著者
中村 和弘 原田 淳子 塩田 茂雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.604-612, 2009-09-01
被引用文献数
4

数列がグラフ的であるための必要十分条件を与える「Havel-Hakimiの定理」を用いて,与えられた次数列を再現するネットワークを構成できることが知られている.本論文ではHavel-Hakimiの定理を利用して次数列を再現するネットワークを構成したとき,構成されたネットワークと現実のネットワークとの間に,2点間距離,クラスタ係数,周辺ノードの平均次数等の特徴量の点でどのような違いが存在するかを分析する.Havel-Hakimiの定理によるネットワーク構成には様々なバリエーションが存在するが,バリエーションの違いが構成されるネットワークに与える影響についても調査する.
著者
平 将人 二瓶 直登 遠藤 あかり 谷口 義則 前島 秀和 中村 和弘 伊藤 裕之
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.173-182, 2012

タンパク質含有率の増加を目的とした出穂期の窒素追肥が,硬質コムギ品種ゆきちからの中華麺適性に及ぼす影響を検討した.出穂期における窒素追肥量の増加に比例してタンパク質含有率は高くなり,SDSセディメンテーション沈降量および湿グルテン含量は増加して生地物性は強くなった.一方,グルテンインデックスは低下したが,中華麺官能検査におけるゆであげ7分後の食感の評点は有意に高くなった.したがって,出穂期の窒素追肥によりグルテンインデックスは低下してグルテンの質は変化するが,生地物性が強くなることで中華麺のゆでのびを抑えられることが明らかとなった.また,福島県でゆきちからを喜多方ラーメン用として栽培する際に目標となるタンパク質含有率を明らかにするために,製粉工場でゆきちから100%で製造されたタンパク質含有率が9.1,9.8および10.8%の中華麺用粉を用いて中華麺官能検査を行い,タンパク質含有率と中華麺適性との関係を検討した.外国産硬質コムギを原料に用いたタンパク質含有率が11.8%の中華麺専用粉と比べて,ゆきちからの色相およびホシの程度の評点は10.8%でも有意に高かった.また,ゆであげ7分後の食感の評点はいずれのタンパク質含有率においても有意差は認められなかったが,総合評価の評点は9.8%および10.8%で有意に高かった.したがって,福島県で喜多方ラーメン用にゆきちからを栽培する際には,出穂期の窒素追肥により,タンパク質含有率を粉で10.0~11.0%程度にすることが望ましいと考えられた.
著者
梅田 直円 岡ノ谷 一夫 中村 和雄 古屋 泉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.9-16, 1993-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
10

ムクドリによる農作物の被害は年々増加する傾向にあり,効果的な防除法の開発が望まれている.ムクドリがどんな刺激を嫌うかを条件反応の抑制効果によって定量化することを目指して,ムクドリをオペラント条件づけの手続きで訓練できるかどうか試みてみた.実験に使った3羽のムクドリすべてにキーつつき反応を学習させることができ,そのうち2羽は間欠スケジュールで安定した反応をするようになるまで訓練することができた.キーつつき反応に及ぼす種々の視•聴覚刺激の効果を測定することで,効果的な追い払い法の開発に寄与できるであろう.
著者
中村 和彦 斎藤 馨
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.3_81-92, 2014 (Released:2016-03-25)
参考文献数
26

Existing learning tools involving images have a risk of creating false perceptions due to inappropriate editing. This problem can be resolved by using unprocessed and unedited image archives openly available on the Internet. However, there is still no proven approach for providing learning tools using such image archives. The objective of this study was to examine the development of phenology observation learning tools using unprocessed and unedited image archives. For this study, learning tools using unprocessed and unedited image archives collected since 1995 in the University Forest in Chichibu (the University of Tokyo) were used on a trial basis for phenology observation studies at three elementary schools. The reactions of the pupils were videotaped, and the resulting responses of the teachers and pupils were analyzed. We also performed textual analysis of the pupils’ post-lesson statements about their impressions. As a result, the following three development courses were revealed. First, over a time scale of one year, learning tools that asked pupils to observe more detailed changes based on their previous experience were recommended. Second, in expanding the time scale from one to two years, it was found desirable to include learning that supported the expansion of a time scale including immediate experience. Finally, for multi-year phenology observation, we found it necessary to clearly convey to teachers and pupils that inter-annual variations of phenology were observable, and that long-term trends were not evident.
著者
細川 卓也 小松 秀雄 前田 幸二 中村 和洋 吉田 徹志 福元 康文
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.39-44, 2006 (Released:2006-04-11)
参考文献数
15
被引用文献数
4 6

