著者
佐藤 正之
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.139-144, 2005 (Released:2006-07-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1 7

音楽の脳内処理過程について, 扁桃体の機能を中心に述べた。失音楽症例の過去の報告から, 音楽の知覚能力と情動反応とは二重解離を呈しており, 両者が独立した脳内過程を有していることが示唆された。しかし扁桃体病変についての記載はなく, 音楽的情動への同部位の関与は明らかでなかった。Positron emission tomography (PET) による音楽的情動に関する脳賦活化実験では, 不快感を惹起すると想定された不協和音の聴取時に, 予想された扁桃体の活性化はみられなかった。著者は音色の認知についてのPETによる脳賦活化実験を行った。同じ旋律に対し, 音色に注目して聴いた時とリズムに注目して聴いた時とで脳血流の変化を調べた。その結果, 前者では後者に比し, 扁桃体, 海馬傍回, 帯状回, 側頭葉前部などに両側性に有意な活性化がみられた。扁桃体の活性化の機能的意義として, 進化論的側面と情動的評価から考察した。音楽を刺激に用いることにより, 情動の脳内過程に新たな知見が得られるものと期待される。
著者
田中 利枝 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.85-97, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究は、小学6年生に対して社会的問題解決訓練を実施し、訓練効果・維持効果、および、ストレス反応に及ぼす影響について検討した。児童175名は、それぞれ訓練群84名と統制群91名に割り付けられ、訓練群の児童は、担任教師によって4セッション(各45分)からなる介入を受けた。その結果、訓練を受けた児童は、友人とのトラブル場面においてポジティブに問題を捉える問題志向を向上させ、解決の目標としての認知的解決スタイルを習得し、それらは訓練終了3カ月後も維持されていることが明らかとなった。解決策の案出数は、訓練終了11カ月後も訓練効果が維持されていた。また、訓練群の児童では、訓練直後においてストレス反応のうち不機嫌・怒りに低減効果が示された。中学校進学後の11カ月後フォローアップ測定において、解決策の案出数以外に介入の維持効果はみられなかった。中学校入学後の維持促進の操作の必要性が示唆された。
著者
佐藤 寛 今城 知子 戸ヶ崎 泰子 石川 信一 佐藤 容子 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.111-123, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
32
被引用文献数
27 11

本研究の目的は, 学級単位で担任教師が実施することのできる, 児童の抑うつに対する認知行動療法プログラムの有効性について検討を行うことであった。小学5~6年生の児童310名を対象とし, 150名が介入群に, 160名が統制群に割り付けられた。介入群の児童に対して, 心理教育, 社会的スキル訓練, および認知再構成法を中心的な構成要素とする, 9セッション(1セッション45分)からなる学級規模の集団認知行動療法プログラムが実施された。その結果, 介入群の児童は統制群の児童に比べて抑うつ症状が大きく低減していた。さらに, 介入群の児童は抑うつ尺度のカットポイントを超える割合が低くなっていたが, 統制群ではカットポイントを超える児童の割合に変化は認められなかった。介入群の児童は, 介入目標とされた社会的スキルと認知の誤りにも介入前後で改善が見られ, 全般的な主観的学校不適応感も軽減され, 抑うつや認知行動的対処に関する一般的な理解度が高まるといった効果が認められた。最後に, 子どもの抑うつに対する心理学的介入プログラムの有効性や実用性を向上させるために必要とされる点について議論された。
著者
佐藤 正裕
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-25, 2019-10-31 (Released:2019-12-24)
参考文献数
32

Low back pain is one of the most common disorders for athletes. In the field of athletic training, various theories and methods of core stabilization exercises have been produced and verified whether it is effective for prevention of low back disorders and performance improvement. In this article, author reviewed clinical and scientific evidence about prevention of low back disorders for athletes. In the fact, there are few reports of well-designed research about the pain prevention of low back in the study of athletes. Although the evidence is low, some reports showed that re-education of deep trunk muscles (such as transversus abdominis and multifidus, etc.) and motor control training are effective in preventing the worsening or recurrence of low back pain in athletes. In the future, high-quality research is needed to verify both performance improvement and low back disorders prevention.
著者
佐藤 正範
出版者
京都大学東南アジア研究センター
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.495-522, 1995-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
佐藤 寛 今城 知子 戸ヶ崎 泰子 石川 信一 佐藤 容子 佐藤 正二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.111-123, 2009-03-30
被引用文献数
1 11

