著者
吉岡 義正 小瀬 洋喜 佐藤 孝彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.308-311, 1986-08-31 (Released:2008-05-30)
参考文献数
7

The LC50 test method by use of Tubifex was developed for the evaluation of eco-toxicity of chemicals. The change of the observation period, the size of Tubifex or the test temperature affected little the LC50 value of 3, 5-dichlorophenol. Acute toxicity of 20 chemicals was tested at 20°C for 48 h by use of Tubifex of 30-50 mm in length. The test results were compared with the other three biological test methods ; EC50 of activated sludge respiration inhibition test, LC50 of Oryzias latipes (Himedaka ; red killifish) acute toxicity test and EC50 of Tetrahymena pyriformis proliferation inhibition test. A good correspondence was found in each two test method compared, and the regression analysis showed that the sensitivity of the Tubifex test lied between those of activated sludge and O. latipes tests.
著者
大谷 竜 塚本 斉 佐藤 努 木口 努 重松 紀生 板場 智史 北川 有一 松本 則夫 高橋 誠 小泉 尚嗣
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1-2, pp.57-74, 2010-01-26 (Released:2013-07-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

産業技術総合研究所(以下,産総研と呼ぶ)は, 2006年度より四国・紀伊半島~愛知県にかけて地下水等観測点やGPS観測局の新設を行っており,これを機に従来の産総研のGPS観測局と統合したGPS連続観測システム(以下,GPSシステムと呼ぶ)の全面的な更新を行った.本報告ではその概要,及び本GPSシステムを用いて得られる結果について紹介する.まず,全局についてTrimble製の同一型の受信機とアンテナに統一した.また,解析ソフトウエアはBerneseソフトウエアに切り替えた.これらの結果,従来の産総研のGPSシステムの結果に比べ,新解析で推定されたGPS局の変位の再現性の向上が見られた.また,産総研のGPS観測局だけではなく,周囲にある,国土地理院のGPS連続観測網(GEONET)の観測局も一緒に解析を行い,日々の座標値を推定するようにした.この解析方法の導入により,産総研GPS観測局周辺の歪をGPSから求めることができるようになった.更に, GEONETの定常解析であるF2 解に準拠した解析を産総研の新GPSシステムでも独立に行うことにした.産総研による解析結果と,F2解で求められた同一観測局 の変位を比較した結果,両者の間に大きな差はないことが確かめられた.
著者
時田 諒 佐藤 尚輝 谷尻 豊寿 戸田 創
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-17, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
15

3 次元相同モデルを用いて現代日本人における肩甲骨全体形状のバリエーションの抽出を試みた。全頂点の3 次元座標に対する主成分分析の結果,第1 から第5 主成分までで累積寄与率が約50% となった。第1 主成分は,肩甲骨体部の彎曲が強まるにつれて,関節窩や烏口突起の前方への傾きが強まる成分であった。第2 主成分は,肩甲骨体部が頭尾方向に長くなるにつれて,棘上窩に対する棘下窩の面積が大きくなる成分であった。第3 主成分は,肩峰の前傾に伴い棘上窩の幅が小さくなる成分であった。第4 主成分は,肩峰が外側に張り出すにつれて棘上窩の幅が大きくなる成分であった。第5 主成分は,肩甲棘から肩峰にかけての前傾に関する成分であった。肩甲骨には多くのバリエーションが存在し,全体形状を包括的に解析する重要性が示唆された。今後は同手法を用いることで,肩甲骨全体形状と肩関節疾患の関連性の解明などが期待できる。
著者
佐藤 俊彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PB-028, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

感覚情報処理に関連した感受性や欲求性に関する概念には,感覚処理感受性や刺激欲求性など,さまざまなものがあり,従来から用いられてきたパーソナリティ特性の概念との間で関連が認められていることから,これらの概念の間の重複や差異を整理しておくことは,これらの概念が包含する個人の心理的特徴の範囲を正確に把握するためだけでなく,パーソナリティの個人差を理解する上でも重要であるだろう。そこで,それぞれの概念に対応した質問紙尺度の相互の関連性を明らかにするため,大学生を対象に,Highly Sensitive Person Scale日本語版(HSPS-J19;高橋,2016),刺激欲求尺度・抽象表現項目版(SSS-AE;古澤,1989),および日本版青年・成人感覚プロファイル(AASP;辻井,2015)の3種類の質問紙尺度への回答を求めた。AASPに含まれる低登録,感覚探求,感覚過敏,感覚回避の4つの尺度のうち,低登録の尺度の得点は,HSPSの易興奮性との間に中程度の正の相関を認め,感覚過敏と感覚回避の得点のいずれもが,HSPSの低感覚閾との間でやや高い正の相関を認めた。感覚探求の得点については,SSS-AEの脱抑制欲求(Dis)尺度との間で中程度の正の相関を認めた。
著者
巻 直樹 髙橋 大知 仲田 敏明 長谷川 大吾 若山 修一 坂本 晴美 藤田 好彦 高田 祐 佐藤 幸夫 柳 久子
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.138-144, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
42
被引用文献数
3

