著者
伊藤 康弘 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.18-22, 2021 (Released:2021-05-27)
参考文献数
11

2017年にAmerican Joint Committee on Cancerの甲状腺乳頭癌および濾胞癌に対するTNM分類およびstaging systemが,大きく改訂された。2019年に上梓された日本内分泌外科学会/日本甲状腺病理学会による「甲状腺癌取扱い規約」も,それをそのまま採択している。今回の改訂の主たるものとして1)年齢のカットオフが45歳から55歳へ変更された,2)腫瘍径に基づくupstagingが変更された,3)腺外浸潤が術中の肉眼所見に基づくものとされ,その内容およびupstagingが変更された,4)リンパ節転移のupstagingが変更されたことが挙げられる。第8版のTNM staging systemは第7版に比べて,より鋭敏に患者の予後を反映しているが,まだ色々と改善の余地があるように思われる。本稿ではこれらについて網羅的に解説する。
著者
伊藤 汎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.524-525, 1978

糖蜜甘味香の主要成分の一つであるバニリンの精糖工程中における生成の有無を検討した。試料としては同一精糖工場の同一期間の原料糖,ファインリカー,洗糖蜜,廃糖蜜を継続して10日間採取して,原料糖からの流れのタイムラグを防止した。<BR>その結果,原料糖から移行したバニリンは清浄脱色工程で全て除かれ,清浄脱色工程を通らない洗糖蜜に含まれて回収晶析工程を経て糖蜜中に残ったものだけが廃糖蜜中に蓄積されることがわかり,精糖工程中でのバニリンの生成はないことが明かとなった。
著者
増田 富士雄 佐藤 智之 伊藤 有加 櫻井 皆生
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.892-904, 2013
被引用文献数
2

&emsp;We propose Shazam stratigraphy as a new analytical method based on facies analysis and sequence stratigraphy. This method is applied to a recently developed borehole database and subsurface geology in the Osaka Plain. Using the method, the shapes of lithofacies boundaries in subsurface sections are optimized for sedimentary faces and changes. The optimized boundary allows interpretation of seismic sections. The result is better recognition and reconstruction of depositional systems, geomorphological evolution, and tectonics. Irregular sequence boundaries, flat transgressive ravinement surfaces, and sawtooth downlap surfaces of the prograding depositional system are key boundaries for this method.
著者
伊藤 麻子 草苅 尚志 大田 健太郎 下斗米 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1041, 2007

【目的】脳血管障害患者の理学療法では早期から歩行獲得のため装具療法を用いるという報告が多くされている。しかし、その作製時期や種類の決定には様々な意見がある。そこで今回、装具作製からの経時的な変化、患者が感じている装具とはどのようなものなのかについてアンケート調査を行い、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】対象は平成18年10月10日から10月25日の間に協力を得られた当院に外来通院、または通所リハビリテーションを利用され、これまでに下肢装具(以下、装具)を作製したことのある脳血管障害患者46名(平均年齢64.6±17歳、男性26名、女性20名、発症からの経過7.3±26年)。方法は項目1.装具作製時期2.装具の種類3.使用状況4.満足度5.修理や再作製の有無6.今後の使用継続の有無について口述選択式によりアンケート調査を実施した。<BR>【結果】1.装具作製時期は発症から5~6ヶ月以内が約半数であった。2.装具の種類はプラスチック短下肢装具が67%と最も多かった。3.装具を現在も使用している(以下、使用者)83%、使用しなくなった(以下、不使用者)17%であり理由は装具を使用しなくても歩行が可能となったが最も多く、その他痛みや痺れ、靴の問題などが挙げられた。使用状況は常時使用58%、外出のみ34%、リハビリテーション時のみ8%、使用する理由は足部の内反を防ぐ、安心感があるという回答が多かった。4.現在の装具に不満を感じているのは26%、理由は装具の形や重量、靴の問題、装着の手間などであった。5.装具の再作製や修理は71%が行っていた。6.今後も装具を使い続ける87%、できるなら使いたくない13%、理由は合う靴が少ないや装着の手間などであった。<BR>【考察】当院では3年前より回復期病棟が開設され、以前よりも早期に歩行獲得のため装具が作製されるようになっている。医療制度の改定に伴いリハビリテーション実施日数が限られてきているため、今後もこれまで以上に装具の適合判定を入院後早期から定期的に考慮・検討し、移動能力、ADLの獲得を目指していくことが重要であると考える。今回の調査では使用者のうち装具を常時使用し、今後も使用継続を希望している患者が多く、装具が患者の生活の中でとても重要な役割りを果たしていることがわかった。しかし、装具に対して形や重量、靴の問題など不満を感じる使用者もいることから、それらの問題を改善していくためにも機能の向上、作製後のフォローアップの必要性を感じ、またそれを担うのも理学療法士の役目であると改めて感じた。
著者
伊藤 次郎 岡安 崇史 野村 浩一 安武 大輔 岩尾 忠重 尾崎 行生 井上 英二 平井 康丸 光岡 宗司
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.13-23, 2021
被引用文献数
2

