著者
安部 真教 中村 清哉 比嘉 達也 大久保 潤一 垣花 学
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0035, (Released:2015-09-25)
参考文献数
11

今回,有痛性糖尿病性神経障害の下肢痛に対してプレガバリンの漸増中に低血糖の頻度が増加し,インスリン投与量の調節に難渋した症例を経験した.症例は50歳,女性.有痛性糖尿病性神経障害で両下肢痛としびれがあった.プレガバリン50 mg/日の眠前内服を開始し,75 mg/日に増量後に眠気・ふらつきが出現したため,内服量を50 mg/日と75 mg/日の交互に変更した.鎮痛効果は高かったが,低血糖の頻度が増加したため内科へ入院となった.入院期間27日中の低血糖は11回,そのうち朝に9回発生した.インスリン投与量は,持効型が入院期間中に22単位から18単位に,超速効型が毎食後7単位から5単位に減量された.糖尿病性神経障害の治療は,高血糖を予防し,厳重に血糖管理を行うことが重要である.痛みの治療経過中に低血糖の頻度が増加し,血糖管理に難渋した.インスリン過量,インスリン感受性の改善が低血糖の原因として考えられた.
著者
久保田 勝
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.687-692, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
12

健診でのスパイロメトリーによる気流閉塞(閉塞性換気障害)の検出は慢性閉塞性肺疾患(COPD)早期発見に重要である。スパイロメトリーを含めた呼吸機能検査の解釈は、被験者の測定値と同じ人種・民族の健常人データから性別・年齢・体格などの要素を独立変数として作成された予測式から算出された基準値との比較による相対的評価によって行われる。そのため、スパイロメトリーの評価には使用されている基準値を理解する必要がある。 日本では2001年に日本呼吸器学会(JRS)が公表した重回帰分析による予測式が広く利用されているが、2014年にJRSは年齢回帰をLMS法により解析した日本人成人の新しいスパイロメトリー基準値と正常下限値(LLN)を作成公表した。今回はこの新基準値を紹介するとともに、COPD早期発見のための気流閉塞診断における問題点を検討する。 気流閉塞の指標である1秒率(1秒量/努力性肺活量:FEV1/FVC)を新基準値と2001年基準値とで比較すると、男女とも新基準値で低下しているが、女性の1秒率LLNは新基準値のほうが大きくなっている。 気流閉塞の定義はスパイロメトリーで1秒率70%未満、COPD診断基準は、気管支拡張薬投与後の1秒率70%未満とされ、「70%未満」の固定値が適用されている。1秒率を新基準値に基づくLLNで検討すると、1秒率LLN 70%は男性60歳、女性70歳に相当する。すなわち、1秒率70%未満を気流閉塞の基準とした場合、高齢者以外は過小診断していることになる。高齢者以外は、1秒率70%以上であってもLLN未満の場合にはCOPDの可能性を疑う必要がある。
著者
大久保 一郎
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.43-48, 2003 (Released:2006-06-09)

マルカイミジンコは, 『新日本動物図鑑』 (北隆館) に“春夏の候に多い”と記されているが, 最近は『レッドデータブック』に載せてもいいほど, 珍しい種になっている. また, この種は, 形態や生態が他の淡水カイミジンコ類とかなり異なっているが, あまり知られていないので, 殻・付属肢の顕微鏡写真や行動の模式図を付して記載する.
著者
清水 祐公子 大久保 章
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

デュアルコム分光装置を用い、気体分子の振動回転スペクトル観測により温度計測を行う手法を提案し、研究を進めた。これは、気体分子の回転振動バンドの多数の吸収線の強度分布が、温度の関数となっていることを利用して温度を求める方法であり、我々はこの温度計測法を「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」と名付けた。デュアルコム分光によりアセチレン分子の精密なスペクトルを得るとともに、RDT法により不確かさ1 K以下という良好な温度測定結果を得た。その一方で、RDT法において、分子種ごとの高精度な温度測定をおこなうためには、温度決定の不確かさをさらに低減させることが必要であった。そのため本年度は、偏波保持光ファイバーを用いた光コムによるスペクトル変化の抑制と、ガス分子の温度の精密制御を行った。通常は光コムからの出力をファイバアンプで増幅し高非線形ファイバーでスペクトルを拡大して分光に用いるが、偏波保持化により、ファイバーアンプを介さず広帯域化でき、周囲の環境(温度、気圧、振動等)の変化による偏波状態の変動を抑制することができた。また、分子温度の精密な制御をおこなうため、温度安定化モジュールの制作を行い、高精度に温度安定化可能な恒温槽に挿入した。恒温槽は液体循環式であり、- 30 oC~110 oCの温度範囲を約1~5 mKで制御した。直径15 mm、全長10 cmの分子が封入された吸収セルを銅製の均熱ブロックの中に設置し、50 mK程度で温度安定化させた。しかしながら、温度安定化されたセル内の分子から取得した吸収スペクトルのベースラインはまだ不完全であった。この原因は循環式水温層の振動によるものであると考えている。現在、振動の影響を直接受けない光ファイバー型のモジュールを製作している。これにより、1桁以上不確かさを低減させる。
著者
岡橋 望 星野 永 久保 政之 長谷川 淳 田中 晴之 天野 逸人
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1657-1662, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
11

