著者
高松 薫 佐藤 芳弘 宮坂 雅昭 高森 秀蔵
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.81-88, 1989-06-01 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
4 2

The level and type of anaerobic power for forward and back players of rugby football were investigated. Subjects were thirty-five college rugby football players and sixteen college male sprinters and throwers. Peak frequency of revolution and peak power during 7-s pedalling were measured at torques of 3.0, 4.5, 6.0, 7.5, 9.0 kgm. The level of anaerobic power was determined by the maximum peak power and its relative value to body weight. The type of anaerobic power was determined by the coefficients of linear equation representing relationship between peak frequency of revolution and torque.Results were as follows; 1) Maximum anaerobic power of forward players was larger than that of back players, but the relative value to body weight was smaller. 2) Maximum anaerobic power and the relative value to body weight for forward or back players of varsity team were larger than those of the farm team. 3) Maximum anaerobic power and the relative value to body weight of foward players were smaller than those of the throwers. The maximum anaerobic power relative to body weight of back players was smaller than that of the sprinters, but no difference in maximum anaerobic power. 4) Foward players were characterized as strength type because they exerted higher level of anaerobic power in the larger torques. On the other hand, back players were characterized as speed type because they were superior in the smaller torques. 5) Rugby football players were characterized as speed type in comparison with the throwers, but as strength type compared with the sprinters.
著者
佐藤 友紀 飯田 有輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1373, 2011

【目的】<BR> 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は息切れを主症状とし,運動耐容能の低下やADLの低下を引き起こすとされる。COPDの治療および管理には薬物療法と非薬物療法があり,薬物療法の中心は気管支拡張薬で吸入による投与が勧められている。非薬物療法には呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)が行われ,運動耐容能やADLの改善などを目的として取り組んでいる。呼吸リハは10~12週間に集中的に行われ多数の改善報告があるが,その後の呼吸リハは維持的な目的で実施されることが多く改善報告は少ない。<BR> 一方,息切れの要因には動的肺過膨張があり,労作時における最大吸気量(IC)の減少が関連するとされる。ICの改善にはいかに呼気気流制限を軽減させるかが重要である。薬物療法と運動療法の併用により効果的であるとの報告もあることより,薬物療法は大切な役割をもつ。しかし維持期においての薬物療法は,吸入薬の投与期間も長期となり吸入手技は自己流になりやすく薬物効果が低下するとの報告や,70%の患者で正しく吸入できていないなどの報告もあり,維持期に対する適切な吸入指導はICの改善が期待できる。<BR> 以上より,本研究では呼吸リハの患者教育の一環として吸入指導を行い,維持期における包括的な呼吸リハビリテーションが息切れならびにICに及ぼす影響について検討することを目的とした。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は当院にて定期的に外来呼吸リハ通院をしている患者10名(平均年齢71.9±7.1歳,予測1秒量1.15±0.58,全例男性)とした。平成21年10月より薬物療法の重要性や吸入手技についての吸入指導を導入し,3ヶ月間の吸入指導管理を行った。対象者には3ヶ月間毎日吸入日誌を記載させ,呼吸リハ時に吸入日誌の確認を行うこととした。呼吸リハプログラムは週1回,呼吸筋ストレッチ,呼吸筋トレーニング,自転車エルゴメータ,下肢筋力トレーニングとした。評価は吸入管理前後に行い,測定項目として6分間歩行試験(6MWT),筋力,千住らのADL評価,肺機能検査を行った。6MWTでは歩行距離(6MD)と終了時の主観的息切れの指標としてBorg指数を測定した。筋力は膝伸展筋力(ピークトルク値),握力(平均値),最大吸気圧(MIP),最大呼気圧(MEP)を測定した。肺機能検査は肺活量(VC)とICを測定した。統計処理は6MD,筋力,肺機能についてはPaired t-test,Borg指数,ADLスコアについてはWilcoxonを用い有意水準は危険率5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は当院倫理委員会の了承を受け,十分な説明を行い書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR> 吸入指導により薬物療法に対する理解が深まり,適切な吸入手技が行われるようになった。吸入管理前後でrest ICは平均1.77±0.47Lから1.90±0.47L(p<0.01),MIPは73.7±11.1cmH2Oから82.1±12.3cmH2O(p<0.01),ADLスコア87.2±16.7点から88.6±15.6点(p<0.05)と有意な改善を認めた。6MDは415.4±108.2mから425.4±106.0m(p=0.071),Borg指数は5.8±2.3から5.2±2.4(p=0.058)と改善傾向がみられた。その他の指標については改善を認めなかった。<BR>【考察】<BR> 吸入指導は手技の改善や薬物効果、副作用などの理解が深まることで適切な薬物効果が期待できる。毎日日誌をつけることや確認することは,アドヒアランスの向上に寄与し維持期の疾病管理として重要と考えられている。本研究においても日誌を用いた吸入管理により薬物効果が適切に得られICの改善につながったと考える。ICの改善は運動耐容能の改善と相関関係があるとの報告もあり,ADLスコアでは有意な改善が認められた。6MWTについては6MD,Borg指数ともに改善傾向がみられた。またMIPにおいてはICの改善が機能的残気量を低下させ,十分な呼出が得られることによりMIPが改善したと考えられる。<BR>本研究より維持期におけるCOPD管理として,在宅での運動習慣化を中心に吸入の必要性が示唆され,栄養管理など含めた包括的な呼吸リハビリテーションが重要であると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> COPDは慢性疾患であり,維持期に対する医療介入は包括的な介入が重要である。本研究より維持期のCOPD管理において適切な吸入は運動療法効果にも影響を与えるため、理学療法士も患者教育の一環として吸入指導について関わるべきであることが示唆された。
著者
斉藤 喬雄 佐藤 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1797-1801, 1993

