著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0376, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
藤田 禎規 岸 良示 中沢 潔 高木 明彦 長田 圭三 龍 祥之助 宮津 修 渡邉 義之 西尾 智 松田 央郎 石川 由香子 三宅 良彦 中村 雅 望月 孝俊
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.737-743, 2006-09-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は52歳, 女性.心室細動 (Vf) による心肺停止状態となり, 植込み型除細動器 (ICD) 植込み術を施行した.以後Vf発作は認めなかったが, 発作性心房細動 (Paf) によるICDの不適切作動を頻回に認めた.Pafは多剤無効でアミオダロンを使用したが, 甲状腺機能亢進症を生じたため継続不能となった.アミオダロン中止により, 再びPafによるICDの不適切作動を認めた.このため薬物コントロールは困難と考え, カテーテルアブレーションによる房室プロツク作成術および心房リードの追加を行いDDIRペーシングとした.その後はICDの不適切作動は認めなかったが, 7カ月後に失神発作を生じた.ICD記録では, 頻拍イベントは認めなかったが, 入院後の心電図モニターで失神前兆と一致して心停止を認めた.心房波は75bpmの自己調律で, ICDの心内心電図記録から, 心房波のオーバーセンシングによる心室ペーシング抑制と考えられた.
著者
中村 雅俊 長谷川 聡 梅原 潤 草野 拳 清水 厳郎 森下 勝行 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0153, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】頸部や肩関節の疾患は労働人口の30%以上が患っている筋骨格系疾患であると報告されている。その中でも,上肢挙上時の僧帽筋上部の過剰な筋収縮や筋緊張の増加は肩甲骨の異常運動を引き起こし,頸部や肩関節の痛みにつながると報告されている。そのため,僧帽筋上部線維の柔軟性を維持・改善することは重要であり,その方法としてストレッチングがあげられる。一般的にストレッチングは筋の作用と反対方向に伸ばすことが重要であると考えられている。僧帽筋上部線維の作用は肩甲骨の拳上・上方回旋と頸部伸展・反対側回旋・同側の側屈であるため,ストレッチング肢位は肩甲骨の拳上・上方回旋を固定した状態で,屈曲・同側回旋・反対側の側屈が有効だと考えられる。僧帽筋上部線維に対するストレッチングの効果を検証した報告は散見されるが,効果的なストレッチング肢位を検討した報告は存在しない。そこで本研究では,筋の伸長量と高い相関関係を示す弾性率を指標に,僧帽筋上部線維の効果的なストレッチング肢位を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は上肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない若年男性16名の非利き手の僧帽筋上部線維とした。先行研究に従って,第7頚椎と肩峰後角の中点で,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,弾性率を測定した。弾性率測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。測定肢位は,座位にて肩甲骨の挙上・上方回旋を徒手にて固定した状態で対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に頸部を屈曲,側屈,屈曲+側屈,側屈+同側回旋,屈曲+側屈+同側回旋を行う5肢位に,安静状態である頸部正中位を加えた計6肢位とし,計測は無作為な順で行われた。統計学的検定は,頸部正中位と比較してストレッチングが出来ている肢位を明らかにするため,頸部正中位に対する各肢位の弾性率の比較をBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。また,頸部正中位と比較して有意に高値を示した肢位間の比較もBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。【結果】頸部正中位に対する各肢位の比較を行った結果,全ての肢位で有意に高値を示した。また有意差が認められた肢位間での比較では,屈曲に対し,その他の全ての肢位で有意に高値を示したが,その他には有意な差は認められなかった。【結論】肩甲骨の挙上・上方回旋を固定した状態で頸部を屈曲することで僧帽筋上部線維をストレッチング出来るが,屈曲よりも側屈する方が効果的にストレッチングすることが可能であった。また,側屈に屈曲や同側回旋を加えても僧帽筋上部線維をさらに効果的にストレッチング出来ないことが明らかになった。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 西下 智 梅原 潤 市橋 則明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017-04-01 (Released:2017-03-19)
参考文献数
41
被引用文献数
1 3

Many previous studies have reported that static stretching (SS) may decrease muscle stiffness and compromise muscles’ ability to produce maximal strength. However, the effects of SS at different repetition durations and numbers within a constant total time remain unclear. Therefore, the purpose of this study was to examine whether SS for a constant total time (2 min) with different repetition durations and numbers (e.g., 60 s × 2 times, 30 s × 4 times, and 10 s × 12 times) produces different changes in muscle stiffness and strength. Fifteen healthy males (mean age: 23.3 ± 1.0 years) participated in this study. Muscle stiffness was measured during passive ankle dorsiflexion using dynamometer and ultrasonography. In addition, muscle strength of the plantar flexors was measured using a dynamometer at 0° of plantarflexion with the hip and knee joints fully extended. Muscle stiffness and strength were measured before and immediately after SS. Each experimental protocol was conducted in random order with at least a 1-week interval but no longer than a 2-week interval between testing sessions. The results showed that there were no significant interaction effects on muscle stiffness and strength. However, in all experimental protocols, muscle stiffness and strength immediately decreased after SS. In conclusion, SS for a constant total of 2 min decreases muscle stiffness and strength regardless of repetition durations and numbers of each individual SS.