<p>植物の育種や栽培管理技術の高度化には,植物の成長や環境応答性を定量的に計測し,評価するための技術が求められる.最近では,ICTの目覚ましい発展を背景に,植物の生育特性の計測を高速に行えるフェノタイピング技術の開発研究が盛んに行われている.本研究では,廉価なIoTデバイスに加えて,オープンソースとして提供されている画像処理・解析ライブラリなどを用いることにより,植物の生育情報を自動計測可能な植物フェノタイピングロボットを開発した.本ロボットは,水耕栽培ベッド両側に配置したレール上を走行する構造で,ARマーカを用いてロボットの走行制御と位置認識を行うことにより,植物の生育画像をスケジュールに合わせて自動計測する機能を有している.ホウレンソウを対象に,幼苗定植直後から収穫までの生育画像を毎日4時間毎にロボットに搭載されたRGB-Dカメラで撮影する試験を行い,植物フェノタイピングロボットとしての性能を評価した.その結果,開発したロボットの位置制御性能は3 mm程度であることがわかった.本ロボットを用いて,栽培ベッド全体の画像および深度情報の自動計測を行い,成長予測や生育不良検知などへの応用に対する可能性を示した.</p>
著者
内薗 幸亮 原 正文 緒方 隆裕 伊藤 平和 黒木 将貴 外間 伸吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2205, 2011

