著者
中村 圭二 菅井 秀郎
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

電子密度のモニタが可能で,プラズマへの擾乱を最小限に抑制可能な平板型周波数シフトプローブに着目し,プローブ周囲に形成されるシースによる影響を調べた。またシース効果を抑制して測定精度を向上させるとともに、電子温度の算出方法などについて検討した。スリット幅が異なる2種類のプローブについてシミュレーションと実験を行ったところ,シースを考慮せずに算出した電子密度は,真の電子密度に比べて低めに見積もられ,シース幅が厚くなるにつれてその傾向が顕著となった。しかしスリット幅を広くすると,シース効果が緩和されて測定精度が向上した。さらにスリット幅が異なる2つのプローブを用いることで電子温度の算出も可能となることがわかった。
著者
森下 一男 秋山 毅志 田中 謙治 岡島 茂樹 中山 和也
出版者
核融合科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

2波長テラヘルツレーザーを用いた計測システムを大型ヘリカル装置の高瀬能プラズマや、 将来の核融合装置のために開発してきた。これまで、我々はCH3OD レーザーの光励起を用 いて波長57.2 ミクロンと47.7 ミクロンの2 波長レーサーを開発してきた。ここでは、2 波長 レーサーを用いた計測システムの開発や、その原理実証としての2 波長レーザーシステムの開 発そして同装置を用いた機械的振動の補正について記述する。
著者
久保 純子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はインド東海岸ゴダバリ・クリシュナデルタの完新世(過去1万年)における形成過程の解明を目的として、インドのアンドラ大学の研究者の協力を得ながら、1)アンドラ大学で保管しているボーリングコア(試料)の分析、2)対象地域における平野地形の分布、3)対象地域に分布する遺跡と地形の関係、について調査をすすめた。その結果、ゴダバリ・クリシュナデルタについて初めて詳細な形成過程を示すことができ、また平野の地形分布図と遺跡の年代測定データなどを得ることができた。これらの成果をアンドラ大関係者らと2015年に国際第四紀研究連合(INQUA)大会で発表し、また国際誌Paleo-3で公表した。
著者
濱田 雄行
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

オンコリティックウイルスAdE3-midkineは陰性荷電であるため(1元)、これに対し陽性荷電のポリエチレンイミン(PEI)(2元)さらには腫瘍特異的なCD44を受容体とする陰性荷電のコンドロイチン硫酸を加工(3元)し、これらをさらに多重加工することにより抗体存在下においてその抗腫瘍効果を検討した。9元目以降で抗腫瘍効果は増大し、13元目で最大となった。B6C3F1マウスと同種由来の卵巣癌細胞株OVHMを用いたsyngeneic mouse modelにおける抗腫瘍効果を検討したところ、腹腔内腫瘍モデルにおいて60%、皮下腫瘍モデルにおいて90%の完全腫瘍退縮が得られた。
著者
松田 浩 木村 吉郎 河村 進一 森田 千尋 才本 明秀 森山 雅雄 出水 亨 牧野 高平 豊岡 了 上半 文昭
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)非接触全視野非破壊試験法の開発とその応用:レーザシェアログラフィを用いた欠陥検知への有効性について検討した。また、超高速度カメラを用いた動的変位計測システムによる振動計測法の有効性を確認した。(2)常時微動計測に基づく構造同定及び健全度評価への応用:耐震補強前後の実橋脚を対象として、レーザドップラ速度計による振動試験とFE解析から振動モード同定を実施した。補強前後の固有振動数の変化を実振動計測および振動解析で確認することができた。
著者
栄徳 勝光