著者
清水 厳郎 長谷川 聡 本村 芳樹 梅原 潤 中村 雅俊 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0363, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】肩関節の運動において回旋筋腱板の担う役割は重要である。回旋筋腱板の中でも肩の拘縮や変形性肩関節症の症例においては,肩甲下筋の柔軟性が問題となると報告されている。肩甲下筋のストレッチ方法については下垂位での外旋や最大挙上位での外旋などが推奨されているが,これは運動学や解剖学的な知見を基にしたものである。Murakiらは唯一,肩甲下筋のストレッチについての定量的な検証を行い,肩甲下筋の下部線維は肩甲骨面挙上,屈曲,外転,水平外転位からの外旋によって有意に伸張されたと報告している。しかしこれは新鮮遺体を用いた研究であり,生体を用いて定量的に検証した報告はない。そこで本研究では,せん断波エラストグラフィー機能を用いて生体における効果的な肩甲下筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人男性20名(平均年齢25.2±4.3歳)とし,対象筋は非利き手側の肩甲下筋とした。肩甲下筋の伸張の程度を示す弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,肩甲下筋の停止部に設定した関心領域にて求めた。測定誤差を最小化できるように,測定箇所を小結節部に統一し,3回の計測の平均値を算出した(ICC[1,3]:0.97~0.99)。弾性率は伸張の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する測定肢位は下垂位(rest),下垂位外旋位(1st-ER),伸展位(Ext),水平外転位(Hab),90°外転位からの外旋位(2nd-ER)の5肢位における最終域とした。さらに,ExtとHabに対しては肩甲骨固定と外旋の有無の影響を調べるために肩甲骨固定(固定)・固定最終域での固定解除(解除)と外旋の条件を追加した。統計学的検定は,restに対する1st-ER,Ext,Hab,2nd-ERにBonferroni法で補正したt検定を行い,有意差が出た肢位に対してBonferroniの多重比較検定を行った。さらに伸展,水平外転に対して最終域,固定,解除の3条件にBonferroniの多重比較検定を,外旋の有無にt検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】5肢位それぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はrestが64.7±9.1,1st-ERが84.9±21.4,Extが87.6±26.6,Habが95.0±35.6,2nd-ERが87.5±24.3であった。restに対し他の4肢位で弾性率が有意に高値を示し,多重比較の結果,それらの肢位間には有意な差は認めなかった。また,伸展,水平外転ともに固定は解除と比較して有意に高値を示したが,最終域と固定では有意な差を認めなかった。さらに,伸展・水平外転ともに外旋の有無で差を認めなかった。【結論】肩甲下筋のストレッチ方法としてこれまで報告されていた水平外転からの外旋や下垂位での外旋に加えて伸展や水平外転が効果的であり,さらに伸展と水平外転位においては肩甲骨を固定することでより小さい関節運動でストレッチ可能であることが示された。
著者
