著者
宮本 美沙子 福岡 玲子 岩崎 淑子 木崎 照子 中村 征子
出版者
教育心理学研究
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.139-151,189, 1964

児童の興味を, 単に興味の種類や領域の実態をとらえるだけでなく, 条件場面を設定し, そこから展開する知的興味の種類と深さが, 児童の能力や内的成熟により, 興味の展開にどのような機能をもつて働きかけるのか, その質的なありかたを分析究明する方法を開発することを目的とした。<BR>まず, 児童の知的興味がどのような方向にあるのかを知る手がかりを得るため, 予備研究として, 小学2・3・4年児約850名を対象に疑問調査を行なつた。その結果児童の疑問の種類11項目を選出した。<BR>予備研究によつて得た項目の, それぞれの内容を代表するテーマを選び, 写真および絵により11枚の図版を作成した。小学3年児男子20名, 女子20名, 計40名を対i象に, 個人面接法により図版を提示し, 「知つているごと」「知りたいと思うこと」の2面から, 知的興味の展開を自由に口述させた。<BR>児童の知的興味の展開を, その反応を種類別に分類するのでなく, なぜ知的興味をもつに至つたのか, 児童の考えかたの展開の面から, 児童の反応の質的差異を中心にして分類し, 次の6分類項目を選出した。すなわち,(1)画面の説明 (画面に固執してそれ以上に発展しないもの),(2)自分の感情・感じていること,(2)自分の経験 (2)および(3)は, 画面からやや離れた考えかたをしていながら, 自分というわくから脱け出せないもの),(4)単に事象・現象のみをとらえた考えかた (画面から発展し, 目に見える現象や事象を, そのものの分類・性質・定義の面からとらえているもの),(5)事象・現象の原因や起る過程をとらえた考えかた (4)よりは発展しているが, まだ機能的な考えかたとしては説明不十分なもの),(6)事 象・現象を, 子どもなりに機能的にとらえた考えかた (現象を機能的に把握して考えを進めているもの) の6 分類項目が設定された。<BR>各個人のなまの反応を, 各図版ごとに上記の6つの分類項目にはめて区分整理し, 1枚の表に全貌がわかるように書きこみ, 個人の知的興味の展開が一目でとらえられるようにした。<BR>児童の反応の結果を,(1) 分類項目別, 図版別,(3) 男女別,(4) 学業成績との関係, から考察した。<BR>その結果, 小学校3年児は多くの疑問をもつており, その領域も広範囲にわたつていることがわかつた。また知的興味の展開には個人差がみられた。この年令では, おおむね物事を事象や現象の原因や起る過程をとらえた考えかたをする傾向があり, 興味の集中したテーマからみると, 知的興味の方向が社会へと拡大している姿がみられた。この研究からは知的興味における男女差はみられなかつた。知的興味の展開における発達的段階と学業成績の良さとは, 必ずしも平行していなかつた。このことから, 適切な指導と教育により, 児童の疑問や興味をとおして, 学業成績などには現われない児童の潜在的な能力をのばしうることが, 可能であるし必要であると思われる。また教科の内容のありかたを検討し, 指導の方針を考えてみることも必要であると思われる。いいかえれば, 児童の興味・関心を, より総合的, 体系的に方向づけることにより, 断片的な興味としてとどまるだけでなく, 学問的な態度へと発展させてゆく可能性もあるものと考えられる。<BR>以上の結果から, 児童の知的興味の展開をこのように質的に分析することにより, いままでに接近できなかつた角度を究明することができると考えられる。
著者
中村 未樹
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.139-149, 2003-09-30