重症の高血圧による急速な腎機能の低下は,悪性高血圧の症状の一つとして重要である.重症の本態性高血圧でコントロールがきわめて不良なため悪性腎硬化症を呈する場合,全身性進行性硬化症や結節性多発性動脈炎など膠原病に伴う場合,内分泌性あるいは腎性高血圧などの場合でこのような状態が生じることがあるが,さまざまな降圧薬の開発や基礎疾患に対する早期診断や治療により,その頻度は減少しつつある.
著者
太田 伸一郎 橋本 邦久 仲田 祐 佐藤 博俊 斎藤 泰紀 薄田 勝男 菅間 敬治 佐川 元保 佐藤 雅美 永元 則義 今井 督 須田 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.122-130, 1986
被引用文献数
9

自験例13, 222件の気管支造影像で発見された気管支分岐異常71例, 85件について検討した。分岐異常は, 中枢気道に関係する区域支までの異常に限定し, 右B^7の欠如・左B^7の存在・左右Bは分岐異常にいれなかった。分岐異常の出現頻度は0.64%であり, 右上葉の異常が全体の75.3%を占めていた。転位気管支の頻度は過剰気管支の7.2倍であり, 気管気管支が全体の31.8%を占め最も多かった。中支から上葉区域支が分岐していたものが10例あり, そのうち8例は, 残る上葉区域支も気管気管支で異常分岐であった。極めて稀な分岐異常としてdouble right tracheal bronchusの1例を経験した。気管支分岐異常に合併した奇形(ASD, 頸肋, 肋骨欠如)を検討し, これら奇形の発症時期と気管支の発生時期とが符合していたことから, 胎生5週初めから6週末までの子宮内環境が気管支分岐異常の発生誘因になりうると考えられた。
著者
風早 康平 高橋 浩 佐藤 努 高橋 正明 大和田 道子 安原 正也 森川 徳敏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

