著者
森 尚子 佐藤 祥子
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.177-181, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
7

在宅で,終末期の苦痛緩和のためにミダゾラムによる持続静注を用いた思春期小児がん患児2例(18歳 類上皮肉腫,17歳 横紋筋肉腫)を経験した.2例とも,家族だけでなく本人からもinformed consentを取得した.Palliative Prognostic Indexを用いた推定予後は2例とも3週間未満で,鎮静の適応となった症状は,1例は終末期の身の置き所のなさ・不眠・不安,もう1例は難治性の口渇感と嘔気・嘔吐であった.ミダゾラムの開始量は,各々3 mg/hr,1.25 mg/hrで,呼吸抑制がないことを確認しながら,20~30%ずつベースの流量を増量し,1~2段階増量したところで苦痛緩和を得た.持続鎮静の期間は2週間未満で,鎮静に関連した致死的合併症は認めなかった.在宅でも,医療スタッフ間の密な協力体制があれば,ミダゾラムの持続静注による鎮静は安全に施行可能であると考えられた.
著者
友竹 浩之
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、蚕サナギの栄養価、生理活性成分および糖質分解酵素阻害活性について調べた。蚕サナギ粉末の熱水抽出物はアンギオテンシン変換酵素、糖質分解酵素、そしてラットの血糖上昇を阻害した。また、蚕サナギ粉末のリン酸緩衝液抽出物は、DPPHラジカル補足活性を示した。さらに、蚕サナギ粉末のメタノール抽出物は、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用を示した。これらの結果により、蚕サナギは糖質分解酵素阻害作用およびその他の生理活性を有する新規素材となることが示唆された。
著者
浜崎 信行 依田 明
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.187-196, 1985-10-30

われわれはふたりきょうだいを調査対象として,出生順位と性格の関連を検討してきた(1993,1980)。その結果,長子的性格,次子(末子)的性格が明確に存在することが明らかにされた。すなわち,長子は自制的で,ひかえめで,仕ごとがていねいで,話すよりも聞き手であり,めんどうなことを嫌う。それに対して,次子は甘ったれで,親に告げ口をし,おしゃべりで,やきもちやきで,強情で,活動的である。今回は,三人きょうだいを取りあげた。ふたりきょうだいの調査とまったく同じ方法で,出生順位と性格の関連を分析した。調査対象は,主として神奈川県に住む小学校4年生から中学2年生までの児童・生徒とその母親,それぞれ525名である。性格特性に関する資料は,51項目の日常生活における行動の記述が,3人きょうだいの誰にもっともあてはまり,誰にもっともあてはらないかという相対的判断を求めることによって得た。そのほかに,MMPIの性度尺度を参考に作製した性度検査を実施した。主要な結果は,つぎのとおりである。1.長子的性格は6項目,中間子的性格は3項目,末子的性格は9項目抽出された。長子的性格と末子的性格は,従来見出されたものとほぼ同様であった。2.中間子はめんどうくさがらずに仕ごとに取りくむが,よく考えないので失敗も多い。また,気にいらないと黙りこむという特徴を持つ。中間子的性格は,長子的性格,末子的性格にくらべると,あまりはっきりしたものではない。長子と末子の生育環境は,共通性,一般性が高い。つまり,どこの家庭に生まれても,同じような環境で育っている。このような長子や末子にくらべると,中間子の生育環境は多種多様であると考えられる。長子との年齢差,性別構成などの点で,3人きょうだいはふたりきょうだいよりも,はるかに複雑なものなのである。3.姉妹にかこまれた男子の女性度は,他の位置にある男子よりも高い傾向にあった。けれども,兄弟にかこまれた女子の女性度も高い傾向を示した。異性にかこまれて育っても,男子と女子とでは親の役割期待が異っていることを示している。
著者
呉 孟達 Huang LAWRENCE C-L
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.626-641, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
19