廣野 哲也 池添 冬芽 田中 浩基 梅原 潤 簗瀬 康 中村 雅俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0610, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度・高反復トレーニングの筋力増強・筋肥大効果が着目されており,30%1RM程度の低強度トレーニングでも反復回数を12セット程度に増やすことにより,80%1RMの高強度と同等の効果が得られることが報告されている。一方,セット間の休息時間の影響について,高強度トレーニングではセット間の休息時間を長くすると介入効果が減少することが報告されているが,低強度トレーニングにおけるセット間の休息時間の影響を検討した研究はみられない。また,筋力トレーニング直後に生じる筋腫脹は骨格筋へのメカニカルストレスを反映しているとされており,トレーニング介入による筋肥大効果と関連があると考えられている。そこで本研究は低強度・高反復トレーニングにおける休息時間の違いがトレーニング直後の筋腫脹に及ぼす影響について,1)筋腫脹が生じる運動量(セット数)に違いはみられるのか,2)高反復トレーニング直後の筋腫脹の程度に違いはみられるのかに着目して検討した。【方法】対象は健常若年男性42名(年齢22.9±2.4歳)とし,トレーニングのセット間の休息時間を20秒,60秒,180秒とする3群にそれぞれランダムに振り分けた。30%1RMの低強度での膝伸展筋力トレーニングを膝関節屈曲90°から0°までの範囲で求心相3秒,保持1秒,遠心相3秒の運動速度で行った。なお,1RMは膝関節屈曲90°から0°まで膝伸展可能な最大挙上重量を筋機能評価装置(BIODEX社製)にて測定した。10回の反復運動を1セットとし,各セット間休息時間をはさんで計12セット行った。筋腫脹の評価として,超音波診断装置(GEメディカルシステム社製)を用いて外側広筋の筋厚を測定した。測定肢位は端座位・膝関節屈曲90°位とし,測定部位は上前腸骨棘と膝関節外側裂隙を結ぶ線の遠位1/3とした。筋厚の計測はトレーニング直前およびトレーニング3セットごとの計5回行った。統計解析は各群における筋厚の変化について反復測定分散分析および事後検定として多重比較を行った。さらに,多重比較検定を用いてトレーニング前に対する12セット終了時の筋厚変化率の群間比較を行った。【結果】反復測定分散分析の結果,全ての群で主効果を認め,多重比較の結果,休息20秒群と60秒群はトレーニング前と比較して3,6,9,12セット後のすべてにおいて有意な筋厚の増加がみられた。一方,180秒群においては12セット後のみ筋厚の有意な増加がみられた。また,12セット後の筋厚変化率に3群間で有意差はみられなかった(20秒群;5.1±6.0%,60秒群;6.8±1.7%,180秒群;4.4±3.1%)。【結論】低強度トレーニングにおいて,12セットの高反復トレーニング直後の筋腫脹にはセット間の休息時間による違いはみられないが,セット間の休息時間が長くなると筋腫脹を生じさせる運動量(セット数)はより多く必要となることが示唆された。
著者
岡本 八寿祐 中村 雅彦
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.193-202, 2009-11-30
参考文献数
21

毎年、大量の外国産クワガタムシ・カブトムシが日本に輸入されている。このような現状の中、在来種との競合、交雑など様々な問題点が指摘され、それに関わる検証実験等が報告されている。しかし、その報告の多くは外国産クワガタムシの例であり、外国産カブトムシの例はほとんどない。外国産カブトムシも外国産クワガタムシと同様、定着、競合など生態系や在来種への影響等のリスク評価を行なう必要がある。本研究では、コーカサスオオカブトムシが、成虫期・幼虫期で日本の野外で定着することができるのか、また、日本本土産カブトムシと競合し、その採餌行動等に影響を与えるのかを調べた。野外観察と飼育実験の結果、コーカサスオオカブトムシの成虫は、日本本土産カブトムシと同等に生存し、産卵した。また、野外でコナラの樹液を吸った。しかし、幼虫は、冬に野外で生存できなかった。これらのことから、コーカサスオオカブトムシの日本への定着は、困難であることが示唆された。成虫の活動に関しては、コーカサスオオカブトムシの雄の活動時間帯は、日本本土産カブトムシの雄と重なる時間帯があり、餌場で闘争した場合、コーカサスオオカブトムシが勝つことが多かった。これらのことから、コーカサスオオカブトムシは、逃げ出したり放虫された成虫が、野外で活動する際、日本本土産カブトムシと競合し、その採餌行動に影響を及ぼす可能性が高いと考えられた。
