著者
百々 幸雄 川久保 善智 澤田 純明 石田 肇
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.135-149, 2012-12-01
参考文献数
60
被引用文献数
1 2

北海道の南西部,中央部,および北東部のアイヌにサハリンアイヌを加えたアイヌ4地域集団を対象にして,日本本土と琉球諸島諸集団の地域差と比較しながら,アイヌの地域差とはいったいどの程度のものであったのかを,頭蓋形態小変異20項目を指標にして評価してみた。地域差の大小関係は,スミスの距離(MMD)を尺度として比較した。北海道アイヌ3集団の地域差の程度は,奄美・沖縄・先島の琉球諸島近世人3集団の地域差よりはやや大きく,東北・関東・九州の日本本土の現代人3集団の地域差とほぼ同程度であった。北海道アイヌのなかでは,道北東部アイヌが道南西部および道中央部のアイヌとやや距離を置く傾向が観察された。サハリンアイヌは北海道アイヌから相当程度遠く離れ,その距離(MMD)の平均値は,北海道アイヌ3地域集団相互の距離の平均値の約4倍にも達した。このような関係は,18項目の頭蓋計測値にもとづいたマハラノビスの距離(D<sup>2</sup>)でも確かめられた。<br>
著者
久保下 亮 岡 慎一郎 田原 弘幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1397, 2012

【はじめに、目的】 不慣れな運動を行った後や,過度な運動を行った後の24~48時間後をピークとして生じる遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness;DOMS)は,遠心性収縮の収縮様式を用いた運動後に生じやすい。その原因は諸説様々な形で述べられている。運動中に生じる筋や結合組織の微細構造の損傷後の炎症反応に伴う筋内圧の増加などの機械的刺激や,筋温の上昇による熱刺激,ブラジキニン,セロトニン,ヒスタミン,カリウムイオンなどの発痛物質による化学的刺激それぞれが,多種侵害受容器であるAδ線維やC線維の自由終末に作用することによって痛みが受容されると考えられる。その評価方法に至っては,VAS(Visual Analogue Scale)やフェイススケールなどが簡易的に用いられており,その他,血中生化学的マーカーにより評価する方法,超音波画像法や磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging:MRI)など筋内部の変化を画像化して評価する方法などが用いられている。今回は,プライオメトリクストレーニングを用いて意図的に大腿四頭筋にDOMSを生じさせ,トレーニング前後での内側広筋(以下,VM)と外側広筋(以下,VL)の筋硬度と膝関節伸展ピークトルクとにどのような変化が生じるのか検討してみた。【方法】 対象は現在運動器疾患を有していない学生20名(男性13名,女性7名),平均年齢20.7±0.2歳である。まず,被験者のVMとVLの筋硬度を背臥位にて生体組織硬度計PEK-1(井元製作所製)を用いて計測した。次に,膝関節伸展ピークトルクの測定を等速性筋力測定器であるBIODEX SYSTEM3(BIODEX社製)を用いて行った。角速度は60°/secで反復回数を5回とした。その後,プライオメトリクストレーニングとしてボックスジャンプとデプスジャンプを10回×3セット施行し,トレーニング終了から24時間後(以下,Ex後24h),48時間後(以下,Ex後48h)にVMとVLの筋硬度と膝伸展ピークトルクを測定した。統計学的分析には,反復測定分散分析を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には紙面を用いて研究内容を説明し,研究への参加による利益,不利益を示し,同意を得た上で本研究に参加してもらった。【結果】 膝関節伸展ピークトルクの平均は,トレーニング前(以下,Ex前)が167.8±10.6Nm,Ex後24hが163.5±10.6Nm,Ex後48hが159.3±11.1Nmであり,Ex前とEx後48hとの間に有意差を認めた(p<0.01)。VMの筋硬度の平均は,Ex前が40.1±0.7,Ex後24hが42.2±0.7,Ex後48hが45.2±0.8であり,全てにおいて有意差を認めた(p<0.01)。VLの筋硬度における平均は,Ex前が53.8±0.9,Ex後24hが55.0±0.8,Ex後48hが57.8±0.8であり,Ex前とEx後48h,Ex後24hとEx後48hとの間において有意差を認めた(p<0.01)。【考察】 今回,VMやVLに対し強い遠心性収縮を要求するプライオメトリクストレーニング(ボックスジャンプ,デプスジャンプ)を行うことで,トレーニング後は筋硬度が上がり,膝関節伸展筋力も低下するという結果から,強い遠心性収縮を用いるトレーニングは筋を損傷させることにより筋機能が著しく向上することはありえないと思われる。野坂らによると,エクセントリックトレーニングにより筋機能の向上を図る際には,筋力の回復に長期を要するような強い負荷は効果的でなく,筋力の増加は,比較的軽度な負荷のトレーニングでも達成できると述べている。高負荷なトレーニング後は筋疲労が残存していたり,筋の緊張状態も高いことより,トレーニング後の休息ならびに次のトレーニングまでの間隔が,トレーニング効果を上げるために非常に重要な要素であることを示している。
著者
江崎 行芳 沢辺 元司 新井 冨生 松下 哲 田久保 海誉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.116-121, 1999-02-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
17
被引用文献数
8 10

