に誇張やフィクションを交えて作られたこれらの伝説は、単なる雪崩災害の事実だけよりも興味を引くため代々語り継がれ、人々の災害意識を高めてきたものと考えられる。現代では地域社会が大きく変容し、過去の貴重な災害文化が忘れ去られようとしている。本研究でも、すでに文献上でしか把握できない災害文化も多いことがわかった。こうした雪崩の災害文化を、本研究によって可能なかぎり収集し現状を把握できた意義は大きい。今後は雪崩の災害文化の体系化をさらに進め、雪崩防災・減災のための基礎的情報として活用したいと考えている。
著者
尾崎 公子 佐藤 宏子 貞広 斎子 肥後 耕生 チェ ジョンリョル ミン ビョンソン
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、日韓比較を通して人口減少地域における地域共生型学校の成立要因を抽出した。両国とも、少子化、都市化、非都市部の過疎化が深刻となり、それに伴って学校の小規模化が進行して、学校統廃合が大きな政策課題になっている。しかし、小規模校の取り組みには相違点があり、韓国政府は学校自由化策を進めて地方や学校に権限を委譲するとともに、地域や階層間格差を是正するために「教育福祉」を政策原理に採用していた。また、政府のみならず、小規模校を存続させる民間運動が存在し、地域と学校の新たな価値創造に向けた事例も確認できた。以上から、地域共生型学校の成立要因として、制度、政策理念、民間運動の存在が示唆された。
著者
川崎 昭如 目黒 公郎 近藤 伸也 大原 美保 小高 暁 田平 由希子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、山間・農村地域の災害対応力向上に資する情報伝達のあり方と技術戦略を多角的に検討した。特に携帯電話の利用に着目し,SMSの一斉メール送信を使った災害情報伝達に関する社会実験を実施した.その結果,屋外スピーカーによる情報伝達が及ばない範囲においてもSMSによる情報伝達が確認できた.また、東南アジアと我が国の地方行政の水害対応を比較として,行政から住民までの情報伝達過程を,組織間の役割分担と情報マネージメントの視点から整理した.さらに、我が国の自治体での災害・避難情報伝達に関する実態調査を行い、東日本大震災後に緊急速報メールをはじめとする新たな伝達手段が広く普及したことを明らにした。
著者
大橋 洋一
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、大規模災害時における警報・避難に関して比較法研究を進めた。災害対策基本法を始めとして、大規模災害時における住民避難や避難勧告等に関する法令や条例を精査した。わが国では、避難所設置や自宅から避難所への避難が主要な方策とされてきた。しかし、これは十分ではない。その理由は、そうした避難に十分な時間的余裕がない場合が見られるからである。他方、市町村長にとって、迅速に避難勧告や避難指示を発令することは容易ではない。したがって、市長が早く判断を下すことができ、市民が適切な避難行動をとることができるように、市町村は明確な判断基準を策定すべきである。結論として、災害対策基本法の改正が必要である。
著者
名嶋 義直
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

日本語学習者がノダ文をどのような点に着目してメタ的に理解しているかを明らかにするため,韓国人学習者・中国人学習者に対し質問紙調査を実施した。調査結果を分析したところ,双方の学習者に共通の特徴として「ノダと文脈との関連」を充分に理解していない点,語用論的な理解の欠如という点が明らかになった。両学習者群を対照してみると,韓国人学習者の方が語用論的な理解が相対的に強く,中国人学習者は意味論的・構文論的理解が強いことが明らかになった。このことは学習者に応じてノダ文の教え方を考慮する必要があることを意味する。
著者
齋藤 暖生
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

自然に対する心理的なつながりを強める体験として、林野における採取活動を捉え、それが、森林地域の住民によって排除されている事例および受容されている事例を多数比較調査することによって、排除が成立する要件を分析した。多くの場合、資源への一般のアクセスを排除した時の便益がそのコストに見合う場合に排除が持続的に成立しうると説明できる。一般による資源採取を認めるためには、資源が持続可能となる利用圧のレベルを明らかにし、行動規範を確立することが課題となる。
著者
赤澤 輝彦 梅田 民樹 岩本 雄二
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

電磁流体力学(MHD)を応用した海水油分離装置は,理論的な研究がほとんど行われていなかった.このため分離性能の向上が難しい状況であった.本研究で我々は,海水が電解質であると考えるイオン(移動)モデルを提案した.分離装置の磁場中での働きを明らかにするため,このモデルの数値計算を行った.さらに,この分離装置をもつ試験プラントを作成し,実験的に理論モデルの妥当性を明らかにした.これらの結果から,分離装置の改良法について提案を行った.
著者
長濱 虎太郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、生活支援ロボットが人間を観察し、道具を用いたタスクの目的と各操作の手段を認識し再現するための一手法を実証的に明らかにすることであった。従来の観察学習手法では観察対象の追跡結果を入力としていたが、袋に入れる・包丁で切るといった道具利用の観察では、観察対象が見えない場合が発生する。これに対し本課題では、観察対象が見えなくなること自体に観察対象の状態を推定するための重要な情報が含まれるとの着想のもと、遮蔽関係を積極的に利用して観察対象同士の関係を推定し利用する研究を進めており、ロボットによる観察と道具利用タスクにより評価を行ってきた。本年度は、複数の観察対象同士の遮蔽関係あるいはフレームアウトにより、対象が全く見えなくなる重要な時区間が存在する状況を想定し、観測できた時刻の見え方のみを使って、遮蔽下の状況を推定する仕組みの解明と評価をおこなった。本手法では、観察対象の疎な探索結果を入力とし、観察対象同士の視覚重畳関係と、運動特徴の時間的推移から、上下・包含関係の変化を含む作用を検出する。その際に視覚重畳関係と運動特徴の時間的推移を補間するための数種類の知識を与えることで、袋への収納や片付け等の観察においても、タスク目的と許される操作手段が推定可能であることを示した。さらに、ロボットが自身の体と再現時の環境に合わせて、観察学習した手段を用いてタスク目的を達成するために、STRIPSタイプの因果関係記述とタスクプランナを用いる手法を導入した。物体同士の上下・包含関係と道具的利用法を表す述語を定義して、観察学習したタスク目的と手段を記述し、各々の上下・包含関係の操作の前には、許される操作手段を前提条件として確認させる。最終的に日常環境での片付け作業、洗濯ネットを用いて洗濯物を仕分け作業を等身大ヒューマノイドへ観察学習・再現させる実験により、本手法の有用性を確認した。
著者
中原 裕美子
出版者
九州産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、台湾をめぐる科学技術人材の国際労働力移動について、とりわけ台湾と中国の間の移動に焦点を当てて分析した。台湾では科学技術人材が不足しているが、台湾と中国の企業の間では、相互に人材獲得を図る動きが起こっている。台湾企業が中国の人材を欲するのは、台湾で不足している科学技術人材の数の補填のためと見られ、他方で中国企業が台湾の人材を欲するのは、台湾の人材が持つ先端技術や能力を求めてのようである。しかし、台湾の人材は全体でみると流出超となっており、台湾の科学技術人材の不足は、今後さらに深刻になる可能性もある。