本研究の目的は,学級単位で担任教師が実施することのできる,児童の抑うつに対する認知行動療法プログラムの有効性について検討を行うことであった。小学5〜6年生の児童310名を対象とし,150名が介入群に,160名が統制群に割り付けられた。介入群の児童に対して,心理教育,社会的スキル訓練,および認知再構成法を中心的な構成要素とする,9セッション(1セッション45分)からなる学級規模の集団認知行動療法プログラムが実施された。その結果,介入群の児童は統制群の児童に比べて抑うつ症状が大きく低減していた。さらに,介入群の児童は抑うつ尺度のカットポイントを超える割合が低くなっていたが,統制群ではカットポイントを超える児童の割合に変化は認められなかった。介入群の児童は,介入目標とされた社会的スキルと認知の誤りにも介入前後で改善が見られ,全般的な主観的学校不適応感も軽減され,抑うつや認知行動的対処に関する一般的な理解度が高まるといった効果が認められた。最後に,子どもの抑うつに対する心理学的介入プログラムの有効性や実用性を向上させるために必要とされる点について議論された。
著者
佐藤 正治 倉本 昇一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.149-158, 1994-03-25
参考文献数
9
被引用文献数
9

電話センタビルに直撃雷が落ちるとビルの柱やはり,壁などに雷サージ電流が流れるため,通信ケーブルや配電線への誘導などによって,装置の故障や誤動作が発生することがある.このため,直撃雷に対するビル内の電流,電圧分布の検討が行われている.この中の基本的な課題の一つに,実際の柱やはりの等価インピーダンス推定方法があるが,建物の鉄筋,鉄骨の寸法が大きいことや形状が非常に複雑な形をしているため,まだ,十分解明されたとは言えない.本論文では,まず柱やはりの縮小モデルを作製してそのインピーダンス測定法を検討し,柱の縮小モデルの周囲に複数の電流リターン線を配置すれば,モデル内電流分布がほぼ均等になり,より実態に近い測定が行えることを明らかにした.次に,この測定法を使用して,シンプルな円柱導体と柱の縮小モデルとの比較を行い,柱やはりの抵抗およびインダクタンスは,その鉄骨や鉄筋の表面積を求めれば,複雑な形状であってもそれと同じ表面積の円柱導体の計算式からおおむね推定できることを実験的に明らかにした.最後に,実際の鉄筋コンクリートビルの柱を測定し,縮小モデルからの推定が実測値とほぼ一致することを確認した.
著者
佐藤 正樹 加藤 治 堀江 隆 黒沢 努 森 卓也
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.899-909, 2013-03-01 (Released:2013-03-01)
参考文献数
9

現在,科学技術情報流通の世界では,IT技術の発達や科学技術情報の世界規模での広がり等を要因として,外資系企業を中心に世界的な販売展開がなされている。JSTの情報事業のみならず,情報提供事業を行う機関は,自国内で展開する事業展開だけでなく,グローバルな視点の事業展開の立案が必要になっている。そこで2012年に,アジア諸国・地域の科学技術情報流通に関する状況を調査した。まず,アジア各国・地域における科学技術情報流通のポテンシャルを調査した。次にアジア諸国・地域で,日本の科学技術情報ニーズを調査した。最後に,今後どのような形態での科学技術情報の流通が求められるかを調査した。それらの結果を報告し考察する。
著者
佐藤 正晴
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.157-170,221-22, 1995

In this paper, the author described the development of propaganda for Afro-Americans after the outbreak of the Pacific War, from the viewpoint of Japanese foreign propaganda policies, and the relations with broadcasting of"Hinomaru Hour"in Japanese shortwave. This paper consists of three chapters. In chapter I, the author explained concerns about propaganda for Afro-Americans by the Foreign Office, particularly the information in 1942, on the press. Above all, the racial problem in America is the main theme in Japanese propaganda for Afro-Americans such as their states in the army and their riot in 1943. In chapter II, the author explained that propaganda for Afro-Americans was planned to arouse public opinions in America, "Negroes Strategy in Wartime", proposed by Hikita, the foreign officer, indicates the utility of Afro-Americans as prisoners in wartime. that almost coincided with foreign propaganda policy. Secondy, Japanese propaganda for Afro-Americans has some contradictions. The Japanese propaganda mentioned generality on the one hand, while mentioning particularism on the other. Essentially, racial equality and humanism were advocated in generality, while Japanese spirits, Japanese culture and Japanese jutice were stressed in particularism. In chapter III, the author explained that the realities and the effect of shortwave for Afro-Americans. The Japanese military carried out"Hinomaru Hour"made by prisoners for Afro-Americans. The message was adressed to their families by prisoners of War. In 1944, the program was reorganized as"Humanity Calls"and"Postman Calls"which ended in failure in military interference. Hence, the author chracterized propaganda for Afro-Americans as one of the foreign propaganda policies in wartime Japan. The contradictions of propaganda for Afro-Americans is symbolic of all all of Japanese foreign propaganda.
著者
佐藤 正寛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.479-480, 2021-07-05 (Released:2021-07-05)

