著者
伊藤 誠也 金子 俊一
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.124, no.3, pp.613-620, 2004 (Released:2004-06-01)
参考文献数
27

An efficient algorithm for calculating Selective Correlation Coefficient (SCC) is proposed, which is expected as stable and robust for ill-conditions in imaging: illumination change, noise, and occlusion. The SCC is calculated through a masking operation based on Increment Sign Correlation which is efficient and robust for the ill- conditions. An SSDA algorithm and initial thresholding are introduced to remove redundant computation for obtaining much more efficiency. Through many experiments with real images, from twice to 150 times efficiency in comparison with CC and the original SCC could be obtained for ill-conditioned search problems.
著者
一瀬 哲夫 小島 諭 宮崎 彩記子 宮崎 忠史 林 英守 伊藤 誠悟 川村 正樹 諏訪 哲 櫻井 秀彦 住吉 正孝
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.806-810, 2008

症例は64歳,男性.数日前に左上肢を枕にして昼寝をしていたところ,突然の左上肢浮腫を認めたため来院.明らかな血栓性素因,悪性疾患を認めなかったが,左上肢の静脈造影,造影CTで左腋窩静脈の高度狭窄と,左鎖骨下静脈の遠位部の完全閉塞と近位部に浮遊血栓を認めた.肺動脈血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)の予防のため上大静脈に一時留置型静脈フィルター(ニューハウスプロテクト)を留置し,7日間のウロキナーゼ投与,およびヘパリン療法を開始した.線溶療法後の静脈造影では浮遊血栓は消失し,左鎖骨下静脈に器質化した血栓を認めた.フィルターは10日目に合併症なく抜去した.原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)によるPTE予防に一時留置型フィルターは有用であると思われた.
著者
鈴木 正昭 伊藤 誠二 松田 彰 渡辺 恭良 長野 哲雄 袖岡 幹子
出版者
岐阜大学
雑誌
創成的基礎研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究プログラムでは、低分子有機化合物により生体機能の制御を実現する「分子プローブ概念」のもと、機能発現機構の分子レベルでの研究から個体レベルへの応用をめざし、有機合成化学者とin vivo指向型生物系研究者の連携による化学/生物学融合型新学際的連携プロジェクトを展開するための基盤を構築することを目的とした。関連諸分野の専門家を結集し、異分野の研究者間の綿密かつ有機的な情報交換のため、2回の研究準備会議を行うとともに、外部研究者らを交えて総合シンポジウムを開催した(平成12年11月30日、参加者110人)。研究状況については冊子として取りまとめ、本研究分担者のみならず関連研究者に配付し、その情報を公開した。これらの活動を通じて研究分担者同士および関連研究者との間での有意義な意見の交換、相互評価が行われ、次の学祭研究へと展開する準備が整った。なお、以下に設定された課題についてのこれまでの主な具体的成果を箇条書きにした。(1)高次脳機能の解析と制御法について: 設計したグルタミン酸トランスポーターブロッカーを基にアフィニティカラム担体およびシナプス伝達解析のための光感受性caged-TBOAを創製(島本)。ノシスタチンがノシセプチンやPGなどによる痛覚反応に鎮痛効果を示すことを証明(伊藤)。神経細胞におけるSCG10関連分子の微小管との結合ドメインを同定、崩御制御に重要なリン酸化制御部位を決定(森)。神経保護作用を示す新規PGI_2受容体リガンド15R-TICのC-11核ラベル体の創製とその活用によるヒト脳内IP2受容体のイメージングに成功(鈴木、渡辺)。15R-TICの10倍の活性を持つ15-deoxy-TICを創製(鈴木)。(2)脳機能の保護と可塑性促進研究について: PG受容体EP3の細胞内情報伝達系を解析し、神経突起の退縮や神経伝達物質の遊離の阻害、神経可塑性や神経伝達の調節などに関与していることを証明(根岸)。ラット脳組織切片を用いたポジトロンイメージングシステムを確立し、神経細胞における障害発生機序の解明と治療法開発に有用な情報を獲得(米倉)。神経突起伸展促進作用および神経細胞死抑制作用を示す新規化合物NEPP10とNEPP11を創製し、PET研究に向けた分子設計を開始(古田、鈴木、渡辺)。(3)細胞増殖・分化制御機構の解明と細胞周期制御理論について: 核内
著者
日高 勇一 小玉 彬人 田村 亮太 伊藤 誠文 小池 貢史 平井 卓哉 佐藤 裕之 萩尾 光美
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.6-11, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

