著者
上田 誠也 木下 正高 上嶋 誠 歌田 久司 長尾 年恭 河野 芳輝 宮腰 潤一郎
出版者
東海大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

VANの達成のためには,いかに困難であっても,短基線観測の併用が不可欠であるとの認識のもとに,本研究では地の利を得た北陸地域と,前回研究での発展的継続をめざす伊豆大島での観測に主力を投入した.前者では各機関の協力により,VANシステムにほぼ同等の低ノイズ観測網が確率され,現在はいわば"地震待ち"の状態にある.しかし,設置された観測点が"sensitive station"であるという確率は高くはないので,今後努力を続けて"ツボ捜し"を行う必要がある.後者では伊豆大島に多数の測線を設置し,観測を続行しているが,期間中に出現した矩形状変化はその空間分布から判断して,NTT岡田局近辺での局地的変化(原因未不明)と思われるが,群発地震の前に出現頻度の増大した変化そのものについては今後もう一度および現象が起きるまでは検証不可能であり,これも,"地震待ち"の状況である.また本研究ではNTTのア-スと回線を全面的に利用して,世界でも初めてのNETWORK MT法を開発し,北海道東部において詳しい地下電気伝導度分布の推定に大きな成果をあげた.これはVAN法の基礎研究としてのみではなく,地球物理学一般にとっても画期的な貢献であった.VAN法成否の鍵が"sensitive station"の発見にかかっていることは明らかである.このためには,一見まわりくどいが事前にその地点の"sensitivity"を推定する方法を開発することが重要であろう.具体的にはすでにsensitiveとinsensitiveな場所の知られているギリシャにおいてVANグル-プと協力して総合的な地球物理,地質調査を行い,それらになんらかの地学的相違を見いだすための国際共同研究も進めたい.
著者
里村 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は蓄積されたデータを用いて、消費者行動論から小売業者が値引きを実施するタイミングと値引き幅を決定するための手法を開発するものである。本年度は平成14・15年度の研究成果の報告と研究の深耕を進めた。研究成果の報告ではカテゴリー内需要のモデル化研究、消費者異質性に着目した商圏エリア分類方法に関する研究成果の報告がなされた。研究の深耕では、値引き最適化の理論的研究と実証分析が進められた。ここではメーカーのブランド利潤最大化のための卸売り価格決定、小売業のカテゴリー利益最大化のための小売価格決定、消費者個人の効用最大化のためのブランド選択、という3つの経済主体による意思決定問題についての理論的枠組みと数理モデルの構築を行った。さらに集計されたPOSデータを用いてモデル・パラメータを推定するための手法の開発を行い、実際の小売店の集計されたPOSデータを用いた分析が行われた。提案されて手法は小売業者の値引きを含む価格決定問題であり、小売業者だけでなくメーカーの行動も考慮している点に特徴がある。本研究は、消費者行動論的な個別消費者の行動に関する研究と、オペレーションズ・マネジメント的な最適化手法の両者を結びつけたものである。本研究では小売業者が蓄積した商品別販売データ、顧客購買データ等を利用した値引き最適化を行うために必要ないくつかの手法を開発し、小売業の収益性改善のための意思決定方法も示した。本研究での成果をいくつかの研究会で産学界からの参加者と議論した結果、本研究で示された理論および手法に対する関心も高く、データをもとにした価格決定手法と利益配分決定方法については今後とも産業界での必要性が高いとの認識で一致した。
著者
竹井 瑤子 井奥 加奈
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

