著者
青木 孝史 中村 雅俊 鈴木 大地 大箭 周平 江玉 睦明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.18001, (Released:2018-11-06)
参考文献数
24

筋力トレーニングは,筋力低下や筋萎縮の処方として用いられる手技である.先行研究において,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングでは,神経適応により筋力が増加することが報告されている.しかし,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋厚に及ぼす影響は不明である.本研究の目的は,上腕三頭筋を対象に,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋力および筋厚に与える影響を明らかにすることである.対象は,12名の健常若年男性の両腕とし,無作為に皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングを行う側と低負荷筋力トレーニングのみを行う側に群分けを行った.筋力トレーニングは1RMの50%の重量を用いて,週3回8週間の介入を行った.筋力トレーニング介入前後に1RMと上腕三頭筋の筋厚を測定した.その結果,有意な交互作用は認められなかったが,皮膚冷刺激の有無に関係なく,両介入側ともに8週間の介入後に有意な1RMおよび筋厚の増加が認められた.この結果より,皮膚冷却による筋力トレーニングとの相乗効果は認められないことが明らかになった.
著者
杉本 岩雄 小川 茂樹 中村 雅之 瀬山 倫子 加藤 忠
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.831-840, 1998-12-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
17

ポリマー及びアミノ酸の高周波スパッタ膜を感応膜とした水晶振動子式センサ素子のppbレベルにおける石油留分ガスやガソリン, 重油の揮発ガスの検出機能を調べた。ポリエチレン (PE) 多孔質焼結体のスパッタ膜は成膜方法により大きくセンサ機能が影響を受けた。炭化が進んだPE膜センサや残留水分が多い状態で作成したPE膜センサは感度が不十分であった。これに対して, 排気を十分して作成したPE膜や紫外光励起を行って作成したPE膜センサはppbレベルの石油成分ガスに対し十分な感度を有する。この, 紫外光励起効果によりPE膜センサの検出感度は向上し, 炭素数12以上の直鎖状炭化水素ではppt領域の極低濃度なガス検知が十分可能であることが示唆された。しかし, 感応膜中への拡散による吸収・保持過程が検出機構を支配するため, 飽和するまでの時間の長い, 時定数の大きなセンサ応答を示す。アミノ酸のスパッタ膜を感応膜としたアミノ酸膜センサはppb領域の濃度域では極めて低い応答しか示さず, フロロポリマー膜センサでは検出能力が認められなかった。また, PE膜センサは水蒸気の影響を受けにくく選択的に有機ガスを高感度に検出できことも確認でき, 環境センシングに有力なセンサ素子と言える。
著者
酒井 秀晃 中村 雅子 五十嵐 善英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.388, pp.41-48, 1999-10-25
参考文献数
7

公開鍵暗号に対するSemantic Securityの新しい定義を提案する.Semantic Securityとは,平文に関するどのような部分情報も部分解読困難であることをいう.従来のSemantic Securityの定義はChosen-Plaintext Attackに対しての定義であり,Chosen-Ciphertext Attackに対しては定義されていなかった.そこでChosen-Plaintext Attackに対してもChosen-Ciphertext Attackに対しても有効な定義を提案する.また,公開鍵暗号に対してSemantic SecurityとIndistinguishabilityが等価であることを示す.新しいSemantic Securityの定義とGoldwasserとMicaliによるSemantic Securityの定義の関係を示す.Chosen-Plaintext Attackに対して,ある公開鍵暗号が新しい定義の意味でSemantic Securityを満たしているならばGoldwasserとMicaliによる定義の意味でもSemantic Securityを満たしているが,その逆は成り立たない.
著者
中村 雅美 青戸 勇太 森山 健 前田 俊二 鈴木 寛 堀江 聖岳
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.650-651, 2018