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国内外で10例報告されているインジウム肺のマウスモデルを研究室単位で実施可能な気管内投与法によって確立し、急性症状である肺胞蛋白症の再現に成功した。RNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析により、慢性期の変化である間質性変化を示すマーカー遺伝子の発現も確認された。インジウム肺における遺伝子発現プロパティを明らかにしたことで、今後の治療法の開発の指針を示す重要な手がかりを得ることができたといえる。また、気管内投与法によるインジウム肺マウスモデルの確立により、今後のインジウム肺の研究の促進が期待できる。
著者
山本 政儀 柏谷 健二
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ユーラシア大陸に位置するロシア・バイカル湖,モンゴル・フブスグル湖の長い堆積物コアーから読み取れる種々の指標は,過去から現在に至る環境変化を理解する有用な情報を提供する。本研究は,化学情報,特に化学化石の1つである地殻物質,天然放射性元素ウラン(U)・トリウム(Th)に着目し,それらの同位体測定を通じて,これら元素の堆積挙動,堆積年代への応用,さらに古環境解析に役でてることを目的とし、以下の成果を得た。1)フブスグル湖の最深部付近で掘削(2004年)した長さ81mコアーについて,表層から3cm毎に切断した試料のうち,約350試料についてU,Th同位体を測定した。^<238>U濃度(河川から流入する岩石・土壌由来Uを差し引いた残りのU成分:自生成U)深度分布パターンは,見掛け上酸素同位体ステージの変動とよく似たパターンを示した。この傾向は,バイカル湖の堆積物においても見出しており,温かい・湿潤期(自生成Uが多い)と寒冷・乾燥期(自生成Uが極めて少ない)指標になりうることを明らかにした。^<232>Thは,河川から流入する岩石・土壌の指標として有用である。2)幾つかの深度での堆積物の年代を^<234>U/^<238>U-^<230>T/^<238>U比を用いるアイソクロン法で決定した。3)自生成U濃度変動と気候変動との関連については,間氷期の温かい・湿潤期には湖内有機物生産量の増加,湖水への河川水による溶存Uおよび化学的風化を受けた土壌物質の供給量増加に,一方氷期は上記要因の減少によると考えられた。
著者
大門 正幸
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究で得られた重要な知見は以下の通りである。なお、(A)-(E)は特に北部方言で書かれた『リンディスファーン行間注解』に関するもの、(F)は北部方言以外の方言で書かれた注解に関するもの、(G)と(H)はそれぞれ古英語散文と中英語散文に関するもの、(1)は古英語・中英語全般に関わるものである。(A)ラテン語1語が2語以上の古英語で訳されている場合、行間注解の語順は純粋な古英語の語順を反映していると考えるべき証拠がある。(B)助動詞と本動詞を含む構文の場合、行間注解の語順はラテン語の動詞の形態的構造とは関係がない。(C)助動詞と本動詞を含む構文の場合、否定辞が先行すると「助動詞一本動詞」語順が生じるが、これは古英語の否定辞の接辞としての性質を反映したものである。(D)助動詞と本動詞を含む構文、特に本研究で分詞構文(ParticipleConstructions)と呼ぶ構文の場合、主語の有無が語順に大きな影響を与える。すなわち、主語が空の場合、「本動詞一助動詞」という語順が優勢となる。この操作は北欧語に見られる文体的倒置であると考えられる。(E)ただし主語がある場合にも「本動詞一助動詞」語順は可能であるので、基底語順としてOV/VO両方の語順が可能であったことを認めざるをえない。(F)文体的倒置によって引き起こされたと考えられる現象は北部方言以外の行間注解には見られない。(G)古英語散文においては、文体的倒置によって引き起こされたと考えられる現象が、本研究で法動詞構文(ModalConstructions)と呼ぶ構文においても見られる。(H)文体的倒置によると考えられる現象に関する、古英語における北部方言とそれ以外の方言との相違は、中英語にも見られる。(I)北部方言とそれ以外の方言の相違はバイキングの侵略による北欧語の影響によるものであると考えられる。p/
著者
三好 宏 前川 拓治