包装による食品の劣化防止法は、近年の工業技術の進展による多機能を有する包装資材の開発により利点が多い重要なものとなった。反面、これらプラスチック類のごみ問題も放置できないものとなった。そこで、食品に求められる包装材の機能を食品学の立場から見直し、食品の品質低下を抑制できる最小限の機能を持ち再生しやすい包装資材を検討する基礎的データを得る事を目的とした。包装により遮断可能な劣化要因のうち透明プラスチックフィルムが遮断しにくい光に着目し、劣化作用が大きい紫外線が食品の品質に及ぼす影響を検討した。脂質モデルとしてリノール酸メチルを用い、3種の波長の紫外線を照射し生成した過酸化物を高速液体クロマトグラフィーで分離、定量した。その結果、波長が短い程、過酸化物の生成も分解も速いことが分かった。次に、β-カロチン、ヘモグロビン、クルクミン、インジゴカ-ミンに対し脂質と同様の紫外線照射実験を行い退色度を測定したところ、カレ-粉の色素クルクミンは365nmの紫外線でも退色がみられ、波長が短い程退色が激しかった。そこで、クルクミンの退色に対し、365nmの紫外線をカットする機能があるフィルムの防止効果を検討した。その結果、365nmの紫外線に対する退色防止効果が明かとなったが、蛍光灯のもとでは、効果が見られなかった。更に、実際の食品として匂いが大切なすりごまを取り上げ、4種のフィルムで包装して1カ月間保存し、ガスクロマトグラフィーにより香気成分を分析し、含有脂質を超音波をかけて抽出後その過酸化物価を測定した。アルミラミネートフィルムでは品質保持効果が最も高く、365nmの紫外線カットフィルムでは異臭成分の生成防止効果が見られ、酸素遮断フィルムでは脂質酸化防止効果が見られた。
著者
譽田 正宏
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、画像から形状の特徴を抽出する技術及びその特徴を用いた認識技術の確立を目指して実施された。例として、原子オーダで平坦化されたシリコン表面を原子間力顕微鏡で測定した画像から原子ステップとテラスを形状認識し分離するアルゴリズムについて検討した。"方向"・"大きさ"などの特徴に注目し、候補間で相関をとることが認識するには有効であることが分かった。その結果、測定された画像から原子ステップとテラスを形状認識するため基本技術が確立した。
著者
増田 聡
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

聴覚文化論・メディア論・都市論の理論的基盤を踏まえて、都市空間における音文化とデジタル・メディア空間における場所イメージの交錯の様態を把握する理論構築を目指した。特に、メディア空間に媒介された音楽消費の現状、文化的生産物の所有と剽窃をめぐる問題系、録音メディアにおける音楽作品の存在論、災害地と大衆音楽文化の関係などのトピックについて検討が行われた。
著者
池﨑 圭吾 (2013) 池崎 圭吾 (2012)
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

昨年度は、新たに作成したミオシンサンプルの生化学的特性等が、これまで用いていたサンプルと同等であることを確認するための実験を行い、使用予定のサンプルに問題がないことを確認した。また、サンプル作成に並行してレーザートラップ顕微鏡の構築を行った。光学系の構築は順調に進み、力学操作用のプローブ(ポリスチレンビーズ)を十分な強度で安定に視野中心に捕捉することに成功した。しかしながら、当初使用予定であったSutter社製の高精度ステージが不調でスムーズにサンプル位置を調整できないという問題が生じた。本計測法によるアクトミオシン系の力学操作において、基盤に固定したアクチンフィラメントとトラップされたビーズにコートされているミオシン間の距離の調節は非常に重要であり、ナノメートル精度でのステージ操作は必須である。しかしながら、高精度ステージは非常に高額で本研究予算枠では代用品を準備することは出来ず、また、所属研究室にも同等の装置の予備はなかったためレーザートラップによる計測は断念せざるを得なくなった。新たな計測方法として、当研究室の岩城研究員により新規開発されたDNA折り紙技術を用いた超微細バネを用いた計測を行うことにした。岩城研究員が開発した超微細バネの詳細は省かせていただくが、これにより既存の顕微鏡で力学測定イメージングを行うことができるようになった。現在、本研究のために新たに設計されたサンプルの調整をしており、実用化に向けておおむね目処が立っている段階にある。幾つかの問題により、出だしがだいぶ遅れてしまったが、ラベル率の上昇やイメージング計測によるデータ収集効率の上昇などのポジティブな結果も多く得られており、今後の研究は加速度的に進むと考えている。
著者
渡邊 利雄
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