有機質成型培地を用いたトマトの長段どり栽培での高糖度果実の多収生産を目的とし,有機質成型培地の水分保持特性を調査し,日射比例給液制御装置を試作してこれを用いた場合の給液量の違いが収量・品質に及ぼす影響を検討した.スギ樹皮やヤシガラとバーク堆肥の混合資材からなる有機質成型培地ではロックウールスラブに比べて排水性が優れ,高pFでの水分率が高い水分保持特性を示した.長段どり栽培では,長期間にわたって葉面積の変動が小さく,積算日射と蒸発散量の間には高い正の相関関係が認められた.ヤシガラ・バーク培地を用い積算日射で1.71 MJ・m−2,1.93 MJ・m−2,2.13 MJ・m−2(第2果房下の葉を除去するまではそれぞれ1.50 MJ・m−2,1.71 MJ・m−2,1.93 MJ・m−2)ごとに100 ml・株−1を給液する3区を設けて収量・品質を比較した結果,可販果収量は給液量の多い区ほど多く,平均糖度は給液量の少ない区ほど高かった.高糖度果実(Brix 8%以上)の収量は,1.93 MJ・m−2(第2果房下の葉を除去するまで1.71 MJ・m−2)ごとに給液する区で最も多かった.
著者
中村 和利 尾山 真理
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

今年度は、村松研究における血中高感度C-reactive protein(CRP)と骨折発生のデータ整理・解析を行った。また横越研究の調査を完了した。村松研究集団の3分位別CRPレベルは、低レベル群で0.25mg/L未満、中レベル群で0.25-0.58mg/L、高レベル群で0.59mg/L以上であった。村松研究6年間の平均の追跡は5.5人一年であった。骨折発生は51件あり、骨折部位の内訳は、前腕19件、上腕8件、大腿骨7件(そのうち近位部6件)、下腿3件、脊椎14件、手3件、肋骨8件、尾骨1件、膝蓋骨1件、足3件であった。骨粗鬆症性骨折が疑われる四肢骨または脊椎骨折をアウトカムとした場合、骨折の調整後ハザードリスクは、CRP低レベル群と比較して、中レベル群で2.2(95%信頼区間1.0-4.8)、高レベル群で2。4(95%信頼区間1.1-5.2)と有意に上昇していた。血中炎症マーカーと骨折の関連性を明らかにすることができ、そのメカニズムを今後探索する必要がある。横越研究の最終医学検査は2010年秋に終了し、血中CRP濃度も測定した。集団(n=523)の平均値および標準偏差は0.08mg/L(標準偏差0.23)であった。また、血中CRPと腰椎および大腿骨頸部骨密度のピアソン相関係数は、それぞれ0.099(p=0.024)および0.017(p=0.700)であった。横越研究における炎症マーカーと骨密度については、さらに分析を行い、最終報告を行う。
著者
竹内 義喜 中村 和彦 岩橋 和彦 三木 崇範 伊藤 正裕
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

発達障害誘導因子として放射線とアルコールを取り上げ、脳組織のうちとくに海馬領域のニューロンネットワーク形成を対象として研究を行った。妊娠動物(ラット)に放射線を照射し、生後6週で脳組織を検索したところ、海馬に対する影響は0.6Gy以上から現われ、錐体細胞の脱落および層構造の乱れがCA1領域よりCA3領域でより顕著であった。また、CA3領域では異所性mossy fiberの終末がstratum orienceに存在するのが特徴的であった。一方、生後ラットへのアルコール投与実験では、まず小脳のプルキンエ細胞を研究対象とした。プルキンエ細胞は生後4-9日でアルコール高感受性であり、樹状突起の発育不全を示した。しかしながら、生後10日以降の脳組織においてはプルキンエ細胞をはじめとする他の神経細胞には何ら変化が認められないという実験結果を得た。次に、このような生後早期における神経細胞のアルコール感受性に関し海馬で行なわれた研究では、歯状回門領域の顆粒細胞や錐体細胞にも小脳組織と同様神経細胞の発育不全が認められ、海馬領域においても高感受性であることが明らかになった。さらに、マウスに対する短期アルコール投与実験をおこなったところ、海馬領域においてcalbindin D28k免疫反応陽性細胞の数が減少した。しかしながら逆にGFAP反応陽性細胞の数の増加が認められ、神経細胞とグリア細胞の変化が形態学的に非常に対照的なものとなった。このようなニューロンとアストログリア細胞の脳組織における変化は、海馬に起因する神経症状発現メカニズムにこれら細胞相互の働きが深く関与することを示唆するものであると考察される。
著者
須藤 研太郎 山口 武人 中村 和貴 原 太郎 瀬座 勝志 廣中 秀一 傳田 忠道 三梨 桂子 鈴木 拓人 相馬 寧 中村 奈海 北川 善康 喜多 絵美里 稲垣 千晶 貝沼 修 趙 明浩 山本 宏 幡野 和男 宇野 隆 多田 素久 三方 林太郎 石原 武 横須賀 收
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.656-662, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

