著者
宮田 秀介
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

フラッシュフラッドが発生しやすい山岳流域において現地水文観測および流出シミュレーションを行い,フラッシュフラッドに関連する各種発生要因の影響を検討し,現象把握と発生機構の解明を行った。試験流域は早い流出特性をもち,短時間に集中する降雨では特定の谷(支流)に集中した降雨だけでなく土壌層の薄い高標高地帯からの流出も急激な河川水位上昇をもたらすことが明らかとなった。火山流域において土砂濃度の高いフラッシュフラッドである土石流に流出シミュレーションを応用することで,流出過程を考慮した土石流発生基準を設けられる可能性を示した。
著者
佐藤 萌
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

江戸時代の雛人形の頭髪(スガ糸)には、タンニン酸と鉄媒染により染められた黒染め生糸が用いられ、繊維は酸や鉄による触媒作用の影響を受けて経年とともに劣化し粉末化することが問題となっている。本研究では、これまで修復困難で処分され、調査・研究の対象とされてこなかったスガ糸の制作技法を明らかにし、スガ糸の劣化速度を把握し寿命予測を行う評価法を確立することを目的とした。江戸時代の人形77体の頭髪剥落片の繊維素材を光学顕微鏡による断面観察とSEMによる表面観察により同定し、劣化因子である鉄イオンの有無をエネルギー分散型X線分析により確認した。生糸は53体、精練糸は10体、靱皮繊維は11体、人毛は3体で、殆どの繊維から鉄元素の存在が確認出来たことから、江戸時代のスガ糸には生糸と鉄媒染剤が使用されたことを明らかにした。さらに従来染織文化財の物性評価に用いられてきた引張試験に代わる評価法として、KES(Kawabata Evaluation System)圧縮試験によりスガ糸の圧縮回復性を求めることで、微量文化財試料での劣化度診断法の開発を行った。モデル試料を作製し(1wt%タンニン酸水溶液で染色の後2wt%硫酸第一鉄水溶液で媒染)、加速劣化(70℃,RH75%,70日間)に伴う繊維の圧縮特性と引張特性の経時変化を追った結果、試料の破断伸度が低下するにつれて圧縮回復性も低下する傾向にあった。江戸時代のスガ糸も、モデル試料で得られた脆弱な試料と類似した物性値を示した。このことから、今後引張試験を行うことが出来ない微量で脆弱な文化財試料に対して、その圧縮特性を測定することにより、ある程度の劣化度合いを計測することが出来ると期待する。
著者
市川 尚紀 崔 軍
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、わが国の一般的な木造住宅に採用可能な太陽熱、雨水、地中熱による自然冷暖房システムの開発を行うものである。特に、雨水を地下に貯めて地中熱を蓄える装置として、既製品のドラム缶を連結した独自のシステムの有効性を確認することが本研究の特徴である。研究では、実物大の木造実験住宅を用いて、太陽熱で温めた雨水による暖房と、地中熱で冷やした雨水による冷房の実験を行い、夏と冬の冷暖房実験を実施した。この時、タンク切り替え自動制御盤の修理とバルブの調整などを行った。その結果、真夏日であっても、このシステムで継続冷房することができることがわかった。冬は暖房可能な時期について把握することができた。
著者
飛鷹 範明
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【目的】近年、大腸がん化学療法においてカペシタビン(ゼローダ[○!R])を含むXELOX療法が汎用されている。一方、副作用として手足症候群(以下、HFS)を誘発し、患者のQOLを低下させる。さらに、HFSが認められた場合は減量・休薬される場合があり、HFSをコントロールしてQOLを維持しながら治療を継続していく上でHFSの治療は極めて重要である。しかし、カペシタビンによるHFS発症機序は不明であり、病態解明や治療薬探索・開発を行う上で重要なモデル動物に関する報告もない。そこで、カペシタビンによるHFS発現状況やHFSに対する対症療法の現状を明らかにし(臨床薬学的研究)、さらに、カペシタビン誘発HFSの実験モデル動物の作成を試みた(薬理学的研究)。【臨床薬学的研究】2012年4月~2013年3月末までに愛媛大学医学部附属病院においてゼローダ[○!R]錠が新規処方された患者を対象に処方調査を行った。