著者
遠藤 康男 只野 武 中村 雅典 田端 孝義 渡辺 誠
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

遠藤らの研究成果に基づく仮説“筋肉疲労が筋肉組織からサイトカインのinterleukin(IL-1)を遊離させ,この因子が筋肉組織にヒスタミン合成酵素のHDCを誘導し、持続的なヒスタミンの産生をもたらし,顎関節症などにおける筋肉痛を引き起こすのではないか?"を検討し,以下の結果を得た.(1)マウスの大腿四頭筋と咬筋を電気刺激すると,刺激の強さに比例してHDC活性が増加する.(2)強制歩行(筋肉運動)により、大腿四頭筋のHDC活性は歩行時間に比例して増加する.(3)筋肉でのHDC誘導に肥満細胞(ヒスタミン貯蔵細胞)は関与しない.(4)抗ヒスタミン剤のクロルフェニラミン(CP,ヒスタミンH1受容体の遮断薬)と,これまで臨床的に使用されてきた消炎鎮痛薬(プロスタグランジン合成阻害薬)のフルルビプロフェン(FB)について,顎関節症患者への臨床効果を比較した.CPでは,肩こりや頭痛などの併発症状の改善も含め,約80%の患者に対し改善効果が認められ,一方,FBでは改善効果は約40%であり,副作用の胃障害のため,投与中止のケースも生じた.CPでは,副作用はよく知られている眠気だけであった.(5)IL-1をマウスに注射すると,種々の組織でヒスタミン合成酵素のHDCが誘導されるが,大腿四頭筋および咬筋においてもHDCが誘導される.IL-1による筋肉でのHDC誘導は,電気刺激や運動の場合よりも速やかに起こり,IL-1は1μg/kgの微量の用量でHDCを誘導する.(6)マクロファージや血管内皮細胞は免疫学的刺激により,IL-1を産生することが知られる.筆者らは筋肉疲労もIL-1の産生をもたらすのではないかと予測し,IL-1の抗体とmicro ELIZA systemを用いて,血清中のIL-1の測定を試みたが,検出出来なかった.そこで,筋肉組織について,組織化学的にIL-1の検出を試みた.その結果,筋肉組織にはIL-1のβ型が存在し,毛細血管にも分布するが大部分は筋肉細胞のミトコンドリアに分布し,非運動時にも存在することを発見した.IL-1βは不活性な前駆体として合成され,酵素のプロセシングにより活性型に交換され細胞外に遊離されると言われる.従って,この発見は上記の仮説を補強する。しかし,非運動時の筋肉ミトコンドリアでの存在は予想外の発見である.(7)従来より疲労物質と考えられてきた乳酸が筋肉のHDC活性を調節する可能性は少ないものと思われる.(8)運動による筋肉でのHDC誘導の程度は,性差や年齢差,トレーニングの有無,マウス系統の違いなどで異なる.高齢マウスでは高いHDCの活性が誘導され,また,トレーニングはHDC活性の誘導を抑制する.以上の結果より筋肉疲労について次のメカニズムが想定されるに至った,IL-1β前駆体(血管内皮細胞および筋肉ミトコンドリアに分布)→運動に伴うミトコンドリア活性化/プロセシング酵素の活性化→活性型IL-1βの遊離→IL-1βによる血管内皮細胞の刺激→血管内皮細胞におけるHDCの誘導→ヒスタミン産生と放出→細胞脈の拡張,血管透過性亢進,筋肉痛(警告反応)→血液・筋肉細胞間の物質交換亢進/休息→疲労回復.また,本研究において,抗ヒスタミン剤は顎関節症の治療に有効な手段となることが示唆され,さらに,筋肉ミトコンドリアでのIL-1βの発見は,IL-1βによる筋肉細胞の調節という新たな研究の展開をもたらした.
