著者
中宮 英次郎 宮川 優一 戸田 典子 冨永 芳信 斉藤 るみ 住吉 義和 高橋 真理 徳力 剛 前澤 純也 三原 貴洋 竹村 直行
出版者
獣医循環器研究会
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.41-47, 2011-12-01
参考文献数
12

2歳6カ月齢,去勢オスのノルウェージャン・フォレスト・キャットを各種検査に基づいて肥大型心筋症と診断し,エナラプリルの投与を開始した。第1357病日に左房の高度な拡大が見られたため,ダルテパリン療法を追加した。さらに,第1616病日に左房内に spontaneous echo contrast (SEC) が,そして第2155病日には左心耳内に血栓形成が認められた。本症例は第2229病日に死亡した。SECは拡大した左房内での血液うっ滞により生じ,ヒトでは心房内での血栓形成または血栓塞栓症の危険因子と考えられている。獣医学領域ではSECの臨床的意義に関する記載は極めて限られている。本症例はSECが確認されてから613日間生存したことから,血栓予防療法を含む心不全療法が的確に実施されれば,SECは必ずしも予後不良を示す所見ではないと考えられた。
著者
岩崎 貴也 阪口 翔太 横山 良太 高見 泰興 大澤 剛士 池田 紘士 陶山 佳久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.183-199, 2014-11-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
97
被引用文献数
1

生物地理学は、歴史的側面や生態的側面などの観点から、生物の分布パターンや分布形成プロセスの解明を目指す学問であり、進化生態学や群集生態学、保全生物学などの分野とも強い関連をもつ学際的領域である。1990年代以降、遺伝解析技術の恩恵を受けた系統地理学の隆盛によって、生物地理学は大きな発展を遂げてきた。さらに近年では「地理情報システム(GIS)」や、それを利用した「気候シミュレーション」、「生態ニッチモデリング」といった新たな解析ツールが、生物地理学分野に新しい流れを生み出しつつある。その基礎的な活用例として、現在の生物種の分布情報と気候要因から生態ニッチモデルを構築し、気候シミュレーションから得られた異なる時代の気候レイヤに投影するというアプローチが挙げられる。これにより、過去や現在、未来における生物の分布を予測することが可能となり、時間的な分布変化を推定することができる。さらに、GISを活用して、モデル化された生態ニッチや系統地理学的データを複合的に解析することで、近縁種間でのニッチ分化や、分布変遷史を考慮に入れた種分化要因の検証、群集レベルでの分布変遷史の検証なども可能となる。本総説では、最初に基礎的な解析ツールについて解説した後、実際にこれらのツールを活用した生物地理学とその関連分野における研究例を紹介する。最後に、次世代シークエンシングによって得られる膨大な遺伝情報や古DNAデータの有用性について紹介した後、それらの情報を用いた生物地理学や関連分野における今後の展望について議論し、GIS技術がその中で重要な役割を果たしうることを示す。
著者
広松 聖夫 井上 明生 木下 斎 境野 昌範 諌山 照刀 奥野 徹子
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.436-445, 2013-09-25
参考文献数
16

「はじめに」変形性股関節症の進行・末期例に対するキアリ骨盤骨切り術においては,術後に関節裂隙の開大が得られないことがある.我々はこのような症例に対してはJiggling(股関節を貧乏ゆすり様に小刻みに動かす運動)を指導している.今回この効果について検討した.「方法」対象は2000年より当院で手術した385股のうち術直後に関節裂隙の開大が見られないか,もしくは経過中に関節裂隙の狭小化が生じた症例92股であり,これらの症例に対し頻回のJigglingを指導した.その結果65股(70%)の症例でX線上関節裂隙の開大を認めた.「考察」関節軟骨修復再生の促進については古くはSalterのCPMの実験が有名であるが,Haradaらはラットの尾骨切断面に機械的摩擦刺激を加えることで硝子様軟骨が生じたことを報告している.変股症の治療成績向上のためには関節構造の改造だけでなく軟骨修復再生の促進という新しい視点も必要であると考える.
著者
黒田 清子 伊野 義博 権藤 敦子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-36, 2017 (Released:2018-08-31)
参考文献数
20