【薬理学的研究】実験にはWistar系雄性ラット(6-8週齢)を用い、ゼローダ[○!R]錠(300, 500, 1000mg/kg)を1日1回28日間経口投与した。その後、一般行動(足を振り回す行動、舐める行動、自発運動量計測)と症状(紅斑、発赤、腫脹等)の観察を行った。【結果】処方調査より、調査期間中にゼローダ[○!R]錠は30名に新規で処方されていた。そして、30名中20名に何らかの皮膚障害の発現がみられた。薬剤として、血行促進・皮膚保湿剤、NSAIDs内服、ビタミン剤内服等が処方されていた。薬理学的検討より、ゼローダ[○!R]錠を1日1回28日間反復経口投与したが、各投与量において一般行動および症状の変化は認められなかった。【考察】ラットに1日1回28日間ゼローダ[○!R]錠を反復経口投与したが、HFSの実験モデル動物は作成できなかった。この要因として、ヒトおよびラットにおける各臓器の酵素活性の分布等が異なるためと考えられた。
著者
三宅 明正
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1 研究経過平成6年度には、いずゞ自動車株式会社、東京急行株式会社、神奈川県立公文書館、横浜市史編集室、東京大学社会科学研究所、同志社大学人文科学研究所を調査し、神奈川県地域を主な対象として、戦時・戦後の労働組織に関する史料を調査、収集した。また、労働関係図書を購入し、これを併せて参照しつつ、収集した史料を分類して整理した。新たに得られた知見としては、(1)いくつかの工場には、戦時・戦後の労働組織について、学界でなお末利用の史料があるということ、(2)戦時、戦後初期(労働組合結成期)、企業再建整備時(占領後期)の3つの時期について、労働組織のありかたには共通する側面が強いということの、2点である。後者について、やや詳しく述べると、表面的なイデオロギーとは別に、労働組織の編成原理(工員と職員を包含しようとする点、従業員を生産を行なう主体として位置付けしようとする点)に一貫性がうかがわれるということである。2 研究の評価当初に計画した研究目的、計画方法との関連では、史料の存在状況から、調査対象を一部変更した点を除いて、ほぼ予定通りに遂行された。また、当該テーマの少し後の時期の労働者組織に関連する論文もまとめることができた。
著者
谷口 将紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、戦後日本における価値変容を時系列的に分析する。経済発展は、直接民主政の安定をもたらすものではなく、市民文化の発達を媒介変数として相互関係にある。また、経済安定は人々の価値観を変え、物質主義的な価値に重きを置かない社会は低経済成長時代を迎えるという意味で、市民社会の価値観と経済もまた、相互関係にある。価値観研究は、現在に至るまでNPCなど新しい概念も生みながら、各国で繰り返し大規模比較調査が行われている、国際的な関心の高い研究分野である。短期間で大きな経済発展を遂げ、また新聞購読率が伝統的に高く、社会調査開始前に遡及した研究が可能な日本は、研究対象・方法の両面でもっとも本テーマに貢献しうるポジションにある。上記の問題意識に立脚して、本年度は以下の各項目について研究を行った。1.従来のワーキングペーパーを大幅に改訂の上、「戦後日本の価値観変化1945〜2000年--新聞社説を手がかりに」(小林良彰・任ヒョク=ひへん(火)に赤赤=伯編『市民社会における政治過程の日韓比較』慶應義塾大学出版会、2006年所収)として公刊した。同論文については、韓国語訳もまもなく刊行される予定である。2.これとは別に、英語論文"A Time Machine : New Evidence of Postmaterialist Value Change"を作成の上、米国・ワシントンDCで開催されたアメリカ政治学会(American Political Science Association)において研究発表を行った。3.学会発表・討論を通じて得られた知見をもとに、上記英語論文を改訂の上、現在海外の某学術雑誌に投稿中である。研究期間終了後速やかな公刊を期したい。以上の作業を通じ、国際比較を拡大させる一方で、研究開始時点以前に遡及できないという制約上従来不可能とされてきた時系列比較を可能ならしめたことにより、内外の価値観研究に新しい資料を提供できたものと思料する。
著者
住友 弘二 鳥光 慶一 樫村 吉晃
出版者
日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

