著者
後藤 吉道 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-24, 2000-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
8

本研究では、集団SSTを通して学級内の仲間関係が改善されるかどうかを検討するために、小学2年生の児童を対象にして学級を単位とした3セッションからなる集団SSTが行われた。標的スキルは、適切な働きかけと応答であった。訓練は、教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバック、強化からなるコーチング法の手続きに従って行われた。その結果、訓練群の児童は、統制群の児童よりも訓練前から訓練後にかけて、社会的スキル得点が有意に増加し、引っ込み思案得点が有意に減少した。また教師による社会的スキル評定においても、訓練群の得点が訓練後に有意に増加していることが確かめられた。さらに、好意性指名得点は、訓練群のみ訓練後に得点の増加が認められた。これらの結果から、集団SSTは、社会的スキルの獲得を促進するばかりでなく、仲間に対するポジティブな見方を高めることが明らかにされたといえよう。
著者
金山 元春 後藤 吉道 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.83-96, 2000-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究では、小学3年生63名を対象に、孤独感低減に及ぼす学級単位の集団社会的スキル訓練(集団SST)の効果について検討した。児童らは、学級ごとに訓練群と統制群に振り分けられた。3つの標的スキル(規律性スキル、葛藤解決スキル、社会的働きかけスキル)を訓練するために、8セッションからなる学級を単位とした集団SSTが訓練群に対して行われた。研究1では、訓練の直後査定が実施された。その結果、訓練群の児童は、統制群に比べて、自己報告による社会的スキル得点に有意な増加を見せていたことがわかった。また、教師評定尺度においても、訓練群に社会的スキル得点の有意な増加と問題行動得点の有意な減少が確認された。さらに、統制群に比べて、訓練群の孤独感得点に有意な評定得点の減少が認められた。これらの結果は、集団SSTが児童の孤独感低減に寄与していたことを示唆している。さらに、研究IIにおいて検討されたフォローアップ査定の結果、これらの訓練効果が、訓練終了後6か月を経過した時点まで維持されていたことが示された。
著者
佐藤 正幸 中村 次男 畠中 浩行 冬爪成人 笠原 宏 田中 照夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.868-879, 2007-02-15

次世代集積回路の規模は数十から数百のIP コアからなると予測されており,IP コアの流通が不可欠となる.しかし,製造元の異なる多種多様なIP コアの仕様を理解して集積化および各IP コアを使用することは非常に困難である.また,ますます高精度化する処理データに対し,柔軟に対応しようとして,単にスケーラブルなアーキテクチャを用意しても,回路やソフトウェアの変更をともなうのでそのIP コアの詳細な仕様を理解することが不可欠となる.そのため,次世代の高集積回路においては多種多様なIP コア間インタフェースの標準化,再利用性,使用容易性および拡張性などが求められる.そこで,処理に必要なデータをIP コアに与えるとデータの長さに合った処理をIP コア内で判断し,結果を返すという,処理精度に対してスケーラブルなアーキテクチャを持ったIP コアの設計法を提案する.設計過程におけるスケーラビリティではなく,設計成果物としてのIP コアそのものがスケーラブルであり,外部からの制御をまったく必要とせず,かつ処理データの長さに制限されない,まさに完全自立形IP コアの実現である.これにより,以上に述べた諸問題がいかに解決できるかを,多くの多項式からなりモジュール化が困難であった楕円曲線暗号アクセラレータに,可変長鍵に対応可能なIP コアとして適用できることを示し,提案する設計法の有効性を検証している.
著者
樋口 徹 井上 哲 佐藤 正人 後藤 忠広
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.133-137, 2016-03-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

近位指(趾)節間関節固定術は重度の変形性関節症,亜脱臼,関節部での骨折に適応される.今回,4頭の馬において3穴ナローlocking compression plate(LCP)と関節貫通スクリューとして3〜4本の5.5mm皮質骨スクリューを用いた内固定を行った.症例馬は,3頭がサラブレッド繁殖雌馬,1頭はサラ系障害飛越競技馬であった.1頭は前肢の近位指節間関節の亜脱臼,1頭は後肢の近位趾節間関節の亜脱臼,2頭は変形性関節症で,前肢と後肢が1頭ずつであった.手術は吸入麻酔下で仰臥位で行い,関節を開けてできる限り関節軟骨を除去し,関節貫通スクリューが関節の掌(底)側を引き寄せるように挿入し,次いでLCPを軸側に置いて関節全体を圧着させるように5.5mm皮質骨スクリューとlocking head screw(LHS)で固定した.術後はハーフリムキャストを3〜4週間装着した.この方法は強度に優れ,安定した関節固定が可能であった.症例馬の疼痛は徐々に緩和し,10〜12週間後には放牧あるいは速歩運動が可能であった.
著者
清水 修 永井 栄寿 藤田 稔之 藤本 博志 角谷 勇人 高橋 英介 山口 宜久 谷 恵亮 佐藤 正憲
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1095-1100, 2021 (Released:2021-10-07)
参考文献数
10