In this paper I aim to analyse Hamlet(1601) referring to the two contexts-a modern information society and the Elizabethan "intelligence" society. These societies, despite a difference of time, have a couple of problems in common: security and privacy. The former concerns with government, which endeavors to monitor all communications and establish "an open society" in order to forestall the acts of hackers and terrorists. The latter has to do with people who are forced to live under the surveillance of government. Hamlet, as a spy story, deals with the two problems by dramatizing an information war between Claudius and Hamlet. Claudius, owing to his murder of the former king and adultery with Gertrude, finds it necessary to survey and control information so as to maintain the security of his state. Checking information and public speech are routine for him. Regarding a transformed Hamlet as a suspicious figure, Claudius establishes a secret service, Elsinore Intelligence Network (EIN), and moves his spies to decipher as well as monitor Hamlet. On the other hand, Hamlet grasps a new king's secret in his clandestine communication with the Ghost. Afterwards, what matters for him is a protection of this information and his intention from enemy spies until the time of revenge. To protect information and maintain privacy, Hamlet uses riddles strategically in his conversation with the members of EIN. I would like to say here that his words are codes, or, to borrow Francis Bacon's phrase, "Cyphars of Words." With the use of codes Hamlet breaks the communication with EIN and hampers their acts of deciphering. Hamlet is a cypherpunk who protects privacy with cryptography. The information war between Claudius and Hamlet comes to its highlight in Act 3, Scene 2, where Hamlet attempts to communicate with the king by way of the play within the play. He sends information-the secret of the murder and his desire to kill the king-to Claudius, who receives it with an unsettled behaviour. At this point their communication succeeds. All the characters in the play are faced with some peculiar situation: the authentication crisis. The world of espionage makes it difficult for people to ascertain the identity of an information sender. There is always a possibility, and a fear, of "simulation," or impersonation. This is a characteristic symptom of both a modern information society and the Elizabethan intelligence society. With the death of Claudius and Hamlet in the final scene, the secret of the murder of Hamlet Sr. remains unrevealed. Hamlet asks Horatio to disclose the secret as a spokesman. However, it is probable that a new king will alter Horatio's information in order to justify and legitimate himself. A renowned military man as he is, Fortinbrass also will join the intelligence society as its member. In the end, the information control will be repeated in the Fortinbrass regime, too.
著者
岩柳 智之 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1069-I_1079, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
12

わが国では道路橋の急速な老朽化を迎え,またその損傷が深刻なために修繕・更新費は莫大であり,その全てを予防保全型で維持管理することにも限界がある.そのため廃橋を維持管理の選択肢として取り入れる必要があるが,地域の理解を得るために廃橋の効果や影響を客観的に示す方法が必要となる.そこで本研究では廃橋による費用対効果計算として将来の維持管理・更新費用の縮減効果と地域の効用の低下による損失を比較する方法を提示した.そして実地域を対象とした計算を行い,廃橋が受け入れられる余地を検討し,廃橋を含めた維持管理のあり方を議論した.計算の結果,廃橋の効果がある橋梁はなかった.しかし,他の橋梁と比較し,維持管理・更新を続ける効果の低い橋梁が見られ,廃橋にする場合,しない場合それぞれの望ましい管理方針を示した.
著者
中村 善紀 宮澤 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.445-452, 1979
被引用文献数
1

日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.<br>症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.<br>症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.<br>2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.

1 0 0 0 OA 高山病の研究

著者
中村 善紀 宮澤 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.445-452, 1979-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
28

日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.
著者
芦田 和重 佐藤 哲大 中村 建介 湊 小太郎
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.1-8, 2013-03-14

DNA の塩基配列中の変異が原因とされるガンなどの疾病について,変異箇所を特定することで診断や治療が行える可能性が期待されている.解析対象の塩基配列中のどの位置にどのような変異が発生しているかを特定する技術は変異コールと呼ばれており,ゲノム解析の中心となる技術の一つである.正確な変異箇所の特定のため高精度の変異コールが必要とされているが,現在の変異コールは精度が低く,アライメントの手法次第では INDEL が検出できない場合や,INDEL 検出の精度を上げることにより SNP 検出の精度が下がるなどの問題がある.そのため,解析の手法を変えた複数回の解析が推奨されており,解析に必要な時間やコストが増大する原因となっている.この問題を解決するため,より精度の高い変異コールツールを開発する必要がある.本研究では,真正細菌の塩基配列中から SNP と INDEL を高精度に同時検出できる変異コールの実現を目的とし,既存のツールによる変異コールの問題点の指摘と,独自のアルゴリズムによる変異コールツールの作成を行った.また,複数の真正細菌を対象とし,作成したツールの精度検証を行った.その結果,SNP 検出の精度を下げない INDEL 検出の実現と,既存のツールによる変異コールでは検出できなかった INDEL の検出に成功した.Identifying mutations in genome DNA sequences is one of most fundamental methods to diagnose or predict hereditary disease or cancer. The technology of specifying mutation is called "mutation calling", and is one of the most important technologies in genomics. Although the highly precise mutation calling is needed for pinpointing mutation, the present mutation calling process has low accuracy and there are some problems. In a certain alignment algorithm, INDEL is undetectable; and the precision of SNP calling falls by raising accuracy of INDEL calling. Therefore, two or more analyses with different tools are recommended, but it causes increasing time and cost. To solve these problems, it is necessary to develop a mutation calling tool with higher-precision. The purpose of this research is to build the mutation calling tool which can detect SNP and INDEL simultaneously with high precision. We investigated some problems of the mutation calling by the known procedure and created a new tool with original algorithm. Moreover, accuracy verification of our tool was performed by analysing two eubacteria. As a result, it enabled the INDEL calling which does not lower the accuracy of SNP calling, and identifying of INDEL which was not detectable in the mutation call by the known procedure.
著者
川名 はつ子 菊地 潤 中村 泉
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.31-40, 2000