本稿では, ブータンの掛け合い歌に見られる双方向性に注目し, フィールドワークによって得られた記述をフィードバックの観点から分析し, 教科内容としての学校教育における「歌うこと」を音楽文化の視点から再考することを目的とする。とくに, 歌唱領域において育むことのできる資質・能力についての考察を行う。ブータンの学校におけるツァンモ大会では, 臨機応変に, メタファーを活用し, 定型に歌詞を整え, 旋律を選択し, 演劇的なパフォーマンスで表現するなかで, 口頭性, 即興性, 応答性を活かした音楽表現が行われている。音楽文化をより広く捉えることによって, 教科内容としての歌う活動はより多様なものとなる。自らの思いを即興的に掛け合う行動や, すでにレパートリーとしてもっている旋律を借りて伝えたいことを表現する行動は, さまざまな文化に広く見られる。そこには, これまで学校教育で重視してきた表現力とは異なる可能性が存在する。
著者
瀬戸口 孝夫
出版者
国際組織細胞学会
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.149-159, 1959
被引用文献数
1

成熟赤腹〓〓の水晶体摘出後, 水温24-27度の下に9-35日飼育したものを材料として, Gomori 改良法により, 再生過程に於ける水晶体の酸性フォスファターゼの状態を検索して次の結果を得た.<br>1. 酸性フォスファターゼは再生の前半期に於ては中等度の活性を示し, 線維細胞への分化過程に於て予定水晶体後極附近に活性が高く, 線維細胞の apical では弱い. 再生の後半期では, 活性は分化の進むにつれて次第に減弱し, 再生末期では水晶体上皮に痕跡的反応を残すに過ぎない.<br>2. 線維細胞では酸性フォスファターゼは Golgi 領域に蓄積を示すように思われる.<br>3. 酸性フォスファターゼは核酸, 殊にRNAの消長と平行し, 再生過程に於て, 細胞の増殖, 分化及び成長に伴う細胞内の核蛋白質の代謝にとって重要な役割を演ずることが推察される.

2 0 0 0 OA 徳川慶喜公伝

著者
渋沢栄一 著
出版者
竜門社
巻号頁・発行日
vol.五, 1918
著者
塚原 典子 麻見 直美 江澤 郁子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.673-682, 1999-07-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

日本の国技である相撲の世界は,特殊な食生活形態および身体的特徴を有し,さらに稽古量も多いことから,これらが骨に与える影響は大きいと考えられる.そこで本研究では相撲界における,体格,日常の食生活および身体活動状況等が骨密度に及ぼす影響について経時的観察(1年間)を実施し,さらに,同年代の一般男子学生の骨密度との比較検討も併せて行った.その結果,力士の骨密度は,一般男子学生に比べ,いずれの部位においても有意な高値(p<0.001)を示した.また,力士の番付けと体格の間に関係が認められたことからも,力士にとって体格を増進し,骨格筋等の筋力アップとそれに伴う骨の強化は,最も重要な課題であると考えられる.また,入門1~2年の力士で,1年間で上腕骨および大腿骨の骨幹部の骨密度の増加が認められたことから,骨幹部は体重や稽古(荷重やメカニカルストレス)の影響を受けやすい部位である可能性が考えられる.さらに,入門歴6~8年の力士において大腿骨近位部骨密度の増加が認められたことからも,しこを踏むという相撲独特の運動(稽古)が各部位の骨密度を高めるものと思われる.

2 0 0 0 OA 玉纒太刀考

著者
白石 太一郎
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.141-164, 1993-02-26

