著者
久保 加津代
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.325-333, 2004-04-15
被引用文献数
1

以上のことをまとめるとつぎのようにいえる.1.住生活関連記事の分量は決して多くはなかったが,当時の『家の光』には農村の生活改善の核である住生活改善の実態が読みとれる記事がある.数は少ないが平面図もある.初期には「啓蒙」が中心であったが,1930年頃から「実践」がみられるようになる.2.農村の住生活改善は,(1)個人の活動,(2)共同による活動,(3)組合による活動または組合の協力による活動の3つのパターンで進められている.個人の活動については1933年以後に多くみられ,男性による寄稿が多く,能率的になった事例が客観的に述べられていることが特徴である.共同による活動については,女性たちが協力して講演会や台所批評会を開いたり,台所改善講などにとりくんだ記事が多く,個人の活動と比べると,改善の成果・感想が伝わってくるものが多い.組合による活動または組合の協力による活動は,産業組合および信用組合や県農業会などが関係して住宅改善を行った例である.また産業組合による共同浴場は,健康管理意識も高め,教育機能や村民の情報交流機能まで果たし,共同作業場の設置や農業経営の向上,住宅の居住性向上にもつながっている.都市部で連んだ住生活改善の影響もあって,昭和時代初期には農村部でも台所改善を中心に住生活の改善が進んだ.『家の光』は『婦人之友』『主婦之友』などの女性雑誌と比べると,女性自身の寄稿が少なく内容も客観的事実を述べるものにとどまっているが,貧困のなかで協力しあって生活を衛生化・能率化したエネルギーと,そして限定された階層の限定された活動であったとしても,戦後に展開される農家の住生活改善のモデルになったであろう点は評価できる.
著者
久保田 茂隆 中村 昭一
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.47-63, 2004-03-31

ITの急速な進展により,私たちの身の回りには,気が付かない所でコンピュータが活躍している。ユビキタス社会の到来がいわれるようになったが,予想以上に早く進み始めている。ユビキタス社会の特徴は, (1)いつでもどこでも必要な情報を入手できること (2)あらゆる「モノ」が情報の受発信を行う点にある。ユビキタス社会の実現のためには,統一された定義,概念のもとで基盤を整備し,システムを作っていかなければならない。ユビキタスは,Mark Weiser氏が提唱した概念であるが,東京大学の坂村健氏が提唱した「どこでもコンピュータ」と同じ概念である。ユビキタス社会では,私たちの生活も便利になるであろうが,インフラの整備に多額の投資が必要となり,また,多くの個人情報が集約される結果,プライバシー保護が大きな課題となる。0.3〜0.4mm角のICチップが,社会を変えていくことになる。ICチップ(ICタグ)は部品であり,これを実ビジネスでどう活用するかということが重要であり,システムとして価値が生まれる。旅行業界では,60社以上が参加する「手ぶら旅行」の実証実験や,貨物輸送,量販店での店員の効率的接客,その他多くの活用・実証実験が行われている。本稿では,現在のユビキタス・コンピューティングの概念をデバイス側やサーバー側からの考え方を紹介し,現状の研究機関・企業・政府の取り組みを明らかにして,技術的課題・問題点を抽出し,ユビキタス・コンピューティングを実現する為の環境・条件を明らかにすることを試みている。
著者
中田 久保 穂坂 賢 坂井 劭
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醗酵工学会誌 : hakkokogaku kaishi (ISSN:03856151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.509-515, 1985-11-25
被引用文献数
6

Taxonomic studies were done using the methods proposed by Takeda (J. Ferment. Technol., 61,11,1983) and our methods (J. Brew. Soc. Japan, 79,647,1984). Of the 150 strains of awamori yeasts tested in 1980〜1981,143 showed the following properties; resistance against yeastcidin : -, froth forming ability in sake mash : +w〜+, agglutination reaction against antiserum no. 5 : -, growth in potassium-free medium : -, requirement for both pantothenate and thiamine in medium without citric acid and potassium・citrate using ammonium sulfate as nitrogen source : +, growth in medium without citric acid and potassium・citrate from vitamin-free medium : -, growth in vitamin-free medium : -, growth in medium with thiamine in otherwise vitamin-free medium : +, assimilation of melezitose at 33℃ : -, assimilation of a-methyl-D-glucoside at 25℃ : - and production of more than 15.9% alcohol in awamori mash : +.The awamori yeasts isolated in 1980-1981 were clearly distinguishable from awamori yeasts isolated in 1964 by Takeda et al. (J. Ferment. Technol., 61,11,1983), shochu and sake yeasts, and other Saccharomyces cerevisiae.
著者
大黒 將弘 宮崎 哲弥 森田 逸郎 大谷 朋広 長尾 康之 久保田 文人 鈴木 正敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OCS, 光通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.410, pp.7-10, 2004-10-28
被引用文献数
5