我々は2003年から阪神地域において,河川,水路等に現れる”赤水”の目視調査および水質調査を行っており,その分布の概要がわかってきたので報告する.”赤水”湧出の特徴として,比較的標高の高い六甲山麓部にも存在し,一部のものは石垣等から染み出している.これらは,ほぼすべて重炭酸型であり,pHが6-7の弱酸性のものが多くCO2が溶解していることを示唆する.”赤水”が赤褐色~オレンジ色を呈する理由は,湧き出し口でリモナイト(FeOOH)が沈殿することによる.この鉄は,地下水中にCO2があった場合に,岩石・鉱物が風化することにより地下水に溶解する.そして,浅所で酸化することにより赤褐色からオレンジ色を生じる.阪神地域では,地下から断層を通じて上昇する有馬型熱水が浅所でCO2を遊離し,気泡となったCO2が上昇し,浅層地下水を炭酸化すると考えられている.したがって,”赤水”の分布域は,有馬型熱水の上昇域に関連していると考えられる.”赤水”の分布が地下に伏在する断層と関連があるかどうか検討をおこなった.その結果,六甲,宝塚,須磨,仮屋沖(延長),芦屋,甲陽,西宮,伊丹の各断層と昆陽池陥没帯に関連づけられる”赤水”が存在していることがわかった.また,断層が存在していても赤水がほぼ見られない地域もあった.講演では,”赤水”調査の概要,産状を紹介し,詳細な分布・特徴について議論したい.
著者
佐藤 教男
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.183-191, 1995-03-15 (Released:2009-11-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

The electrode potential, which plays an important role in corrosion, may be defined by either the electronic or the ionic energy level in the electrode. The electronic electrode potential corresponds to the real potential of electron, i.e. the real free energy for electron transfer from the point at the outer potential of aqueous solution to the point inside the electrode, which is found to be a linear function of the electrode interfacial potential difference. Under equilibrium condition, the electronic potential represents the Fremi level of equilibrium redox electron in the solution for electron transfer electrodes, and the hypothetical Fermi level associated with ion transfer equilibrium for ion transfer electrodes. With localized corrosion, the corrosion potential at the cathode site is more positive than that at the anode site. This corrosion potential difference does not correspond to any local difference in the Fermi level inside the corroding metal, but to the difference in the electrode interfacial potential difference at the two sites.
著者
佐藤 あゆ子
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2002