【目的】<BR> 当院ではプロ野球選手を対象に障害予防およびコンディショニング目的で、シーズン終了後にメディカルチェックを行っており、同時に超音波検査を用いた測定を実施している。当院山田らや松谷らは超音波検査を用いた先行研究において、投球動作の繰り返しが棘下筋厚に影響を及ぼすと報告している。超音波検査による棘下筋厚の量的側面からの報告は散見されるが、質的側面からの報告については少ない。<BR>また、プロ野球投手は先発投手と中継・抑え投手ではコンディショニング方法の違いから棘下筋にかかる負担が異なると考えられる。そこで今回は、先発投手と中継・抑え投手のシーズン終了時における超音波検査の結果より、棘下筋の質的評価を行ったので報告する。<BR><BR> <BR>【方法】<BR> 対象は2007年から2009年のシーズン終了後にメディカルチェック目的で当院を受診したプロ野球投手計53名中(2007年:16名 2008年:15名 2009年:22名)、シーズンを通して一軍で競技した37名とした。この37名を先発群16名と中継・抑え群21名(以下中継群)に分類した。<BR> 超音波検査は測定部位を肩甲骨内側1/4・肩甲棘下方30mmとした。安静時および収縮時の棘下筋厚を測定し、棘下筋の質的評価として、両者の比率より収縮率を計測した。さらに、安静時の棘下筋々腹層から、ヒストグラムのL値を計測した。ヒストグラムとは、硬い組織は明るく、軟らかい組織は暗く抽出される超音波の特性を応用し、指定した領域の組織の明暗を階調値に置き換えたもので、硬化度を数値化したものと考えている。L値は計測領域内にて最も多く含まれる階調レベルであり、L値が高くなれば水分量の低下を示す。 <BR> 肩関節理学所見は当院で実施している肩関節理学所見11項目テストを実施し、それぞれ陽性率を算出した。さらに肩関節可動域として2nd ER、2nd IRの計測を行った。<BR> 上記超音波検査の結果および肩関節理学所見より先発群と中継群の棘下筋の質的状態について比較、検討を行った。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 対象には本研究の趣旨について説明し、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 収縮率は先発群:135.9%、中継群:127.3%であった。L値は先発群25.17、中継群:25.47であった。<BR> 肩関節理学所見11項目テストの陽性率は、1)SSD先発群:68.8%、中継群:85.7%、2)CAT先発群:87.5%、中継群:90.5%、3)HFT先発群:100%、中継群:90.5%、4)HERT先発群:6.3%、中継群:4.8%、5)Impingement test先発群:37.5%、中継群:33.3%、6)Loose test先発群:81.3%、中継群:47.6%、7)EET先発群:62.5%、中継群:42.9%、8)EPT先発群:68.8%、中継群:42.9%、9)ER先発群:50%、中継群:38.1%、10)IR先発群:25%、中継群:100%、11)SSP先発群:43.8%、中継群:42.9%であった。また、肩関節可動域として2nd ERは先発群:126.8°、中継群:122.2°。2nd IRは先発群:32.9°、中継群:27.2°であった。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の結果より、中継群は先発群に比べL値は高く収縮率は低下していた。当院山田らは先行研究において、L値が高い状態での収縮率の低下は棘下筋委縮により線維化を起こし、水分量が低下した状態であると述べている。このことから、中継群は先発群に比べ棘下筋が線維化を起こしている状態ではないかと考えられる。<BR> また、理学所見との関連性をみると、中継群は先発群に比べ、肩関節可動域を示す2)CAT、3)HFTの陽性率が高く、2nd ER、2nd IRの可動域低下がみられた。しかし、筋機能バランスを示す7)EET、8)EPT、棘下筋の筋力を示す9)ERでは先発群の陽性率が高かった。このことから、先発群は収縮率、L値などの質的異常はみられないが、棘下筋の筋機能低下が生じていると考えられる。<BR>投球動作時に棘下筋にかかる負担について、投球動作におけるフォロースルー期の棘下筋遠心性収縮による筋自体の損傷などが棘下筋萎縮の原因と報告されている。さらに、松谷らはシーズン終了後のプロ野球投手の安静時棘下筋厚が変化する要因として登板数の影響が考えられたと述べている。これらの報告から、ほぼ毎日投球動作を繰り返す中継群は、ローテーションで登板する先発群とは異なり、棘下筋にかかる遠心性収縮による筋損傷が大きく、棘下筋の線維化が起こっているのではないかと考えられる。<BR> <BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 投球動作の繰り返しにより棘下筋にかかる負担について、プロ野球投手を先発群、中継群に分類し、理学所見と超音波検査から棘下筋の質的側面からの検討を行った。<BR>今回の結果より中継群は先発群に比べ棘下筋が線維化を起こし可動域の制限につながっていると考えられ、先発群は棘下筋の筋機能の低下が起こっていると考えられる。棘下筋の質的評価は投球障害予防、コンディショニングに応用できると考える。<BR>
著者
鈴木 良典 小川 貴之 服部 洋美 伊藤 祐子 岩渕 恵美 富田 弘美 中原 亜衣 望月 剛
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.257, 2011