著者
永吉 絹子 植木 隆 真鍋 達也 遠藤 翔 永井 俊太郎 梁井 公輔 持留 直希 平橋 美奈子 小田 義直 中村 雅史
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.762-771, 2016-08-01 (Released:2016-08-18)
参考文献数
19
被引用文献数
3

今回,我々は腸管子宮内膜症に対し,腹腔鏡手術を施行した5例を経験したので,報告する.症例は20~40歳代の未産婦の女性で,4例は繰り返す腹痛と腸閉塞症状の検査により腸管子宮内膜症が疑われ,1例は原因不明の消化管穿孔の診断で,腹腔鏡補助下に腸管切除が行われた.3例は回腸に,2例は直腸に狭窄病変を認めた.病理組織学的検査より,全例で腸管子宮内膜症と診断された.いずれも術後経過は良好で退院し,現在のところ再発の所見は認められていない.低侵襲性に優れた腹腔鏡手術は,腸管子宮内膜症に対し術後の早期回復と早期退院に有用で,拡大視効果により子宮・付属器が温存でき安全に手術を行える可能性が示唆された.
著者
石井 昇 松田 均 中山 伸一 鎌江 伊三夫 中村 雅彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

【研究目的】日常診療、研究等に多忙な医療従事者や医学生等に対して、その職種やレベル別に応じた適切な教育効果が期待されるコンピューターシミュレーションを用いた災害医学、災害医療の教育システムの開発を目指したもので、特に自己学習が可能なゲーム感覚で学習が継続できるプログラムを作成する。【研究実施計画】平成12年度は地震時の災害医療における国内外の関連資料の収集・分析と、コンピューターへのデータ収録、さらに地震災害の初動期災害医療対応のシナリオ作成に必要な画像の収録・編集等を行った。平成13年度は、災害発生初期における医療対応での問題点等の抽出を行い、災害医療の実際等に基づいたシナリオ作成と災害発生後の状況を疑似体験できる災害現場を仮想空間にてシミュレーションできる3次元モデルプログラムの開発をコンピューターシミュレーションソフト開発会社等との協力のもとに着手した。平成14年度は、コンピューターソフト関連の技術者等の協力を得てコンピューターグラフィック化を含めたシナリオ作成と災害発生現場を擬似体験できる災害現場の3次元仮想空間でのシミュレーションモデル作成を行った。【本研究によって得られた新たな研究等の成果】地震災害想定モデル作成の複雑さと困難さに直面し、本研究期間内において地震災害想定シミュレーションシナリオ作成の完成に到達することは出来なかったが、コンピューターシミュレーションソフト開発会社の協力が得て、災害想定モデルのシナリオ作成の第一段階として、工場爆発想定の3次元の災害現場の仮想空間モデルを作成し、この仮想空間モデルを活用した災害現場でのトリアージ訓練シミュレーション教育システムのプロトタイプを作成中で、本年4月に完成した。今後地震災害想定モデルの作成に向けての研究を継続する予定である。
著者
中村 雅子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.546-549, 1994-03-31 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Scalp surface lipid (SSL) is one of the important parameters for the physiological study of human scalp. We investigated the refatting rate on the four sites (vertical, frontal, occipital, temporal) of the head in different seasons, before and 2, 24, 48hrs after shampooing. Forty normal females aged between 27 and 52 years were employed as subjects, and the Lipid Meter (Ricoh Co.) was used for measuring SSL. Following results were obtained:1. SSL began to be secreted immediately after shampooing and returned to the level of before shampooing in 24hrs.2. The refatting rate on the scalp depends on sites of the head: SSL was produced in the vertical and frontal sites almost from twice to thrice as much as that of the occipital and temporal ones.3. No seasonal difference was observed in the reffatting rate on each of the three sites of the head except frontal site.