シリコン基板上の微小井戸アレイを脂質二分子膜でシールすることで,膜タンパク質の機能する場を構築した.微小井戸内にイオン濃度に反応する蛍光色素を封入することで,脂質二分子膜に導入したイオンチャネルの機能計測を可能にした.微小井戸の容量を非常に小さくすることで,高感度な検出を実現した.微小井戸をシールする脂質二分子膜は,内外の浸透圧差など機械刺激に非常に敏感に反応することが分かった.高感度なメカノセンサーの可能性を示した.また,実際の神経細胞の成長制御を通して,ナノバイオデバイスと精細胞の連携の可能性も示した.
著者
安田 次郎 末柄 豊 前川 祐一郎 上島 享
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

室町時代から戦国時代の奈良興福寺の大乗院門跡を中心にして、さまざまな「人のつながり」について基礎的なデータを蓄積し、寺院社会の構造や機能をあらためて考えるための手掛かりを得た。京都や奈良の門跡や院家は、貴族、武士、それに在地の諸勢力などの出身者が僧として、あるいは寺社の職員として出会って相互に結びつく場であったこと、僧たちはイエから切り離された存在ではなくイエや家族の利害を代表して行動したこと、寺院社会は異集団の出身者が出会い、結びつき、補完し合う場として機能したことなどの見通しを得た。
著者
皆本 景子 上田 厚 原田 幸一 魏 長年 皆本 景子 上田 厚
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

わが国では、業務上疾病として職業性皮膚障害として分類されている症例は限られていて行政による統計は存在しない。郵送による調査での症例収集は有効でなかった。職業関連アレルギーの発生の実態は、疫学的にも正確には把握されていないが、今のところ、医学雑誌で報告された症例報告の蓄積が、いまのところ確実で正確に利用できる情報源である。ドイツでは、皮膚科医と産業医が、行政の報告システムに組み込まれていて、職業性皮膚障害としての統計を基礎にした医学的根拠に基づいて、アレルギー性接触皮膚炎と刺激性接触皮膚炎ともに包括的な予防対策がとられている。ハウスミョウガ栽培者のアレルギー性接触皮膚炎の原因物質は、脂肪酸であることが示唆されたが、確定はできなかった。揮発性成分のなかでは、β-phellandereneの抗原性が高かった。接触蕁麻疹は、非免疫学的機序によるものである可能性が高い。
著者
羽生 義郎
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究により、免疫系を効率的に活性化するペプチド及び手法を見出した。免疫時に抗原と共にペプチド等の免疫活性化物質を投与する事により、抗原特異的に抗体産生細胞を活性化することに成功した。これにより、抗原特異性及び親和性が高い抗体、すなわち抗原の検出において有用性の高い抗体の生産が可能となった。この免疫活性化法を用いたインビトロ免疫法においては、抗原親和性の高いIgG1抗体が作製可能となり、モノクローナル抗体作製法として期待される。
著者
菅原 真弓
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は「日本19世紀版画史の再構築」(基盤研究(C)、平成19~22年度)の継続研究として実施したものである。研究蓄積が乏しいこの分野において、対象を当該時期の木版画(浮世絵版画)にしぼり、幕末明治期における日本の浮世絵版画および木版技術をもって制作された新聞、雑誌の挿絵の全貌を作品調査および関連資料調査を通じて明らかにすることを目的とした。本研究における最も大きな研究成果は、明治の浮世絵師・月岡芳年(1839~92)の画業全般に関する論文や関連書籍などを刊行したことである。しかしその一方で、これ以外の絵師や同時代動向への目配りが充分であったとは言えない。これが本研究の反省点となった。
著者
福山 真央
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013