〈緒言〉当院は愛知県尾張北部医療圏に位置する678床の二次救急医療機関病院である。当院は同一市内にあった2病院が平成20年5月統合開院し電子カルテを導入した。現在、1ヶ月に1,700件を超える書類作成依頼のうち約48%は電子カルテにて作成が可能となっているが、それ以外のほとんどが手書きにて作成されている。そのため、医師の書類作成は時間外に及ぶことが多く溜まった書類をまとめて記入するなど、本来の診療業務に負担となっているため、書類に掛かる業務の負担軽減と書類の作成期間を短縮する必要性が高まった。<BR>〈方法〉医師の文書作成の負担軽減策として文書作成管理システムを導入する。<BR>この文書作成管理システムの特徴は以下の通り。<BR>(1)約700種の書式がフォーマット。<BR>(2)属性、病名、入退院日、手術名、術式コード(Kコード)等の連携。<BR>(3)前回の入力内容や電子カルテの記載内容の複写・引用機能。<BR>(4)入力必須項目の記載漏れチェック機能。<BR>(5)期限超過した依頼文書の医師別一覧出力。<BR>上記の特徴を最大限に活用できる運用を作成することで書類作成期間の短縮及び問い合わせ件数の減少に繋げる。<BR>そのため、文書管理係として専属で文書管理を行う事務員を5名配属し平成23年5月9日より文書作成管理システムを本稼動させた。文書管理係は文書作成管理システム出力文書・手書き文書共に入退院日や通院日、病名や術式等の医師以外でも記載可能な部分を下書き入力し、医師は事務の記載部分の確認と空白部分への入力及び完成書類への署名のみとなる。また、システム導入以前に記載のある文書書式のものは過去記載分を事務側にてすべて複写を行い、医師は今回の依頼分に対し加筆・修正を行うだけとなる。<BR>〈結果〉文書作成管理システムの導入により月約1,500件(約89%)の文書が電子化された。全体としての効果については今後アンケートを実施し学会時に発表する。
著者
古田 一郎 山本 典生 平海 晴一 坂本 達則 伊藤 壽一
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.131-135, 2013-05-25
参考文献数
9

当科で経験した8例10耳の耳硬化症再手術症例につき検討した。10耳中2耳は再々手術例であった。初回手術から再手術までの平均期間は4年9か月で、再手術のきっかけとなった主訴は9耳が難聴で1耳がめまいであった。術中所見では8耳(80%)でピストンの脱落を認めたが、術前にコルメラの評価を行った側頭骨CTでは、5耳しかピストンの変位を指摘できなかった。術前、術後の聴力評価は気導3分法で行ったが、再手術により難聴を主訴にした9耳のうち7耳で15dB以上の聴力改善を認め、再手術による内耳障害等、重篤な合併症を認めた症例は1耳もなかった。このことより、耳硬化症術後に難聴をきたした場合は、再手術により聴力改善が大きく期待され、原因精査の意味も含め、積極的に再手術を行うべきだと考えた。
著者
前川 篤志 伊藤 毅志 古郡 延治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.218-219, 1997-09-24

近年, 計算機の高速化, 記憶容量の大型化に伴い, 言語現象を経験的, 統計的に捉えようとする傾向にある。特に, 単語の意味的曖昧性の解消においては, 大規模コーパスから抽出した相互情報量, 機械可読の辞書やシソーラスをもとに, その文脈に沿った単語の意味を同定するという手法が主流となっている。しかし, 次々と新出単語や新出概念が現われる今日において, 既存の辞書やシソーラスに載っていない単語や概念が文脈中に現れることは, しばしば起こり得ることである。本研究では, 既存の辞書やシソーラスを使うことなく, コーパスのみから得られる情報をもとに, 文脈に沿った単語の意味を獲得する手法を提案する。例として動詞「開く」を用いて実験を行い, 得られた結果に考察を加えた。
著者
金子 信博 榎木 勉 大久保 慎二 伊藤 雅道
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.359, 2005 (Released:2005-03-17)