今回われわれは西洋医学的に"迷路性耳鳴"と診断された65例の耳鳴症例に対して、 中医学的虚実弁証の理論を導入することによって、 新たに耳鳴を三つの、 西洋医学と中医学両方法論を加味した類型、 すなわち実証型迷路性耳鳴、 虚証型迷路性耳鳴および中間証型迷路性耳鳴に分類した。 次いで、 これらのそれぞれの病態証候に応じて、 中医学的"治病求本"の原則に基づき、 鍼治療を行った。 耳鳴治療効果の判定は主に治療前後の自覚的な 「耳鳴表現スコア」 と他覚的な 「耳鳴ラウドネス」 という二つの耳鳴パラメータの変化を用いて比較検討した。 治療後の 「耳鳴表現スコア」 もしくは 「耳鳴ラウドネス」 が有効を示した65症例全体の「粗有効率 (GER)」は72.3%、 両者がともに有効を示した 「自他覚的有効率 (BER)」、 つまりより厳密な有効率としては47.7%であった。 三つの中医学的病証型のうち、 実証型の有効率が最も高く、 そのBERは66.7%を示していた。 次は虚証型で、 そのBERは48.7%であった。 中間証型は最も悪く、 そのBERはわずか10%であった。 各病証型のBERに対し、 相互間の統計学的有意差はなかった。 一方、 治療終了2ヶ月後の効果判定では、 全体のGERは55.4%、 BERは38.5%にまで低下し、 治療効果の減少傾向が見られた。 特に虚証型のGERは統計学的有意な低下を示した。 結論として迷路性耳鳴に対する鍼治療を行うにあたって、 中医学的虚実弁証論の応用は大変重要であると考えられる。 65症例の臨床治療分析を通して、 虚証型や中間証型に比べて、 実証型耳鳴は鍼治療に最も高い反応を示すことが判明した。
著者
高島 正人
出版者
立正大学文学部
雑誌
立正大学文学部研究紀要 (ISSN:09114378)
巻号頁・発行日
no.1, pp.33-78, 1985-03-20
著者
磯部 大吾郎 レ ティタイタン
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.76, no.667, pp.1659-1664, 2011-09-30 (Released:2012-01-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Fire-induced collapse behaviors of a high-rise building with an outrigger truss system were verified using the ASI-Gauss technique. The effects of fire patterns and structural parameters on the redundant strengths were surveyed by observing the collapse initiation time: the duration from the beginning of the fire until collapse initiation. From the numerical results, it is confirmed that collapse initiation times are significantly affected by the member joint strengths if the axial force ratio is small on the condition that the fire pattern is nearly symmetrical, and the load paths to and from the outrigger truss system are sufficiently protected.
著者
生田 安司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.370-374, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
9

気管支切開により摘出した気管支異物の2例を報告する.症例1は84歳男性で,歯科治療中に義歯を誤嚥し,摘出目的で当院へ紹介となった.手術は左底区気管支を横軸方向に切開し義歯を摘出した.症例2は精神発達遅滞のある60歳男性で,胸部レントゲン検査で気管支内異物を指摘され,摘出目的で当院へ紹介となった.手術は左主気管支を長軸方向に切開し異物を摘出した.手術による気管支異物摘出を行う場合,異物の材質や形状,異物の存在部位や介在期間,周囲の気管支肺の状態を考慮し,術式や気管支切開における切開方向を選択すべきである.
著者
安部 哲人
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.17-25, 2014-03-30 (Released:2017-05-19)
参考文献数
73

生物多様性の喪失に伴う生態系機能への影響は生態学の主要な研究課題である。送粉も生態系機能の一つであり人類はその恩恵を受けているが、世界各地で人為的撹乱による送粉系の衰退が報告されている。このため、送粉者の多様性と生態系機能の関連、及びそれらの撹乱による影響を調べる研究も盛んに行われている。本稿では、まずハナバチを中心に送粉者の多様性とその機能について概観し、次いで、小笠原諸島の送粉系を例に交えながら送粉系衰退の現状と、それによる機能やサービスへの影響について知見の現状を紹介する。
著者
司法省行刑局 編
出版者
司法省行刑局
巻号頁・発行日
vol.第27(大正14年), 1927
著者
山本 誠子 栗山 尚子 小宮山 冨美江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-22, 2001-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

