著者
西藤 清秀 青柳 泰介 吉村 和昭 樋口 隆康 中橋 孝博 篠田 謙一 濱崎 一志 宮下 佐江子 豊岡 卓之 石井 香代子 石川 慎治 中橋 孝博 濱崎 一志 篠田 謙一 吉村 和久 宮下 佐江子 花里 利一 佐藤 亜聖 石川 慎治 後藤 完二 佐々木 玉季 吉村 和久 星 英司 鈴井 恭介 アサド カーレッド アサド ワーリッド
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

パルミラ遺跡北墓地129-b号家屋墓の発掘調査を通してパルミラ古代墓制の変遷が理解できつつある。この墓にローマ人が関与する可能性も碑文から読み取れる。この調査には3次元計測システムを活用し、倒壊していた家屋墓の復元も試み、一部視覚化が出来ている。この墓の倒壊に関わる重要な要因として地震の痕跡を墓周辺で検出した。さらにパルミラ滅亡後に1歳未満の乳児が129-b号墓周辺に故意的に埋葬されている事実も確認している。
著者
数馬 広二
出版者
工学院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

(1)馬庭念流樋口家文書『従宝暦五門弟入帳』(1755〜1765:入門者九五三名が名前記載)に記載される門人で上野国内北部域のうち宝暦5年2月入門の白井町(子持村)在住の16名、および宝暦11年新井村8名、山子田村(現在の榛東村)11名に関して調査を行った。また信濃国佐久市、小諸市に分布した馬庭念流門人に関して各市教育委員会を通じて調査した。(2)馬庭念流門人が存在した地域での学心一刀流、一刀流中西派、真之真石川流、気楽流での武術流派と馬庭念流との勢力関係を奉納額から検討した。一刀流中西派は、八幡八幡宮(やわたはちまんぐう)(高崎市八幡町:文化15年)、群馬町足門鎮守八坂神社(弘化2年)、碓氷峠熊野神社(弘化4年)伊香保水沢寺(安政三年)への奉額が確認された。真之真石川流は、榛名神社(群馬郡榛名町:文政5年)産泰神社(埼玉県本庄市四方田(しほうでん):天保10年)富田寺(ふくでんじ)(本庄市富田:弘化4年)の三枚であった。学心一刀流は榛名山神社御幸殿(みゆきでん)外側と額殿(安政五年)、大宮巌鼓神社(おおみやいわづつみじんじゃ)(慶応元年)、気楽流は碓氷峠熊野神社(文政9年)、群馬郡川島村甲波宿祢神社(かわすくねじんじゃ)(嘉永7年)に奉額した。(3)樋口家文書のうち流派勢力に関する記述のある書簡を解読した。一つは、伊香保一件直後の千葉周作の北辰一刀流の様子を馬庭念流松本定八が樋口十郎右衛門に宛てた手紙である。また樋口家文書「山口藤四郎より樋口重郎右衛門へ」書簡に山口藤四郎の葛藤と転流について著されている。
著者
尾内 理紀夫 岡部 誠
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

効果音を対象とする無音動画の有音化の研究を行った。効果音を、繰り返し音、瞬間的な音、持続性のある音の三種類に分類し、瞬間的な音と持続性のある音について研究した。瞬間的な音はミリ秒単位で発音位置を調整し、動画内の物体の動きと効果音の発音タイミングを一致させる必要がある。そこで音付き動画から効果音の合成に使用する特徴量と音データを切り出し、動画と独立なオブジェクト化を図ることとし、瞬間的な音の貼り付け技術を確立した。爆発音など数ミリ秒から5秒程度持続する音は、広周波数帯域にわたり不規則に音成分が現れる。このため無音動画内の物体の動きに合わせて持続性のある効果音を低劣化で伸長させる技術を確立した。
著者
大隅 清陽
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本古代における内陸交通の特色について、甲斐国における駅制の運用を題材に考察した。また、日本と唐の律令法のうち、馬匹生産について規定した養老廐牧令と、北宋天聖令から復原される唐令を比較することにより、日本における馬の生産のあり方の独自性を明らかにした。特に共著書『古代山国の交通と社会』では、中央政府による山岳地域での駅制の施行が、大規模な人口の移動や土地の開発などの大きな影響を地域に及ぼしたことを解明した。
著者
澤 進一郎
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、植物感染性センチュウを用いた分子遺伝学的研究手法の確立を行った。さらに、センチュウ感染過程における、植物細胞の脱分化、多核化、再分化過程における分子機構に焦点を当て、その分子機構にせまるべく、エフェクタータンパク質のプロテオーム解析、また、候補遺伝子を用いたY2Hスクリーニングを行った。
著者
東野 輝夫 梅津 高朗 安本 慶一 内山 彰 山口 弘純 廣森 聡仁
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