著者
清水 義雄 中村 雅彦
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.17-30,64, 2000-07-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
26

鳥類の混群形成の意義には,相利共生,片利共生,寄生の3種類がある.カモ類の採餌混群では,随伴種は中核種の採餌行動により利用可能となった餌を採餌することで採餌効率を上げ,中核種は随伴種による明確な悪影響を受けないことから,混群形成の機能的な意義は片利共生とされてきた.渉禽類やスズメ目鳥類の混群では,混群サイズの増加にともない餌をめぐる競争や攻撃頻度が増大するため,随伴種のみならず中核種も採餌効率が下がること,人為給餌による餌量の増加は混群形成を抑制することがわかっている.しかしカモ類では,実験的に餌量を操作し,餌量の違いが混群形成の様式,混群サイズ,種間順位,各構成種の採餌行動に与える影響を明らかにした研究はない.そこで本研究は,非繁殖期に混群を形成するコハクチョウ,ホシハジロ,オナガガモに人為給餌を施し,人為給餌前後の混群形成の様式,採食行動,社会行動を比較することにより,餌量が混群形成の機能的意義に与える影響を明らかにすることを目的とした.調査は1996年10月15日から12月28日まで長野県南安曇郡豊科町の犀川貯水池で行なった.貯水池の一部に実験区を設定し,約30kgのイネの種子やもみがらを1日3回与え,餌量を操作した.群れは,単独,同種群,コハクチョウとホシハジロの2種混群,コハクチョウとオナガガモの2種混群,ホシハジロとオナガガモの2種混群,3種混群の6つのタイプに分け,人為給餌前後で各群れタイプの個体数を記録した.人為給餌前後の追従関係,混群タイプの構成割合,採餌割合,攻撃頻度を比較するため,コハクチョウ25個体,ホシハジロ22個体,オナガガモ21個体を一個体当たり8~13分間連続してビデオカメラで録画し,行動を分析した.各種の採餌テクニックや採餌頻度は,群れタイプで異なることが予想されたので,各群れタイプに属するコハクチョウ109個体,ホシハジロ91個体,オナガガモ79個体を一個体につき約5分間ビデオ録画し,人為給餌前後で採餌テクニックと採餌頻度を分析した.採餌混群は,人為給餌前後とも,コハクチョウが首入れ採餌をする前に水中を脚で頻繁にかき回すときに形成された.脚のかき回しにより水底に沈むイネやぬかがわき上がり,ホシハジロはコハクチョウの直下に潜水採餌,オナガガモはわき上がった餌を両種の周囲で採餌した.各種の追従行動から,3種混群の中核種はコハクチョウ,追従種がホシハジロとオナガガモであり,オナガガモはコハクチョウに追従するホシハジロに追従することがわかった.追従頻度は人為給餌後に増加し,その結果3種混群の混群形成率が増加し,群れサイズは約2倍に上昇した.この時,構成種の76%がホシハジロだった.採餌割合は,人為給餌後の3種混群時に3種とも増加した.人為給餌前のコハクチョウの首入れ採餌頻度は3種混群時が最も高く,ホシハジロも3種混群時及びコハクチョウとの混群時に潜水時間を短縮することで潜水採餌の頻度を高めた.オナガガモは3種混群時のみ,ついばみ採餌,首入れ採餌,こしとり採餌の3種類の採餌テクニックを併用し,こしとり採餌では移動距離を短くすることにより採餌頻度を高めた.人為給餌前は3種とも3種混群において採餌頻度を高めているため,採餌混群の機能的意義は相利共生といえる.人為給餌後の3種混群では,コハクチョウだけが採餌頻度を下げ,ホシハジロに対する攻撃頻度を増加させた.これに対しホシハジロとオナガガモは人為給餌前と同様に採餌頻度を高めていた.したがって人為給餌後の採餌混群の機能的意義は,宿主がコハクチョウ,寄主がホシハジロ,オナガガモの寄生関係といえる.3種混群のコハクチョウにとって,ホシハジロの適度な個体数は,自らの採餌頻度を高めるのに有効だが,人為給餌による過度の群れサイズの増加はコハクチョウの採餌行動の混乱,攻撃頻度の増加をもたらし,採餌頻度は減少する.このことから,随伴種であるホシハジロの個体数が採餌混群の適応的意義を決定する主因と考えた.人為給餌の餌は3分以内に水中に沈み,沈んだ餌はコハクチョウが脚でかき回すことではじめてホシハジロ,オナガガモが利用可能となる.それゆえ,カモ類の混群では,与えた餌の絶対量ではなく,中核種により開発され随伴種が利用可能になった餌量が混群形成に影響を与えると考えた.
