著者
三代 純平 佐藤 正則
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.169-189, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)

本稿は,日本語教育振興協会が1997年に開催した第1回日本語教育セミナー,通称「箱根会議」に関するインタビュー調査である。当時箱根会議に参加した11名の調査協力者の語りから,日本語学校にとって「箱根会議」がいかなる意味をもっていたのかを論じる。調査協力者に対するライフストーリー・インタビューから明らかになった箱根会議の意義は「日本語学校の連携」が生まれ,日本語学校の「社会的アイデンティティの確立」を共に目指すことが確認されたことである。そして,そのために手を取り合い「日本語教育の質の向上」に努めていく素地が整ったことである。箱根会議は,日振協と日本語学校の「管理する側・管理される側」という関係を乗り越え,管理される側であった日本語学校が主体的に自分たちを定位し,社会に働きかけるための象徴的な出来事であった。箱根会議の経験を一つの契機に,日本語学校は,国際交流の最前線を担う教育機関としての社会的アイデンティティを構築すべく歩みを進めるようになったのである。
著者
佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.131-150, 2010-03-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

地方自治体は現在,行財政運営の効率化の手段の一つとして公共サービス民営化を進めているが,自治体の地域特性に起因して民営化導入は地域差が見られる.特に周辺地域の自治体は専門サービス業者の不足を中心に,民営化導入は困難である点が指摘されてきた.本研究は青森県三戸町の包括業務委託を事例に,周辺地域の自治体の地域特性に応じた民営化後のサービス供給体制の変化とその要因を考察した.三戸町の包括業務委託ではサービス内容の維持と,サービス供給に携わる現業部門従業者の増加が進められた.一方で,包括業務委託の目的の一つである経費削減は進んでいない.三戸町では委託開始後,町と民間企業との間で長期的なサービス運営の協力体制の構築を行う協働的関係が築かれる一方で,町がサービス内容の設定を行い続けている.こうした委託方式や運営が採られた理由として,雇用機会の確保とサービスの持続の二点を町が重視したことが大きい.
著者
永田 紘樹 小松 俊文 シュリージン ボリス 石田 直人 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.59-69, 2015-02-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
74
被引用文献数
2 2

島根県西部に分布する下部ジュラ系樋口層群の調査を行い,樋口層群を新たに下位より尾路地谷層と樋口谷層に区分した.尾路地谷層は,礫岩,砂岩,泥岩からなり,二枚貝化石のOxytoma sp.や“Pleuromya” sp.を産出する.樋口谷層は,軟体動物化石を含む暗灰色泥岩を主体とする.樋口谷層からは,6属6種の二枚貝化石,Kolymonectes staeschei,Palmoxytoma cygnipes,Ryderia texturata,Pseudomytiloides matsumotoi,Oxytoma sp., “Pleuromya” sp.が産出する.本層群の二枚貝化石群は,ロシアやカナダ北部に分布する下部ジュラ系から産する北方系のフォーナであるK. staescheiやP. cygnipesを含み,典型的なテチス系の種を含まない特徴がある.
著者
竹林 亮 足立 吉隆 佐藤 良史 佐藤 正太郎
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.741-742, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)

龍泉洞地底湖の測量調査を目的とした小型ROVの開発を行う.龍泉洞の洞内は狭く入り組んでおり,かつ全長が15 kmあるとも言われていることから,ROVには小型であり,長距離探索が可能であることが求められる.そこで,小型機体を複数連結して運用する方法を提案する.また,現地調査から陸路の移動が必要であることが分かり,新しい機能として水陸両用の推進器を搭載したROVを設計した.講演では、水陸両用ROVの設計について発表する.
著者
北澤 京子 佐藤 正惠 渡邊 清高 山本 美智子
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.109-115, 2019-11-30 (Released:2019-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Objective: The objective of this study was to examine information quality by quantitatively evaluating newspaper stories on drug therapy using the “Media Doctor” instrument.Methods: A database search was conducted to extract newspaper stories on drug therapy published between July 1, 2017 and December 31, 2017. Two evaluators independently evaluated each story using the “Media Doctor” instrument. Each of the 10 evaluation criteria were rated as “satisfactory” or “not satisfactory.” When the content of the story was not suitable for the evaluation criteria, it was regarded as “not applicable”.Results: Fifty-nine news stories (Asahi: 13, Mainichi: 8, Nikkei: 8, Sankei: 14, Yomiuri: 16) were included. The median number of evaluation criteria that the two evaluators judged as “satisfactory” was 5. The proportions of stories that the two evaluators judged as satisfactory were “1. availability,” 73%; “2. novelty,” 66%; “3. alternatives,” 39%; “4. disease mongering,” 58%; “5. evidence,” 32%; “6. quantification of benefits,” 31%; “7. harm,” 41%; “8. cost,” 22%; “9. sources of information/conflict of interest,” 12%; and “10. headline,” 66%. Conversely, the proportions of stories judged as “not satisfactory” were “1. availability,” 0%; “2. novelty,” 5%; “3. alternatives,” 12%; “4. disease mongering,” 8%; “5. evidence,” 24%; “6. quantification of benefits,” 29%; “7. harm,” 41%; “8. cost,”44%; “9. sources of information/conflict of interest,” 32%; and “10. headline,” 12%.Conclusion: These results suggest that the quality of newspaper stories are insufficient as drug information in terms of the validity of its scientific evidence.
著者
佐藤正広著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
2015
著者
佐藤正広編著
出版者
晃洋書房
巻号頁・発行日
2020
著者
佐藤 正之 田部井 賢一 織田 敦子 辰巳 寛 関 啓子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.33-38, 2023-03-31 (Released:2023-04-24)
参考文献数
11
被引用文献数
1