近年,化学療法および化学放射線療法の進歩により局所進行膵癌の治療成績は向上している.切除不能症例を対象とした臨床試験で生存期間中央値15ヶ月を超えるものも報告される.また,非切除治療が奏効し根治切除可能となった局所進行例も報告され,conversion therapyとしての役割も注目される.一方,局所進行膵癌に対する治療はエビデンスの乏しい領域であり,化学放射線療法の意義についても未だcontroversialである.今回,われわれは化学放射線療法82例(S-1併用56例,その他26例)の成績を供覧し,非切除治療の現状と意義について考察を行う.全82例の生存期間中央値15.4ヶ月,3年生存率17.5%,5年生存率6.7%と化学放射線療法のみでの長期生存例も経験された.さらなる成績向上のためには外科切除との連携に期待されるが,本稿ではわれわれの経験を供覧し,今後の展望について考察を行う.
著者
虫鹿 弘二 中村 和寛 橋本 佳 大浦 圭一郎 南角 吉彦 徳田 恵一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学]
巻号頁・発行日
vol.2015, no.13, pp.1-6, 2015-02-23

隠れマルコフモデル (HMM) に基づく歌声合成システムは,あらかじめ用意された歌声データから統計モデルを学習し,任意の歌声を合成する.HMM 歌声合成の性能は学習データに強く依存するため,高品質な歌声を合成するためには高品質な歌声データベースが必要になる.しかし,実際のデータベースには,歌い間違いやノイズなどの誤りが含まれていることが多い.特に,これからは音声合成の分野でも,インターネット上の大量のデータを学習に有効活用するという流れが加速していくと考えられ,そのような誤りを多く含むデータから高精度なモデルを学習する手法が必要である.そこで本稿では,学習データ内の誤りを局所的に除外することによる誤りに頑健なモデルの学習手法を提案し,主観評価実験により提案手法の有効性を評価する.
著者
田野崎 隆雄 田中 勝 ピエール モスコビッツ 築谷 淳志 中村 和史
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.465-473, 2003

現在欧州統合の一環として行われているEU各国の環境法規のハーモニゼーションは,CEN-ISOといったNGOの定める規格類をその試験方法として採択し,標準化を図ってきた。欧州においては廃棄物のキャラクタリゼーションが中心になり,特に暴露シナリオによる環境影響評価のハーモニゼーションを進めている。ここでは,汚染土壌及び廃棄物の評価方法の状況を紹介し,その背後にある環境影響評価の考え方を指摘した。
著者
嵯峨山 茂樹 小野 順貴 西本 卓也 齋藤 大輔 堀 玄 中村 和幸 金子 仁美
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

統計的信号処理と音楽理論の数理モデルを融合して、音楽(および音響・音声)の信号処理と情報処理に多面的に取り組んだ。音声認識分野では音響処理と言語処理の融合がキー技術であったように、音楽においては信号処理と音楽理論の融合が必須である。具体的には、A: 数理モデルと統計学習を軸にした音楽信号の解析・変換・加工・分離・検出、B: 音楽理論の数理的定式化を軸にした音楽信号の和音認識・リズム解析・セグメンテーション・構造解析・ジャンル認識、C: 機械学習と最適化を軸にした自動演奏・自動作曲・自動伴奏・自動編曲などを研究・開発した。
著者
石原 融 武田 康久 水谷 隆史 岡本 まさ子 古閑 美奈子 田村 右内 山田 七重 成 順月 中村 和彦 飯島 純夫 山縣 然太朗
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.106-117, 2003