<p>高速道路での逆走は、死亡事故につながる可能性が高い非常に危険な事案である。高齢化の進展といった社会状況のもと、逆走事故の発生件数は依然として多い状況にあり、逆走対策の必要性は高い。我々は、一般物体検出手法であるSingle Shot MultiBox Detectorと動きを捉えるOptical Flowを組み合わせた逆走検知手法を提案してきた。本報告では、提案手法の車両検知精度の評価結果について述べる。</p>
著者
坂梨 謙一 中村 雅史 別府 五郎 東 威志 脇坂 匠
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.1684-1689, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
12

Four cases of chronic complete acromioclavicular dislocation were treated by the contrived coracoid process transfer method. We report the operative procedure and clinical results.The coracoid process, with its attached coracoacromial ligament and the conjoined tendons, is partially osteotomized and transferred to the clavicle. The scarred acromioclavicular ligament is repaired by the coracoacromial ligament and the conjoined tendons are substituted for the coracoclavicular ligament. The acromioclavicular joint is fixed by a Kirschner wire for eight weeks.This surgical procedure was applied to four patients who had been classified as type III by Tossy's classification. The follow-up period ranged from 11 months to 3 years and 2 months.One case required re-operation because of breakage of the transferred coracoid process. But now, all patients have returned to previous activities and there have been no problem with ADL.The clinical results of all patients were judged to be satisfactory.
著者
中村 雅哉
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1058, pp.160-163, 2000-09-18

ゲーム大手のナムコ会長兼社長にして、再建途上の映画大手・日活(東京・文京区)の社長も務める男——それが、今年12月で75歳になる中村雅哉だ。怒ったときこそ迫力を増すが普段は好々爺然とした風貌と、柔らかく律義そうな物腰で、日々、社内外を歩き回る中村は、普通の人に比べて少々変わった生活リズムを持っている。1日に3回、起床・就寝を繰り返すのだ。
著者
若松 美貴代 中村 雅之 春日井 基文 肝付 洋 小林 裕明
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of the School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Kagoshima University (ISSN:13462180)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-30, 2018-03-31

近年,妊産褥婦の自殺,子どもの虐待の問題から周産期メンタルヘルスの重要性が注目されるようになった。より細やかな支援のためには妊娠早期から関わることが必要である。そのため2017年に母子保健法改正が行われた。妊娠早期から産後うつ病を予測できる質問紙が求められ開発が行われているが,日本で使用できるものは少ない。諸外国で広く用いられているPostpartum Depression Predictors Inventory-Revised(PDPI-R)が有効と考えられる。日本語へ翻訳し,信頼性,妥当性と産前産後のカットオフ値の検討も行われている。PDPI-Rは妊娠期から産後うつ病を予測できるだけでなく,妊産褥婦の背景を多角的に把握でき,支援する際のアプローチの手がかりにもなりうる。今後,本調査票が広く用いられ,産後うつ病,虐待,ボンディング障害の関係性についても明らかになることが期待される。In recent years, the issues of suicide and child abuse committed by pregnant and postpartum woman have focused attention on perinatal mental health. Three questionnaires for use after childbirth have been found to identify mothers at risk for postpartum depression and child abuse. However, for detailed assistance it is necessary to provide support early in the pregnancy. Therefore, the Maternal and Child Health Law was revised in 2017.A questionnaire that can predict postpartum depression from early pregnancy is required and some candidates have been developed. However, no such questionnaire has been validated for use in Japan. The Postpartum Depression Predictors Inventory-Revised (PDPI-R), which is widely used in other countries, is considered to be effective for predicting postpartum depression. Therefore, we translated the PDPI-R into Japanese and examined its reliability, validity, and cut-off values during pregnancy and postpartum.The PDPI-R could not only predict postpartum depression during pregnancy, but also provided a multifaceted understanding of the backgrounds of perinatal woman. We hope that this questionnaire will be widely used in the future. It is expected that the use of the PDPI-R will help clarify the relationships among postpartum depression, child abuse, and bonding disorder.
著者
髙濱 聡 溜渕 功史 森脇 健 秋山 加奈 廣田 伸之 山田 尚幸 中村 雅基 橋本 徹夫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

