著者
佐藤 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.17-34, 2021-01-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
37

大都市圏の基礎自治体における地方税の徴収率と財政状況を分析した結果,大都市圏の自治体における財政は景気による変動を受けやすく,地方税の滞納が発生した場合の影響が大きくなることが明らかになった.そこで,計量的な手法を用いて地方税の徴収率と貧困問題に関係する指標を比較し,規定要因と空間パターンを検討した.分析の結果,①地方税の徴収率が低い自治体は平均年収や完全失業率などの貧困問題に関わりのある指標と有意な関係性があり,GWR(地理的加重回帰分析)により60%程度の説明力が認められた.それゆえに,都市内部構造における社会的地位に関する知見に対応した形でセクター状に徴収率の低い地域が現れている.②ローカルMoran統計量の分析を通して,有意に低徴収率が空間的に連続する地域(クール・スポット)が検出された.さらに,GWRの分析により徴収率を規定する要因には地域差があることが示唆される,という2点が明らかになった.
著者
中野 貴文 中村 智美 仲村 佳彦 入江 圭一 佐藤 啓介 松尾 宏一 今給黎 修 緒方 憲太郎 三島 健一 神村 英利
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.7, pp.909-916, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3 4

Warfarin (WF) shows a number of interactions with other drugs, which alter its anticoagulant effects. The albumin binding interaction is one such pharmacokinetic mechanism of drug interaction with WF, which induces a rise in the free WF concentration and thus increases the risk of WF toxicity. Teicoplanin (TEIC) is an anti-methicillin-resistant Staphylococcus aureus drug, which also binds strongly to albumin in the plasma. Therefore, co-administration of TEIC may displace WF from the albumin binding site, and possibly result in a toxicity. The present study was performed to investigate the drug-drug interaction between WF and TEIC in comparison with controls treated with vancomycin (VCM), which has the same spectrum of activity as TEIC but a lower albumin binding ratio.The records of 49 patients treated with WF and TEIC or VCM at Fukuoka University Hospital between 2010 and 2015 were retrospectively reviewed. These 49 patients consisted of 18 treated with TEIC in combination with WF, while 31 received VCM in combination with WF. Prothrombin time-international normalized ratio (PT-INR) showed a significant increase of 80.9 (52.0-155.3) % after co-administration of TEIC with WF. In contrast, the rate of PT-INR elevation associated with VCM plus WF was 30.6 (4.5-44.1) %. These observations suggested that TEIC can cause a rise in free WF concentration by albumin binding interaction. Therefore, careful monitoring of PT-INR elevation is necessary in patients receiving WF plus TEIC.
著者
水家 健太郎 佐藤 栄一 米田 哲 草間 薫 高以良 仁 冨岡 譲二
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11836, (Released:2020-11-19)
参考文献数
9

【目的】災害時の緊急医療支援において,リハビリテーションは重要である。しかし,それに携わる人材は少なく,特に外国での活動に関しては報告も限られる。本論文ではモザンビーク共和国での経験を実践報告として報告する。【内容】サイクロン災害の概要,派遣までの経緯,現地での経験や,そこから見えてきた課題を共有する。【症例】リハビリテーション対象患者に対して,移動手段の獲得,疾病や障害の予防,患者教育などがなされた。各症例には「持続可能性」「コミュニケーション」「適正技術」等の国際協力におけるキーポイントが含まれる。【結語】緊急医療支援におけるリハビリテーションは発展途上であり,今回の派遣でいくつかの課題を持ち帰った。今後の発展のためには多くのリハビリテーション専門職の知恵や技術が必要である。
著者
後藤 吉道 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-24, 2000-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
8

本研究では、集団SSTを通して学級内の仲間関係が改善されるかどうかを検討するために、小学2年生の児童を対象にして学級を単位とした3セッションからなる集団SSTが行われた。標的スキルは、適切な働きかけと応答であった。訓練は、教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバック、強化からなるコーチング法の手続きに従って行われた。その結果、訓練群の児童は、統制群の児童よりも訓練前から訓練後にかけて、社会的スキル得点が有意に増加し、引っ込み思案得点が有意に減少した。また教師による社会的スキル評定においても、訓練群の得点が訓練後に有意に増加していることが確かめられた。さらに、好意性指名得点は、訓練群のみ訓練後に得点の増加が認められた。これらの結果から、集団SSTは、社会的スキルの獲得を促進するばかりでなく、仲間に対するポジティブな見方を高めることが明らかにされたといえよう。
著者
佐藤 幸治
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1990