今年度は次のような研究を実施した。(1)屋内空間における高精度トラッキング技術と都市街区や公共交通機関におけるトラッキング・状況理解技術の開発を行った。特に、駅構内(大阪駅など)や列車内の混雑度や乗客の行動を複数人のスマートフォンを用いて高精度に推定する技術などを開発し、その結果をユビキタス系難関国際会議PerCom2018などで発表した。また、(2)都市街区の移動ノードやデータの偏在性、モビリティの偏向性がもたらす課題とそれに対する堅牢で柔軟なフレームワークの構築手法を考案し、その成果が分散システムに関する難関国際会議IEEE ICDCS2018に採録された。さらに、(3)都市街区に多数配置されたマイクロモジュール間の通信機能や超分散型の時空間情報集約機能(自律的ロードバランス、モビリティの自動把握・調整など)をEdge Computingベースで構築し、DCOSS 2017国際会議やMobile Information Systems誌で発表した。また、災害支援のための包括的プラットフォームに関する成果をSMARTCOMP 2017国際会議での招待講演や分散システムに関する国際会議IEEE ICDCS2017で発表した。現在、(4)複数のマイクロモジュールを対象環境に配置し、十数名のモバイルユーザにより人や車のモビリティ収集実験を行うと共に、大阪大学吹田キャンパスでの実証実験を目指した取り組みを開始した。実証実験では、数十台の固定カメラやLIDAR、ドライブレコーダー、スマートフォンなどを併用した包括的プラットフォームを開発し、携帯電話網が部分的に機能しなくなった場合を想定し、(a) 安否確認メッセージなどの伝達、(b) 写真などの災害関連情報の収集、(c) 各エリアでの人流センシングに基づいた実時間空間情報の把握と可視化、などに必要な要素技術の開発を行っている。
著者
宮崎 英樹 笠谷 岳士
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

過去のものとなったテレビジョン撮像管技術を現代のナノ材料・ナノ計測技術で蘇らせ、表面近傍の光学像を分解能62nm、無染色で撮像する電子走査型超解像光学顕微鏡を開発した。光電子放出に伴う蓄積帯電電荷を読み出すアイコノスコープ方式と、蛍光点を走査して試料を照明するフライングスポットスキャナ方式の構築を目指した。前者については研究期間内に完成形を示すことはできなかったが、後者は市販の走査電子顕微鏡に組み込めるユニットの開発まで成功した。生きた細胞の観察を可能とする環境セルを開発し、位相物体が無染色で撮像できる原理がパーセル効果に由来することを明らかにし、実際に生きたままのヒト肺細胞の観察に成功した。
著者
星加 良司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本の実定法の体系に初めて明文化された「合理的配慮」の概念について、(a)その導入に当たっての理論的・実践的課題を明らかにするとともに、(b)企業等において合理的配慮が有効かつ円滑に運用されるための研修プログラムの内容開発を行った。この成果は、(a)について書籍『合理的配慮』(有斐閣)、(b)について研修教材『障害者と共に働く職場づくり(基礎知識編)』及び『同(ケーススタディ編)』(株式会社富士通ラーニングメディア編)として公表される。
著者
森尾 昭文
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

色や食感などが現在主流の既存品種とは異なる特徴を持つ野菜新品種は、消費多様化に対応して開発されている。しかし、そのような野菜新品種は変わった特徴があるがために普及していない例が多い。そのような品種を普及させるために、農産物では不十分になりがちな販売促進を製品開発で補う方策を、ニッチマーケティングの視点から解明した。
著者
亀田 正治 市原 美恵
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

気泡を含む流体に関する多分野融合問題,具体的には,噴火様式を決定付ける要因とされる「マグマの破砕」現象の解明に取り組んだ.研究手法には,高い再現性と可視化撮影の実現性を重視して「マグマ模擬材料による常温室内実験」を採用した.模擬材料は,「水あめ」に過酸化水素水と二酸化マンガンを加え,触媒反応により酸素気泡を得たものである.この模擬材料は,マグマの持つ特徴である「超高粘度」「高剛性」「Maxwell型粘弾性」を併せ持ち,発泡マグマと同様に直径数10μmの気泡を大量に含んでいる.また,粘度,ボイド率も幅広い範囲で調整ができる.実験では,減圧による発泡材料の破砕過程を高速度撮影により詳しく調べた.その結果,十分固体的な状態におけるマグマの破砕は,破砕に必要な臨界差応力に達する時間tdecが特性をつかさどることを見出した.また,材料の固体流体遷移を支配する緩和時間trとの比(デボラ数: tr/tdec)を指標として,破砕に必要な臨界差応力に対するレオロジーの影響を詳しく調べた結果,臨界デボラ数(10)以上では,差応力はほぼ一定になること,また,臨界デボラ数を下回ると,次第に差応力が大きくなることが分かった.つぎに,減圧開始から破砕にいたるまでの時間tfに対するレオロジーの影響を評価したところ,デボラ数に反比例することがわかった.さらに,その最小値は減圧特性時間tdecによって,その最大値は,材料内の気泡が膨張を開始する特性時間tvに支配されることが分かった.これまでの成果を取りまとめたものを,雑誌論文2編,図書1巻として公表した
著者
増子 正 李 在檍 高橋 信二 大澤 史伸
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