症例は71歳男性。2015年10月に形質細胞腫を発症し,第5胸椎と第3腰椎の腫瘤に放射線照射を行い,経皮的後方固定術を行った後,2016年1月からlenalidomide,dexamethasone(Ld)療法を開始した。9コース終了後の2016年10月から心窩部不快感,顔面に丘疹が出現し,FDG-PETを撮影したところ,十二指腸水平脚と右肺下葉多発結節影にFDG集積が認められた。皮膚生検,十二指腸水平脚の潰瘍病変生検,気管支鏡での擦過細胞診のいずれも,Grocott染色陽性の胞子が認められ,播種性クリプトコックス症と診断した。播種性クリプトコックス症は脳髄膜炎を起こすことが多いが,消化管病変を呈することは極めて稀である。消化管クリプトコックス症の基礎疾患はAIDS,血液腫瘍,危険因子としてステロイドや免疫抑制剤投与があり,食道,胃十二指腸,小腸,結腸いずれにも病変を呈する。腹痛,血便,消化管穿孔などで発見されるが無症候性のこともあり注意が必要である。
著者
久保 真一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.770-774, 2004-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
22
被引用文献数
1

頭部外傷症例に求められる法医学的課題は,受傷時の模様を再現し,被害者の傷害の責任の所在を解明するための情報(資料)の提供,法的因果関係の解明にある.この情報とは,損傷の種類(名称)のみならず,成傷器具の種類(鈍器,鋭器など),外力の種類,成傷機転(打撲,転倒・転落),受傷時の身体状況(飲酒,薬物摂取,疾病),受傷後死亡までの状態(意識レベル,行為能力など),死亡例では死因の解明である.成傷機転では,同側挫傷が認められた場合は打撲が,対側挫傷の場合は転倒・転落が疑われる.成傷器具は,外表の損傷の種類から判断可能である.受傷時の飲酒の程度は,血液・尿ばかりでなく頭蓋内血腫からも分析可能である.
著者
谷沢 欽次 本間 豊邦 河西 史人 川久保 克彦 中村 利家
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.643-649, 1987-11-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
14

ピラゾレートの田面水中での分散性が除草効果に及ぼす影響を田面水の流亡のないポット試験で検討した.田面水中での崩壊分散性が異なる2処方で, 押し出し粒径0.6および0.9mmの計4種の粒剤の除草効果を比較したところ, どの粒径でも崩壊分散のよい粒剤のほうが高い除草効果を示した. 崩壊分散のよい処方では粒径間の差はなかったが, 悪い処方では, 粒径が小さい粒剤のほうがミズガヤツリに対する除草効果が優れていた.同一粒度のピラゾレートを有する懸濁剤と粒剤 (施肥区と無施肥区) について除草効果を比較すると, 主剤の粒度がきわめて細かいものでは製剤型間の差はなかったが, 粒度が粗くなるにつれて粒剤の除草効果は懸濁剤より悪くなった. 粒剤の施肥区と無施肥区では崩壊分散のよい無施肥区のほうが高い除草効果を示した.同一キャリヤーより調製した崩壊分散が異なる3種類の粒剤の除草効果を施肥条件下で比較したところ, 崩壊分散のよいものが除草効果も高かった.以上のように, ピラゾレートの除草効果には, 主剤の粒度とともに, 田面水中における主剤の分散性が影響を与えた. 一方, ピラゾレート施用期の田面水は, 粒剤の崩壊分散性からみて, 10度以上の硬水に相当するものは少ないと考えられた. したがって, ピラゾレート粒剤は10度硬水中で良好な崩壊分散を示す処方とする必要がある.
著者
大久保 加奈子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.127-138, 2013-09-30 (Released:2017-05-02)
被引用文献数
2