「老衰死」の有無を考察するため, 老年者の最高グループである百歳老人 (百寿者) 42剖検症例の死因を検討した. 対象は, 最近までのおよそ20年間に東京都老人医療センターで剖検された男性9例, 女性33例で, この性別比は全国百寿者のもの (1対4) にほぼ一致する.臨床経過や諸検査値を充分に考慮して剖検結果を検討すると, これら42症例の全てに妥当な死因があった. 死因となったのは, 敗血症16例, 肺炎14例, 窒息4例, 心不全4例などである. 敗血症の半数近くは腎盂腎炎を原因としており, 肺炎の多くが誤嚥に起因していた. 悪性腫瘍は16例に認められたが, その全てに前記死因のいずれかがあり, 悪性腫瘍自体が主要死因となったものは1例も存在しなかった.超高齢者では, (1) 免疫機能の低下, (2) 嚥下・喀出機能の低下, が致死的な病態と結びつきやすい. しかし, このことと「老齢であるが故の自然死」とは関わりがない.「老衰死」なる言葉に科学的根拠があると考え難い.
著者
手墳 正二 森奎 郎 岡部 鈴子 萩原 和男 久保 宗人 岩沢 敬 来馬 真一 高島 敬忠 黒森 信治 林 明
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.497-502, 1972 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

Epidermal ridges on hands and feet develop during the first trimester of gestation and remain unchanged thereafter for life.Dermatoglyphic aberrations associated with chromosomal defects are sometimes recognized according to the dermatoglyphics of cerebral palsy and severe mental retardations.The purpose of this study is to investigate certain features of dermatoglyphics in Japanese afflicted with cerebral palsy and severe mental retardations.The materials used in the present survey were composed of 330 Japanese with cerebral palsy (295) and severe mental retardations (71). The “Foot-printer” of the Hollister Company were applied to records of finger, palm and sole patterns. The analysis of dermal patterns were cogfarmed to the Cummins and Midlo's method and the Walker's method.As a result of analysis, abnormal frequencies were observed on dermatoglyphics of these individuals as compared normal controls. Abnormal findings were recognized on finger prints, atd angles, axial triradius, interdigital patterns, simian lines and hallucal patterns. Especially, these characteristics were found on cerebral palsy with severe mental retardation and severe mental retarded groups more than cerebral palsy.
著者
久保田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.65, 2011 (Released:2011-10-02)