架空区間を含んだ約200kmのITU-TG652準拠の既設シングルモードファイバで構成された、JGNII光テストベットを用いて、単一チャネルの単一偏波160Gbit/s光信号伝送実験を行った。強度変調(OOK:on-offkeying)方式と差動位相変調(DPSK:differential phase shift keying)方式の特性比較を行い、 DPSK変調方式を用いることで, OOK変調方式よりも良好な伝送特性を得た。さらに、DPSK変調方式と偏波スタビライザを併用することで、OOK変調方式に比べて2.5dB以上Q値の向上が得られ、200km伝送後も安定な伝送特性が得られた。
著者
松山 聡 久保 喜平 大橋 文人 高森 康彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.201-203, 1997-03-25
被引用文献数
2 8

イヌ,ネコ,ウシ, ウマおよびウサギの正常肝臓組織より, 癌抑制遺伝子の一つと考えられているプロヒビチンcDNAの一部のクローニングをRT-PCR法により行った. その結果, 今回, RT-PCRにより増幅された部分は, 各動物種間でcDNAの塩基配列では約90%, アミノ酸配列では約95%以上の相同性を示した. したがって, これらのRT-PCR産物は, 各動物のプロヒビチンcDNAの一部であることが示唆された.
著者
湊 宏 大久保 皖司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-4, 1991-07-31
著者
津村 宣彦 櫻木 範明 晴山 仁志 野村 英司 大河内 俊洋 山本 律 武田 直毅 西谷 雅史 平畠 功二 藤野 敬史 大久保 仁 佐藤 力 牧野田 知 川口 勲 藤本 征一郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.508-514, 1996-07-01

骨盤リンパ節 (PLN) および傍大動脈リンパ節 (腹大動脈節: PAN) を含む系統的後腹膜リンパ節郭清 (RPLND) を行った原発性上皮性卵巣癌137例の手術治療について後腹膜リンパ節 (後腹膜LN) の部位別転移頻度を求めた。137例のうち, 97例は化学療法施行前の初回手術時に, 40例は化学療法施行後の二次的手術 (secondary cytoreductive surgery) の際にRPLNDを行った。本研究で用いた臨床進行期は後腹膜LN転移所見を考慮せずに術中の腹腔内所見だけに基づいて決定した暫定的進行期である。得られた結果は以下のとおりである。1. 後腹膜LN転移は137例中30例 (21.9%) に認められた。PLNのみの転移が13例, PLNおよびPAN両方に転移を認めたものが11例あり, PANのみの転移が6例あった。2. 部位別のLN転移頻度はPANが12.4% (17/137) と最も多く, ついで総腸骨節, 閉鎖節, 外鼠径上節などと続いた。3. 化学療法施行前の初回手術時にRPLNDを行った症例における孤立性のLN転移はPANあるいは総腸骨節に認められた。4. PLN転移陽性24例のうち, PAN転移陽性例のPLN 転移部位数は5.27±3.00 (mean±SD) であり, PAN転移陰性例のPLN転移部位数2.62±1.66との間に有意差 (p<0.05) を認めた。これらの結果は卵巣癌のLN転移部位としてPANおよび総腸骨節が最も重要であること, PANとは独立して閉鎖節や内腸骨節などのPLNに転移が起こること, さらにPAN転移は直接の経路によるほかにPLN転移の拡大の結果として起こることを示している。したがってLN転移の有無を明らかにするためにはPANおよびPLN両方の系統的検索が必要と思われた。
著者
伊東 励 金 晧 久保 博英 金子 政則 小林 繁 富 成志 張 庭〓 王 文奎
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.947-956, 1996-12-25
被引用文献数
12