出生前診断について、大学生を含む20歳以上の一般市民1,130人を対象にアンケート調査を行った。596人(52.7%)から出生前診断という言葉の認知・理解度や出生前診断をめぐる生命倫理についての回答を得た。それを性・年齢(20代、30代、40代以上)、既婚・未婚、子の有無別に検討した。結果は以下の通りである。(1)6割以上の人が出生前診断という言葉を知っていたが、理解度は曖昧だった。(2)男性より女性、若者より年長者、未婚者より既婚者、子無しより子有りの人が出生前診断について関心が深かった。(3)多数の女性が、出生前診断を受けるか否かは自分で決めるが、胎児に異常があると告げられた場合は、誰かに相談すると答えている。(4)男性は、出生前診断を受けるか否かや、異常が指摘された場合どうするかは、概ね相手の女性の意向次第と答えている。(5)若い独身女性は、あまり知識がないのに出生前診断に受容的である。(6)しかし全体では出生前診断について、よく知っている人の方が受容的という結果も出ている。(7)情報はテレビ、新聞などのマスコミから得ることが多いが、今後この問題の当事者となる20代の独身女性では、新関から情報を得ている人は少ない。
著者
安岡 利恵 宮垣 拓也 北尾 善孝 門谷 洋一 中村 隆一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.2210-2215, 2004-08-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
14

混合型性腺異常発生症では,染色体異常が主に45X/46XYなどのmosaicであるために,一側性腺が精巣で他側が線状性腺を持ち,未分化な膣,子宮,卵管などMüller管の遺残を認めることがある.また,混合型性腺異常発生症は様々な身体学的特徴を有する.本症は主に小児科医,小児外科医が関わる疾患であるが,今回われわれは45歳にして成人鼠径ヘルニア治療時に偶然混合型性腺異常発生症を発見し,十分なインフォームドコンセントのもと,線状性腺とMüller管遺残を摘出した興味深い症例を経験したので,これを報告する.
著者
遠藤 数江 小川 純子 村上 寛子 荒木 暁子 中村 伸枝
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.26, pp.93-97, 2004-03
被引用文献数
1

大学生における食習慣に影響を与える要因を検討する目的で,現在の食生活,食習慣の変化,食に関する体験について,フォーカスグループによる振り返り調査を行った.対象者は18歳から21歳の文化系または,運動系のサークルに所属している大学生9人(男2人,女7人)であった.大学生の食習慣に影響を与える要因として,経済状況,調理器具などの料理をする環境,料理に費やす時間や手間,生活スタイルの変化,嗜好の変化,運動部に入ったことによる影響が抽出された.さらに,幼少時からの家庭環境も大学生の食習慣に影響を与える要因の一つであった.また,家庭や学校の授業での料理経験は,大学生になっても食の体験として記憶に残っていた.大学生の食習慣の形成には,経済状況,生活スタイルの変化,所属サークルなどの現在の生活状況からの要因と,これまでの食に関する体験が影響していることが示唆された.

1 0 0 0 OA 小中村翁日記

著者
小中村清矩 自筆
出版者
小中村清矩
巻号頁・発行日
vol.明治26年, 1895
著者
佐野町 友美 鈴木 修平 中村 翔 渡邊 千尋 熊西 亮介 中村 元治 鈴木 尚樹 渡邉 要 武田 弘幸 福井 忠久 吉岡 孝志
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-7, 2017-02-15