5歳、雌のミニチュア・ダックスフントが腹囲膨満および呼吸困難を主訴に来院した。身体検査、エックス線検査および超音波検査により腹腔内腫瘤と胸水の貯留が認められた。腫瘤と胸水の細胞診により、腫瘤は胸腔内転移を伴う卵巣由来の悪性腫瘍であることが示唆された。手術により腹腔内腫瘤は摘出され、病理組織学的に卵巣の乳頭状腺癌と診断された。術後、肺転移に伴う胸水の制御を目的にパクリタキセルと白金製剤併用の化学療法が合計9回行われ、手術から623日目に死亡した。剖検により肺は腫瘍組織に侵されていたことが確認された。パクリタキセルと白金製剤併用の化学療法は、犬の転移性卵巣癌症例に対する化学療法の選択肢の一つになりうるかもしれない。
著者
伊藤 誠
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.21-29, 2014

This paper discusses the class results of String Instrument Exercises, a one-credit one-semester course that was taught in the second semester of the 2012 school year. For the past several years, we have advanced research concerning the effectiveness of the song collection New Tunes for Strings (Book 1) (by Stanley Fletcher) as an ensemble text for the introductory period. This time, we focused on the functions of the thumbs of both hands, which are important for violin performance.There was no major difference in the implementation content between this school year and previous school years in terms of instruction procedure and selection of teaching materials. In the 2012 school year, 24 students were taking the course. Among them, four had experience (one or more years of prior learning experience) with the violin. Our perennial challenge is to successfully teach courses that are both effective and efficient for teaching students without violin experience within the limited time of only 15 class meetings. However, now that, based on our experience, we have fixed the textbook songs and can approximate the abilities of students without violin experience, we have come to believe that we should set aside sufficient study time for learning the true essence of the violin as a bowed string instrument. The more complex the technique, the lower the possibility of achieving quick results. We introduced learning content to make students aware of the function of the thumbs into the curriculum, being fully aware of the fact that they would be having difficulties.The action of the right thumb affects bowing quality. Even slight functioning by the thumb will lead to variations in articulation. As for the left thumb, if one can combine the role of supporting the instrument with the role of controlling precise pitch in specific positions, the half shift becomes possible, and learning of so-called position shifts would gain momentum. Bow movement in the right hand that is rich in flexibility, along with beautiful left-handed form in wrapping the neck, can be achieved. Support from the left and right thumbs enables one to change tone color and increase range.In our investigations, we look back at the class notes and video footage from all 15 classes, as well as the analysis of the results from the course questionnaire surveys. This is a corrected and revised paper based on the contents of the research presentation on October 13 at the 44th Annual Conference of the Japan Music Education Society in Hirosaki.
著者
星野 次汪 伊藤 誠治 谷口 義則 佐藤 暁子
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.21-25, 1994-03-05
被引用文献数
5