韓国における共同募金特徴を、①韓国共同募金会の組織、②募金プログラムの開発と事業支援、③説明責任 の3つの視点から整理して、韓国における共同募金のマネジメントの体系化を試みた。単に募金を集めて配分するだけでなく,配分を受ける組織が事業を遂行するための相談支援体制を持っていること。募金事業のマネジメントに関しては,募金戦略の作成から評価にいたるまでのPDCAサイクルが確立していることがわかった。
著者
佐藤 可奈 高尾 公矢 赤羽 克子
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、都市郊外団地に住む高齢者の買物弱者の買物行動を含めた食生活の実態及びニーズを明らかにし、買物弱者への支援策を提示することを目的として、埼玉県三郷市M団地において質問紙調査、インタビュー調査を行った。質問紙調査の結果、性別と年齢で違いがみられ、相対的に体力的な衰えが買物を困難にさせ、人間関係や食生活に影響を及ぼしている可能性が示唆された。インタビュー調査の結果、社会的に孤立している高齢者は食生活に変調がみられ、低栄養のリスクが高く、BMIが低くなるという知見が得られた。団地での生活を継続するためには、団地の知縁による支え合いがセーフティネットとしての機能を果たすことが期待される。
著者
河村 剛光
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、打席においてボールを見るというトレーニング方法が打撃能力や動体視力に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。被験者を、時速100kmのストレートを見る群、打撃する群、時速115kmのストレートを見る群、打撃する群、時速100kmのカーブを見る群、打撃する群の6つに分けた。それぞれ、トレーニングを約週3回4週間実施した。その結果、全体として打撃能力は向上する傾向にはあったが、比較的、打撃練習を行う群は打撃能力に対して、見るトレーニングでは視覚機能に対して効果が得られる傾向にあったと思われた。
著者
松吉 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、質問紙により測定される自閉症傾向 (Autism-Spectrum Quotient, AQ) の個人差と、実験により測定される行動成績との相関を男女別に検討することで、自閉症スペクトラム (ASD) を構成する行動特性の連続性の男女差を明らかにすることを目的とした。視線認知、低次幾何学形態認知、顔の短期的な遅延再認、顔再認記憶の行動成績との関連を検討した結果、視線認知かつ男性のみにおいて自閉傾向を示すAQとの相関が認められた。この結果は、視線認知が必ずしも両性の自閉症中間表現型となっていないことを示すのみならず、自閉傾向と行動を考える上で性差を考慮することの重要性を示したと言える
著者
澤田 秀之 中村 祐
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、形状記憶合金ワイヤの微小振動子をアクチュエータとして用いた触覚呈示デバイスを構築し、指先感覚の喪失の程度を数値化する、指先触覚感度測定手法を開発した。まず高出力触覚アクチュエータの研究開発をおこない、皮膚の微小部位に様々な周波数の振動刺激を与えることで、触覚の高次知覚の呈示が可能であることを示した。更に指先触覚感度を定量的に測定するシステムを構築し、糖尿病などで引き起こされる末梢神経障害に起因した指先感覚の喪失程度を数値化する測定法の実装をおこない、被験者実験により有効性を示した。糖尿病の症状の進行度を定量的に計れることは、早期の診断や的確な治療に大きく貢献できる。
著者
加藤 圭子 澤井 信江 土師 俊子 稲垣 寿美 徳永 香里 中川 栄太 川平 明子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本の要介護高齢者が好む粥の誤嚥予防について検討するために、食事援助中の粥の粘度の経時的変化を明らかにした。また、食事援助中の粥の基本的な性質の経時的変化等についても明らかにした。
著者
亀井 優香
出版者
長浜バイオ大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