電気自動車の性能的課題である航続距離の課題解決のために磁界結合方式の走行中給電が提案されている.磁界結合方式で用いる磁界中に導体が存在すると渦電流が発生し,電力損失となる.本研究では,アスファルト路面に埋設したコイルで電力伝送を行うことで,給電効率が道路構造による影響の検証を行った.
著者
宮田 八十八 石川 信一 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-14, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、Children'sSocialProblem-SolvingScale(C-SPSS)を開発し、学級単位で実施する社会的問題解決訓練の効果を検討することであった。研究1では、92名の児童を対象に自由記述による質問調査を行い、対人的トラブル場面を収集した。次に、小学生365名を対象とした本調査を実施した。その結果、C-SPSSは再検査法により十分な信頼性があることが示され、内容的妥当性と構成概念妥当性も確認された。研究IIでは、43名の児童が社会的問題解決訓練群に、45名の児童がウェイティングリスト統制群に設定された。訓練実施後、統制群には変化がみられなかったのに対して、訓練群では問題解決スキルが有意に上昇していた。これらの結果から、C-SPSSの実用的可能性、および社会的問題解決訓練の効果および課題が検討された。
著者
吉野 公喜 佐藤 正幸
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.10-19, 1983-12-29 (Released:2017-07-28)

補聴器の装用により、明らかに域値の上昇(聴力の低下)が認められ、装用を休止することによって、域値の下降(聴力の回復)が認められる現象を、「聴力の可逆的低下」と規定した。この域値の可逆的低下が典型的に認められる両側感音難聴者に、聴力測定条件を一定として、昭和56年10月より昭和57年9月までの1年間に測定をくりかえし、域値の上昇過程と下降過程及びそれに及ぼす使用補聴器の周波数レスポンスの影響に検討を加えた。本症例で得られた知見は、次のようにまとめられる。(1)本症例にみる「聴力の可逆的低下」は、1000Hz、2000Hzを中心とした谷型を呈しており、低下のみられる周波数域は、使用補聴器の周波数レスポンスのピークにみられる音響的特徴と無関係ではない。(2)音響利得を45dBと一定に保つとき、補聴器装用による域値の上昇は、20dBを越えなかった。(3)域値の上昇過程と下降過程とを観察するとき、域値の上昇にくらべ、その下降(回復)には、多くの時間を要した。本症例にあっては、域値の回復には、2週間の休止が必要とされた。(4)本症例にあっては、装用耳の域値の上昇と非装用耳の域値の下降をくりかえしながらも、単音節に対する最高受聴明瞭度は、右耳で、100%(67語表)、86%(57語表)、左耳で95%(67語表)、82%(57語表)を示した。連続話声に(入力音圧70〜75dB)に対する。preffered listening levelは、116〜120dB(SPL)であり、増幅音声に対する有効性の高いことが示された。
著者
杤山 修 高須 亜紀 池田 孝夫 木村 英雄 佐藤 正知 長崎 晋也 中山 真一 新堀 雄一 古屋 廣高 三頭 聰明 山口 徹治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会
雑誌
原子力バックエンド研究 (ISSN:18847579)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-19, 1998-09-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
44
被引用文献数
3 5

放射性廃棄物の地層処分の安全性評価において,現在用いられている核種移行モデルは主として,固体物質による遅延効果を収着分配係数 Kd を用いて評価している. しかしながら,収着はその機構が未だ十分解明されていない現象であるため,移行モデルに Kd を用いるにあたっては,いくつかの注意が必要となる. このような問題は,収着が固体と水の界面あるいはその近傍で起こる不均一系の反応であることと,核種の移行媒体である地質媒体の物理的性質や化学的性質が一様でないことに起因している. 本論文では,収着は固体と水の界面あるいはその近傍で起こる現象であるという理解のもとに,Kd を用いて記述できる収着現象の範囲について考え,さらに原位置での核種移行の評価に対する Kd による記述の妥当性と適用性について考察した.
著者
清水 哲雄 小松 治男 馬田 俊雄 高橋 清 佐藤 正矩
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.64, no.623, pp.2348-2353, 1998-07-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
3
被引用文献数
1