粒大と品質との関係を明らかにするため, 1989/1990年, 1990/1991年に栽培したコユキコムギを用いて, 原粒を縦目篩を用いて大きさ別に分け, 原粒及び粒大別に製粉された60%粉の粗タンパク含有率, 灰分含有率及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 粒大が大きいほど千粒重は大きく, 3.0mmの粒は1.8mmの粒の約3倍の重さであった. 粗タンパク含有率は1989/1990では粒大が大きいほで高くなったが, 1990/1991ではいずれの粒大でもほぼ一定の値であった. 灰分含有率は1989/1990では2.4mm, 1990/1991では2.6mmの粒が最も低く, それより粒大が大きくなるかあるいは小さくなるにしたがって高くなった. 製粉歩留は, 粒大が大きいほど高くなり, 粒大間に1%水準の有意差が認められた. 粉の比表面積(cm^2/g)は粒大が大きいほど小さかった. 粉の白さ(R455), 明るさ(R554)は粒大が大きいほどその値は大きかったが, 胚乳の色づき(logR 554/R 455)は逆に小さかった. ファリノグラムの特性値(Ab, DT, Stab., V. V, Wk)及びアミログラム最高粘度は粒大間で有意差が認められなかったが, エキステンソグラムの各特性値のうち, 面積は1.8mmの粒を除けば粒大が小さいほど大きく, 伸長抵抗は粒大の大きいもの及び小さいものが小さかった. これらのことから, 大粒は, 灰分含有率が低く, 製粉歩留が高く, 粉色相が優れているが, ブラベンダー特性はやや小粒の方が優れていた.
著者
伊藤誠悟 吉田 廣志 河口信夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.90, pp.25-31, 2005-09-15
被引用文献数
18

近年無線LANの普及が急速に進み,無線LAN環境を用いた位置測位システムが非常に多く開発され位置情報システムが身近に利用できる環境になりつつある.本論文では,無線LAN測位システムのためのプロジェクトLockyプロジェクトの紹介,位置推定手法とその応用アプリケーションについて提案する.Lockyシステムにおいては環境に存在する無線LANのBSSID(Basic Service Set Identifier)情報や受信電波強度分布の情報をユーザのコラボレーションで収集しそれらの事前電波情報と,ユーザがある状態において観測できる無線LAN情報を用いて位置推定を行う.本システムにおいてはユーザはノートPCやPDA等の無線LAN機能付き端末さえもっていれば端末の位置推定を行い位置依存サービスを手軽に享受することが可能である.Over the last few years, wireless LAN and location-based services has been a hot subject of controversy. Many positioning systems using wireless LAN have been developing. In this paper, we introduce a community based positioning project using wireless LAN named Locky.jp. And we propose a positioning method and location based application using Locky. In Locky system, pre-observation data of wireless environment information that user can collect at that point, system estimates terminal's location. When a user wants to utilize location based service based on Locky system, the user only need a laptop or PDA with wireless LAN.
著者
伊藤 誠
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(A)2009-2011
著者
伊藤誠悟 吉田 廣志 河口 信夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.116, pp.117-122, 2006-11-10
被引用文献数
2

現在,屋外環境において最も利用されている位置情報システムはGPSであり,GPSに対応する多くの地図アプリケーションや位置情報を考慮したアプリケーションが開発されてきた.しかし,GPSは屋内環境で利用できないため,屋内環境において位置情報を考慮したアプリケーションを利用する事が出来ない.一方,近年の無線LANの急速な普及により無線LANを利用した位置情報システムは屋内外において利用可能となりつつある.本論文では,既存の位置情報を考慮したアプリケーションを屋内外の環境でシームレスに利用できる手法の提案を行う.本手法を利用することにより,アプリケーションは,GPSと無線LANによる出力された位置情報を区別せずに利用できる.加えて,無線LANを用いた広域な位置情報システムの実現を目指すプロジェクトであるLocky.jpの紹介を行う.Most major location information system in outdoors is GPS, and many location-based applications using GPS have been developed. But, GPS cannot use in indoors, thus these applications are not available. In contrast, Wireless LAN positioning is available in indoors and outdoors. In this paper, we propose integration method of wireless LAN positioning and GPS. By using our method, application can use location information of GPS and wireless LAN without distinction. In addition, we introduce metropolitan-scale wireless LAN positioning project locky.jp
著者
伊藤 誠
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.354-360, 2003-06-25
被引用文献数
4 1