メロディックイントネーションセラピー (MIT) は, 1970 年代に米国で開発された失語訓練法である。今回われわれは, 本邦における MIT の現況についてアンケート調査を行った。対象は, 2021 年 3 月末時点で日本言語聴覚士協会のホームページに掲載されていた 3,136 施設。同年 5 月 1 日付けで, 返信用封筒を同封した質問紙を郵送, 各施設の代表の言語聴覚士 (ST) に記入を依頼した。回収期限は同年 6 月末とした。有効発行総数 3,127 件のうち, 1,186 件が回収できた (回収率 37.9%) 。回答者の 81% (955 名) が MIT という用語を聞いたことがあり, そのなかの 85% (800 名) が MIT は運動性失語の発話障害に有効であることを知っていた。しかし, 臨床現場で実際に MIT を行っているのは 9% (90 件) で, MIT 日本語版 (MIT-J) を用いているのは 35% (29 件) であった。MIT-J の正しい手法を学ぶための講習会へのニーズがあると思われた。
著者
岡村 寿代 金山 元春 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.233-243, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、集団社会的スキル訓練を78名(男子43名、女子35名)の幼児に実施し、その効果を検討した。その際、訓練前の社会的スキルの程度によって社会的スキルの高群、中群、低群の3群に分類し、どのような特徴をもつ幼児に訓練効果がみられるかの検討を行った。3つの標的スキル(上手に聞く、仲間入り、あたたかい言葉かけ)を訓練するために、6〜8セッションからなる集団社会的スキル訓練が行われた。訓練は、教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバック、強化からなるコーチング法の手続きに従って行われた。自由遊び場面へのスキルの般化を促進するために、教室でのスキル訓練と自由遊び場面でのスキル訓練を交互に繰り返す訓練プログラムを計画した。その結果、自然な自由遊び場面での行動観察のデータによれば、社会的スキル低群と中群において協調的行動の増加が認められた。また、担任教師による社会的スキル評定によれば、社会的スキル低群において、社会的スキル領域総得点および社会的働きかけスキル得点の増加が見いだされた。これらの結果から、本研究で実施された集団SSTは、社会的スキル低群だけではなく、すでに社会的スキルを獲得している中群にも有効であったことが示された。
著者
佐藤 正則 三代 純平
出版者
日本言語政策学会
雑誌
言語政策 (ISSN:18800866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19_1-19_16, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
22

本研究は、日本に永住帰国したサハリン残留日本人2世Sさんのライフストーリーを複言語・複文化における仲介(mediation)という観点から考察することによって、Sさんの言語経験の意味を明らかにし、複言語・複文化における仲介の意義を論じる。A市に永住帰国した第2世代の一人であるSさんにライフストーリー・インタビューを行い、いかに言葉を学び使用しているかという観点で分析した。その結果、Sさんの仲介活動は「サハリンの人々と日本社会をつなげる役割」「日本語話者とロシア語話者をつなげる役割」「日本社会にサハリン残留日本人の経験と記憶を伝える役割」という役割を担っていることが分かった。また仲介はSさんのアイデンティティの更新につながったこと、それは言語や文化の境界にいるからこそ可能になることも明らかになった。以上の結果から、多文化共生社会における複言語・複文化話者の仲介活動の場作りの必要性を論じた。
著者
岡村 寿代 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.137-147, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、攻撃的な幼児を対象として、社会的スキル訓練(SST)を実施し、訓練の般化効果について検討した。さらに、訓練に参加した仲間が訓練対象児の社会的スキルの獲得にどのように貢献しているのかを検討した。3つの標的スキル(エントリースキル、適切なやりとりスキル、断られたときの対処スキル)を訓練するために16セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、訓練対象児は、仲間に対する社会的働きかけ、仲間からの社会的働きかけを増加させ、攻撃行動を減少させた。さらに3か月後にもこれらの訓練効果が維持していることが示された。また、訓練対象児は仲間協力児だけではなく、訓練に参加していない仲間へも社会的働きかけを向けていたことが確認された。一方、訓練に参加した仲間の役割については、この仲間協力児も訓練対象児と持続的にやりとりをしていなかったことが明らかになった。
著者
佐藤 正惠
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.128-132, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