新著紹介相対論とゲージ場の古典論を噛み砕く;ゲージ場の量子論を学ぶ準備として
著者
片野 修 馬場 吉弘 大原 均 河村 功一 佐藤 正人 熊谷 雅之 竹内 基 伊藤 正一 富樫 繁春 井上 信夫
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.97-103, 2014-11-05 (Released:2016-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2

The distribution of Nipponocypris temminckii was investigated in 24 rivers in Nagano, Niigata, Yamagata, Akita, Iwate, and Aomori Prefectures, the species being collected at seven study sites. Amongst non-benthic fishes, N. temminckii was exclusively dominant in two rivers. Supplementary records of the species in Nagano, Niigata, Akita and Iwate Prefectures were also described. Rivers in which investigations had been conducted over two or three years showed an increasing proportion of N. temminckii, indicating successful colonization of the species.
著者
佐藤 正樹 加藤 治 堀江 隆 川村 剛 真銅 解子 高橋 昭公 芳賀 みのり
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第9回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.25-30, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
6

2000 年代に入り、日本の企業による論文発表数が減っているといわれている。文部科学省科学技術政策研究所での研究でも、国内企業の論文発表件数は減少していると発表されている。しかしこれまで、日本国内で発表されている論文数の分析や、その結果と国内特許を合わせた分析は、ほとんど実施されていない。そのため JST と INFOSTA では、国内資料も含めた、電機系と化学系企業の論文発表および特許出願の状況調査を試みた。まず JDream II と PATOLIS を使用して、電機系と化学系企業の論文発表、特許出願状況を調査した。また、企業が投稿した論文誌等の科学技術資料の種類も調査した。科学技術資料は、分野、査読の有無、業界での注目度により分類できるため、企業が多く投稿する資料を分析した。さらに、今回調査した結果を基に、論文件数および特許出願数と社会情勢の比較等、調査した企業研究開発の状況を考察した。今後、他業種の企業の論文発表数調査や、企業内部の技術分野別の動向等、調査していきたい。
著者
佐藤 正之
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.106-116, 2021-06-25 (Released:2021-07-17)
参考文献数
19

失音楽症の自験2例に対し音楽能力の検査を行い,音楽認知の脳内機構について考察した.症例1は70歳代の女性.両側側頭葉前部の梗塞により,和音弁別の障害と童謡の歌唱の際の旋律の入れ替わり(錯メロディ,paramelodia)を呈した.楽曲の和声分析の結果から,歌唱の際にヒトは先行する4小節もしくは1フレーズの和声進行をもとに,続くメロディを記憶から想起していることが示唆された.症例2は60歳代,男性.両側側頭葉の梗塞の結果,広義の聴覚性失認と表出性失音楽を生じた.音楽の受容系と表出系との離断(伝導性失音楽,conduction amusia)のために歌唱の調節が出来なくなったと思われた.過去の失音楽症例のレビューでは,音楽認知の責任病巣として右側頭葉の皮質・皮質下があげられている.今後は,脳賦活化実験の結果との照合・統合をさらに進めていく必要がある.
著者
山下 三平 阿野 晃秀 丹羽 英之 森本 幸裕 佐藤 正吾 深町 加津枝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00156, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
43