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体における臓器虚血再灌流障害は、生命予後を大きく変化させる。臓器保護作用をもつ薬剤として水素の腎保護作用に注目して研究を行った。ウィスターラットを使用し、麻酔施行後、気管挿管・人工呼吸を行い、両側側腹部切開にて腎臓を露出後、腎動脈・腎静脈・尿管を一塊としてクランプする。虚血時間は40分。水素の投与は、低濃度・高濃度群に分けて行った。その後、閉腹し、24時間後、48時間後に採血を行い、血中尿素窒素、クレアチニンを測定した。水素投与により、血中尿素窒素、クレアチニンの上昇が抑えられることが判明した。
著者
水谷 明子
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究ではハンミョウ(Cicindela chinensis)の幼虫を材料として運動検出と距離測定の視覚神経機構を調べた。ハンミョウの幼虫は地面の巣穴でエサとなる昆虫等を待伏せる。適当な大きさの昆虫等が近づくと跳び出しこれを捕獲するが、大きな物体を近づけると巣穴の奥に逃避する。この捕獲行動と逃避行動の切換えを調べることで、視覚機構を調べた。幼虫は6対の単眼をもつが、そのうち大きな2対の単眼で頭上を見ている。ダミ-標的に対する行動から、幼虫は自身が跳び上がれる高さ以下の標的にのみ捕獲行動をし、視角が同じでもそれより高い標的には逃避行動を示した。このことは、幼虫の行動が標的の高さで切換わることを示した。2対(4個)の単眼の視野測定から、複数の単眼の刺激の時間パターンがこの切替に関わることが示唆された。隣接単眼の視野は頭の近くでは重複せず、高いところでは大きく重複していた。このことから、隣接単眼が僅かな遅延でほぼ同時に刺激されれば逃避行動、順番に刺激されれば捕獲行動を引起こすとするモデルを提唱した。現在このモデルの鍵となる高さに応じて応答特性を変化させるニューロンを脳内で生理学的に検索している。視覚刺激要因のうち標的の運動速度は行動の切替には直接関与しないが、静止した標的は何れの行動も引起こさない。従って、視覚行動には標的の動きが必須である。電気生理学的に標的の動きに特異的に応答するニューロンを検索し、視葉内に数種の運動感受性ニューロンを同定し、その形態を明らかにした。現在、運動特異的ニューロンの形成回路を検索中である。
著者
石川 保幸
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

活動依存的シナプス可塑性は広く学習と記憶の細胞学的基盤として受け入れられている。なかでもシナプスの連合性は活動依存性のシナプス可塑性においてシナプスの印付けと新規に合成される神経可塑性関連タンパク質との相互作用によって説明することが出来る。可塑性関連のセリン・プロテアーゼ(neuropsin)がシナプス入力依存的に長期増強(LTP)特異的にシナプスタグ形成に関係すると報告した。Neuropsinはインテグリンβ1およびCaMKIIシグナルによってシナプスの連合性に寄与する事が明らかとなった。シナプスの印付けの役割は、複雑な神経ネットワークの制御および情報処理に役立っていると考えられている。すなわち、このメカニズムが破綻した場合、様々な神経疾患を引き起こすことが考えられる。この発見は今後、シナプス連合の異常とされる PTSD の発症機構の解明などに役立つと考えられる。
著者
小路 純央 森田 喜一郎 柳本 寛子 内村 直尚
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は心理教育、認知行動療法、作業療法、軽スポーツからなる復職支援プログラムを実施し、BDI-II、SDS、HAM-D、SASS-Jに加え、今回多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、客観的評価としての有用性について検討した。プログラム施行前後で、診断名が変更となった方もおり、外来のみでの診断の困難さが示唆された。またうつ症状の改善を評価するだけでなく、社会適応能力を含めた評価が必要であることが示唆された。さらに多チャンネルNIRSより健常者に比較し脳酸素化Hb濃度変動がうつ病群で有意に低く、プログラムにより前頭前野、側頭領域において血流変動が改善することが示唆された。
著者
原口 恵