2020年3月にパンデミックが宣言されたCOVID-19感染症は,2022年1月現在もウイルス変異により猛威を振るい続けており,社会生活は大きく変貌した。医療体制,ワクチン接種等をめぐり,根拠の不確かなニュースが氾濫するインフォデミックが危惧される状況となっている。本稿は,主に公共図書館における情報の吟味と提供を考える。疑問の定型化,エビデンス・ピラミッドや6Sピラミッドと情報検索,フェイクニュースへの海外の対応について述べる。さらに医療・健康に関する報道について質の向上を目指すメディアドクター研究会の活動を紹介し,メディアリテラシーについての話題を提供する。
著者
寅丸 真澄 江森 悦子 佐藤 正則 重信 三和子 松本 明香 家根橋 伸子
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.240-248, 2018-12-31 (Released:2019-05-12)

本稿では,言語文化教育研究学会第 4回年次大会(2018年 3月)において筆者らが企画したパネル「留学生のキャリア意識とキャリア支援の『ずれ』を考える ―日本語学校・短大・大学(首都圏・地方)の留学生の語りから」における発表とディスカッションの内容を踏まえ,言語教育者の視点から,日本語学校,短期大学,四年制大学(首都圏・地方)における留学生のキャリア意識と現行のキャリア支援の「ずれ」のありようを報告し,その問題点を指摘する。まず,留学生の語りの事例から,各機関の留学生がどのようにキャリアを捉え行動しているのかを紹介し,言語教育の観点から留学生に必要とされるキャリア支援と実際に提供されているものとの「ずれ」を報告する。次に,「ずれ」の改善のため,言語教育者は留学生と教育機関の双方にどのように関わり,働きかけていけばよいのか,パネルで議論した内容を共有する。最後に,これらを踏まえ,「ずれ」を改善するための今後の課題を指摘する。
著者
荒木 秀一 石川 信一 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.133-144, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
5

本研究の目的は、維持促進を圏指した児童に対する集団社会的スキル訓練(SST)の効果検討であった。54名の児童は維持促進訓練群と標準訓練群の2群に分けられた。2つの群ともに7セッションからなる通常の集団SSTが実施された。加えて、維持促進訓練群では維持の手続きとして、1)スキルの構成要素の掲示、2)朝の会・帰りの会でのワンポイント・セッション、3)保護者への働きかけの3つがなされた。結果、自己評定、教師評定により、両群とも通常の集団SSTに参加することでスキル得点の上昇がみられた。標準談練群においては、集団SST後から3か月フォローアップにかけて得点が減少したのに対して、維持促進訓練群ではフォローアップまで効果が維持されていた。以上のことから、通常の集団SSTはスキルの獲得を促すのに有効であるが、長期的な効果を維持するためには維持の手続きが必要不可欠であることが示唆された。
著者
佐藤 正知
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

瀬戸内海島嶼部や海域では特殊な電波伝搬が生じるために地上デジタル放送の視聴が難しい地域があり、これらの難視聴地域を解消するために瀬戸内海沿岸及び芸予諸島には多くの中継局が設置されているが解決には至っていない。また、近年では地上デジタルテレビ放送の高度化方式である4K・8K放送の地上波放送の技術開発が進められており、その要素技術の中に複数の中継局が協調して送信することで通信容量を向上させる方式が採用されている。本研究では、この中継局協調送信を通信品質の改善の用途に用いることで地上波テレビ放送を視聴可能な地域が拡大できることを示す。
著者
髙橋 高人 松原 耕平 中野 聡之 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.81-94, 2018
被引用文献数
7

<p> 本研究の目的は,中学生における認知行動的な抑うつ予防プログラムの効果を標準群との比較,さらに2年間のフォローアップ測定から検討することであった。介入群を構成した51名の中学1年生が,プログラムに参加した。標準群は,中学生1,817名から構成した。介入内容は,全6回の認知行動的プログラムから構成した。プログラムの効果を測定するために,子ども用抑うつ自己評定尺度,社会的スキル尺度,自動思考尺度が,介入前,介入後,フォローアップ測定1(1年後),2(2年後)で実施された。結果から,抑うつについて介入前と標準群1年生の比較では差が見られなかったのに対して,介入群のフォローアップ測定1と標準群2年生の比較では,有意に介入群の抑うつが低いことが示された。また,社会的スキルの中のやさしい言葉かけとあたたかい断り方,ポジティブな自動思考に関して,介入前よりも介入後,フォローアップ測定において向上することが示された。ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムが,中学生に対して効果的な技法であることが示唆された。</p>