博士論文
著者
佐藤 一郎
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.21-44, 2022-12-22 (Released:2022-12-28)

メタバースが話題になっているが、その関心は仮想世界やアバターに集中している。本稿ではメタバースがどのように実装されているかという技術、それもシステム構成の観点から、メタバースの仕組み、課題、可能性を探っていく。実際、メタバースでは、サーバの性能的制約や通信遅延により、現実世界に起きえない問題が起きる。また、メタバースはプラットフォーム化が進んでいることから、メタバースのプラットフォーム、仮想世界などを提供するサードパーティー、そしてユーザの3者の関係についても言及していく。
著者
佐藤 英夫 岩島 明 河辺 昌哲 中山 秀章 吉澤 弘久 下条 文武 鈴木 榮一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.491-495, 2005-05-31 (Released:2017-11-10)
参考文献数
16

睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)の胃食道逆流症(以下GERD)合併頻度を,QUEST問診票を用いて検討した.QUESTは4点以上をGERD合併ありと判断した.PSG(Polysomnography)検査を実施した84例中の73例にAHI(Apnea Hypopnea Index)≧5 (/hr) のSASを認めた.QUEST 4点以上が25例(34.2%)あり,GERD合併の有無で2群に分けたときAHI,脳波上の短時間覚醒指数(以下Arousal Index),BMIなどに有意差はなかった.AHI≧20かつQUEST≧4点の17例中,11例がCPAP治療を開始した.CPAP治療を開始した4週間後のQUEST得点は7例で無症状(0点)となった.残る4例はプロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服を追加して,症状の消失が得られた.SASによる胸腔腹腔内圧較差開大をCPAP治療が改善して,胃酸逆流を抑制する機序が関与すると考える.SASには高頻度にGERDが合併することから積極的な問診と治療追加が望まれる.
著者
岩瀬 雅紀 北口 紗織 佐藤 哲也 Li-Chen OU Ronnier LUO
出版者
The Japan Research Association for Textile End-Uses
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.501-514, 2010-06-20 (Released:2016-09-28)
参考文献数
33

本研究は,スポーツを観る側の視点から,バレーボールユニフォームの色に対して,どのような印象を受けるのかについて知ることを目的とした.はじめに,観る側のユニフォームの注目度とその印象を形容詞で回答するアンケート調査を行った.そして,静止画像を用いて1つのユニフォームを見た場合と2つのユニフォームを同時に見た場合の色の印象をSD法によって評価した.その結果,黒は‘地味’,‘くすんだ’,‘重い’,‘暗い’,‘かっこいい’,赤は‘あつい’といった印象を与え,因子分析によって,「価値」と「色彩」の因子が抽出された.また,2つのユニフォームを同時に見た場合の印象は,1つのユニフォームを見た場合の印象から予測できることがわかった.さらに,実験結果の一部を4つの色彩感情モデルから予測した結果と比較することで,本研究の結果がいくつかの色彩感情モデルによって予測される色の印象に適応していることが認められた.
著者
佐藤 泰 田中 善晴
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.115-123, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

皮蛋製造の基礎研究として,比較的に性質が知られているゼラチンゲル(GG)を比較対照しつつ,アルカリ変性オボアルブミンゲル(OG)の性質を把握するため,3% GGと10% OGについてクリープ実験を行なった. OGは4要素模型, GGは3要素模型であらわすことができ, OGのクリープコンプライアンスには,瞬間弾性コンプライアンスと1個の遅延弾性コンプライアンスのほかに,定常流粘性コンプライアンスが関与していた. GGとOGの瞬間弾性率は3.2~3.3×104 dyne/cm2で,ほとんど同じであったが, OGの遅延時間は162秒,遅延弾性率は3.2×104 dyne/cm2で, GGのそれらの値より低かった.永久流動の粘性率から計算すると,小さな降伏値1.2×102 dyne/cm2をもつビンガム塑性体と考えられた. OGの剛性率と粘性率は,温度上昇により次第に減少した. 0.1M NaCl添加により剛性率は増加し,遅延スペクトルの分布の広がりがみられた. 2M尿素添加では,遅延時間の短い機構ができ,粘性率が増加した. O.1MのNa2SO3添加では粘性率も剛性率も増加するが, 0.2~0.5添加すると,剛性率は0.5M NaCl添加のときと同じ値まで減少し,粘性率はもとのOGの粘性率と同じになった.しかし遅延スペクトルには,ほとんど変化が見られなかった.以上の結果から, OGの特色ある流動性をもつゲルの構造について考察した.
著者
佐藤 圭吾
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00087, (Released:2023-02-21)