【目的】嚥下機能低下を呈した要介護認定高齢者を対象として,呼吸トレーニングにおける短期および長期的な効果を検証する。【方法】通所リハビリテーションを利用している65 歳以上の要介護認定高齢者を対象とした。同意が得られた31 名に呼吸トレーニングを2 ヵ月(8 週)行い,理学療法前後,follow-up 1 ヵ月後,6 ヵ月後に測定を行った。【結果】理学療法前と理学療法1ヵ月(4 週)評価との間では,呼吸機能,嚥下機能,QOL は有意に改善を示した。理学療法2 ヵ月(終了時)とfollow-up 6 ヵ月後との間で呼吸機能,QOL は有意に減少を示していた。【考察】要介護認定高齢者に対し,呼吸トレーニングを導入することにより,呼吸機能や嚥下障害,QOL を改善することが可能であった。
著者
大町 浩史 原田 清 佐藤 昌 盛島 聖子 樺沢 勇司 丸岡 豊 小村 健
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.8-11, 2006-04-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
10

Soft tissue changes in the chin were compared between patients undergoing sagittal split ramus osteotomy (SSRO) for mandibular setback with and without reduction genioplasty. Twenty patients with symmetrical skeletal Class III malocclusion were examined. Twelve underwent SSRO alone (group I), and 8 underwent SSRO combined with reduction genioplasty (group II). Reduction genioplasty was performed by two horizontal osteotomies, removing the bony wedge, and posterosuperior movement of the inferior segment of the chin. Lateral cephalograms were obtained preoperatively and 6 months postoperatively. Pre- to postoperative changes in the positions of hard-tissue points (B-point [B], pogonion [Ng], and menton [Me]) and soft-tissue B-point [sB], soft-tissue pogonion [sPog], and menton [sMe] were measured on the cephalograms. The ratio of the soft tis-sue movement to the hard tissue movement was also calculated. Though superior movement of Me was significantly larger in group II than in group I, there were no significant differences in the superior movement ratios of sMe to Me between the two groups. However, the posterior movement ratio of sPog to Pog was significantly larger in group I than in group H. These results suggest that the reduction genioplasty performed by two horizontal osteotomies, removing the bony wedge, and posterosuperior movement of the inferior segment of the chin had little effect on the posterior movement of the chin. Therefore, in patients with skeletal class III malocclusion, reduction genioplasty should be applied mainly to vertical shortening of the chin.
著者
佐藤 浩輔 中分 遥
雑誌
じんもんこん2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.30-37, 2021-12-04

近年,人文社会科学においてデータベースのデジタル化が進展している.それに伴い,民話や神話などに対して計量分析を行う計算民話学・計量民俗学と呼ばれる取り組みがなされている.本研究では,国内の民間伝承に関する主要なデータベースである「怪異・妖怪伝承データベース」を計量的に分析する端緒として,書誌情報を用いて全容を把握するための基礎的な分析を行った.収録されている事例数について都道府県ごとの分布を可視化したところ,地域による資料数の多寡に差があることが明らかになった.主要な「怪異・妖怪」に関するクラスター分析の結果から,怪異・妖怪の分布の地域的特性が示唆された.データベースを用いた計量分析の展望について議論する.
著者
菅沼 真由美 佐藤 みつ子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.5_41-5_49, 2011-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
45

本研究の目的は,認知症高齢者の家族介護者(以下介護者と略す)の支援への示唆を得るために,介護者の介護評価と対処方法の特性について検討した。介護施設に通所している認知症の症状のある高齢者と同居している主介護者401名に質問紙調査を行い,回収率は60.3%(242名)であった。その結果,認知症の症状に対応できる介護者は肯定的評価が高く(p=.000),否定的評価が低く(p=.001),さまざまな対処方法を活用していた(p=.000)。認知症の症状に対応できない介護者は,認知症の症状がわからない(p=.000),相談相手がいない(p=.032)介護者に多かった。介護評価と対処方法の関連は,肯定的評価と対処方法はやや強い正の相関(p<.01),否定的評価と対処方法は弱い負の相関(p<.01)が認められた。このことから,肯定的評価を高め否定的評価を軽減するためには,認知症の症状に対応できること,多様な対処方法がとれるように支援する必要性が示唆された。
著者
佐藤 知己
出版者
日本北方言語学会
雑誌
北方言語研究 (ISSN:21857121)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.219-230, 2020-03-20