著者
中村 雅史 原口 忠男 内山 賢
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.325, 2010-04-01 (Released:2010-11-11)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

This paper presents an investigation of the thermoelectric performance of DLC films deposited on glass substrates using RF plasma CVD method. The respective thermoelectric performances of Si-doped DLC film and non-Si doped DLC film were evaluated and compared. The DLC films showed a Seebeck effect, and they had p-type semiconductor characteristics.The values of DLC films’ Seebeck coefficients were 1/5 - 1/100 compared to those of the conventional thermoelectric materials. At temperatures of 80-200°C, the Seebeck coefficients of Si-doped DLC and non-doped DLC were almost identical. The resistivity value of DLC films decreased exponentially with increasing temperature. Furthermore, the DLC film values were much larger than those of conventional thermoelectric materials: 105 to 1010 times larger. The thermal conductivity of DLC films was about one-half that of conventional thermoelectric materials at room temperature. The results presented above suggest that reducing DLC film resistivity through control of deposition conditions, doped element composition, and other means must be examined to raise the thermoelectric performance of DLC film.
著者
中村 雅子 上野 直樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.627-643, 2008 (Released:2010-04-23)
参考文献数
25
被引用文献数
1

In this study, authors participated in the process of re-designing an information system for civil activities. From viewpoint of Actor Network Theory, they mainly pointed out two findings. Firstly, designing an information system inevitably includes (re-)designing related social organization and activity itself. Therefore the requirement engineering approach has its limitations, for it implicitly assumes that activities and social organization are out there independently from information systems, user requirements already exist, and they can be obtained out with various methods. Secondly, the subject of the information system design should not be regarded as an isolated individual or a team. It is a fluid network including artifacts and people with various interests. Moreover, these actors sometimes participate in, and withdraw from, the project. A new approach, the network-oriented approach, is required to make a useful information system, which will not cause serious breakdown.
著者
宮本 仁美 中村 雅道 成田 修 横田 歩 森永 裕幸
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.477-533, 1999-11