『真のクラスリン依存性の細胞内小胞輸送の姿』を提示することを目指し、ノックアウトマウスを用いてArf1, CALM, SMAPの詳しい解析を行った。Arf1 KOマウスは胚性致死で、従来の他のファミリーによる相補は見られなかった。詳しい解析のためにArf1 KO MEF細胞を樹立した。CALM KOマウスの目の色の薄さを発見し、メラニンの蓄積にCALMが関与している可能性を見出した。取り込まれたc-kitチロシンキナーゼ型受容体の分解にCALMが必要なことを発見した。SMAP1,SMAP2二重が胚性致死である原因を探り、E7.5日胚でアポトーシスが起きていることを発見した。
著者
石村 真一 林原 泰子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦後の映画930本を対象とし、家庭用電化製品である電気炊飯器、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ、食卓を事例に生活の変化について考察した。その結果、家電製品の普及する1950年代は、食卓も含め、伝統的な床坐による生活が未だ定着している。 1960年代になると椅子坐の生活様式が増加する傾向を示す。しかしながら、1980年代後半から、洋室床坐という新たな生活様式が出現し、若い世代に普及する。
著者
長浜 正巳 石田 洋一
出版者
明治薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

真核細胞のリボソーム生合成において機能するシャペロン様AAA ATPase NVL2は、RNAヘリカーゼDOB1との相互作用を介してリボソーム前駆体に作用し、分子複合体の構造変換に寄与する。本研究では、NVL2の作用標的となるDOB1、エキソソーム、およびその他の相互作用因子からなるrRNA代謝複合体について解析を行った。その結果、DOB1の他に、ポリAポリメラーゼPAPD5およびRNA結合タンパク質ZCCHC7を含む複合体(TRAMP様複合体)の存在を動物細胞において確認した。さらにこの複合体が、rRNA前駆体を含む核内RNAの3’末端ポリアデニル化において機能している可能性を示した。
著者
石川 文也
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

フランス語の教師養成の現場―特に、「外国語としてのフランス語」研究の先進国、フランスでおこなわれている研修の現場―で発せられる「ことば」を言語インタアクション・ディスクール分析、教育人間工学、現象学的社会学の視点から学際的に分析した。「教師の思考」は教員養成者との振り返りインタヴューにおいて、授業中に学習者とおこなった言語相互行為の中で発した自己のことば、およびそれを通じておこなった思考の客体化を誘発する教員養成者の発話によって形成されていくことが明らかになった。
著者
小林 憲正 DEMARCLLUS Pierre
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