ゆでたじゃがいもにデンプンを加えたための物性の変化がいももちの特徴であるので, じゃがいもデンプン添加量の異なるいももちについて, テクスチャー特性の測定, 破断特性の測定 (レオナーによる) と官能検査 (評点法による) を行い, 比較・検討した結果を要約すると以下の通りである.(1) いももちはデンプン添加量が多いほど硬く, 凝集性が大きく, 破断応力, 破断エネルギーも大きく, 強靭になった.また, 伸長破断による伸びは大きくなるが, 伸ばすのには大きな力が必要となった.出来たてはやわらかく伸びは大きい.しかし経時変化に伴い, 硬く, 凝集性は小さくなり, 破断応力, 破断エネルギーは大きいが, 伸長破断による伸びは小さく, 伸びなくなった.(2) 官能検査では30%が一番, 次に20%が好まれた.30%は適度な弾力とかたさ, 伸びがあり, もち感が感じられ, いももちとしてのイメ門ジに非常に近かった.(3) 官能検査と機器による客観測定値について相関係数を求めたところ, かたさと原硬さ, 弾力と凝集性, 弾力と破断ひずみとに高い相関がみられた.
著者
森川 茂 朴 ウンシル
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome; SFTS)は、フェニュイウイルス科フレボウイルス属に分類されるマダニ媒介性のSFTSウイルス(SFTSV)による急性ウイルス感染症で、高熱、血小板減少、白血球減少、肝機能低下、出血、多臓器不全などを主徴とする。SFTSの致死率はヒトで約17%、ネコで約50%と極めて高い。ネコのSFTSには有効な特異的治療法もなく、獣医医療従事者や飼育者が発症動物から感染して発症した例も報告されている。One Health及び人獣共通感染症の観点からネコ及びヒトのSFTSの予防に寄与する。本研究ではネコに有効なSFTSワクチンを開発する。
著者
清水 陽介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.723-727, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕股関節外転筋力と10 m最大歩行速度(以下10MWS),歩行自立度の関連性,歩行自立のためのカットオフ値を算出することとした.〔対象と方法〕対象は,片麻痺患者31例とした.方法は,10MWSと歩行自立度を算出し,Hand-Held Dynamometerを使用し,股関節外転筋力を測定した.〔結果〕10MWSと麻痺側股関節外転筋力(r=0.74)には有意な相関が認められた.歩行自立度に影響のある因子として,麻痺側股関節外転筋力のみが抽出され(オッズ比11.917,オッズ比95%信頼区間2.18971-65.146),歩行自立のためのカットオフ値は,0.230 kgf/kgであった.〔結語〕麻痺側股関節外転筋力は,歩行速度,歩行自立度に対する重要な因子である可能性が高い.
著者
やまだ ようこ 山田 千積
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.25-42, 2009 (Released:2020-07-07)

質的研究の課題は,ローカルで一回的という「現場」の特徴を重視しながら,複数の「現場」に共通する一般化可能な「知」をどのように生成するかにある。本論では,「場所」モデルを基本にして,ナラティヴと多声的対話概念を関連づけた多様なモデル構成によって,その課題に応えようとする。「場所」モデルは,自己や他者を「個人」という独立概念ではなく,「場所」に埋め込まれた文脈依存的概念で考えるところに特徴がある。「ナラティヴ場所」対話モデルは,場所に含まれる人間の相互行為に着目するもので,1)入れ子モデル,2)二者対話モデル,3)三者対話モデル,4)多声対話モデルの 4 種類を提示する。「異場所と異時間」対話モデルは,文化的文脈と歴史的・時間的変化の両方を視野に入れるもので,5)場所間対話モデル,6)人生の年輪モデル,7)クロノトポス・モデルの 3 種類を提示する。これらのモデルは次のような特徴をもつ。理論枠組を単純化することによって,ローカルな現場の多様な現実にあわせて具象化しやすくできる。複数のモデルを使うことで,研究目的に応じて多種のモデルを組み合わせることができる。モデル間を有機的に関係づけることによって,モデルの生成的変形を発展させることができる。
出版者
国立情報学研究所
巻号頁・発行日
vol.平成19年度, 2009-03-18