出芽酵母は細胞レベルの老化・寿命研究モデル生物として非常に有用である。本研究では、遺伝学、トランスクリプトミクスおよびメタボロミクスの手法を駆使し、分裂寿命(一つの細胞が老化して死ぬまでの出芽回数)の決定機構および老化の進行に伴う細胞の変化を明らかにすることを目指した。本年度は前年度までに得られた老化細胞のトランスクリプトーム解析から新規の寿命制御機構を発見した。老化細胞のトランスクリプトームおよびメタボローム解析による細胞老化機構の解明前年度までに、細胞老化の進行過程での変化を知るために、老化段階の異なる細胞(1、4、7および11世代)を調製し代謝と転写の変化に着目した。ピルビン酸に加えてTCA回路の中間代謝物量が老化の進行に伴い増加し、多くのアミノ酸は次第に減少していた。これらの代謝変化に対応する酵素遺伝子の転写量変化が見られたことから、老化細胞での代謝の変化は転写の変化が原因であると考えた。7世代から11世代にかけて転写量が増加した遺伝子に着目すると、定常期で転写が誘導される遺伝子群が多く含まれていた。以上の成果をJournal of Biological Chemistry誌で発表した。ビタミンB6による分裂寿命制御11世代で特に転写量が増加した遺伝子の中で、ビタミンB6合成に関与するSNZ1 遺伝子に着目した。SNZ1 遺伝子を破壊した株の分裂寿命は野生型株よりも短かった。ビタミンB6トランスポーターをコードするTPN1 遺伝子の破壊株は snz1 株と同様に短寿命であった。分裂寿命測定培地に過剰量のビタミンB6を加えると、snz1 とtpn1 株の寿命が回復した。以上より、出芽酵母の分裂寿命にはビタミンB6が必要であることを明らかにした。
著者
若林 律子
出版者
東海大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者におけるセルフマネージメントに関する情報量が、呼吸器を専門とする医療機関(カナダ、日本)と総合病院(日本)おいて異なるか検討を行った。これら3つの医療機関では、セルフマネージメントの情報量に違いが認められた。今回の研究結果から医療機関によって患者のセルフマネージメントに関する情報量は異なり、医療機関によってセルフマネージメントプログラムの質が異なる可能性が示唆された。
著者
磯部 兼嗣
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

溶接などで生じる不均質領域が水素透過挙動に与える影響を調べるため、複数箇所にTIG溶接施したSUS304ステンレス鋼試験体を用いて、523Kから673Kの温度域での重水素透過流量を測定した。その結果、不均質領域のある試験体と溶接を施していない試験体の定常透過流量はほとんど一致し、この温度領域では溶接で生じる不均質領域は定常透過流量に影響を与えないことを明らかにした。このことから、核融合炉においてSUS304ステンレス鋼で構成された機器、配管等の水素透過は、溶接による不均質領域には影響されず、これまで報告されているSUS304ステンレス鋼の水素透過を元に評価して良いことが明らかとなった。
著者
杉浦 真弓 尾崎 康彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

原因不明連続2回以上の6例の流産患者及び16例の人工妊娠中絶患者の流産時の子宮脱落膜組織を採用した。児の染色体異常による流産例は検討から省いた。それぞれの脱落膜組織からリンパ球を分離し、CD^<16+56+3->細胞(NK細胞)を解析した。また、6例の反復流産患者及び5例の中絶患者の脱落膜を用いてマクロファージ-を分離し、TGF-βも測定した。いずれも流産群とコントロール群の差を認めなかった。現在原因不明習慣流産の治療として夫リンパ球による免疫療法を施行しているが、感染などのリスクがあるため、これに変わる免疫刺激剤としてOK-432の投与を試みた。3回以上の流産歴をもつ患者に妊娠初期にOK-432の皮内注射を行い73.9%(17/23)が成功した。夫リンパ球の免疫療法では75.1%(154/205)が成功であり、OK-432の皮内注射は従来の免疫療法と同じ効果を示した。OK-432による免疫療法中、NK細胞活性を測定した症例のうち成功例ではNK細胞活性が低下する傾向がみられた。以前、NK細胞活性が高いと流産の危険性が3.5倍高いことを報告したが、OK-432のはNK細胞活性を抑制することで流産を予防する可能性が示された。また、NK細胞活性は精神疾患とも深く関わっている。ストレスが流産をひき起こすことは既に証明されており、原因不明の流産における精神的要因についても調査した。29組の2回の流産歴のあるカップルに半構造面接を行った。1回目、2回目のemotional impactはそれぞれ-74.5、-80.0(妻)-59.7、-65.0(夫)であり、2回目のが強かった。流産の予知をしていない人ほど強かった。また、61人の妻のNK活性について、低い神経症的性格、抑鬱状態、高い自尊心は高NK活性と関係した。つまり、これらの性格が流産と関係する可能性が示された。