分子雲中の星間塵アイスマントル中での有機物生成の検証のため,高エネ研で新規開発中のデジタル加速器を用い,模擬アイスマントルへの重粒子線照射実験を計画し,その準備を行った。星間塵アイスマントルでの有機物生成を調べる場合に問題となるのが,極低温環境で組成の既知のアイスを作製した後に,これに照射することと,その反応過程の追跡法である。アイスマントルを構成する分子としてH_20,CO,CH_3OH,NH_3などが主と考えられるため,種々の混合比のアイスを作るためのクライオスタットとガス混合機のデザインを行った。ガス混合機に関しては,この装置に用いる高精度のバルブや圧力計を選定し,購入,組み立てまでを行った。クライオスタットチャンバーに関しても,高エネ研において改造中である。アイスへの照射実験の予備実験として,東京工業大学のタンデム加速器を用い,想定される出発材料(一酸化炭素,アンモニア,水)の混合気体に3MeV陽子線を照射した時のアミノ酸生成について定量的に調べた。照射後,生成物を酸加水分解した後,陽イオン交換HPLC法によりアミノ酸の定量を行った。気相での陽子線照射実験においては,一酸化炭素・アンモニア・水蒸気および一酸化炭素・アンモニアの混合気体のいずれも,照射開始後すぐに霞の生成が見られた。このことは,高エネルギー粒子線の作用により高分子態の有機物が気相中で直接生成することを示唆するものである。各照射生成物の加水分解物中に、多種類のアミノ酸が検出された。アミノ酸の生成量は照射量に比例した。このことからも,混合気体からのアミノ酸の生成は,従来想定されていたようなストレッカー反応のような多次的反応ではなく、照射により直接気相中で固体のアミノ酸前駆体が生成したと考えられる。この結果は,アイスへの照射実験においても照射により直接,高分子態の有機物が生成する可能性があることを示唆する。
著者
藤田 雅也 後藤 浩太朗 水野 真盛 土田 明子 森 昌子
出版者
公益財団法人野口研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、ピロリ菌の増殖抑制効果を持つαGlcNAc(αグリコシル型でN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が結合しているもの)含有ムチンを、糖結合モジュール(CBM)により、天然から効率的に得る方法を検討する。具体的には、遺伝子情報を基に、αGlcNAc含有ムチンの糖蛋白質糖鎖に結合すると考えられるリコンビナントCBMを作成・固定化する。該CBMを用いて、天然の粗抽出物からαGlcNAc含有ムチンを分離精製し、その抗ピロリ菌活性を検討する。これにより、抗ピロリ菌活性の高いムチンが得られれば、機能性食品添加物として、もしくは抗菌物質の補助剤としての役割が期待できる。今回の検討により、1、当該CBMは、ウェルシュ菌だけでなく、ビフィズス菌その他の常在菌にも存在する可能性が高く、その遺伝子を取得後、蛋白質発現用ベクターを構築し、一部はその発現が確認できた。また、2、CBMのαGlcNAc含有ムチン特異的に結合すると考えられる領域の分泌発現を検討し、ブレビバシラス菌を宿主とする発現方法により、効率よく分泌発現されることが示された。これにより、CBMの工業的な利用可能性が示された。一方、3、αGlcNAc含有ムチンを天然から効率的に抽出できない場合を考え、CBMを活用した酵素的合成法によってもαGlcNAc含有ムチンが調製できないかを同時に検討した。その結果、ウェルシュ菌の当該CBM領域を導入したバクテロイデス菌由来のリンコンビナント酵素(αGlcNAcの加水分解酵素(Agn)とのキメラ型酵素)が、合成基質(GlcNAc-DMT)に作用し、αGlcNAc非含有ムチンをαGlcNAc含有ムチンへと変換することがわかった。これにより、工業的な応用可能性も高まった。さらに、効率的な糖鎖導入等を考え、他の菌体由来のAgn調製のための遺伝子も取得することができた。
著者
三浦 篤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1860年代のフランス絵画をクールベ以後の「ポスト・レアリスム」という切り口から捉え、マネ、ファンタン=ラトゥール、ドガ、ルグロ、ホイッスラーの5人の画家たちに共通する美意識や造形手法を総合的に考察した。その結果、絵画の枠組みの意識化と作品の切断、画像のアッサンブラージュ、画中画や鏡の挿入、多様なマチエールの併用等々の特質が浮かび上がった。西洋絵画史における「近代的なタブローの生成」とも言うべき現象が出現したのがまさに1860年代のフランスであり、マネを中核とする「ポスト・レアリスト」たちがそれを担ったのである。
著者
渡辺 克昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒューマン・エンハンスメントとは、人間の肉体的、精神的限界を克服すべく技術を駆使し、個人の能力や素質を通常以上に高めたり更新したりすることを意味する。合衆国においてこの志向は顕著であるが、本研究は、現代アメリカ文学に表象されるそうした多様な言説と修辞を探求し、その情動を「幸福の追求」の政治学との関係において分析した。人間の自然への介入に対する抗しがたい衝動をめぐる学際的な広い視座を重視しつつ、本研究は、先端バイオ技術がもたらした欲望と不安の多層的なインターフェイスを緻密に探ることにより、パワーズやデリーロをはじめとする現代アメリカ作家が、独自の倫理的批評をいかに模索してきたかを明らかにした。
著者
森 悦朗
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