日本語の引用表現では,「と」や「って」などの引用マーカーを用いた形式が典型とされることが多いが,本稿では,引用部分の直後に引用マーカーや伝達動詞が付かず,いったん切れた後で次のことばが続く「ゼロ型引用表現」について,政治家による演説をデータとして用い,どのような談話の流れの中で,どのような目的で用いられるのかに注目して分析する.ゼロ型引用表現は,他者の発言内容を客観的に報告することを求められるような状況において使用すると相手に違和感を与えてしまう表現であるが,他者のことばを題目として取りたててそのことばに対する評価を述べ,他者のことばに対する評価を聞き手と共有しようとする際や,他者のことばを臨場感豊かに生き生きと描き,聞き手を物語の世界に引きこむような際に用いられていた.
著者
小長谷康治 山本晋一郎 大久保弘崇 粕谷英人
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.339-340, 2012-03-06

コードスケールシステムはポピュラー音楽における楽曲分析の基礎であり,コードに対して使うことのできるスケールを対応させる手法である.このシステムは1970年代から広く使われていて,今日のポピュラー音楽で一般的に受け入れられている.コードスケールシステムに基づいた楽曲分析システムは存在しているが,より高い拡張性・保守性のあるものが求められている.本研究では関数型言語に着目し,宣言的なシステムを実装することを考える.実装にはHaskellを用い,コード,スケールや音程などの分析に必要な音楽理論を利用しやすい形で実装し,高い拡張性や保守性を目指した.
著者
神森 眞 田久保 海誉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.365-368, 2004-07-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16
被引用文献数
1

テロメアは染色体末端に存在し, 染色体の安定に貢献している. また, 正常培養細胞における細胞老化はテロメア短縮によって説明されている. 今回, 我々は組織切片を用いたテロメア長測定法を開発したので, テロメア長測定法を中心に記述し, テロメア研究の進歩について述べる. 従来は, 細胞や組織から抽出したDNAを制限酵素で切断し泳動像のピーク値などをテロメア長としていた. 1996年に培養細胞を用いた細胞分裂中期 (metaphase) の染色体個々のテロメア長測定が quantitative fluorescence in situ hybridization (Q-FISH) により可能となり, 癌組織では, 特異的に限られた染色体のテロメアが短縮していることが報告された. 培養細胞や末梢血のテロメア測定は flow cytometery による flow FISH が行われ, 多くの白血病細胞におけるテロメア代謝が明らかにされた. 組織切片を用いたテロメア長測定法 (tissue FISH) は, 少数の論文の中で紹介されていたが良好な結果を得ることが困難であった. 我々の研究グループにより確立された組織切片を用いたテロメア長の測定法を紹介し, この方法は測定が容易であると同時に, 組織像と対比できる点で利点が大きく, 今後の組織のテロメア代謝の解明に貢献すると思われる.
著者
窪薗 晴夫 田窪 行則 郡司 隆男 坂本 勉 久保 智之 馬塚 れい子 広瀬 友紀
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

主に日本語のプロソディー構造を特に統語構造・意味構造・情報構造とのインターフェースという観点から分析し、日本語諸方言におけるアクセントとイントネーションの構造、それらのプロソディー構造と統語構造、意味構造との関係を明らかにした。これらの成果は諸学会、研究会および年度末の公開ワークショップにて発表し、また研究成果報告書(冊子体およびPDF)に報告した。
著者
中澤 知洋 森 浩二 村上 弘志 久保田 あや 寺田 幸功 谷津 陽一 馬場 彩 幸村 孝由 内山 泰伸 斉藤 新也 北山 哲 高橋 忠幸 渡辺 伸 中島 真也 萩野 浩一 松本 浩典 古澤 彰浩 鶴 剛 上田 佳宏 田中 孝明 内田 裕之 武田 彩希 常深 博 中嶋 大 信川 正順 太田 直美 粟木 久光 寺島 雄一 深沢 泰司 高橋 弘充 大野 雅功 岡島 崇 山口 弘悦 森 英之 小高 裕和 他FORCE WG
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 72.1 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.508, 2017 (Released:2018-04-19)

NGHXTあらため、FORCE衛星は1-80 keVの広帯域X線を高感度で撮像分光し、まだ見ぬ隠されたブラックホールや超新星残骸のフィラメントでの粒子加速の探査を目指している。2016年に変更した計画の内容、検出器および望遠鏡の開発状況、およびサイエンス検討の進捗を報告する。