本研究は、マイクロ流体デバイス内で生成した数百ナノメートルサイズの液滴(ナノ液滴)を用い、新たな微少量分析操作の開発を目的としている。本年度は、前年度に開発した自然乳化を利用したナノ液滴生成法を利用した、新たな選択的濃縮法の開発を目指した。1. ナノ液滴生成を利用したマイクロ液滴内包物の選択的濃縮法の開発前年度に、非イオン性界面活性剤(Span 80)を含む有機相中にマイクロ水滴を生成すると、マイクロ水滴からミセルへと水が分配し、マイクロ水滴界面から100 nm程度のナノ水滴が生成する(自然乳化)現象を見出した。この現象を利用し、マイクロ水滴内包物の濃縮が可能であると考えた。蛍光色素を含む40μm径のマイクロ水滴を用意し、自然乳化に伴うマイクロ水滴縮小と、マイクロ水滴内の蛍光強度の液滴径依存を観察した。その結果、親水性またはサイズの大きい分子はマイクロ水滴内に濃縮することが判明した。親水性の高いスルホローダミンを用いた場合、500倍に濃縮されることが分かった。また、サイズが小さく疎水性の分子はナノ水滴に分配し、マイクロ水滴内に濃縮されないことが分かった。2. 新規選択的濃縮法の生化学分析への応用可能性実証上記濃縮法の生化学分析への応用として、ビオチン・アビジンを利用したbound complex/ free ligand(B/F)分離を実証した。以上の成果は、マイクロ液滴を利用した微少量分析操作システムにおいてボトルネックであった、液滴内包物検出の感度向上を可能にすると期待する。これまで、マイクロ液滴は微少量試料分析のための反応場として注目を集めている一方で、液滴の光路長の短さと試料量の少なさゆえに、その内包物の検出法が限られていた。本研究の選択的濃縮法により、液滴内包物の検出法の自由度が向上し、より柔軟な微少量試料分析システムの開発が可能になると期待する。
著者
市川 正人 大久保 史郎 倉田 原志 倉田 玲 北村 和生 渡辺 千原 和田 真一 吉村 良一 松宮 孝明 山田 希 毛利 透 木下 智史 渡辺 康行 田村 陽子 須藤 陽子 斎藤 浩 森下 弘 佐上 善和 渕野 貴生 村田 敏一 多田 一路 水野 武夫
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

最近の最高裁判決を分析した結果、法分野ごとに最高裁の役割が異なり、また、最高裁の人的構成の影響が異なることが、明らかになった。最高裁裁判官の選任のありようについて、下級裁判所裁判官人事(「司法官僚」の形成)と関連させながら検討する必要性が明らかになったため、最高裁裁判官データベースの作成を進めた。アメリカ、カナダ、ドイツ、韓国、フランス、オーストラリア、イギリスに対する実地調査を行った結果、日本の最高裁・司法制度の特質と、他方、現代国家の司法・裁判所の共通点が明らかになった。以上を踏まえ、最高裁について人的、制度的な改革案をまとめた。
著者
塩塚 秀一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最近二十年ほどのフランス文学を特徴づける潮流のひとつとして、都市生活の中でふだん着目されることのない「日常」に着目し記録しようとする、一群のルポルタージュ的作品がある。フランソワ・マスペロの『ロワシー・エクスプレスの乗客』(一九九〇)、フランソワ・ボンの『鉄路の風景』(二〇〇〇)、フィリップ・ヴァセによる『白い本』(二〇〇七)などである。これらはいずれも誰の注意も引かない日常の風景を書きとめようとする実験的試みである。本研究では、これらの著者たちが風景をいかに記録しているかを具体的な記述に即して論じ、それを通じた現代社会批判の射程について考察した。
著者
兵藤 好美 田中 共子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、「医療事故生成プロセス防御モデル」を背景理論に、リスク認知を中心とした新たな「医療安全の心理教育」を開発することであった。2009~ 2011年度において事故生成プロセスを反映した疑似体験を工夫し、体感と具体的理解をもたらす人工空間の創作を試みた。そして、人間のヒューマンエラーに関するバイアスやヒューリスティック、環境要因の影響をシミュレーションゲーム法を適用し、医療安全教育に使用した。さらに効果の検証も行った。
著者
上田 健治
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々が、アルツハイマー病脳のSDS不溶性成分の分析から未知分子として見出したαシヌクレインは、その遺伝子の変異体が優性遺伝型パーキンソン病の疾患責任遺伝子として同定された。しかし、αシヌクレインの生理的機能の詳細は不明のままである。我々は、αシヌクレインが脳神経細胞のミトコンドリア内膜に存在する事を見出した。さらに、αシヌクレインがadenylate translocatorに結合し、ATP産生の制御に関与する可能性を示した。培養細胞系を用いて、αシヌクレインが細胞増殖促進、神経細胞突起伸長を促進する事を見出し、その作用が微小管形成を介する事を示した。
著者
佐藤 純
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