In August to September of 1995 the authors conducted an anthropometry of the head and face and measurement of the dental arch on Chinese Liao-Ning (66 males and 83 females), and the results were discussed. Furthermore, the correlations between the measurements of head and face, and those of dental arches and palate height were studied. The main results obtained are as follows : 1) Head length : the mean value for the male is 181.0mm and for the female 170.4mm. Both belong to Middle type. 2) Head breadth : the mean value for the male is 155.3mm and for the female 151.6mm. Male belong to Middle type and females belong to Wide type. 3) Bizygomatic breadth : the mean value for the male is 140.3mm and for the female 133.5mm. Both belong to Middle type. 4) Morphological face height : the mean value for the male is 124.0mm and for the female 114.6mm. Both belong to High type. 5) The head-type of the Chinese Liao-Ning belongs to Hyperbrachycephalic type and the face-type to Leptoprosopic type. 6) Correlation : The significant positive correlation is noted between the morphological face height and lower dental arch length only in the male, while that between morphological face height and palate heght is noted in both male and female.
著者
津田 孝夫 中谷 いつ子 岡部 寿男 國枝 義敏 大久保 英嗣
出版者
京都大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

本研究は平成2年度から4年度まで実施された。作業としては、交付申請書の研究実施計画に沿って、自動ベクトル化/自動並列化コンパイラならびに仮想並列ベクトル計算機シミュレータを開発することとした。ただし、短期間で開発を進めるため、研究組織において既に開発した自動ベクトル化コンパイラV-Pascalを基にする。具体的な作業は、1.コンパイラの自動ベクトル化/自動並列化処理部の新規設計と作成、2.仮想並列ベクトル計算機シミュレータのための効率的なスタック機構/同期機構の設計と作成、3.コンパイラの目的コード生成部の新規作成、4.仮想並列ベクトル計算機シミュレータの作成、5.コンパイラのその他の各部の修正、6.システム全体の性能評価である。1.に際しては、他に類を見ない厳密な依存関係解析技術を新たに開発実装するとともに、粒度の大きな並列化を可能とするために、依存グラフをプログラム全体にわたって作成する手法を考案ならびに実現した。この依存グラフは、様々な並列実行の単位を想定して設計されている特徴を持つ。また、種々の粒度の並列タスクの候補を階層的に表現でき、かつ、タスク候補の分割・融合も容易なように設計されている。この新たに提案している階層的依存グラフを用い、各タスク候補の実行時間予測を行った上で、最適と思われる並列タスクを自動生成する技術を確立した。この時間予測では、本研究の設備備品費で購入した実験用計算機TITAN上で、各種実行時ライブラリの実行時間を計測したデータ等を基に、有効性を実際に検証した。2.のシミュレータとしては、日立のスーパーコンピュータS-820用のバージョンがベクトル命令のシミュレーションを含めて稼働している。並列同期/スケジューリング/スタック管理等の機構は、実行時ライブラリとして実現され、コンパイラが生成する目的コードと連携して、効率よく並列実行を進めるものである。
著者
石川 博 久保田 和己 金政 泰彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.201, pp.19-23, 1999-07-21