自動化は作業効率や安全の向上に貢献しうる反面,利用者がシステムに頼りすぎるとかえって安全性が損なわれうるため,過信の防止が重要な課題である.しかし,過信を防ぐための方法は確立しておらず,概念の整理も十分でない.本校では,過信を分類することによって,過信が単なる慢心や油断だけではなく,誰にでも起きうるものでもあることを指摘する.さらに,自動化システムの動作限界を利用者に正しく理解させることの重要性を示す.
著者
伊藤誠悟 佐藤 弘和 河口 信夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.51-62, 2006-01-15
被引用文献数
3

近年,無線LAN の急速な普及により無線LAN を利用した位置推定システムや情報支援サービスが多く提案されている.いくつかのシステムでは無線LAN の受信電波強度を利用し端末の位置を推定する.しかし,無線LAN の受信電波強度は同じ場所で観測した場合においても端末が向いている方向により大きく異なる.本論文では無線LAN の受信電波強度の方向による違いについて調査を行い,受信電波強度分布の違いを利用した方向推定手法の提案を行う.本手法においては無線LAN の受信電波強度分布間における類似度を定義し,この類似度を用いて,端末が向いている現在方向の推定を行う.方向推定では無線LAN の受信電波強度の情報のみを用いるため,無線LAN 機能を備えている端末であればどのような端末でも本手法を用いることができる.実験の結果,4 個のアクセスポイントを利用し,2 秒間の受信電波強度分布測定で,2 方向の推定においては正解率88%,4 方向の推定においては正解率77%の結果を得た.Over the last few years, many positioning systems and information support systems using wireless LAN have been developed. Some systems use received signal strength of wireless LAN for positioning. But the distribution of received signal strength differs depending on the orientation of the terminal. In this paper, we examine the difference of received signal strength distribution to each orientation, and propose an orientation estimation method using divergence of received signal strength distribution. By using our method, users can know their direction only using wireless LAN adapter. The results of the evaluation experiment show that the accuracy of 2-way estimation is 88% and 4-way estimation is 77% under 2 seconds observation of 4 access points.
著者
芦高 恵美子 伊藤 誠二
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

神経ペプチドノシスタチンは、神経損傷後の慢性痛や炎症性疼痛に対し抑制効果を示す。我々は、マウス脊髄シナプス膜よりノシスタチンに結合するタンパク質(Nocistatin binding protein, NSP)を同定した。ノシスタチンは神経組織に広く存在しているN末端の欠損した29kDaのNSPと結合した。NSP遺伝子欠損マウスでは、野生型で認められたノシスタチンによる触覚刺激によるアロディニアの抑制効果の消失に加え、炎症性疼痛の増強も認められた。
著者
伊藤 誠二 裏出 良博 松村 伸治 芦高 恵美子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