ヤンバルオオフトミミズによって作り出された地表面の微小生息場所に生息する小型節足動物群集,特にササラダニの群集構造を比較した.ヤンバルオオフトミミズは沖縄本島北部にのみ生息し,日本で初めて見つかった土壌穿孔表層採餌種(anecic)である.本種は地下約20cmに横走する坑道に住み,落葉を土壌表面の入口に集めた上で摂食し,土壌と混じった糞を出口に排泄する.糞塊は20cmほどの塔状になる.集められた落葉はmiddenと呼ばれている.照葉樹林は秋に一度に落葉が集中するのではなく,春と秋を中心に長い時間にわたって落葉が供給される.沖縄では気温が高いため,落葉の分解速度は高い.ミミズにとっては落葉を他の分解者に利用されないように自分の生息場所であるmiddenに集めていると考えられる.坑道やmiddenではミミズから供給される可溶性炭素や窒素が栄養源となって微生物の活性が高く,微生物バイオマスも多いと考えた. リターの堆積量は糞塊の周囲で最も多く,middenとミミズの影響のない土壌では差がなかった.ササラダニの個体数密度はリター層ではミミズの影響のない土壌できわめて少なく,middenと糞塊でほぼ同じ程度であった.一方,土壌層ではミミズの影響のない土壌で最も少なく,糞塊よりもmiddenでの密度が高かった.ササラダニの種数はミミズの影響のない土壌と糞塊で差がなかったが,middenではこれらの倍近い値を示した.これらのことからヤンバルオオフトミミズは落葉資源を移動させ,土壌と混合することによって地表面の微小生息場所の多様性を高め,ササラダニの密度と多様性を大きく高めており,生態系改変者として土壌生物群集に大きな影響を与えていた.
著者
伊藤 慶一郎 菅野 重樹 岩田 浩康
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-53, 2012 (Released:2017-02-15)
参考文献数
15

内出血を呈した高緊急度外傷患者の救命には, 出血性ショックの原因となる血液貯留を探索する迅速簡易超音波検査 (通称 : FAST) が重要となる. さらに救急搬送下あるいは現場において, 医師による遠隔操作のもと, FASTを施せる小型でポータブルな診断システムがあれば, 外傷患者の死亡率は飛躍的に低減できると考えられる. そこで本研究では, 内出血患者の早期診療を支援すべく, FASTが可能で, 患者の体幹に直接装着できるロボットシステムを開発したので報告する. 本稿で提案する新たな救急医療シナリオ, および体幹装着技術, 超音波プローブの駆動メカニズム, 小型・軽量化技術は, 場所を限定しない超音波診断の実現に寄与しえ, 救急医療の限界を大きく変革し得る新たな救命支援ツールとして普及する可能性を, 社会に強く訴えるものになると考えられる.
著者
川崎 ナナ 橋井 則貴 松石 紫 伊藤 さつき 原園 景 川西 徹
出版者
日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
雑誌
日本プロテオーム学会大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.27, 2005

生体内のタンパク質には様々な糖鎖が結合している。この中のいくつかの糖鎖構造は、活性や疾患等と密接な関わりがあることが明らかとなってきた。しかし、それらの糖鎖の体内分布やその糖鎖が結合しているタンパク質は一部が明らかにされたにすぎない。我々は、生物活性や疾患等に関連する糖鎖の特異的検出、及び糖鎖結合タンパク質の同定を目的として、糖鎖及び糖ペプチド混合物の中から、任意の構造を有する糖鎖及び糖ペプチドを選択的に検出し、解析する方法を検討している。<BR> Galbeta1-4(Fucalpha1-3)GlcNAc (Le<SUP>x</SUP>)は、発生や接着等に関与している部分糖鎖構造で、特にシアル酸が結合したLe<SUP>x</SUP>は癌診断マーカーとして利用されている。しかし、Le<SUP>x</SUP>は抗体との反応性を利用して検出されているため、糖鎖全体の構造、及びLe<SUP>x</SUP>結合タンパク質等については不明な点が多い。MS/MSは糖鎖配列解析用ツールとして広く利用されているが、Le<SUP>x</SUP>には位置異性体Galbeta1-3(Fucalpha1-4)GlcNAc (Le<SUP>a</SUP>)が存在するため、MS/MSによるグリコシド結合の開裂だけではLe<SUP>x</SUP>を特定することは難しい。位置異性体が多く存在する糖鎖の特定には、多段階MS (MS<SUP>n</SUP>)によって生じた環開裂イオンが決め手になる場合がある。本研究では、Le<SUP>x</SUP>をモデル糖鎖とし、MS<SUP>n</SUP>によって生じたLe<SUP>x</SUP>特異的環開裂イオンを指標としてLe<SUP>x</SUP>結合糖鎖を選択的に検出する方法を検討した。<BR> はじめに、ESI-ITMS装置(LTQ-FT, Thermo Electron)を用いてピリジルアミノ化Le<SUP>x</SUP>を分析し、フルMS<SUP>1</SUP>、データ依存的MS<SUP>2</SUP>、MS<SUP>3</SUP>(前駆イオン:Gal1-4(Fuc1-3)GlcNAc)、及びMS<SUP>4</SUP>(前駆イオン:Gal1-4GlcNAc)の連続スキャンによってLe<SUP>x</SUP>特異的な環開裂イオンが検出されることを見出した。そこで、モデル組織マウス腎臓から切り出した糖鎖混合物をLC/ESI-ITMS装置を用いて連続スキャン分析し、複数のLe<SUP>x</SUP>結合糖鎖を検出すると同時に、その糖鎖構造を明らかにすることができた。<BR> 本連続スキャン分析は他の糖鎖の構造特異的検出にも応用可能であり、また、本分析法を糖ペプチド解析に応用することができれば、Le<SUP>x</SUP>結合タンパク質の特定につながるものと期待される。
著者
伊藤 直之 青木 美樹子 板垣 匡
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.683-686, 2005-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