<b>目的</b> 思春期の肥満は成人肥満に移行することが多く,学童期あるいは,それ以前の肥満の対策が重要とされている。本研究は,縦断研究により思春期の肥満と幼児期の生活習慣,家族関係および体格等との関連を明らかにすることを目的とした。<br/><b>対象と方法</b> 1987年 4 月から1991年 3 月に山梨県塩山市で出生した児を対象として,1 歳 6 か月,3 歳児健康診査時の質問票とその時の身長,体重の実測値,また,思春期は2000年 4 月の健康診断時の身長,体重の実測値を解析に用いた。平成12年度の学校保健統計調査結果の年齢,性,身長別の平均体重を標準体重として,肥満度を算出し,20%以上を肥満と判定した。1 歳 6 か月,3 歳時の体格についてはカウプ指数を用い,生活習慣については健康診査時の調査票の生活習慣項目を用いて,思春期の肥満との関連について解析した。<br/><b>結果</b> 1 歳 6 か月児健康診査時の質問票の回収数は883人で,思春期まで追跡可能であった児が737人であった(追跡率83.5%)。平均追跡期間は10年11か月であった。<br/> 1 歳 6 か月時と 3 歳時のカウプ指数高値群において有意に思春期の肥満者が多くオッズ比はそれぞれ2.61 (95%信頼区間:1.11-6.12)と5.34 (2.54-11.23)であった。また,母親の肥満群において有意に思春期の肥満者が多く,オッズ比は5.32 (2.67-10.60)であった。<br/> 生活習慣項目では,1 歳 6 か月時の「室内で一人で遊ぶことの多い」のオッズ比が3.01 (1.01-8.99),また,3 歳時の「おやつの時間を決めずにもらっていた」のオッズ比が2.12 (1.25-3.61)で思春期の肥満のリスクであった。食品項目では,「牛乳」摂取頻度のみが思春期の肥満と有意な関連を示し,オッズ比0.63 (0.41-0.95)であった。<br/> 共分散構造解析を行い逐次因果最適モデルを求めた。3 歳時の体格,母親の体格,遊び方,おやつの取り方,牛乳摂取は思春期の体格に影響を与えていた。また,母親の体格は子どもの要求の応じ方に影響しており,子どもの要求の応じ方はおやつの取り方に影響を与えていた。<br/><b>結論</b> 思春期の肥満は,1 歳 6 か月と 3 歳時の体格,母親の体格,幼児期の遊び方,おやつの取り方,牛乳摂取と関連があった。遺伝要因が強いことが確認されたが,幼児期の生活習慣も思春期の肥満と関連していることが示唆された。
著者
スワンノ スピット 中村 和夫 天野 義文 志田 万里子 堀内 勲
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-93, 2005-07-25

霊芝菌糸体のβ-1,3-グルカンの定量を目的として効率的な破砕法を,乳鉢,コーヒーミルおよびマルチビーズ・ショッカー(MBS)を用いて検討した.メタルコーンとMBSを用いて90秒間菌糸体を破砕すると,最も小さい粒子サイズ分布となり,最も高いβ-1,3-グルカン抽出効率となった.MBSにより90秒間破砕した菌糸体粉末を用いて,ガラスビーズを伴ったMBSの連続使用による,迅速な抽出方法(MBS法)を開発した.2mlの抽出容器に抽出混合液を容量比率35%で満たしたとき,最も大きな抽出効率が得られた.グルカン抽出のための最適条件は,5から15mgの粉末化した菌糸体を入れ,0.5mmの直径のガラスビーズを添加することであった.この抽出条件を実行すると,熱水抽出物と冷アルカリ抽出物とを調製するのに要する全体の時間は4時間だけに短縮された.さらに新規な抽出方法によって抽出される全β-1,3-グルカン含有量は既存の抽出方法による含有量よりも43%高かった.
著者
吉田 秀夫 藤井 勝実 中村 和弘 深澤 順子 新海 佳苗 新井 祥子 園部 洋巳 田村 由美子 花岡 和明
出版者
JAPAN SOCIETY OF NINGEN DOCK
雑誌
健康医学 : 日本人間ドック学会誌 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.61-65, 2004-06
被引用文献数
1

長時間労働を行っている勤労者に対して,人間ドック受診時に記入される問診票を分析することによって,問診票の持つ意義とその活用について検討した。平成14年度に当健康管理センターを受診した男性勤労者4,275名(平均年齢48.5±9.0歳)を対象とした。残業を含めた一日の労働時間から,対象者を12時間以上,8~12時間,8時間以内の3群に分類した。問診票のなかから労働態様,生活形態,嗜好習慣,身体的及び精神的愁訴について18項目を選び,長時間労働者の特徴を解析した。一日12時間以上の勤労者は500名あり,他の2群に比べて,年齢が若く,対人業務が多く,最近の仕事内容の変化でつらくなったと感じている者が多く,一ヶ月あたりの休日数は少なかった(P<0.001)。生活形態では睡眠時間が少なく,定期的運動習慣が少なく,3度の食事がきちんと取れない,寝る前に食事をとる,今も喫煙しているなどの特徴が見られた(p<0.001)。また,自覚的愁訴では体全体がだるい,朝の出勤がつらい,職場での対人関係が悪い,困った時の相談相手がいない,日常生活が楽しく過ごせていないなどの問題を抱える者が多かった(p<0.007)。長時間勤労は脳・心血管疾患の危険因子であることが示されているが,長時間労働者では多くの問題点を抱えており,労働状態や日常生活の把握に,問診表がもつ意義の重要性が改めて示された。