この報告は, 第37次南極地域観測隊気象部門が, 1996年2月1日から1997年1月31日まで昭和基地において, 1996年1月23日から1997年1月24日までドームふじ観測拠点において行った気象観測の結果をまとめたものである。観測方法, 測器, 統計等は第36次観測隊とほぼ同様である。越冬期間中に特記される気象現象としては, 次のものがあげられる。1) 昭和基地においては7月から10月にかけて気温が平年より高めに経過し, 特に9月は月平均気温が平年値に比べ6.1℃も高かった。月平均気温は9月と10月に歴代1位の高温を記録した。2) 5月26日から28日にかけて発達した低気圧(ブリザード)に昭和基地が襲われ, 27日には最大風速44.3m/s(歴代3位), 最大瞬間風速61.2m/s(歴代1位)の強風を記録した。3) 昭和基地において, 8年連続で大規模なオゾンホールを観測し, オゾンホールが顕著だった10月, 11月のオゾン全量の月平均値は過去最低を記録した。特に10月の156m atm-cmは, これまで観測された月平均値の中で最小であった。4) 37次では36次に引き続きドームふじ観測拠点において越冬観測を行った。ドームふじ観測拠点における1996年の年平均気温は-54.4℃, 最低気温は5月14日に観測した-79.7℃であった。
著者
河上 淳一 田原 敬士 宮崎 優 光野 武志 尾池 拓也 曽川 紗帆 宮薗 彩香 桑園 博明 嶋田 早希子 中村 雅隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2183, 2010

【目的】我々は第6回肩の運動機能研究会で、投球動作でのボール把持違いによる上肢帯の可動域変化を報告した。結果としては、ボール把持時の母指と示指の位置違いは上肢帯可動域に影響を及ぼさず、ボールと母指の接触面の違いは、3rdTRの可動域に影響していた。しかし、肩関節可動域の変化と投球障害発生は直結するものではない。そこで、今回は投球障害歴の有無に対し、身体的特徴とボール把持項目が投球障害発生にどのような順列で関わるかを検討した。<BR>【方法】対象は、中学生の軟式野球部で、野球歴が一年以上ある65名(年齢13.1±0.8/身長158.88cm±20.42/体重50.39kg±9.75)とした。対象者を、投球障害歴あり群19名(以下:あり群)(肩障害2名/肘障害13名/肩肘障害4名)と、投球障害歴なし群46名(以下:なし群)に分けた。群分けの方法は、過去に病院を受診し、肩または肘に対し投球障害の診断名が下ったものをあり群とし、野球経験の中で肩または肘に疼痛がなかったものや病院を受診しなかったものをなし群と決めた。障害歴に関与する因子、A.個人因子4項目(年齢/身長/体重/野球経験)、B.身体チェック36項目(両側SLR/HBD/HER/HIR/DF/HFT/CAT/2ndER/2nd I R/2nd TR/3rd ER/3rdIR/3rdTR/Elbow-Flex/Elbow-Extension/Supination/Pronation、一側FFD/Latissimus Dorsi)、C.ボール把持8項目(示指と母指の位置関係/母指とボールの接触部位/投球側握力/非投球側握力/母指示指長/母指中指長/示指中指長/ボールと皮膚の距離)、D.ボールの握りに対するアンケート12項目(a.握りを意識するかb.ポジションで握りは変化するかc.ポジションによって握りを気をつけるかd.キャッチボールと守備練習中では握りが違うと感じるかe.指にかかる事を意識しているかf.キャッチボールで縫い目を気にするかg.守備練習中で縫い目を気にするかh.理想の握りがあるか i.ボールを強く投げる時強く握るかj.ボールを強くに投げる時軽く握るかk.握りを習ったことがあるかl.ストレートを習ったことがあるか)を調査した。以上60項目に対し平均値の差の検定はT検定、独立性の検定にはχ二乗検定を行い、群間の有意差を確認した。そこで有意差が認められたものを説明変数とし、障害歴の有無を目的変数に設定した。その変数に対し、多重ロジスティック回帰分析を用いて、どのような順列で判別されるかを確認した。<BR>【説明と同意】本研究はヘルシンキ条約に基づき実施し、同意を得た。<BR>【結果】群間の結果は、A.個人因子では年齢(P=0.0002)、野球歴(P=0.0006)、身長(P=0.014)の3項目で有意差が認められた。B.身体チェックでは有意差を認めなかった。C.ボール把持項目では母指と示指の位置関係(P=0.0008)、母指示指長(P=0.0160)、母指中指長(P=0.0161)、ボールと皮膚の距離(P=0.0249)、投球側握力(P=0.0022)、非投球側握力(P=0.0091)の6項目で有意差が認められた。D.アンケートではa.(P=0.0000)、b.(P=0.0354)の2項目に有意差が認められ、これら計11項目を説明変数に採用した。ロジスティック回帰分析では、変数減少ステップ法を用いP値が0.2000以下になるまで説明変数を減少させた。結果として有意な変数が4項目選択され、P値が低値なものから順に年齢(P=0.0348)、母指と示指の位置関係(P=0.0407)、野球歴(P=0.0502)、アンケートb(P=0.0533)であった。<BR>【考察】一般的に投球障害は、フォームの乱れを持ち合わせたまま、投球を長期継続した結果起こるオーバーワークだと考えられている。本研究においても、オーバーワークの要素となりえる年齢と野球歴の説明変数に高い判別値を認めた。同様の結果が先行研究にあるため、今回の研究の妥当性がうかがえる。ボール把持に関しても、アンケートbと母指と示指の位置関係の説明変数に高い判別値を認めた。そのため、ボール把持は投球障害に強く関与していると考えられる。当院の先行研究をふまえて結果を考察すると、ボールと母指の接触面は上肢帯の可動域に影響を認め、投球障害に影響を認めない。一方で、母指と示指の位置関係は上肢帯の可動域には影響を認めず、投球障害に影響を認める。今回の結果だけではフォームへの影響などは検討できない。そのため、今後は症例数を増やし障害部位別で検討を実施し、ボール把持と身体的特徴との関連性を検討したい。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は、理学療法場面での遠位運動連鎖を検討する重要性を示唆している。<BR>