【背景】昨今、臨床実習の重要性が増す中で医学生の実習中の不適切言動や精神的な負荷が問題視され、検討課題とされている。がん患者を担当する場合、特に負荷が重いと推測されるが、学生から患者への説明などの実習における具体的な関わりや精神的負荷に関する検討はほとんどない。そこで今回、がん患者・医学生・医師の3者の視点から学生の説明内容の信頼性や精神的負荷へ焦点をあて検討を行った。【方法】2015年12月から約1か月間、本学においてがん患者実習経験のある学生、腫瘍内科医師並びに実習協力経験のあるがん患者へ連結不可能匿名化の質問紙法を用いて、がん患者へは実習時の説明とその説明への信頼等、学生へは患者との関わりや説明の内容等、精神的負荷等、医師へは学生の不適切言動や診療への影響等を中心に調査した。本研究は本学倫理審査委員会の承認を得て行った。【結果】学生43名、患者18名、医師9名から回答を得た。患者・医師からは守秘義務違反や無礼な行動などの不適切言動は指摘されなかった。学生が患者へ説明を行う場面は実際に存在(77%)し、学生は自身が発した情報を患者が信頼すると考えることが多い(78%)が、患者は学生が説明する内容をあまり信頼していない(p =0.022)という結果だった。患者の自由記載では学生の傾聴や応対への感謝が目立ち、医師の自由記載ではがん患者を担当することの重要性や難しさの指摘が目立った。学生の多くは実習で精神的負荷を感じ(66%)ており、精神的負荷を感じている学生は患者へ説明の経験があるという結果だった(p =0.018)。学生の自由記載の形態素解析では精神的な面に関連する単語の頻度が多く検出され、精神的に不安定ながん患者を担当する学生へは指導者は十分な配慮を行う必要性が示唆された。【結論】医学的説明を行う場面は学生には負荷となりうるが、患者の信頼は必ずしも高くなく、むしろ学生の傾聴や円滑なコミュニケーションが診療に有益である可能性が示された。
著者
中村 亮一
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.98-102, 2018 (Released:2018-12-26)
参考文献数
21

我々は,外科医療手技の管理に工程分析的技術を応用し,医療の品質向上(効用・効率・安全の向上)を達成するための手術工程解析技術の創世を目的とした研究を行っている。品質管理/向上・省力化のための機械情報工学的技術をシステムと人間の調和的技術に昇華して医療に導入し,過酷な外科医療環境によりよい業務環境と安全で効果の高い治療結果をもたらすことを目指したこの取り組みにおいて,手術工程解析のためのデジタル作業情報取得技術,情報解析技術,解析結果提示・応用技術の開発研究を実施している。本稿では手術ナビゲーションの基礎を踏まえ,これまでに行ってきた我々の取り組み,術中動態に対応した手術ナビゲーションと,ナビゲーション情報を応用した手術工程・技能分析技術について紹介する。
著者
若松 美貴代 中村 雅之 春日井 基文 肝付 洋 小林 裕明
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学医学部保健学科紀要 = Bulletin of the School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Kagoshima University (ISSN:13462180)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-30, 2018-03-31

近年,妊産褥婦の自殺,子どもの虐待の問題から周産期メンタルヘルスの重要性が注目されるようになった。より細やかな支援のためには妊娠早期から関わることが必要である。そのため2017年に母子保健法改正が行われた。妊娠早期から産後うつ病を予測できる質問紙が求められ開発が行われているが,日本で使用できるものは少ない。諸外国で広く用いられているPostpartum Depression Predictors Inventory-Revised(PDPI-R)が有効と考えられる。日本語へ翻訳し,信頼性,妥当性と産前産後のカットオフ値の検討も行われている。PDPI-Rは妊娠期から産後うつ病を予測できるだけでなく,妊産褥婦の背景を多角的に把握でき,支援する際のアプローチの手がかりにもなりうる。今後,本調査票が広く用いられ,産後うつ病,虐待,ボンディング障害の関係性についても明らかになることが期待される。In recent years, the issues of suicide and child abuse committed by pregnant and postpartum woman have focused attention on perinatal mental health. Three questionnaires for use after childbirth have been found to identify mothers at risk for postpartum depression and child abuse. However, for detailed assistance it is necessary to provide support early in the pregnancy. Therefore, the Maternal and Child Health Law was revised in 2017.A questionnaire that can predict postpartum depression from early pregnancy is required and some candidates have been developed. However, no such questionnaire has been validated for use in Japan. The Postpartum Depression Predictors Inventory-Revised (PDPI-R), which is widely used in other countries, is considered to be effective for predicting postpartum depression. Therefore, we translated the PDPI-R into Japanese and examined its reliability, validity, and cut-off values during pregnancy and postpartum.The PDPI-R could not only predict postpartum depression during pregnancy, but also provided a multifaceted understanding of the backgrounds of perinatal woman. We hope that this questionnaire will be widely used in the future. It is expected that the use of the PDPI-R will help clarify the relationships among postpartum depression, child abuse, and bonding disorder.
著者
田中 里穂 日吉 優佳 中村 優里 相原 遥 日向 実佳 平賀 美樹 川合 康央
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.195, 2016 (Released:2016-06-30)