A byproduct of sake production is sake-kasu , which contains abundant nutrients. However, since consumption of sake-kasu is decreasing, we attempted to develop a high-value sake-kasu. We steamed the sake-kasu to remove alcohol (nAS) and then inoculated the nAS with lactic acid bacteria or acetic acid bacteria and incubated the samples at 30°C for 2 days. The sugars, organic acids, amino acids, trace elements, and ferulic acid were measured in the fermented sake-kasu. Lactic acid was produced in the sake-kasu fermented with lactic acid bacteria, while gluconic acid was produced in the sake-kasu fermented with acetic acid bacteria. In the sake-kasu fermented with Gluconobacter oxydans NBRC 3189, seven times as much ferulic acid was produced compared to the non-fermented sake-kasu. Thus, we were able to produce a high value sake-kasu by bacterial fermentation.
著者
沼田 宗純 高津 諭 山内 康英 中井 佳絵 目黒 公郎 伊藤 哲朗 平松 進 伊妻 伸之 赤津 善正 佐藤 勝治 二上 洋介 大関 将広 土井 祐司 田中 朝子
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.471-480, 2016-11-01 (Released:2016-11-29)
参考文献数
3

本研究は,石巻市における避難訓練の結果を報告するものである.2015 年11 月15 日(日曜日,天候:雨)に石巻市総合防災訓練において,各避難所と災害対策本部の情報共有を支援し,効率的な避難所運営を実施することを目的として避難所情報共有システムCOCOA を用いた検証を行った.COCOA は沼田研究室が開発している避難所情報共有システムである.本訓練により,各避難所における避難者数をリアルタイムに把握でき,効率的に避難者名簿も作成されるため要配慮者の把握も容易にできるなど,時系列的な状況変化に応じた効率的な避難所運営が実施できることが確認できた.
著者
佐藤 陽 安藤 秀俊
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.13-16, 2022-12-03 (Released:2022-12-01)
参考文献数
5

ヒメチャマダラセセリは,鱗翅目セセリチョウ科の蝶である。日本では,北海道の特産種で日高山脈アポイ岳付近に産し,国の天然記念物(絶滅危惧ⅠA類)に指定されている。近年,生息環境の変化により個体数が急激に減少し,日本チョウ類保全協会などの調査では,調査地(計11カ所)における7月下旬の幼虫数の変化を見ると2013年には361頭であったが,2020年には70頭まで減少し絶滅の危機に瀕している。絶滅を避けるためには,生息域外保全による増殖などの対策が必要であるが,1973年の本種の発見から,2年という短い期間で天然記念物に指定されており,生息域外保全のための基礎的な飼育データがほとんどない。そこで今回,日本チョウ類保全協会から環境省と文化庁の許可を得て採集した母蝶から強制採卵した300卵の生息域外保全を委託され,温度,日長,2化の条件など,累代飼育のための基礎的データの収集を行った。
著者
原 毅 高橋 良介 尾原 裕康 岩室 宏一 下地 一彰 志村 有永 佐藤 達哉 宮川 慶 奥田 貴俊 野尻 英俊
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.926-932, 2021-07-20 (Released:2021-07-20)
参考文献数
9