痛みは生体にとって警告反応どなる生理的な痛みだけでなく、炎症や手術後の痛み、癌末期の疼痛、神経の損傷による神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)と様々な原因で起こり、自発痛、侵害性刺激による痛覚過敏反応、本来痛みを誘発しない非侵害性刺激による痛み(アロディニア)とさまざまな病態をとる。末梢組織で活性化された侵害受容器のシグナルは一次求心性線維を介して脊髄後角に伝えられる。我々は、脊髄髄腔内にプロスタグランジン(PG)E_2あるいはPGF_<2α>を投与するとアロディニアを生じ、PGD_2がアロディニアの発症を修飾すること、これらのアロディニアの発症はカプサイシン感受性と非感受性の異なる2つの伝達経路を介すること、脊髄での中枢性感作には、PG→グルタミン酸→NMDA受容体→一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化という生化学的カスケードを介することを明らかにしてきた。今年度は、アロディニアの発症機構におけるこれらの生体因子の役割をノックアウトマウスで明らかにするために、まずマウスの坐骨神経結紮モデルを確立し、検討した。1)アロディニアは坐骨神経結紮後、1週間で生じたが、COX-2のノックアウトマウスは、アロディニアの発生には関与しなかった。2)坐骨神経結紮モデルの痛覚反応はCOX-1の選択的阻害薬で抑制されたが、COX-2の選択的阻害薬では影響されなかった。3)誘導型NOSのノックアウトマウスでもアロディニア反応は抑制されなかった。4)NMDA受容体ノックアウトマウスではアロディニア反応の出現が抑制された。これらの結果は、アロディニアの発症にグルタミン酸による興奮性神経伝達が重要な役割をしていることを示唆するものである。今後、我々が進めてきた髄腔内PG投与によるアロディニアモデルと比較検討してアロディニアの発症機構を解明したいと考えている。
著者
芦高 恵美子 伊藤 誠二
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ノシセプチン/オーファニンFQ(N/OFQ)とノシスタチン(NST)は、同一前駆体タンパクから産生され、痛覚伝達において相反する作用を示す。ペプチドの産生、遊離が重要な制御機構の一つであると考えられる。Bioluminescence Resonance Energy Transfer(BRET)を用い、生細胞においてタンパクのプロセッシングを定量的にモニターできる新規プローブを開発し、NSTとN/OFQのプロセッシングに適用できることを明らかにした。本研究は、プロセッシングモニタープローブを導入した細胞において、NSTとN/OFQの産生、遊離を制御する分子の同定、さらに個体レベルでの疼痛発症における神経回路網解析を行い、疼痛発症制御機構の解明を目的とする。1.NSTとN/OFQの産生、遊離 プロセッシングモニタープローブを用いNSTとN/OFQの産生には、少なくともfurin、PC1およびPC2が関与していることを明らかにした。内因性にfurin発現細胞に、PC1を発現させると、NSTは恒常的分泌経路を、PC2発現により調節的分泌経路を介して分泌された。また、炎症性の痛覚モデルマウスにおいて、脊髄後角においてfurinとPC2が顕著に上昇する興味深い結果が得られた。このことは、プロセッシング酵素の誘導により、NSTの産生や分泌経路が異なり、N/OFQの痛覚発症が制御されている可能性が示唆された。2.NSTとN/OFQ遊離をめぐる疼痛発症 プロスタグランジンE_2によるアロディニアは、N/OFQの遊離を介しており、NSTによってその痛覚反応は抑制されたことより、NSTとN/OFQの遊離調節により、痛覚制御がなされていることも示唆された。
著者
伊藤 誠二 西澤 幹雄 芦高 恵美子 松村 伸治
出版者
関西医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

最近のDNAマイクロアレイの実験では、神経損傷に伴い100以上の遺伝子発現が変化することが報告されているが、どのように疼痛反応に関与するかは不明であった。今年度はPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)のノックアウト(PACAP^<-/->マウスを用いて検討を行った。神経損傷に伴いPACAPの発現がDRGの中型・大型細胞、脊髄後角の浅層で増加するが、PACAP^<-/->マウスでは見られなかった。痛覚伝達にはグルタミン酸NMDA受容体が重要であり、その活性化に伴い一酸化窒素(NO)の産生が増加する。神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)活性は組織を固定後、NADPHジアホラーゼ活性で組織染色して測定できる。神経損傷後、NADPHジアホラーゼ活性がPACAPの発現誘導部位に一致して増加していたが、PACAP^<-/->マウスでみられなかった。NADPHジアホラーゼがnNOSの活性化を反映しているかどうか確認するために、蛍光NO指示薬DAF-FMを用いてNO産生を検討した。脊髄スライスにNMDAあるいはPACAPを単独投与した場合にはNO産生がみられなかったが、NMDA存在下にPACAPは濃度依存的にNO産生を増加させた。PACAP^<-/->マウスでNMDAとPACAPが相乗的に作用してアロディニアを誘発することから、疼痛行動とNO産生との関連が確認された。さらに、培養細胞を用いてNMDAとPACAPでnNOSの細胞質から細胞膜へのトランスロケーションが引き起こされ、NO産生が上昇することが示された。nNOSは後シナプス膜肥厚(PSD)においてPSD-95を介してNMDA受容体と会合することが知られている。現在、神経因性疼痛に伴うNMDA受容体複合体の構成分子の変化をプロテオミクスで解析を進めている。