本研究は、大学の学部を対象としたデジタルコンテンツの開発を通じて、デジタルコンテンツとその開発手法による大学での学びの新しいプロモーションを行うことを目的とする。本コンテンツは、大学での学びのキーワードを紹介する3Dリズムゲームを作成し、開発チームのプロジェクトの方法をまとめることとする。大学教員をモチーフにした3DCGモデルのキャラクターを作成し、ダンスの動きを追加したものを用いる。ユーザーは、ケミカルライトを模倣した加速度センサを持つデバイスを使用して、リズムアイコンにタイミングを合わせて操作することによってポイントを取得するものとします。
著者
松井 希代子 柳原 清子 佐藤 正美 能登原 寛子 下 綾華 塚本 愛実 中村 優希 西野 ひかり 東 郁江 兵田 亜未 村田 奈穂 元橋 茉佑 森田 恵里 米澤 智亜紀
出版者
ウェルネス・ヘルスケア学会
雑誌
Journal of wellness and health care (ISSN:24333190)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.125-135, 2017

Cancer medicine is becoming more sophisticated and complex, and therefore it is becoming more difficult to care for people at the end of life. This study was performed to identify the nature of positive attitudes to nursing practice of nurses in general hospitals, and to examine their associations with various different factors. The participants were 683 nurses working in 41 wards in eight regional general hospitals. The survey was carried out as an anonymous self-administered questionnaire. Four factors were identified as constituents of nurses' positive attitudes to nursing practice. These consisted of three factors concerning attitudes and knowledge, comprising [The practice of specialist end-of-life specific care], [Making the best arrangements until the end], and [Spiritual care], and one affirmative sentiment, that of [The confidence to nurse someone at the end of life]. The mean score for factors related to knowledge of nursing practice was > 4 points on a 6-point scale, corresponding to "Somewhat applicable," whereas the mean score for the sentiment [The confidence to nurse someone at the end of life] was > 3 points, corresponding to "Not really applicable." In terms of related factors, for all factors other than spiritual care, positive attitudes to nursing practice increased significantly with increasing experience. There was no association with having cared for a dying family member. Although having experienced an educational opportunity was not associated with the practice of case conferences for deceased patients, it was significantly associated with the experience of having been able to talk at length about the care they had provided and their own thoughts in venues such as case conferences, receiving recognition by colleagues at their own level of seniority or above, and reflection. Improving nurses' positive attitudes to nursing practice in end-of-life care in general hospitals, therefore, depended not on personal characteristics, such as having taken care of a dying family member, but rather on having repeatedly overcome difficulties in the course of nursing experience. Talking at length about care and expressing one's own thoughts, receiving recognition from colleagues at one's own level of seniority or above, and reflection on nursing practice were all important in this process.がん医療が高度・複雑化し、結果、人々が「死」を看取っていくことが難しくなっている。本研究の目的は、総合病院における看護師のがん終末期の実践への肯定感はどのようなものかを明らかにし、要因との関連を見ることとである。対象は地方の 8 つの総合病院 41 病棟683 名の看護師である。自記式質問紙調査を行い、看護師の実践への肯定感は 4 因子の構造として見いだされた。それは【終末期固有の専門的ケア実践】、【最期までの最善の調整】、【スピリティアルなケア】という実践への態度や認識と、【最期を看取っていく自信】という肯定的心情であった。実践への認識の平均値は 6 段階中 4 点台で、「どちらかといえばできる」レベルであり、【最期を看取っていく自信】の心情は 3 点台で「どちらかといえば自信がない」であった。関連要因では、スピリティアルケアを除く全ての因子で、経験年数が増すと実践への肯定感が有意に高まっていた。また、身内の死の看取り経験は関連がなかった。一方、教育的働きかけを受けた経験との関連は、デスカンファレンス実施の有無とは関係がなかったが、自分の行ったケアや思いを十分に語った経験、先輩や同僚に認められた経験、そしてリフレクションが有意に関係していた。つまり、総合病院の終末期ケアにおいて、看護師の実践への肯定感の高まりは、身内の死の看取りなどの個人的特性ではなく、看護経験の中で、困難感からの転換の形で積み重ねられていた。その過程では、ケアや思いを十分に語り、先輩や同僚に認められ、そして実践をリフレクションすることが重要となる。