DuragenⓇは多孔性のcollagen matrixにより形成されている吸収性の人工硬膜で,内部に血小板が浸潤することでフィブリン塊による膜を形成し,早期の髄液漏防止効果が得られる.DuragenⓇの脊椎脊髄手術における髄液漏防止効果について,後方視的に検討した.DuragenⓇを用いた脊椎脊髄手術34例中,髄液漏発生は2例であった.DuragenⓇは脊椎脊髄手術において髄液漏予防に有用と考えられる.水との親和性により様々な使用方法が期待できる素材と考える.
著者
佐藤 晃太郎 石川 隆志 浅野 朝秋
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.276-284, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
21

本研究の目的は,「生活行為相互作用評価表」の開発に向けて,原案作成と内容的妥当性の検討を通して試作版を作り上げることである.経験のある作業療法士10名の協力のもと,Nominal Group TechniqueとDelphi法によって内容を収斂し,その後,健常者80名に試行した.その結果,主対象者や実施方法,評価の視点,結果の解釈などを一部改訂し,試作版が完成した.本評価表には生活行為の相互作用を因果的に捉える特徴がある.生活状況や考え方などの質的評価を深める点,相互作用マトリクスによって生活を俯瞰的に分析する点,協業を促進する点などから,作業療法に活用可能な枠組みであることが示唆された.
著者
山口 翔大 下川原(佐藤) 英理 山口 亨
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.547-551, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
9

近年,機械学習や画像処理を用いた読唇技術に関する研究が国内外でおこなわれている.これらの研究では,認識手法や認識精度に焦点を当てたものが多いが,実際に読唇を活用してコミュニケーションをとっている聴覚障害者に焦点を当てた研究は少ない.機械による読唇技術において認識精度の高かった話者であっても,聴覚障害者にとって読唇をしづらい話し方である場合もある.そこで本研究では,日常的に読唇を活用してコミュニケーションをとっている聴覚障害者にとって,読唇がしやすい話し方を数値的に解析すべく実験と調査をおこなった.
著者
川北 大 飯田 修平 内藤 秋光 藤田 拓也 小瀧 敬久 佐藤 絵美 岡田 雄大 池田 喜久子 玉利 光太郎 阪井 康友
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-62, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
28

〔目的〕回復期の片麻痺患者に対してロボット型短下肢装具(R-AFO)を用いたリハビリの効果を検討すること.〔対象と方法〕対象は24名の脳血管障害片麻痺患者.介入期間は10日間で,評価は介入前,介入後の2回実施した.R-AFO群は,通常の理学療法練習60分と,R-AFOを使用した起立や歩行練習を20分の計80分間,非実施群は,通常の理学療法練習を80分間行った.〔結果〕通常群よりもR-AFO群で有意に効果が認められた項目は,歩行速度,麻痺側片脚支持時間,片脚支持時間の左右対称性割合,機能的自立度評価法(FIM)であった.〔結語〕R-AFO装着下での麻痺側に荷重を促す歩行訓練を反復して行ったことで,麻痺側片脚支持時間の割合の増大による,歩行左右対称性の改善効果を有する可能性を示唆した.
著者
山崎 潔 鈴木 一幸 佐藤 公彦 大内 健 吉成 仁 磯崎 一太 中舘 一郎 班目 健夫 吉田 俊巳 柏原 紀文 佐藤 俊一 村上 晶彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.724-729, 1991-07-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
9 6

漢方薬が原因と推定された劇症肝炎の1例を経験した.症例は62歳男性.痔核治療のため漢方薬(金鵄丸)の服用を開始したところ,6週間後に倦怠感と尿濃染が出現した.服用中止により一旦症状の消失をみたが,服薬再開後5週間で上記症状が再出現,黄疸の出現をみ入院となった.凝固能低下が著明で(PT 28%, HPT 19%),種々の治療にもかかわらず,4週間後多臓器不全の状態で死亡した.剖検肝は495gと萎縮著明で,肝組織像は広範性肝壊死を示した.金鵄丸による薬剤性肝炎は本例を含め9例が報告されている.その特徴は,金鵄丸が原因との認識が遅れたため反復服用により肝炎の繰り返しをみる例が多いこと,発疹,好酸球増多がみられないことであった.本例は,漢方薬により劇症肝炎を来した初めての報告である.漢方薬の使用が増加しているおり,漢方薬によっても本例のごとき重症肝障害が惹起されうることに注意すべきである.