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は,情動刺激の処理と注意機能の関連を明らかにすることを目的とする。まず,情動刺激によるボトムアップ的な操作がその後の情動的注意の時間的側面に及ぼす影響について検討した研究に関しては,情動誘発盲という現象に着目している。この現象は情動的な刺激に注意を向けた直後に出現する標的を見落とす現象であり,刺激に注意を向ける前の情動的な処理が関わっていることが原因として考えられていた。本研究ではこの現象が情動刺激を繰り返し観察させるというボトムアップ的な情動操作によって消失したという結果が報告者の一昨年度の実験から得られている。この結果から,情動的注意の時間的側面には,刺激の情動性について前注意的に評価する段階が関与していることが示唆された。この成果に関しては現在,国際誌に投稿中である。また,情動刺激によるボトムアップ的操作が情動的注意の空間的側面に及ぼす影響について検討した研究に関しては,情動刺激と同じ位置に出現する標的への反応が遅れる現象(情動的復帰抑制)が,事前の情動刺激の反復曝露によって消失したという結果が得られた。この結果から,情動的注意の空間的側面に関しても,情動性の前注意的な評価段階が関与することが示唆された。この成果に関しては本年度の国内学会にて発表された。さらに本年度は,感情刺激の反復曝露による効果が,刺激の入力から反応の出力までに関わる感情処理のどの段階に影響しているのかを,刺激の感情情報の自動的処理が関与していると考えられている情動ストループ効果を用いて検討した。結果として,閾下感情馴化によって不快刺激による情動ストループ効果が消失したことが示された。この結果から,情動刺激の反復曝露が前注意段階の感情処理の機能を損なうことが示唆された。この成果に関しては国内学会で発表された。
著者
細川 大二郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

近年、多くの植物ウイルスについて、ゲノムの構造や機能が明らかにされてきている。しかし、ウイルスのゲノムの宿主細胞における発現や複製、あるいはウイルスの増殖機構については不明の点が多く残されている。本研究では、電子顕微鏡(電顕)レベルのin situハイブリダイゼーション法を用いて、ウイルス核酸の動態を宿主細胞の微細構造と関連させて詳細に調べ、ウイルスの増殖機構を主に細胞生物学的な面から明にしようとした。現在、まだ電顕レベルのin situハイブリダイゼーション法は十分に確立されたものがないため、固定や包埋法(前包埋法、後包埋法)、核酸プローブや標識マーカーの種類、ハイブリダイゼーション反応やその可視化などについて検討した。供試ウイルスにはタバコモザイクウイルス(TMV)及びジャガイモXウイルス(PVX)を用いた。これらのウイルスを接種したタバコプロトプラストを4%パラホルムアルデヒドと0.5%グルタルアルデヒド混合液で、4℃で、2時間固定し、アルコールで脱水後、Lowicryl K4Mに包埋り、超薄切片を作製したのち、ジゴキシゲニン標識RNAプローブでin situハイブリダイゼーションを行い、抗ジゴキシゲニン抗体と反応後、金コロイド標識抗ヒツジIgG抗体で可視化する方法によりシグナルを検出することができた。そこで、この方法を用いて、TMV及びPVXのRNAのタバコプロトプラスト内における局在を調べ、次ぎの結果を得た。すなわち、TMVでは、プロトプラストの細胞質の一部にやや電子密度の高い部位が生じ、そこに金粒子の標識が認められた。このプロトプラスト内におけるウイルスRNAの局在部位とその合成部位の関連を明らかにするため、[II]-ウリジンの取り込みによる電顕オートラジオグラフィー法を用いて、プロトプラスト内におけるTMV-RNAの合成部位を検討した。その結果、[II]-ウリジンの取り込みによる現像銀がプロトプラストの細胞質のウイルス粒子の集塊の近傍に認められた。PVXではウイルス接種4時間後からプロトプラストの細胞質の一部に金粒子の標識が認められ、金粒子は数個から10個位が集合して観察され、接種後の時間が経過するにつれて金粒子の標識部位はやや大きくなり、数も多くなつた。この金粒子の標識部位は細胞質基質であり、特別の細胞構造は認められなつた。
著者