気象庁では,地震調査研究推進本部の施策に基づき,全国の高感度地震計のデータを収集し震源決定等の処理を一元的に行い,その結果を地震カタログとして公表している。 現在の地震カタログは,精査により一定の基準を満たしたものを掲載することとしている。しかし,東北地方太平洋沖地震後の余震域では余震活動は低下してきているものの以前と比べれば活発な状況にあり,処理対象地震の規模の下限を上げた処理を行っていることから,検知されても処理基準未満であるため地震カタログに掲載されない地震がある。 これに対処するため,平成25年度に同本部地震調査委員会の下で検討が行われ,1)これまでの検知能力は維持し,2)検知された地震のすべてを地震カタログへ掲載する,3)精度に段階をつけた品質管理を行う,の3つの方向性を示した報告がまとめられた。 気象庁ではこの報告を踏まえ,自動震源を活用するなど,震源決定処理手順を変更し改善する。具体的には,領域と深さごとに精査を行う地震のMの閾値(以下,Mthと記す)を設定し, Mth以上の地震については,現行通りに精査した震源決定を行い,Mth未満の地震については自動震源を基本とし,検知されても自動震源が求まらない地震については,最大10点程度の観測点を検測する簡易な手順により震源決定を行うことで、処理の効率を高める。精査される震源の目安は、内陸の浅い地震はM2以上とし,海域については陸域(観測網)からの距離に応じてMを上げて最大でM4以上とする。また,処理方法と精度の違いがわかるような登録フラグを新たに設ける。 ここでは、新たな地震カタログを用いて気象庁が作成する震央分布図等の資料について、具体例を紹介する。
著者
足立 里美 阿久澤 さゆり 玉木 有子 松森 慎悟 中村 雅英 澤山 茂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.136, 2004

【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
著者
中島 祐一 中村 雅子 酒井 一彦 御手洗 哲司
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

南西諸島には400種以上ものサンゴが生息しており、種多様性豊かなサンゴ礁を形成しているが、近年の地球規模・地域規模の撹乱の影響でサンゴ礁の減衰が懸念されている。サンゴ個体群がどのように維持されているかを評価することは、個体群動態を予測する上で必要不可欠である。本研究では集団遺伝学・ゲノム学的手法を駆使してサンゴ個体群の遺伝解析を行った。大隅諸島、琉球列島、大東諸島、小笠原諸島のアザミサンゴ属で一塩基多型(SNPs)解析を行った結果、琉球列島内では個体群間のコネクティビティが高いこと、小笠原諸島は他の解析地域間とのコネクティビティが低く長期にわたるタイムスケールでも移住がほとんどないことが示唆された。このことは、地理的距離が遺伝的なコネクティビティを維持することに重要であること、飛び石状の生息地がない場合には幼生分散や分布拡大が制限されることを示す。また、前年度までに開発したマイクロサテライトマーカーのうち9遺伝子座を用いて、屋外水槽内のハナヤサイサンゴ属の親子関係を解析した。その結果、親候補となるハナヤサイサンゴ種を複数飼育していたものの、幼サンゴ25群体は1種類のハナヤサイサンゴ種に由来し、さらに無性生殖に由来するクローンであることが判明した。ハナヤサイサンゴのクローンは物理的な破片分散だけでなく、他の地域でも報告されている無性的なプラヌラ幼生の放出でも起こりうる。一方、人工的な飼育環境によるストレスでポリプの抜け出しが起こった可能性も考えられる。さらに、同じ属でも種類によって無性生殖のプロセスに大きな違いがある可能性も示唆された。
著者
中村 雅彦 斎藤 和志 若林 満
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-22, 1990-04-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