本稿は、アイヌ語の「合成名詞(複合名詞とも呼ばれる)」の分析において、動詞から名詞への品詞転換、句から語へのカテゴリー転換という二つの文法的カテゴリー転換が共に重要な役割を果たしていることを、これまでのアイヌ語の研究史 を概観することによって確認し、さらに、未解決問題として残されている、自動詞( 一項動詞)から名詞への品詞転換を可能にしている要因とは何かを論ずるものである。具体的には、形式意味論的要因が転換において重要な役割を果たしている可能性を、完全動詞(ゼロ項動詞)との対比を通して明らかにすることを試みる。
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 三井 一希 板垣 翔大 泰山 裕 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.101-119, 2021 (Released:2021-05-08)
参考文献数
50
被引用文献数
1

本研究は,日本教育メディア学会における学校教育を対象としたメディア・リテラシー教育の実践研究を,「実践研究が対象としてきたカテゴリ(佐藤ほか 2020)」および「ソーシャルメディア時代のメディア・リテラシーの構成要素(中橋 2014)」に整理し,傾向を分析することにより,これまでの成果を把握し,今後の実践課題を考察することを目的とした。122件の実践研究を整理した結果,「教材開発」「評価・目標達成」をテーマにした実践研究および「メディアのあり方を提案する能力」の育成をねらいとした実践研究の割合が低く,今後の実践課題であることが示唆された。また,1つの実践においてともに育成することが有効である構成要素についての示唆が得られた。
著者
佐藤 健斗 三富 菜々 昆 恵介 春名 弘一
出版者
The Japanese Academy of Prosthetists and Orthotists
雑誌
POアカデミージャーナル (ISSN:09198776)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-37, 2022 (Released:2022-06-01)
参考文献数
22

現在までに義肢装具領域を対象としたユーザの満足度は評価者個々の評価項目によって評価されているケースが多く、信頼性と妥当性が確認されている評価指標の利用も普及していない。本研究では、他の領域で使用されている簡便な満足度評価指標であるSystem Usability Scale(SUS)が義肢装具領域において使用可能であるか、信頼性の検討を行った。50名の義肢装具ユーザを対象に使用したSUSのスコアから、内的整合性の観点で信頼性を判断することのできるα係数およびω係数を算出した。その結果、義肢装具ユーザにおけるα係数は0.80、ω係数は0.78となり、義肢装具領域におけるSUSの十分な信頼性を確認することができた。
著者
眞田 幸尚 操上 広志 舟木 泰智 吉村 和也 阿部 智久 石田 睦司 谷森 奏一郎 佐藤 里奈
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.62-73, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1 4

The Japanese government is beginning to consider radiation protection in the “specific reconstruction reproduction base area” of the Fukushima nuclear power plant, the evacuation order of which will be lifted by 2023. It is essential to grasp the present situation of radiation contamination and evaluate exposure dose in the area to realize the lifting of this evacuation order zone. Many surveys on the evaluation of the distributions of air dose rate have been carried out, and exposure dose has been estimated using the results since the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident. Nevertheless, more detailed information on exposure is needed for the area because the radiation level is relatively high. This will also be helpful in preparing a prudent evaluation plan. This study is aimed at evaluating the detailed contamination situation in the area and estimating exposure dose with consideration of areal circumstances. Work was carried out for (1) an airborne survey of the air dose rate using an unmanned helicopter and ground-based measurement (walk-survey), (2) the evaluation of airborne radiocesium and (3) the estimation of external/internal effective doses for the typical life patterns assumed. Our study resulted in a detailed map of the air dose rate and clarified the distribution pattern in the area. Moreover, the exposure dose of residents was evaluated by considering some life patterns based on this map.
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.4-15, 1998 (Released:2022-07-22)

ある種のアート組織は,個性と個人レベルの業績を何よりも強調する芸術活動をチームワークを重視する組織という器の中で行なわざるを得ないという点で,根本的な矛盾を内包するシステムである.本論文では,この「不可能なシステム」としての芸術団体の特質について,日本の現代演劇系の劇団の事例を通して検討する.日本の劇団が抱えるさまざまなレベルとタイプの葛藤やディレンマについては,組織環境と組織構造・組織過程をめぐる問題という文脈だけでなく,組織体および組織フィールド・レベルでのアイデンティティの拡散に由来する問題として把握可能であることが示される.
著者
佐藤 麟太郎 奥村 真子 黄 国宏 長谷川 浩 三木 理
出版者
海洋理工学会
雑誌
海洋理工学会誌 (ISSN:13412752)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.45-53, 2022-07-30 (Released:2022-08-27)
参考文献数
40