我々の身体は筒状の構造物あるいはその集合体に例えることができる。その外側面は皮膚に、その内側面は粘膜によって覆われており、粘膜の表面積は皮膚の約200倍に達する。この粘膜は呼吸、食餌、排泄、生殖などの重要な生命維持活動において、多様でおびただしい異物をその表面から体内に取り込んでいる。腸管粘膜は食物などの生命維持に必要なもののみならず、生体にとって不都合な病原微生物なども多量に取り込んでいる。それらを識別し、必要なものは取り込み、生体にとって害となるものは排除するという腸管粘膜組織の免疫組織としての特性が明らかになるとともに、全身免疫系とは異なる独特な免疫機構を有しているということが明確となった。// 腸管粘膜の免疫機構の中で重要な役割を果たしているのが免疫グロブリンA(IgA)であり、腸管粘膜に侵入する細菌に対して感染阻止に働く。IgA産生応答を始めとする腸管特異的免疫応答の誘導には小腸に存在するリンパ組織であるパイエル板がその役割の一端を担っていると考えられており、パイエル板に存在する免疫担当細胞の解析はその機構を解明する上で非常に重要である。パイエル板の表層に存在するM細胞を介してパイエル板内に抗原が積極的に取り込まれると、樹状細胞などの抗原提示細胞によってCD4+T細胞に提示され、免疫応答の誘導が開始される。パイエル板のドーム領域にはCD4+T細胞を活性化するのに必要なMHC class IIを発現する樹状細胞、マクロファージ、B細胞などの抗原提示細胞が存在している。また、胚中心には高い割合でIgA産生前駆B細胞が認められ、その周辺にはCD4+T細胞の多く存在するT細胞領域がある。このようにパイエル板にはIgA抗体産生に必要な免疫担当細胞が含まれており、腸管におけるIgA抗体誘導において重要な役割を担っていることが示唆されている。// 一方、樹状細胞は、未感作CD4+T細胞を活性化しうる唯一の抗原提示細胞であると言われている。したがってパイエル板樹状細胞の機能を調べることは、IgA産生応答をはじめとする腸管特異的免疫応答の誘導機構の解明において重要である。実際、パイエル板樹状細胞は脾臓樹状細胞と比較してIgA産生誘導能が高いことが、in vitroの実験により示されている。また、IgAなど抗体の産生にはサイトカインの介助が重要である。IgA産生は、まず、B細胞が形質転換成長因子(TGF)-βおよびCD40からの刺激を受け、その後、インターロイキン(IL)-5あるいはIL-6の効果によりIgA産生細胞に分化することにより誘導される。しかしながら、これらのサイトカイン分泌誘導機構を始めとするパイエル板樹状細胞による免疫応答誘導機構についてほとんど明らかとなっておらず、どのような機構でパイエル板樹状細胞がIgA産生応答など腸管特異的な免疫応答の誘導に関与しているのか不明であった。// 本研究では、パイエル板樹状細胞に焦点を当て、その独自性を調べるために、パイエル板樹状細胞の細胞表面分子の発現、T細胞応答誘導能について代表的な末梢リンパ組織である脾臓と比較した。また、パイエル板樹状細胞のサイトカイン産生能、特にIgA産生細胞の成熟に重要なサイトカインであるIL-6について解析を行った。//第一章 樹状細胞分離方法確立および細胞表面分子発現解析// 組織の免疫細胞における樹状細胞の頻度は1%前後と非常に低いため、最近まで組織特有の樹状細胞は分離することが困難であることから詳細な機能の解析は進んでいなかった。しかし、本研究において従来用いられてきた分離方法を再検討した結果、MACS分離カラムおよびセルソーターを用いて分離することにより、樹状細胞を97-100%の高純度で分離することに成功した。また、樹状細胞には骨髄系樹状細胞であるCD11b+樹状細胞とリンパ球系樹状細胞であるCD8α+樹状細胞というそれぞれ異なる分化経路を持つ樹状細胞群が知られているが、同様の方法でそれぞれについても分離することができた。// 続いて、パイエル板樹状細胞と脾臓樹状細胞の細胞表面分子の発現をフローサイトメトリーを用いて解析した。その結果、パイエル板樹状細胞は脾臓樹状細胞と比較してMHC class II, CD86, CD40分子の発現が高いこと、また、樹状細胞の成熟マーカーであるDEC-205を高発現している細胞の割合が高いことが明らかとなった。この結果から、パイエル板樹状細胞が脾臓樹状細胞より成熟の度合いが高いことが示唆された。//第二章 パイエル板樹状細胞の誘導するT細胞応答// まず、パイエル板樹状細胞により誘導される抗原特異的CD4+T細胞の増殖応答を脾臓樹状細胞と比較した。CD4+T細胞はオバルブミン(OVA)特異的T細胞のT細胞抗原レセプター(TCR)を導入したトランスジェニック(tg)マウス(7-3-7 TCR tgマウス)の脾臓細胞から調製した。このtgマウスはOVA323-339残基特異的なTCRを発現しているT細胞の頻度が高いため、このマウスを用いることによりOVA特異的な未感作T細胞の調製が容易となる。このCD4+T細胞をパイエル板および脾臓樹状細胞を抗原提示細胞としてOVAで刺激した。