幻視はレビー小体型認知症(DLB),パーキンソン病(PD)においてよく認められる症候であるが,種々の幻視の中で顔の幻視が高頻度に生じる.顔の錯視は「心霊写真」のように時に健常者でもみられる現象だが,DLBでは高頻度に生じ,PDでもよく見られ,顔の幻視との関係が推測できる.顔の誤認はCapgras妄想が代表的で,DLBやADで時に見られる症候である.日常生活場面における幻視,錯視を臨床場面で再現する目的で錯視誘発課題(パレイドリア課題)を作成し,DLB,アルツハイマー病,健常高齢者を対象に12個の刺激を用いて,誘発された錯視の総数,および錯視を誘発した刺激数を指標として顔の錯視の出現と,その神経心理学的背景を検討した.健常高齢者では全く錯視は誘発されなかったが,12個の刺激に対して誘発錯視数および錯視誘発刺激率(平均±SD)は,DLB(9.4±3.7個,54.4±18.5%),PD(3.1±2.6個,18.7±15.2%), AD(1.1±1.0個,14.4±9.2%)であった.いずれの疾患 でも錯視内容は,動物 ,人物,物体の順であり(図2),動物,人物の錯視では約半数が「動物の顔」,「人物の顔」と顔に特定されていた.本課題における錯視の内容,およびDLBで錯視が誘発されやすい点から日常生活場面での錯視,幻視の類似性が示唆される.次いでPDにおける錯視の出現についても検討し,DLBほどではないが,ADと比較すると高頻度に出現することを確かめ,その神経基盤をFDG-PETを用いて検討し,視覚連合野のブドウ糖代謝低下と関連していることを見いだし,現在論文を準備している.顔の錯視が高頻度であることから錯視における顔の重要性,あるいは一般的に顔認知の特殊性が示唆され,顔領域以外の視覚連合野の機能低下が関与していることが示唆された.
著者
澤入 要仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、二年間にわたって、19世紀中期のアメリカの詩と音楽の接点に光を当てて考察した。まず、平成17年度には、19世紀アメリカを代表する国民的詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローと、同時代に活躍したコーラス・バンド、ハッチンソン・ファミリーとの関わりを中心に研究をおこなった。とくに、ハッチンソン・ファミリーがロングフェローの詩「イクセルシオ」にメロディを付してうたった歌がどのような歌であったのか分析した。その結果、歌「イクセルシオ」は、きわめて素朴な旋律の歌であって、「単調」な「詠唱」という評価もあったにもかかわらず、広く歓迎されていたことが分かった。すなわち19世紀中期には、メロディやリズムよりも詩を重視した歌が受け入れられていたのである。大衆詩という文学が広く受け入れられた当時は、音楽の分野でも詩が大きな位置を占めていたことが分かる。さらに平成18年度には、学生歌に注目し、学生歌と大衆詩との関係について考察した。とくに19世紀の中頃から20世紀初頭にかけて、ハーバード大学で人気のあった歌「ユパイディ」に焦点を合わせて研究した。「ユパイディ」は、同じくロングフェローの詩「イクセルシオ」を使った歌だった。原詩の「イクセルシオ(いや高く)」というリフレインを、「ユパイディ、ユパイダ」という、意味不明の剽軽なサビに置き換えていた。元来、この歌は、特定の同級生や教員を即興的にからかう歌だった。したがってつねに流動的な歌詞で歌われていたが、その詩を固定化したいときに使われたのが、詩「イクセルシオ」だった。この歌は、その後、イェール大学やプリンストン大学で、さらに南北戦争中には南軍でもうたわれるようになった。大衆詩は、まさに広く知られているが故に、口承的で流動的な大衆歌を固定化させるためにも利用されていたのである。
著者
尾花 和子 土田 嘉昭 上井 義之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