大泰司 紀之 呉 家炎 (W5 J) 余 王群 高 耀亭 揚 慶紅 (Y .′ Y .′ Y O) 彭 基泰 (T%.′ J) 鈴木 正嗣 武田 雅哉 小泉 透 梶 光一 常田 邦彦 高槻 成紀 三浦 慎悟 庄武 孝義 YANG Qing-hong PENG Ji-tai GAO Yao-ting WU Jia-yan YU Yu-qun
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

《1.形態・系統学的研究》 年齢群別に標本の記載・検討を行う目的で年齢鑑定に関する研究を行い、第1切歯および第1大臼歯のセメント質組織標本により、正確な年齢鑑定ができること、および歯の萌出・交換・磨耗等によって、およその年齢鑑定ができることが判明した。体重は、2.5カ月〜3.5カ月の子鹿7例の平均の43kg、雄の場合1.5歳約70kg、2.5歳約180kg、7〜13歳の成獣は約205kg 、雌の6〜14歳では約124kgであった。胴長の平均は、成獣雄123.8cm、肩高はそれぞれ121.5、117.3cmであった。これまでに報告のない特微として、出生直後の子鹿にはニホンジカと同様の白班があり、生後2カ月、7月中旬頃には消失するることが挙げらでる。頭骨は他のCervus属の鹿に比べて鼻部顔面の幅が広く、眼下線窩が大きく深い。これは乾燥・寒冷地への適応、草原におけるcommunicationとの関係を推測させる。大臼歯のparasrastyle、mesostyleが発達していることは、固い草本を食べる食性に適応した結果と考え得る。角は車較伏の枝分かれをし、1歳で2〜3尖、2歳で3〜4尖、3歳以上で5〜7尖になるものと推定される。以上の結果などから、クチジロジカはアカシカに似るが、ルサジカより進化したものと考えられる。《2.地理的分布および生息環境》 チベット高原東部の海抜3000mから5000mにかけての高山荒漠・高山草甸草原・高山潅木草原に分布している。分布域は北緯29〜40度、東経92〜102度の範囲で、甘粛省中央部の南部、青海省東部、四川省西部、チベット自治区東北部および雲南省北部にまたがる。分布域の年降水量は200〜700mm、年平均気温は-5〜5℃、1月の平均気温は-20〜0℃、7月の平均気温は7〜20℃の間にある。森林限界は3500〜4000m、その上は高山草原であるが、4000〜4500m付近まではヤナギ類などの潅木がまばらに生えている。《3.生態と行動など》 主要な食物は草本類(カヤツリング科・禾本科・豆科)であり、冬期にはヤナギ類などの潅木の芽も食べる。胃内容や糞分析の結果では、クチジロジカはJarmanーBellの原理によると草食(Grazer)である。出産期は5月下旬から6月で、1産1子。初産は2歳または3歳で、毎年また隔年に通常12〜14歳まで出産する。最高寿命は、自然条件下では雄で12歳前後、雌はそれより長いものと推定される。群れは最大で200頭、平均35頭。雌と子および1歳の雄も加った雌群、雄群、および発情期にみられる雌雄の混群の3つの類型に分けられる。性比は2.2、100雌当りの子の数は29頭であった。夏期は標高い高山草原で過ごし、冬期は積雪の多い高山草原を避けて潅木林へ移動する。交尾期の最盛期は10月で、11月中旬に再び雄群・雌群に分かれる。妊娠期間は220〜230日と推定される。交尾期の社会組織はハレム型と交尾群型の2つがあり、ハレム型は雌が25頭以下の時にみられ、大きな角を持つ成獣雄が1頭だけ優位雄となって加わる。雌の個体数がそれより多くなると、複数の優位雄が参加する交尾群となる。音声行動には、うなり声と優位の雄が出す咆哮とがあり、特に咆哮は4〜5音節から構成される連続声で、クチジロジカ独特のものである。《4.保護管理について》 チベット高原のクチジロジカは、ヤク・ヒツジ牧業が同高原へもたらされた2000〜3000年前から、人類の影響を受け、「チベット解放」後は、家畜と人口が増えたこと、自動車道路が発達したこと、兵站が各地に出来て、銃が多数持ち込まれたことなどの直接・間接的な影響によって、分布域・生息数ともに大きく減少した。今後は、有蹄類の保護管理に従って、地域毎の適正頭数(密度)を算定したうえで、その頭数になるまでは哺護を禁止し、一定の密度に保つ必要がある。そのような体制の出来るまでの間は、各地に保護区を設定して減少傾向を止めることが最も現実的と考えられる。