本研究はグリーンインフラの一つである雨庭のデザインに役立つ知見を得るために,伝統的な枯山水庭園である京都の相国寺裏方丈庭園を対象とした雨水収支の実測評価を試みた.また新しい雨庭のデザインと維持管理に寄与する提案を行った.実測評価の主な知見は以下のとおりである:1) 本庭園は京都の100年確率日雨量推定値を上回る307.5mmの雨水を貯留だけで流出抑制できる.2) 本庭園は増水時に平均82.7%,最小でも57.8%,減水時は平均32.7mm/h,最小でも14.1mm/hで浸透できる.3) 本庭園には短期の集中的強雨と長期の分散的弱雨のいずれの降雨パターンにも対応する高い浸透機能が確認される.4) 砂礫地質で10-15cmの径を含む構成が,高い浸透機能の持続に寄与すると推察される.
著者
佐藤 正夫 竹村 正男 四戸 隆基
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.121-125, 2014-06-30 (Released:2015-03-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的:生物学的製剤の使用で関節リウマチ(RA)患者のquality of lifeは向上した.しかし,皮下注生物学的製剤の注射時痛を強く訴える患者が存在する.今回,皮下注射製剤の注射時痛を検討した. 対象・方法:エタネルセプト(ETN),アダリムマブ(ADA),ゴリムマブ(GOL)を1剤以上使用したことのあるRA患者123例を対象とし,痛みのVASスケールを用いて注射時痛を評価した. 結果:VAS値(中央値,IQR)はETN(41,22-55),ADA(59,30-82),GOL(35,27-41)であった.対照として評価したインフルエンザワクチンのVAS値で除した値(中央値)はETN:1.140,ADA:1.627,GOL:0.949で,GOLの注射時痛が有意に低かった.約2/3の症例で注射針の刺入時よりも薬液注入時の痛みを不快に感じると回答した. 結論:“痛み”の数値化には患者個人間でのばらつきが存在するが,注射時痛は薬剤間で有意な差がみられた.
著者
尾崎 朋文 森 俊豪 坂本 豊次 于 思 湯谷 達 竹中 浩司 佐藤 正人 米山 榮 前岡 弘子 北村 清一郎
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.103-110, 2000-03-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
29

先天性胸骨裂孔 (以下胸骨裂孔) の出現状況や胸骨の厚さを遺体で調査するとともに、生体での画像所見から、胸骨裂孔の有無および〓中穴での体表から胸骨後面までの距離を調べ、〓中穴への安全刺鍼深度を検討した。その結果、51遺体中の1例に胸骨裂孔が認められた。裂孔は第4肋間の高さにあり、形状はほぼ円形、直径は胸骨外面で9mmで、固い結合組織で埋められていた。21遺体での胸骨の厚さは9-15mmの範囲で平均は11.5±2mmであった。生体31例の〓中穴での体表一胸骨後面間距離は11-31mmの範囲で、平均は18.8±5mmであった。これらの結果から、仮に胸骨裂孔が存在しても、〓中穴への刺鍼では、極端な痩せ型を除いて10mmまでは、刺入鍼が心臓に達する可能性はなく、安全と考えられた。
著者
Falko JUDT Daniel KLOCKE Rosimar RIOS-BERRIOS Benoit VANNIERE Florian ZIEMEN Ludovic AUGER Joachim BIERCAMP Christopher BRETHERTON Xi CHEN Peter DÜBEN Cathy HOHENEGGER Marat KHAIROUTDINOV 小玉 知央 Luis KORNBLUEH Shian-Jiann LIN 中野 満寿男 Philipp NEUMANN William PUTMAN Niklas RÖBER Malcolm ROBERTS 佐藤 正樹 澁谷 亮輔 Bjorn STEVENS Pier Luigi VIDALE Nils WEDI Linjiong ZHOU
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.579-602, 2021 (Released:2021-06-10)
参考文献数
68
被引用文献数
26

近年のコンピューターとモデル開発の進歩により、全球ストーム解像モデルの時代が始まり、それに伴って気象や気候予測が一変する可能性を秘めている。本研究では、この新しいクラスのモデルを検証するという一般的なテーマの中で、9つの全球ストーム解像モデルについて、熱帯低気圧(TC)をシミュレートする能力を評価した。その結果、大まかにいえば、これらのモデルは現実的な熱帯低気圧を再現し、熱帯低気圧の強度の正確なシミュレーションを可能とするなど、全球モデルの長年の課題が解消されていることが示された。一方、TCはモデルの設計に強く影響され、全てのモデルはTCの数、強度、大きさ、構造に関して独自のバイアスを持っている。いくつかのモデルは他のモデルよりも優れたTCをシミュレートするが、全ての点で優れたモデルが存在するわけではなかった。全体的な結果は、全球ストーム解像モデルがTC予測の新時代を切り拓くことが可能であることを示しているが、その可能性を最大限に引き出すためには改良が必要である。