本研究では、スポーツやギャンブルの場面において知覚される“流れ”概念を対象とし、その知覚要因を検討するための因子分析を行った。様々な場面における“流れ”について、多くの人がその存在を信じている。また、この“流れ”は、状況の体験、観測などによって知覚され、人物の意思決定に影響を与えると考えられた。しかしながら、このような“流れ”については、明確な定義が与えられていなかった。また、運や“ツキ”、ランダム系列の誤認知などとの関連についても明らかではなかった。そこで、本研究においては、“流れ”がどのような要因によって知覚されるのかについてアンケート調査を行い、“流れ”の知覚度を7段階で評価させた。分析の結果、「個人の受動的な運」、「協調的集団内の相互作用」、「麻雀」の3つが因子として抽出された。また、“流れ”については、個人的な“流れ”と社会的な“流れ”に分類できる可能性が示唆された。
著者
植竹 智 原 秀明 平木 貴宏 岩崎 達郎 笠松 良崇 北尾 真司 小林 康浩 小無 健司 増田 孝彦 増田 亮 宮本 祐樹 岡井 晃一 大久保 翔 尾崎 亮太 笹尾 登 佐藤 帯子 T. Schumm 瀬戸 誠 重河 優大 S. Stellmer 鈴木 健太 渡部 信 山口 敦史 安田 勇輝 依田 芳卓 吉見 彰洋 吉村 浩司 吉村 太彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 72.1 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.789, 2017 (Released:2018-04-19)

229トリウムには,原子核としては異常に低い数eVの励起準位が存在することが知られている.この原子核遷移は電子に遮蔽されているため外乱の影響を受けにくく,レーザーにより直接励起できる可能性がある.そのため新世代高精度周波数標準としての応用を目指した研究が世界各国で進められている. しかしながら,先行研究で明らかになった遷移エネルギーは7.8±0.5eV (159±10nm) と不定性が大きいため,より精密な決定が急務である.我々はSPring-8の高輝度放射光X線による核共鳴散乱を用いた新しい手法により,原子核遷移周波数を精密に決定することを目指している.これまでにX線の高時間分解能検出器開発,高密度229トリウム標的開発などを進めてきた.講演では実験の現状について詳細を報告する.
著者
川久保清
雑誌
厚生
巻号頁・発行日
vol.45, pp.17-20, 1990
被引用文献数
2
著者
恩田 宗生 小原 知治 鈴木 由美子 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1-6, 2014 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

グループ学習の後に個人活動を加える集散型学習の学習効果、及び個人の協同作業に対する認識の違いが集散型学習に与える影響について、コンセンサスゲームを用いて分析した。集散型学習によってコンセンサスゲームの解答が有意に正解に近づき、さらに学習に対する自信や納得度が高まるなどの学習効果が明らかになった。また、協同効用因子が高い群と低い群では、思考の深まりの認識に大きな差があることが明らかになった。これらの調査から、グループ学習後に自分の言葉で思考をまとめ直す集散型学習の重要性とその留意点が示唆された。
著者
高安 亮紀 大石 進一 久保 隆徹 松江 要 水口 信
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

世の中の自然現象を数学問題にモデル化すると偏微分方程式と呼ばれる未知関数の微分に関する関係式が頻出する。これを数学的・数値的に解いて未知関数を特定することが自然科学の分野での研究対象となる。本研究では、固体燃料の燃焼理論や生物増殖の数理モデルなどで現れる非線形放物型方程式と呼ばれる偏微分方程式のクラスに対して、その初期値境界値問題の解が数値計算で得られた近似解の近傍に存在する、あるいは存在しない事を、数値計算によって証明する計算機援用手法を開発した。これは精度保証付き数値計算と呼ばれ、微分方程式の数学解析に対する現代的なアプローチとして注目を集めている。
著者
久保山 敬介 王 鋒 松本 浩樹 中沢 信明
出版者
The Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.140-145, 2013 (Released:2014-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This paper reports a novel system that real-timely detects the respiration and the heartbeat during sleep for the purpose of early diagnosis of Sleep Apnea Syndromes. Real-time discrimination of the signal components related to the respiration and the heartbeat was realized using the Independent Component Analysis from the observed signals of PVDF films, which are placed on the bed under the bed sheet. Body movement is taken into consideration in order to prevent the system from divergence and to improve the discrimination accuracy. Efficacy of the system is testified through experiments.
著者
田村 淳二 世永 茂 松村 喜治 久保 宏
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.1129-1130, 2002-10-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