Recently, a great interest has been observed in using marine species for coastal environmental impact assessment. Embryos of brown macroalga, Sargassum horneri, distributed throughout the northwest Pacific coast, appear be a promising marine indicator for such assessments. This study identified the effects of copper (Cu–EDTA) on the germling growth of S. horneri. Following exposure to various copper concentrations for 21 days, the germination rate, specific growth rate, and final thallus area of S. horneri germlings were measured. The germination of the embryo was completely inhibited when exposed to 10 µg/L, and the no observed effect concentration (NOEC) for germination was estimated as 5 µg/L. Since the incubation period was longer for lower copper concentrations, growth inhibition could be clearly observed and was deduced to be a chronic toxicity effect. The median effective concentration (EC50) and NOEC for the final thallus area were 0.50 and 0.16 µg/L, respectively. The results demonstrated that the embryos of S. horneri are more sensitive to copper than other seaweeds, further suggesting that its growth patterns can effectively be utilized to assess coastal environmental impacts.
著者
楠 恒輝 加藤 純 佐藤 充
雑誌
コンピュータシステム・シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.56-62, 2022-11-28

近年,大規模計算の需要の高まりとともに,HPC(High Performance Computing)とクラウドが融合した HPC クラウドが注目されている.HPC クラウドでは,通常のクラウドのインフラとは別に HPC クラウド専用のインフラを構築・運用しているのが現状であり,通常のクラウドのインフラで HPC アプリケーションを実行できれば,インフラのTCO(Total Cost of Ownership)を最適化できる.本稿では,インフラの共有化を目指して,HPC に特有である OS がアプリケーションの性能低下を引き起こす OS ノイズの影響を定量評価する.OS ノイズのうち,クラウド環境に特有である仮想化と HPC アプリケーションで頻繁に使用され他テナントに影響を与えやすい通信処理・ファイル I/O による Write back 処理の 3 点に着目して評価する.HPC クラウドでよく使われるアプリケーションを用いた評価で,Kubernetes 環境の仮想化により 1% 未満,他テナントの Write back 処理,通信処理によりそれぞれ最大 7%,22% 性能が低下することを示した.これにより,HPC クラウドの基盤として Kubernetes が利用可能であることと,通信処理と Write back 処理による OS ノイズが我々の目指すインフラ共有化の課題であることを示した.
著者
葉名尻 豊 佐藤 剛 松井 恒雄
出版者
The Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.92-99, 1999-07-30 (Released:2009-09-07)
参考文献数
53

ペロブスカイト型酸化物の熱容量,熱膨張,熱伝導,蒸発等の高温熱物性について主としてまとめた。最近は従来の熱物性測定に加えて微分熱膨張係数や生成エンタルピーのモデル計算、さらには転移点に及ぼす同位体効果などの新しい試みも行われつつあり,それらについても示した。
著者
佐藤 祐一 小早川 紘一
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

Ni極を使用したアルカリ系二次電池(Ni-Cd電池,Ni-MH電池)は,使用時最後まで完全放電せず,浅い放電状態からの充電を繰り返すと,規定容量より少ない容量しか得られなくなるメモリー効果といわれる現象を生じる。その原因については様々な報告があり,Ni極で部分的な放電サイクルの間,一部の活物質だけが充放電に携わり,サイクルに関与していない活物質が蓄積し,内部抵抗が増大する,またCd極でNi-Cd合金が生成するために,メモリー効果が発生するという報告等がある。我々は原因解明のため,Ni-Cd電池を取り上げ検討したところ,主にその原因は正極活物質であるβ-NiOOHがγ-NiOOHに変化するために発生すると報告した。しかし企業から実用電池において,メモリー効果が表れてもγ-NiOOHの存在は確認できないと反論があった。そこで我々は,Ni極容量規制の試作Ni-Cd電池を使用して,さらに検討したところ以下のことを解明した。試作Ni-Cd電池で浅い放電と充電を繰り返した後,充電状態のNi極について,X回折(XRD)測定,X線光電子分光(XPS)測定を行った結果,通常充放電後には存在しないγ-NiOOHの回折ピークが確認でき,γ-NiOOHは集電体/活物質界面から徐々に生成し,浅い放電と充電のサイクル数が増加すると,その生成量は増大し,容量劣化が大きくなることを確認した。さらに交流インピーダンス法により,Ni極中のγ-NiOOHの生成量が増加すると、電荷移動抵抗が大きくなり,メモリー効果が発生すると推定した。そしてγ-NiOOHの生成がメモリー効果の原因であることをより明確にするため,メモリー効果の温度依存性について検討した結果,低温になるに従って,メモリー効果は発生しやすく,γ-NiOOHの生成量も増加することがわかった。