その結果、パイエル板樹状細胞の場合は、脾臓樹状細胞より強いT細胞増殖応答を示し、第一章で示されたようにMHC class IIの発現が高く抗原提示能が高いためにこのような結果になったと考えられた。// ある種の細菌感染によって、パイエル板においてインターフェロン(IFN)-γの産生が誘導され、病原細菌の排除機構の誘導に働くことが知られている。そこで次に、パイエル板樹状細胞によるtgマウス由来の脾臓未感作CD4+T細胞のサイトカイン産生誘導能を解析した結果、脾臓樹状細胞と比較して、高いIFN-γ, IL-2, IL-6産生誘導が認められ、IL-4産生誘導は認められなかった。さらに脾臓のCD11b+樹状細胞およびCD8α+樹状細胞を分離し同様な実験を行った結果、両細胞群の間でIFN-γおよびIL-4の産生誘導能に差は認められなかった。一方、パイエル板CD11b+樹状細胞を抗原提示細胞とした場合は脾臓樹状細胞とは異なり、高いIL-2, IL-6, IFN-γ産生誘導が認められ、IL-4の産生は認められなかったのに対して、パイエル板CD8α+樹状細胞を用いた場合にはIFN-γ産生は誘導されず、IL-4の産生が誘導された。ここでさらに、パイエル板および脾臓の各樹状細胞群を抗CD40抗体を用いて刺激して培養し、IFN-γ産生誘導に関与するサイトカインであるIL-12 p40の産生量を調べたところ、パイエル板各樹状細胞群による産生量に差は認められなかった。また、第一章においてパイエル板樹状細胞は脾臓樹状細胞よりIL-4産生誘導を増強すると言われているCD86の発現が高いことが示されたが、パイエル板樹状細胞はIL-4の産生を誘導せず、IFN-γ産生を誘導した。// したがって、パイエル板CD11b+樹状細胞を抗原提示細胞とした場合、IFN-γ産生応答、パイエル板CD8α+樹状細胞を用いた場合にはIL-4の産生応答の誘導がそれぞれ認められ、パイエル板樹状細胞には細胞群により明確なT細胞応答誘導能の違いがあることが明らかになった。そして、パイエル板CD11b+樹状細胞を抗原提示細胞とした場合にIFN-γ産生が誘導され、その誘導にはIL-12以外のサイトカインまたはCD86以外の副刺激因子が関与していることが示唆された。//第三章 パイエル板樹状細胞のIL-6産生// 一方、第二章でパイエル板樹状細胞と7-3-7 TCRtgマウス由来の脾臓未感作CD4+T細胞をOVA存在下で培養すると高いIL-6の産生が認められたが、そのIL-6がパイエル板樹状細胞の作用によりT細胞が分泌しているものなのか、それとも樹状細胞自体が分泌しているものなのかを調べるため、樹状細胞のみを抗CD40抗体を用いて刺激して培養し、IL-6産生量を調べたところ、パイエル板樹状細胞は脾臓樹状細胞と比較してIL-6を高産生していることが明らかとなった。このことはmRNAの発現レベルでも確認されており、IL-6遺伝子発現に関与する転写因子がパイエル板樹状細胞の方がより強く活性化されていることが推察された。// 次に、パイエル板樹状細胞のIgA産生誘導能の解析を行った。脾臓由来のIgD+B細胞と未感作CD4+T細胞をそれぞれ精製し、樹状細胞存在下または非存在下でOVAを添加して培養した。その結果、樹状細胞非存在下ではIgAの産生が他のクラスの抗体と比較して著しく低く、樹状細胞存在下ではIgAの産生が見られたことから、IgAの産生誘導には樹状細胞が重要であることが、高純度に精製された樹状細胞を用いた実験系では初めて示された。さらに、パイエル板樹状細胞を用いた場合は脾臓樹状細胞を用いた場合と比較してIgA産生量が高いことが示された。そして、B細胞がIgA産生前駆細胞にクラススイッチするのに必要なサイトカインであるTGF-βを添加するとIgA産生量は増加し、さらに抗IL-6抗体を添加した場合は著しく減少した。この結果から、パイエル板樹状細胞はIL-6産生することにより、IgA産生応答に重要な役割を担っていることが示された。// 続いてパイエル板からCD11b+樹状細胞およびCD8α+樹状細胞を分離し、抗CD40抗体を用いて刺激して培養した結果、パイエル板CD11b+樹状細胞がCD8α+樹状細胞と比較してIL-6を高産生していることが示され、CD11b+樹状細胞がIgA産生応答に重要であることが示唆された。// 以上より、パイエル板樹状細胞は脾臓樹状細胞と比較して高いT細胞活性化能を有し、全身免疫系の主要な器官である脾臓の樹状細胞とは異なるサイトカイン産生応答を誘導することが示された。また、パイエル板樹状細胞はIgA産生細胞の分化・成熟において重要なサイトカインであるIL-6の産生能が高いことが本研究により初めて示され、IL-6を介してIgA産生応答において重要な役割を有していることが示された。得られた結果は、パイエル板特有のサイトカイン分泌応答機構および腸管特異的免疫応答の一つであるIgA産生応答誘導機構の解明における重要な知見である。
著者
藤本 知之 杉浦 忠男 長屋 岳志 佐藤哲大 湊 小太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.99, pp.63-70, 2006-09-15
参考文献数
6