Understanding the spinning mechanism of an impacted golfball is an important factor in golf science and engineering. The rigid sphere model which considers the Coulomb-type slip friction presented independently by Daish and Kawamura (referred to here as the Daish-Kawamura model) seems to well explain the experimental results of golfball spinning. For a more general interpretation of the spin phenomenon, we attempted to modify this model by introducing a physical quantity called the "s parameter", which is defined as the ratio of the circumferential velocity of the ball to its centroid velocity. An experiment performed to verify the appropriateness of the new parameter introduction led to the following conclusions: The spin phenomenon in golf impact can be divided into two phases, in both of which the Daish-Kawamura model is effective. A method is described to evaluate the coefficient of slip friction under high sliding velocities, and the value is estimated as 0.07 for a slippery surface condition.
著者
荒川 武士 小林 秋太 佐藤 大地 石田 茂靖 市村 篤士 佐藤 正和 新野 直明
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.114-119, 2021-08-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
17

【目的】舌骨上筋群の筋活動向上方法の1つに頭部挙上訓練法(シャキア法)がある.頭頸部の挙上すなわち矢状面での屈曲運動には,運動学的に頭部屈曲,頸部屈曲,頭頸部屈曲の3 種類があるが,3 種のどれが有効であるか明確ではない.そこで,3 種の屈曲運動時の舌骨上筋群ならびに胸鎖乳突筋筋活動への効果を比較検討した.【方法】対象は65 歳以上の高齢者25 名とした.除外基準は,神経疾患の既往歴がある者,頸部・脊柱に著明な関節可動域制限や痛みを有する者,摂食嚥下機能に問題を有する者,口頭指示が理解できない者とした.課題は,頭部屈曲運動,頸部屈曲運動,頭頸部屈曲運動の3 種類とした.被検筋は舌骨上筋群に加え,頭部挙上時にも活動する胸鎖乳突筋の2 筋とし,表面筋電図を用いて筋活動を計測した.各課題2 回計測し,1 回ごとに30 秒間の休憩をとった.また,課題ごとに5 分間の休憩をとった.課題の順番はランダムに実施した.各課題の解析区間は挙上が安定してからの3 秒間とし,各筋群の原波形を整流後,3 秒間の平均振幅を求めた.2 回の平均値のうち値が大きいほうを代表値とした.頭部屈曲運動時の値を100%と規定して,頸部屈曲運動時と頭頸部屈曲運動時の筋活動の割合(%)を求めた.各課題時の筋活動をFriedman 検定にて検討した.有意水準は5% とした.【結果】舌骨上筋群は頭部屈曲100%,頸部屈曲68.8%[51.7%–97.8%],頭頸部屈曲64.4%[46.8%–95.6%](中央値[四分位範囲])であった.頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が高かった.胸鎖乳突筋は頭部屈曲100%,頸部屈曲173.3%[105.9%–255.0%],頭頸部屈曲144.3%[118.0%–255.0%]であった(中央値[四分位範囲]).頭部屈曲は頸部屈曲,頭頸部屈曲よりも有意に筋活動が低かった.【考察】頭部屈曲運動が最も効果的な頭部挙上方法であった.今後は,介入研究にて嚥下機能におよぼす影響を検討する予定である.
著者
佐藤 正彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.484, pp.213-219, 1996-06-30 (Released:2017-02-02)
被引用文献数
1 1

Since a fire is the most dreaded disaster for a wooden building, signs and symbols of fire prevention are commonly used on "munafuda" (dedication board). These sings are, for instance "[figure]" symbolizing water, or ones which stand for the sun, the moon and stars. Especially, stars of 28 hotels are popular, such as "△" representing the star of the triangular seat, that is, the north heaven. The Chinese character 'seal' is used as a magical sign of 'cutting of a seal' and also of 'enclosing something inside' ; sometimes the mere symbol "[figure]" is applied in the same occasions."[figure]" occasionally symbolizes four kings. The sign "[figure]", meaning 'nine characters are cut' in Yin and Yang theory, is used. Again, in Buddhist temples, munafuda registers "卍" symbols.
著者
佐藤 正幸
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.177-204, 1998-09-30

人が「年」を認識することは、順序数をただ並べるだけの単純な行為ではなく、極めて政治的・歴史的な知的行為であり、何よりも文化的な行為である。