XMLデータはWeb情報システムやEC/EDI応用で広く使われていくことが予想されるが、そのような応用では大量のXMLデータを通常対象とする。そのためには利用者がサーチ条件を指定できるようにして本当に必要なXMLデータのみを検索できるようにすることと、複数のXMLデータソースを統合利用できるようにすることが必要である。このためにXQLというXMLデータの問い合わせ言語を提案する。XQLは従来のデータベース標準(SQLやOQL)との整合性を考慮して設計されている。本稿ではXMLデータの問い合わせ言語の要件と機能について説明し、XML問い合わせ処理システムxQuesのためのXQLの実装について触れる。
著者
小林 宏行 河合 伸 押谷 浩 酒寄 享 小池 隆夫 大西 勝憲 斎藤 玲 中山 一朗 富沢 磨須美 大道 光秀 平賀 洋明 渡辺 彰 貫和 敏博 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 荒川 正昭 和田 光一 岡 慎一 稲松 孝思 増田 義重 島田 馨 柴 孝也 吉田 雅樹 佐藤 哲夫 林 泉 宍戸 春美 赤川 志のぶ 永井 英明 渡辺 尚 馬場 基男 松本 文夫 桜井 磐 嶋田 甚五郎 堀 誠治 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 健一 平居 義裕 石丸 百合子 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 俊信 下方 薫 齋藤 英彦 成田 亘啓 三笠 桂一 三木 文雄 二木 芳人 副島 林造 澤江 義郎 仁保 喜之 大泉 耕太郎 市川 洋一郎 徳永 尚登 原 耕平 河野 茂 門田 淳一 朝野 和典 平潟 洋一 前崎 繁文 伊藤 直美 松本 慶蔵 永武 毅 宇都宮 嘉明 力富 直人 那須 勝 山崎 透 斎藤 厚 普久原 浩 広瀬 崇興 佐藤 嘉一 熊本 悦明 河村 信夫 岡田 敬司 稲土 博右 守殿 貞夫 荒川 創一 宮崎 茂典 大森 弘之 公文 裕巳 小野 憲昭 渡辺 豊彦 村田 匡 熊澤 淨一 松本 哲朗 尾形 信雄 高橋 康一 天野 拓哉 中村 元信 山本 松男 清水 武昭 岩井 重富 国松 正彦 大塚 一秀 中川 良英 渡辺 哲弥 松山 秀樹 杉山 勇治 中山 一誠 品川 長夫 真下 啓二 真辺 忠夫 木下 博明 森本 健 久保 正二 藤本 幹夫 上田 隆美 岩佐 隆太郎 横山 隆 児玉 節 津村 裕昭 松田 静治 保田 仁介 山元 貴雄 岡田 弘二 遠藤 重厚 山田 裕彦 高桑 徹也 斎藤 和好 相川 直樹 田熊 清継 藤井 千穂 福田 充宏
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.846-871, 1997-10-25
被引用文献数
7
著者
近藤 俊一郎 海老沼 拓史 久保 信明 安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.169, pp.25-30, 2007-07-20

電離層シンチレーションは電離層のF層(≧地上高150km)の局地的な電子密度の不規則性によって起こるとされている.この不規則な領域と送信機および受信機の相対的な運動により,GPS信号の信号強度と位相が急激に変化し,受信機のロックはずれやサイクルスリップを起こすことが知られている.本研究では,既存の研究で提案されているモデルを基にシンチレーションサンプルの生成ソフトウェアを製作し,日本で観測される標準的な強度のシンチレーションに対する位相ロックループ(PLL)の性能をシミュレーションで評価した.シミュレーションの結果,帯域可変型Fast Adaptive Bandwidth (FAB) PLLはシンチレーションの影響下にいても位相誤差を見積もって帯域幅を制御できることが確認できたが,信号強度の低い信号では利用は困難であることも明らかになった.
著者
大久保 功子
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.85-93, 1996
被引用文献数
4

This paper describes the lived experience of the four couples and two mothers who had their first baby. The research used a qualitative method in which in-depth interviews based on a phenomeno-logical approach. The first theme emerged was that their daily life began to revolve around the existence of their baby. They have responsed to thier baby. There were distinctions between father and mother. Mother sacrificed herself to live her own baby. Consequently she might have the conflict between living for the baby and for herself. On the other hand, father had inferiority complex toward breast feeding, and realized limited ability for the baby. Instead, father had to search for his ability for the baby on his own will. The second theme was how to understand their baby. It was started from having met the part of unknown baby, so they wanted to know baby's mind. Three patterns were identified; 'reading the baby's mind (Sassuru)', 'reading the context of the baby's on time and space that parents have coexisted with their baby', and 'putting themselves in the baby's place'. Parents were encouraged by themselves as founding out thier own baby's as a human being, growth and development, and possibility. It brought about a pleasure in discovery such things.
著者
久保田 佳明 鍾 寧
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.392, pp.29-34, 2010-01-18