これまでに我々はガラス基板上にDNAを伸張固定してGC特異的に蛍光染色し,エバネッセント顕微鏡を用いてDNAを一分子イメージングすることでDNAのGCコンテントの一次元分布を計測できた.しかしガラス基板上に固定されたDNAの単位長さ当たりの塩基数が異なるため,データベースの予測と必ずしも一致しない.そこで,塩基数の違いを較正する新たな解析モデルとその適用結果について報告する.We have analyzed single molecular DNA with single molecular imaging by evanescent field microscope and identified the DNA by comparing measured results of one dimensional distribution of local GC content to estimation from genome database. The number of base pair within the unit length of the DNA fixed on the glass substrates are different from estimation, however, measured results have not matched with genome database well. We report on the new analytic-model and the new application result considering calibration of the difference of the base pair number.
著者
杉浦 忠男 長屋 岳志 佐藤哲大 湊 小太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.13, pp.25-32, 2006-02-09
参考文献数
4
被引用文献数
1

ゲノムDNA上ではGCコンテントの分布は一様ではない。このことを利用すれば一分子イメージングしたDNAを識別できると考えられる。そこで我々はガラス基板上にDNAを伸張固定してGC特異的に蛍光染色し、エバネッセント顕微鏡を用いてDNAを一分子イメージングすることでDNAのGCコンテントの一次元分布を計測でき、その結果がゲノムデータベースからの予測とよく一致することを確認した。GC content on genome DNA is not uniform. By use of this feature we can analyze and identify single molecular DNA with one-dimensional distribution of local GC content. We propose a method to analyze single molecular DNA with single molecular imaging by evanescent field microscope and to identify the DNA by comparing measured results of one dimensional distribution of local GC content to estimation from genome database. We have performed the method and have confirmed good correspondence with each other.
著者
佐藤 政博
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.30-32, 2004-01-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
著者
酒井 保良 吉田 正勝 難波 大二 佐藤雅明 森 隆彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.711-718, 1983-09-15

コンピュータハードウェアの信頼度の向上 障害診断時に必要となる保守知識の増大と多様化等に伴い 保守戦力の集中化と広域保守の必要性が高まってきている.本論文では 保守上の問題点を解決するためのハードウェア遠隔保守方式に関し 遠隔保守システム構成法 リモートアクセス機構 障害現象から過去の障害事例を検索する障害情報集中化機構について提案する.また 試作した遠隔保守システムを用いた実験結果から 障害の95%に対して不良個所を部品取替え単位のレベルで遠隔から指摘可能であることを示している.
著者
横田 和子 中村 隆俊 佐藤 武郎 樋口 格 山下 継史 渡邊 昌彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.615-619, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
11