N-myc遺伝子の増幅は、神経芽細胞腫の予後を反映することが知られているが、その遺伝子産物であるN-Myc蛋白の発現を調べるために抗N-Myc抗体を精製した。N-Myc蛋白の既知のアミノ酸配列の中から二種のペプチドHGRGPPTAGSTAQSPG(codon.136-151)およびGVAPPRPGGRQTSGGDH(codon.223-239)を選び、これを合成し、lisine coreにmultiple antigen peptide(MAP)methodにより結合させ、抗原として家兎に免疫した。得られた家兎血清のIgG分画をアフィニティ・カラムにかけて精製した。精製されたIgGの特異性を検定したところ、抗GVAPPRPGGRQTSGGDH特異IgGは、N-myc遺伝子の発現が知られているヒト神経芽細胞腫の細胞株についてN-Myc蛋白と思われるバンドの発現を示したが、ヒト横紋筋肉腫細胞株や、ヒトユーイング肉腫細胞株では反応を示さなかった。また、免疫染色においても、抗GVAPPRPGGRQTSGGDH特異IgGによりN-myc遺伝子の発現が知られているヒト神経芽細胞腫の細胞株の核内に強い染色がみられ、抗GVAPPRPGGRQTSGGDH特異IgG(anti-17M)は抗N-Myc蛋白ポリクローナル抗体であると考えられた。さらにその他の神経芽細胞腫細胞株およびxenograft、神経節芽腫組織、正常副腎組織、横紋筋肉腫細胞株、ユーイング肉腫細胞株、肺小細胞癌細胞株を用い、上記抗GVAPPRPGGRQTSGGDH特異IgG(anti-17M)を用いてimmunoblotおよび免疫染色を行ったところ、N-myc遺伝子の増幅のある腫瘍においてのみ陽性の反応がみられた。
著者
須田 直人 友村 明人 安達 一典 長谷川 直哉
出版者
明海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

歯の移動に伴って誘発される侵害受容機構や口腔内の組織変性が定量可能な実験モデルを、ラットの歯を移動し刺激用電極を用いて開口反射を評価することにより構築した。このモデルにおいて歯の移動後に起こった歯の移動測の開口反射閾値の低下は、数日間継続し、7日後には非移動測と同程度になった。一方、圧迫測における破骨細胞による歯槽骨吸収は、移動開始数日後より活発になり移動距離も増加した。これらの変化は、矯正歯科における歯の移動に伴う症状や所見と近似していた。このように本動物モデルは、臨床的な歯の移動に伴う疼痛を再現し、発痛メカニズムの解明や分子制御を考える上で有用な評価系と考えられる。
著者
中村 圭爾 陳 力 佐川 英治 小尾 孝夫 永田 拓治 室山 留美子 王 小蒙 胡 阿祥 魏 斌 高 大倫 毛 陽光
出版者
相愛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

魏晋南北朝時代、長安、洛陽、建康等の主要な首都の周辺地域では、「都城圏」社会と呼ぶことが可能な、独特の社会が出現した。この地域では、首都の政治体制を機能させ、大量の人口を維持するため、各地と首都を連絡する交通網が整備され、生産と流通が発展した。また、首都の先進的な意識、文化や好尚が伝わり、他の地域とは異なる独特の地域性が生まれた。この「都城圏」社会の存在は、魏晋南北朝時代の都市が歴史上に果たした役割を考える上で、非常に重要な意味を持っている。
著者
能見 公博 松村 雅文
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

天体観測に必要な技術,「撮影・画像処理」,「姿勢制御」,「高速無線」の開発を進め,STARS-C衛星(テザー伸展実証衛星)に搭載し,平成28年末に打ち上げた.一方でカメラ技術が進歩し,超小型衛星に搭載できるカメラで,星空を撮影できるようになった.そこで天体観測を主ミッションとする教育利用を目的とするCubeSatを開発した.また本研究は理科教育への展開を目的とし,「小型衛星の科学教育利用を考える会」をH27年度に立ち上げ,議論してきている.工学部・教育学部・理学部の教員,高専・高校の教員,科学館・博物館・天文台の職員,アマチュア技術家など幅広い分野からの参加があり,今後も継続していく.