著者
齋藤 秀敏 藤﨑 達也
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、高エネルギーX線による放射線治療において患者体内で発生するコンプトン散乱光子の情報を利用して、放射線治療の確かさ向上のための照射位置検出および投与線量分布再構成可能なガンマカメラシステムを開発することである。この目的のためコンプトンカメラに着想し、シミュレーションによりその可能性を示した。また、原型となるシステム構築を目的として、コンプトン散乱光子のエネルギースペクトルおよび発生効率をシミュレーションにより求め、実験的に検証した。これらのデータを利用し、検出器、コリメータシステムおよび再構成アルゴリズムなどに関する基礎的研究を進めた。
著者
黒須 哲也
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

BCL6遺伝子の異常発現をもたらす染色体転座や発現調節領域の点突然変異は、悪性リンパ腫の遺伝子異常の中でも最も高頻度に認められ、悪性リンパ腫の発症や進展に重要な意義を有すると考えられている。悪性リンパ腫におけるBCL6遺伝子発現異常の意義を明らかにするため、リンパ腫細胞株にBCL6を誘導的に過剰発現する系を構築し検討を行った。BCL6の過剰発現は、血清除去や抗癌剤処理等の各種ストレスによる活性酸素種(ROS)産生の抑制と、ミトコンドリア膜電位(ΔΨ_m)低下の抑制とを介してアポトーシスを抑制する事を見いだした。この研究をさらに進める過程において、p38がVP16等の抗癌剤刺激により活性化され,G2/M期の進行に重要な役割を果たすCdc2の機能を抑制することで、G2期での細胞周期停止を誘導しアポトーシスを抑制する役割を悪性リンパ腫細胞において果たしていることを新たに見いだし発表した。p38は種々の腫瘍細胞において抗癌剤処理時に活性化され、細胞周期停止やアポトーシスの誘導制御に関与することが報告されており、予後や化学療法における反応性を予測できる可能性がある。またp38阻害剤およびウイルスベクター等を用いたp38を分子標的とした治療応用の可能性が示唆され今後さらに検討を行いたい。BCL6遺伝子に関しては、胚中心由来B細胞リンパ腫においてアセチル化されることにより不活化されることが認められ、悪性リンパ腫において脱アセチル化酵素阻害剤の使用が抗癌剤の感受性を高め治療効果の向上に応用可能であることが推察されている。
著者
福永 信哲
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ジョージ・エリオットの後期 3 小説(『急進主義者フィーリックス・ホウルト』、『ミドルマーチ』、『ダニエル・デロンダ』)にみる小説テクストのインターテクスチュアリティ(過去および同時代作家のテクストとの影響関係)を文体分析の方法により実証的に裏づけた。これにより、19世紀後半の時代精神たるキリスト教 (聖書の宗教的世界観と科学(進化論と生理学・心理学)の対話・葛藤が小説テクストに深く浸透していることが明らかになった。
著者
奥貫 陽子
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Vogt-小柳-原田病において、末梢血リンパ球(PBMC)をコンカナバリンA刺激下で培養した際のIL-17産生量が多い患者は、発症時年齢が高く、視力回復に時間を要し、またステロイド薬総投与量が多いことが有意差を持って示された。このためPBMCのIL-17産生が多い患者の予後は低い患者と比較して予後が悪いことが推測され、PBMCのIL-17産生はVogt-小柳-原田病の治療効果を予測するマーカーとなる可能性が見いだされた。
著者
宮崎 雅雄
出版者
岩手大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

ネコは、同種の尿を嗅ぐと、頭を持ち上げ口を半開きにして恍惚とした表情を提示する。これはフレーメンと呼ばれる本能行動である。フレーメンが単純で再現性の良い本能行動であり、ネコの脳が齧歯類より高次で霊長類ほど複雑になっていない点に着目し、フレーメンを行動レベルから分子レベルまで研究して、高次な動物の本能行動の発動機序を解明するための研究基盤を構築した。