1930年代におけるイングランド銀行の対外政策に関しては、その影響力が及んだ範囲の大きさゆえに研究者の関心を集めてきた。これに関して先行研究は、同行がスターリング圏(sterlingarea)の安定と拡大を目的として、帝国内外の諸国にアドバイザーを派遣し中央銀行の創設を実現していったことは明らかにしているが、中央銀行創設に至るプロセスや、果たして中央銀行の創設によって上述の目的は達成されたのか否か、以上の点については十分には明らかにしてこなかった。本研究では、これらの点を1934年におけるエル・サルバドル準備銀行の創設に関する事例に即して明らかにした。
著者
大田 肇
出版者
津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

イギリス軍のイラク戦争・占領におけるイラク人虐殺事件に関し、その遺族が、イギリス国防省を相手取って、イギリスの国内裁判所の訴訟を起こした。遺族の主張の法的根拠は、ヨーロッパ人権条約及び1998年人権法の中の「生命に対する権利」であった。この主張を、国内裁判所は、人権条約の適用範囲から外れるとして斥けた。しかしながら、ヨーロッパ人権裁判所は、管轄権の例外にあてはまるとして、その適用を認めた。この判決は、他の類似の事件の判断にも影響を及ぼしている。
著者
小林 龍彦
出版者
四日市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中国の明清代にイエズス会士が漢訳した西洋の数学・天文・暦学書を漢訳西洋暦算書と言う。これら書籍は八代将軍徳川吉宗の禁書緩和政策によって我が国へ舶載され、日本人が広く研究するところとなった。本研究ではこれら書籍の日本への伝播と日本の暦算家への影響について研究した。享保11年舶載の『暦算全書』は建部賢弘や中根元圭らによって翻訳されたが、これ以降、日本人は三角法の重要性を認識し、天文・暦学や測量術の研究へ応用するようになった。天文方の高橋至時や間重富は『霊台義象志』から振り子の等時性と物体の落下法則を理解した。また。高橋が同書と『西洋新法暦書』から大洋航海法を学んでいたことも解明した。
著者
玉田 吉行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究の目的は、英語で書かれたアフリカ文学がどのようにアフリカのエイズ問題を描いているかを探ることで、ケニアの2つの小説Nice PeopleとThe Last Plagueを軸に、疫病に映し出された人間のさがを考察しました。政治や経済の局面ではとらえられない人間のさがを知らなければ、アフリカのエイズに対抗出来ません。アフリカの文学作品は、政治や経済の局面ではとらえられない人問のさがを見事に描き出しています。報告書は、以下の5章にまとめました。1章アフリカとエイズ2章アフリカの歴史3章『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』4章南アフリカとエイズ治療薬5章哀しき人間の性(さが)1章では、HIVの特徴を軸に、アフリカのエイズの状況を描きました。2章では、現在のエイズの惨状を生み出したアフリカの歴史を概観しています。3章では、アフリカのエイズの現状を描き出しているケニアの小説『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』を取り上げ、ケニアの歴史と作家グギを軸に、二つの作品を分析しました。4章では、南アフリカの歴史を辿りながら、エイズ治療薬を巡る南アフリカの状況を考察しています。5章では、辿ってきた哀しき人間のさがについてまとめました。疎外された状況下での自己意識をテーマにリチャード・ライトの作品の研究を始めました。作品理解のために、アメリカの歴史を辿る過程で、アフリカに辿り着きました。以来、ラ・グーマの文学だけでなく、アフリカ全般、医療についても考えるようになりました。授業でも、アメリカやアフリカの歴史・文学・医療などを取り上げてきました。そうした「アフロ・アメリカ→アフリカ→エイズ」の流れと(1)文学と医学,(2)教育と研究、(3)教養と専門の狭間から、「エイズを主題とするアフリカ文学が描く人間のさが」を考えました。