Recently the wind power generation has attracted special interest and many wind power stations are being in service in the world. In the wind power stations, induction machines are mostly used as a generator. Since induction machines can become unstable during a fault in power system, like a step-out of synchronous machines, it is important to analyze the stability of power system including wind generators. This paper presents a consideration on the stability of induction generators from a point of view of voltage stability.
著者
桑山 直也 久保 道也 遠藤 俊郎 坂井 信幸
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-19, 2011-01-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
29 25

硬膜動静脈瘻の治療の現状を知るため,全国の脳血管内治療専門医を対象とする調査を実施した.【方法】日本脳神経血管内治療学会専門医388人を対象とし,2005〜2006年の2年間に経験した症例の年齢/性,部位,症状,mRS,治療法,転帰,合併症を調査した.【結果】863症例の回答を得た.男性43%,女性54%,平均年齢は64歳であった.海綿静脈洞(CS)が46%,横・S状静脈洞(TSS)27%,その他27%であった.814例に積極的治療(血管内88%,外科7%,放射線4%)が施行された.治療後(ほぼ)完全閉塞が83%であった.mRSは1.4から0.6に改善した.治療合併症が4%に出た.【まとめ】CS,TSSの成績は良好であった.前頭蓋底,頭蓋脊椎移行部では安易な血管内治療が行われている可能性があり,外科治療を再評価すべきと思われた.
著者
谷村 恵子 山田 忠明 千原 佑介 久保田 豊 塩津 伸介 竹田 隆之 山田 崇央 平沼 修 内野 順治 髙山 浩一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.128-136, 2019-04-20 (Released:2019-05-10)
参考文献数
13
被引用文献数
3

背景.進行非小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は標準治療のひとつであるが,稀に重篤な免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)が出現する.一方,irAEを発症した症例ではICIの良好な治療成績を示すことが報告されている.研究計画.2016年1月から2017年12月まで国内6施設でICI治療を行った非小細胞肺がん146例を対象に,irAEと治療効果との関連について後方視的に調査した.結果.irAE発症例は58例(39.7%),irAE発症群,非発症群の無増悪生存期間中央値はそれぞれ4.9ヶ月,2.1ヶ月(p=0.0178)と発症群で有意に延長した.奏効率や病勢制御率は,irAE発症群で有意に良好であった.irAE発症群では,全生存期間は有意に延長した.ICI開始後42日以降にirAEを発症した群は,より早期に発症した群と比較して無増悪生存期間および全生存期間が良好であった.結論.ICIによるirAE発症は治療効果や予後と関連するが,その発症時期が重要である.
著者
荒 勝俊 吉松 正 小島 みゆき 川合 修次 大久保 一良
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.377-387, 2002-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
38
被引用文献数
1 3

(1) 日本の伝統的発酵食品である醤油から豆乳発酵食品の呈味性改善効果の高い乳酸菌としてS85-4株を見出した. (2) 豆乳の呈味性改善効果の高いS85-4株の同定を行ったところ,Streptococcus thermophilus又はStr.mitis近縁の株である事が判ったが,糖の分解性が若干異なる事から新規の乳酸菌としてStr. sp. S85-4株と命名した. (3) 各種乳酸菌(標準菌)を用いて豆乳発酵を行ったところ,Str. cremoris, Str. lactis, Str. diace. tilactisに改善効果を見出した. (4) 各種乳酸菌を用いて乳酸発酵を行い,得られた発酵液のHPLCによる分析を行ったところ,豆乳発酵において呈味性改善効果の高かった分離乳酸菌Str. sp. S 85-4株及び標準菌のStr. cremoris, Str. lactis, Str. diacetilactis共に大豆の不快味成分であるダイジン及びゲニスチンといった大豆イソフラボン類に変化は認められなかった.また,呈味性が改善されなかったLactobaeillus caseiなどの発酵液では,ダイジン及びゲニスチンが分解されてアグリコンであるダイゼイン及びゲニスティンに変化する事を見出した. (5) 分離乳酸菌Str. sp. S85-4株で製造した豆乳発酵食品をTLCで解析したところ,新たな糖の生成が認あられた.また新たな糖を含む画分を豆乳に加える事で大豆特有の収斂味が低減し,呈味性が大幅に改善する事が明らかとなった.