Webスケール問題解決システムの開発には,ルールベース推論だけでなく,事例ベース推論との統合利用が要求される.そこで,本研究ではルールベース推論と事例ベース推論の協調処理ができる,分散Web推論エンジンのモデルとシステムを開発した.まだ,使用例として,パーソナライズされた旅行プランサービスを旅行ポータルサイトで提供するためのシステムを開発し,その提案手法の有用性を示した.これにより,ツアー情報と個々の旅行情報をそれぞれ提供できるのようになり,ユーザーが旅行プランを立てる負担を軽減できる.
著者
久保木 秀夫 クボキ ヒデオ Hideo KUBOKI

古筆切や残欠本、諸文献に引用された佚文、およびそれを用いた研究は、近年、国文学の領域で、重要な文化資源・研究領域として重要視されている。古筆切とは、古典籍の古写本が、掛け軸や手鑑作成のために切られてしまい、その結果一枚の紙の形で残るものであり、全体ではなく一部しか伝わらないものである。こうした古筆切は膨大にあるが、その中から重要なものを見つけ出し、適切に位置づければ、文学史を変えるほどの力を持つ。こうした研究の特徴は、資料の直自性にあり、重要な資料を見出し、検証して、その価値を正確に位置づければ、それは直接的に、否定しようのない価値を発する。本論文では、従来の研究成果を踏まえ、かつ従来の研究方法を発展的に継承し時に批判も加えつつ、中古中世散佚歌集のさらなる発掘とその存在意義の解明とが指向されている。<br /> 本論文では、散侠歌集というタイトルであるが、私撰集・私家集のほか、歌合なども含む。また時代的には、平安時代鎌倉時代・南北朝時代までの資料を扱っている。これらを、本論文では、一貫した研究方法で詳細かっ正確に分析し、その資料の重要性をあぶり出す。その方法とは、古筆切をはじめとする本文資料と、諸文献中に記載される関連情報とを広く博捜し収集した上で、各作品の成立・伝来・享受について、のみならず各本文資料に含まれる新出の諸情報がもたらす知見について、各時代の文学状況を踏まえながら実証的に論じるという方法である。<br /> 本論文において各論は、第一章では平安時代、第二章では鎌倉・南北朝時代の資料を扱い、第三章では、資料紹介を行っている。まず、第一章で取り上げられているのは六作品である。第一節では、現存するいずれの系統とも異なる散佚『道真集』を復元、その成立が十一世紀初頭以前とみられること、かつ『大鏡』『新古今集』ほかの出典とされた可能性の高いことなどが述べられている。第二節では、伝寂然筆大富切の新出一葉、及び田中親美旧蔵残簡などに基づき、散佚『具平親王集』が他撰であり寛弘六年(一〇〇九)七月以降の成立であること、また当該資料を含む寂然筆本がまとまって藤原定家の許へ移動した可能性があることなどが論じられている。第三節では、選子内親王の『大斎院御集』散侠部分の存在を示す『栄花物語』「殿上の花見」について、長元二年(一〇二九)三月二日の出来事だったと論証し、従って『大斎院御集』もかつては同年頃までの、ほぼ選子の生涯を覆うほどの長大な内容を有していたという重要な推定が述べられている。第四節では、藤原顕仲撰の散佚『良玉集』の秩文の再整理ののち、新たに発見された真名序と奥書とを紹介し、それを読解し、同集が『金葉集』批判の私撰集と世に認知されていった経緯などについて検証されている。第五節では、藤原資経筆未詳私撰集断簡五葉が俊恵撰の散佚『歌苑抄』であることや、その成立や内容の考察の上で、『歌苑抄』が歌林苑という「結社」「同人」の「事業」として編纂されたという定説が批判されており、あくまで俊恵個人の撰集であると認識すべきことなどが論じられている。第六節では、伝鴨長明筆『伊勢滝原社十七番歌合』断簡一葉について、記載歌が『玄玉集』所収の西行詠と一致することなどから、散佚した西行最晩年の自歌合『諸社十二巻歌合』の一部である可能性が極めて高いと結論された。<br /> 続く第二章では八作品を扱う。第一節では、今日完全に散侠したと思われていた源承撰『類聚歌苑』の残欠本を発見した上で、文永七~八年(一二七〇~七一)の間の成立であること、当時台頭していた真観ら反御子左派を牽制する目的で編纂されたこと、直後に成立した『続拾遺集』の母体とされた可能性があることなどが、明確に述べられている。第二節では、新出の伝後伏見院筆未詳歌集残簡について、錯簡を復元した上で、それが伏見院や京極為兼など京極派主要歌人の詠歌を収めた作品であること、しかも『後撰集』などの詞書に基づきながら自在に贈答歌を詠み合うという、中古中世和歌史上、極めて特殊な、しかも興味深い趣向の作品であることなどが記されており、京極派和歌の研究に、きわめて重要な論である。第三節では、戦前の美術品売立目録掲載の伝伏見院筆未詳歌合一巻の部分図版の発見により、それが従来ごくわずかな佚文しか知られていなかった、嘉元元年(一三〇三)十月四日開催の京極派歌合であることなどが示されている。第四節では、散佚『新撰風躰和歌抄』の伝藤原清範筆断簡四葉の紹介によって、正応四年(一二九二)~延慶三年(一三一〇)の間の成立であること、冷泉為相撰『拾遺風躰和歌集』と何らかの関連性を持つ可能性があることなどが論証されている。第五節では、これまで未詳家集とされてきた伝二条為道筆西宮切が、中臣祐臣の残欠家集『自葉集』の散佚部分であること、その上で『自葉集』の成立や性格、また祐臣の和歌活動などについて論じられている。第六節では、散侠『松吟和歌集』の伝二条為遠筆断簡十葉を集成した上で、その成立が康永三年正月(一三四四)~貞和元年(一三四五)八月の間だったこと、ちょうど京極派の『風雅集』が撰ばれようとしつつある当時の動向に相当批判的な立場から編まれた私撰集だったらしいことなどが述べられている。付論では、古筆切のツレの認定に際して必要となる条件を整理するとともに、特に散佚文献に関する場合の問題点を指摘した上で、伝光厳院筆六条切・伝後光厳院筆兵庫切・伝光明院筆天龍寺切という三種の未詳私撰集断簡をツレと論じた先行研究を方法論的に批判した。またツレ認定の効能の一例として、伝慈円筆未詳家集断簡が散佚『公経集』であることなどが明らかにされている。<br /> 最後の第三章では二点の書籍目録を翻刻紹介されており、第一節が彰考館文庫蔵「本朝書籍目録」、第二節が岡山大学附属図番館池田家文庫蔵「歌書目録」で、いずれも散侠文献に関する貴重な情報を多数記載している重要資料であると示されている。このように、本学位論文で行った分析・検証によって、それぞれの歌集の伝本や成立、性格、伝来や享受、和歌史や歌壇の具体相などについて、現存する作品中心に組み立てられている中古中世和歌文学史を大きく補足し、さまざまな面で、従来の説は大きく塗り替えられるに至っている。
著者
久保田 秀和 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.600-607, 2003-08-01
被引用文献数
4