青森県八戸地域の一般家庭で飼育されている1カ月齢~16歳齢の猫460頭から採取した糞便を対象に, ホルマリン・酢酸エチル沈澱法で消化管内寄生虫を検査した. 検出された寄生虫とその検出率はネコ回虫13.9%, ネコ鉤虫2.4%, ネコ糞線虫0.2%, マンソン裂頭条虫3.0%, テニア属条虫2.2%, イソスポラ属原虫2.0%およびジァルジア3.3%であった. ネコ回虫の検出率は1~6カ月齢の猫で高く, いっぽう, ネコ鉤虫, マンソン裂頭条虫およびテニア属条虫の検出率は2~5歳齢で高かった. さらに, 検出された寄生虫の多くはその検出率が室外飼育猫で高く, 室内飼育猫で低かった.
著者
久保田 陽子 伊田 昌功 伊藤 宏一 加藤 浩志 辻 芳之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.257-264, 2014

日本では諸外国に比し硬膜外麻酔を用いた無痛分娩の普及率は著しく低いが,当院では分娩例の約半数に無痛分娩を施行している.今回,2010年7月から2011年12月の間での無痛分娩症例において,後方視的に自然分娩例と比較し分析することにより,無痛分娩が分娩や新生児に与える影響を明らかにすることを目的とした.無痛分娩群では自然分娩群と比較して,回旋異常発生率・陣痛促進剤使用率・吸引分娩施行率・分娩所要時間(分娩第1期・分娩第2期)が有意に上昇したのに対し,緊急帝王切開移行率・分娩時総出血量は両者で有意差を認めなかった.新生児への影響に関しては,Apgar score,臍帯血pHには有意差を認めなかった.臍帯血BEにおいては両群間で有意差を認めるも,ともに正常値の範囲内であり,以上より無痛分娩が新生児へ悪影響を及ぼすことはないという結果になった.無痛分娩による母体合併症として,当院では2例の硬膜穿刺後頭痛を経験したが,いずれも保存的治療のみで症状は軽快し,うち1例では次回分娩時にも無痛分娩を希望した.以上より,分娩帰結に差がないことを考えれば,痛みのない分娩を選択でき得ることは妊婦にとって大きな助けになると思われる.〔産婦の進歩66(3):257-264,2014(平成26年8月)〕
著者
北原 文夫 岩本 孝雄 伊藤 聡 藤原 和紀 藤原 道雄
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.118, no.4, pp.534-541, 1998-04-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

East Japan Railway Company (JR EAST) has developed advanced transport operation control system supporting super high-density railway in Tokyo metropolitan area. The system target is to revolutionize existing railway operation and to realize new safe and high efficient railway system. Autonomous Decentralized Transport Operation Control System has many features, including safe and steady traffic control, improved customers service and step by step system construction used by autonomous decentralized system technology. The system has been already introduced to Chuo-line in December of 1996 and is now under construction to expand to all of Tokyo metropolitan area.