The purpose of this study was to investigate how attitude change is generated by the recipient's degree of attitude formation, evaluative-emotional elements contained in the persuasive messages, and source expertise as a peripheral cue in the persuasion context. Hypotheses based on the Attitude Formation Theory of Mizuhara (1982) and the Elaboration Likelihood Model of Petty and Cacioppo (1981, 1986) were examined. Eighty undergraduate students served as subjects in the experiment, the first stage of which involving manipulating the degree of attitude formation with respect to nuclear power development. Then, the experimenter presented persuasive messages with varying combinations of evaluative-emotional elements from a source with either high or low expertise on the subject. Results revealed a significant interaction effect on attitude change among attitude formation, persuasive message and the expertise of the message source. That is, high attitude formation subjects resisted evaluative-emotional persuasion from the high expertise source while low attitude formation subjects changed their attitude when exposed to the same persuasive message from a low expertise source. Results exceeded initial predictions based on the Attitude Formation Theory and the Elaboration Likelihood Model.
著者
中村 雅一 佐久間 広貴 酒井 正俊 飯塚 正明 工藤 一浩
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.77-82, 2003-02-10 (Released:2009-01-27)
参考文献数
15

This article presents the concept and some fundamental research on ‘self-assembled’ nanoscale transistors using charge transfer (CT) complexes. First, TTF-TCNQ CT complex wires of organic metals having high conductivity, are formed by applying electric field during vacuum deposition. Then, a self-aligned active part is formed in the gap between a pair of grown wires. The semiconductive part spontaneously formed at the point of wire contact can be used as an active part; besides, we can employ the metal-semiconductor (metal-insulator) phase transition devices consisting of CT complex bilayers of which electronic structure is modulated by external electric field. On the CT complex wires and CT complex bilayer transistors, some experimental results are presented.
著者
中村 雅子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.76-85, 2003
被引用文献数
3

本研究では, 青年の環境意識や環境配慮行動の形成に及ぼす母親の言動の影響を, 母親と子どもから独立に回答を得て, 両者のデータをマッチングさせることにより検討した。分析対象者はオンライン機器による調査で回答を得た, 中学生から独身社会人までの男女およびその母親の273組である。環境意識尺度・環境配慮行動尺度を目的とする重回帰分析, および13の環境配慮行動のそれぞれの実行の有無を目的としたロジスティック回帰分析の結果, 以下のことが明らかになった。1) 子どもの環境意識尺度に対して説明変数として母親の環境意識尺度の効果が有意だった。2) 環境配慮行動尺度に対して母親の環境配慮行動, とくに実践とともに家族にも協力要請を行った場合の効果が有意だった。3) いずれの場合も母親変数の投入で重回帰分析の説明力が大きく改善された。4) 個別の環境配慮行動を目的変数とするロジスティック回帰分析では, 13項目のうち10項目について母親の環境配慮行動の実践-要請の変数が最も有効な説明変数であった。以上のことから, 環境意識形成および具体的な行動場面での母親の影響の重要性が確認された。また発達段階別に見ると, 子どもが中学・高校生の年齢段階よりも大学生等・社会人の年齢段階の方が母親関連の変数の影響が大きかった。
著者
中村 雅子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.76-85, 2003
被引用文献数
2

本研究では,青年の環境意識や環境配慮行動の形成に及ぼす母親の言動の影響を,母親と子どもから独立に回答を得て,両者のデータをマッチングさせることにより検討した。分析対象者はオンライン機器による調査で回答を得た,中学生から独身社会人までの男女およびその母親の273組である。環境意識尺度・環境配慮行動尺度を目的とする重回帰分析,および13の環境配慮行動のそれぞれの実行の有無を目的としたロジスティック回帰分析の結果,以下のことが明らかになった。1)子どもの環境意識尺度に対して説明変数として母親の環境意識尺度の効果が有意だった。2)環境配慮行動尺度に対して母親の環境配慮行動,とくに実践とともに家族にも協力要請を行った場合の効果が有意だった。3)いずれの場合も母親変数の投入で重回帰分析の説明力が大きく改善された。4)個別の環境配慮行動を目的変数とするロジスティック回帰分析では,13項目のうち10項目について母親の環境配慮行動の実政-要請の変数が最も有効な説明変数であった。以上のことから,環境意識形成および具体的な行動場面での母親の影響の重要性が確認された。また発達段階別に見ると,子どもが中学・高校生の年齢段階よりも大学生等・社会人の年齢段階の方が母親関連の変数の影響が大きかった。