本論文では,知識カードを用いた分身エージェントの実現手法を提案し,EgoChatシステムとして実装した.分身エージェントとは作成者本人の代理として任意のユーザと会話可能なエージェントである.提案手法では分身エージェントの会話コンテンツを知識カードと呼ばれる意味的なまとまりをもつ文章断片を用いて構築し,分身エージェントの発話とユーザの発話とを同様の扱いが可能な知識カードとして扱う.知識カードを用いた会話生成は文章断片の組合せによって行われるため,分身エージェント作成者にとってエージェントとユーザとの間で行われる会話内容を予測することはたやすく,会話生成のためのコンテンツ作成作業が容易である.また,会話型エージェントが実社会で利用されるためには利用者からの反応や状況の変化に応じた会話コンテンツの継続的な改訂作業が必要となるが,提案手法では分身エージェントがユーザとの間に行った会話を会話ログとして記録し作成者本人ヘフィードバックすることによって,会話コンテンツの改訂作業を支援する.
著者
鈴木 俊明 大久保 一彦 山中 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.2, 1999-03-08

マルチドメイン(ドメイン: カスタマ、サービスプロバイダの管理領域)環境において、サービス実現形態に依存しないフロースルー・オペレーション方式を確立する必要がある。本稿では、トラブルチケット(TR:Trouble Report)管理を例題として方式検討を行う。