伊勢神宮の社殿は20年に一度建て替えられる。この式年遷宮に際しては建物だけではなく,神の衣装である装束や持物である神宝類も作り替えられる。アマテラスを祭る内宮の神宝には「玉纒太刀」と呼ばれる大刀がある。近年調進される玉纒太刀は多くの玉類を散りばめた豪華な唐様式の大刀であるが,これは10世紀後半以降の様式である。『延喜式』によって知ることができるそれ以前の様式は,環のついた逆梯形で板状の柄頭(つかがしら)をもつ柄部に,手の甲を護るための帯をつけ,おそらく斜格子文にガラス玉をあしらった鞘をもったもので,金の魚形装飾がともなっていたらしい。一方,関東地方の6世紀の古墳にみられる大刀形埴輪は,いずれも逆梯形で板状の柄頭の柄に,三輪玉のついた手の甲を護るための帯をもち,鞘尻の太くなる鞘をもつものである。後藤守一は早くからこの大刀形埴輪が,『延喜式』からうかがえる玉纏太刀とも多くの共通点をもつことを指摘していた。ただそうした大刀の拵えのわかる実物資料がほとんど知られていなかったため,こうした大刀形埴輪は頭椎大刀を形式化して表現したものであろうと推定していた。1988年に奈良県藤ノ木古墳の石棺内から発見された5口の大刀のうち,大刀1,大刀5は,大刀形埴輪などから想定していた玉纒太刀の様式を具体的に示すものとして注目される。それは捩り環をつけた逆梯形で板状の柄頭をもち,柄には金銅製三輪玉をつけた手を護るための帯がつく。また太い木製の鞘には細かい斜格子文の透かしのある金銅板を巻き,格子文の交点にはガラス玉がつけられている。さらにそれぞれに金銅製の双魚佩がともなっている。それは基本的な様式を大刀形埴輪とも共通にする倭風の拵えの大刀であり,まさに玉纒太刀の原形と考えてさしつかえないものである。こうした梯形柄頭大刀やそれに近い系統の倭風の大刀には,金銅製の双魚佩をともなうものがいくつかある。6世紀初頭の大王墓に準じるクラスの墓と考えられる大阪府峯ケ塚古墳でも双魚佩をともなう倭風の大刀が3口出土している。6世紀は環頭大刀や円頭大刀など朝鮮半島系の拵えの大刀やその影響をうけた大刀の全盛期であるが,畿内の最高支配者層の古墳では倭風の大刀が重視され,また古墳に立てならべる埴輪につくられるのもすべてこの倭風の大刀であった。大王の祖先神をまつる伊勢神宮の神宝の玉纒太刀がこの伝統的な倭風の様式の大刀にほかならないことは,6・7世紀の倭国の支配者層が,積極的に外来の文化や技術を受入れながらも,なお伝統的な価値観を保持しようとしていたことを示す一つの事例として興味ふかい。

2 0 0 0 OA 日伊学会会報

著者
日伊協会 編
出版者
日伊協会
巻号頁・発行日
vol.第3号(昭和14年4月-15年7月), 1941
著者
真田 京一 吉村 一朗 金澤 和貴 萩尾 友宣 蓑川 創 内藤 正俊
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.493-496, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
6

【目的】今回Maisonneuve骨折に対し,吸収性螺子を用いて脛腓間固定を行った2症例を経験したので報告する.【症例1】63歳男性.階段を踏み外し転倒して受傷.単純X線でMaisonnueve骨折を認めた.内果骨折に対し骨接合術及び脛腓間を4.5mm吸収性螺子2本で固定した.術後1年で骨癒合良好であり内果の螺子の抜釘,吸収性螺子のヘッドの除去を行った.【症例2】53歳男性.ソフトボール中下腿外側へ他選手が乗り受傷.単純X線でMaisonnueve骨折を認めた.足関節鏡及び脛腓間を4.5mm吸収性螺子2本で固定した.【考察】従来遠位脛腓間固定には金属製螺子を使用されることが多かったが,抜釘の必要性や荷重の時期などが問題となる.吸収性螺子を使用することで,抜釘の必要性がなくなり早期の機能回復が期待できる.今回Maisonneuve骨折の2症例に対し吸収性螺子を用いた脛腓間固定を行い良好な成績を得ることができた.
著者
四方 康行 今井 辰也 鄒 金蘭
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-35, 2008-06-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
2
被引用文献数
2 3
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 本橋 永至 石丸 小也香 高橋 一樹
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-54, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
75
被引用文献数
1

本研究の目的は、コンテクスト効果の一種であるプライミング効果の枠組みを用いて、ある製品に対する支払意向額の判断において、当該製品とは異なるカテゴリーの製品との接触が消費者の支払意向額に与える影響を検証することである。また、プライミング効果の影響を調整する要因として、「製品カテゴリーに対する消費者の事前知識」と「製品カテゴリー間の類似性」を考慮する。さらに、消費者行動研究の視点から、価格競争に巻き込まれないための脱コモディティ化戦略の一施策を提示する。
著者
山田 斗志希 上山 輝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.285-295, 2019-03-20

本稿は,5つのコンテンツ形態(映画・アニメーション・ゲーム・小説・漫画)における物語に登場する250体の悪役の発言の分析を行った結果をまとめたものである。悪役の発言はすべてテキストデータとして扱い,分析は,テキストマイニングを使った「共起ネットワーク分析」と「クラスター分析」を行った。その結果,発言によって分類されたクラスターと個々のクラスターの悪役の特徴とに関連性が見られた。また物語の作り手がどのように悪役を作っているのかについて分析結果をもとに考察した。