症例は48歳,男性.人間ドックの腹部超音波検査にて,右腎腹側に6cm大の腫瘤を認め,精査目的に当院紹介となった.腹部造影CTでは,右腹横筋に接して6cm大の境界明瞭で内部均一な腫瘤性病変を認め,腹部MRIでは,T1脂肪抑制画像で内部均一な低信号を認めた.注腸造影検査では,横行結腸肝弯曲中心に壁外性の圧排像を認めた.以上より腹横筋脂肪腫が疑われ,悪性腫瘍が否定できないため手術の方針となった.画像上,腫瘍は腹腔内に突出していたため腹腔鏡下手術の方針とした.右肋骨弓下に突出する腫瘍を認め,周囲臓器への浸潤はなく腹膜および腹膜前脂肪織・腹横筋の一部とともに合併切除した.病理組織学的所見は,被膜を有し異型に乏しい脂肪組織の増生を認め,辺縁に全周性に筋組織が付着するintermuscular lipomaと診断した.腹壁由来脂肪腫を腹腔鏡下に切除しえた症例は非常に稀であるため,文献的考察を加えて報告する.
著者
佐藤 新一
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン = Nikkei personal computing (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.772, pp.56-59, 2017-06-26

最終回動画共有サイトで有名な「YouTube」は「ユーチューバー」という新たな職業を生み出すほどの人気だが、プライベートな動画を共有して家族や知人と楽しむといった使い方もできる。詳しく見ていこう。 動画共有サイトとして人気が高い「YouTube」は、今やテレ…
著者
小熊 芳実 佐藤 卓也 佐藤 厚 今村 徹
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.248-259, 2016-09-25 (Released:2016-11-04)
参考文献数
24

【背景】疫学研究によって,頭部外傷はアルツハイマー病(AD)の危険因子であることが示されてきたが,頭部外傷の既往を有する進行性の認知症高齢者の臨床像はADとして非典型的である場合が少なくない.【目的】頭部外傷の既往と緩徐進行性の認知機能障害を有する患者の臨床的特徴を検討する.【対象】認知症専門外来で精査を完了した787症例の臨床データベースから,以下の条件をすべて満たす6症例を抽出した.①重大な外傷の既往が特定されている,②その際に頭部外傷があったことを示す所見または診断がある,③頭部外傷後,周囲が認知機能や精神・人格に関する後遺症に気づいていない,④頭部外傷後,家庭生活や職業における役割が保たれている,⑤頭部外傷よりも明らかに後に緩徐に発症し進行する認知機能障害が存在する,⑥頭部画像検査上での陳旧性の外傷性病変がみられる.【方法】6症例の認知機能障害と行動心理学的症候について診療録を元に回顧的に分析した.【結果】6症例中3症例で脱抑制,感情・情動の変化や常同行動などが見られ,前頭側頭型認知症(FTD)の臨床診断基準の中核的診断基準と支持的診断的特徴に一致する項目が多かった.しかし,近時記憶障害で発症し,構成障害や道順障害もみられており,原因疾患はADであると考えられた.他の3症例は高齢発症型のADの臨床像であった.【結果】頭部外傷の好発部位は前頭葉底面と側頭葉の前方から外側底面であるので,頭部外傷による脳予備能の減少はこれらの部位でより強いと考えられる.頭部外傷によって前頭葉症状の責任病巣となる部位の脳予備能が減少し,その後に発症したADの比較的初期から,近時記憶障害とともにFTD様の前頭葉症状が出現した可能性が考えられる.
著者
萩原 正 堀場 欣紀 佐々 雅祥 中野 禅 清水 透 松崎 邦男 佐藤 直子
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.223-226, 2014
被引用文献数
2

Aspect Inc. and AIST (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology), as a member of ALPROT, which stands for Advanced Laser and Process Technology Research Association, have developed two types of unprecedented Selective Laser Melting platform with a high vacuum built process chamber and a new developed QCW (quasi continuous wave) laser system in the national project, which started from 2010 and conducted by NEDO (New Energy and Industrial Technology Development Organization). In this report, the development status of the Selective Laser Melting platform is mainly introduced.