著者
原田 篤史 漁田 武雄 水野 忠則 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1997-2013, 2005-08-15
被引用文献数
23

現行のユーザ認証方式は,汎用性と利便性の高さから文字をベースとしたパスワード方式が主流となっているが,人間にとって長くランダムな文字列を記憶することは容易ではなく,新たなパスワードを設定するたびにユーザは記憶に関する大きな負担を要求される.そのため,人間の画像認識能力の高さを利用して認証情報の記憶の負荷を低減させる画像認証方式が注目されている.しかし,多くの画像認証方式は毎回の認証時にパスワード画像がディスプレイ上に表示されるため,認証時の覗き見攻撃に対して脆弱であった.そこで本論文では,有意味なオリジナル画像に対してモザイク化をはじめとする不鮮明化処理を施すことで一見して無意味な画像を作成し,それをパスワード画像として用いることで覗き見攻撃への耐性を有する画像認証方式を提案する.正規ユーザは,パスワード画像登録時に不鮮明化処理を行う前のオリジナル画像を見ることができるため,不鮮明化されたパスワード画像をオリジナル画像の持つ意味と結び付けて記憶することができる.そのため,認証試行時には画面上に表示される自身の不鮮明なパスワード画像を容易に再認識することが可能となり,記憶の負荷は小さくなる.一方,オリジナル画像を見ることのできない他のユーザが当該ユーザの認証行為を覗き見たとしても,意味を認識できない不鮮明なパスワード画像を記憶にとどめておくことは困難である.また,他者が正規ユーザからパスワード画像の意味を言葉で教えられたとしても,不鮮明なパスワード画像を教えられた意味どおりに認識することは困難であるため,本方式は正規ユーザからのパスワード漏洩に対してもあるレベルの耐性を有する.Although password-based systems are now widely used in all kinds of authentication, they have a problem that humans have a limitation to remember secure passwords (long and random strings). Thus, image-based user authentication systems using "pass-images" instead of passwords have been studied for reducing the burden of memorizing passwords. However, on many image-based systems, it is needed to present a user's pass-image on their display at each authentication trial, so they can be vulnerable against an observing attack. In this paper, we propose a user authentication system using "unclear images" as pass-images, in which only the legitimate users are allowed to see the original (picture) images corresponding to their unclear pass-images in the enroll phase. The legitimate users can easily remember their unclear pass-images using the original images as clues, while illegal users without the clues have difficulties to find out and remember other user's unclear pass-images. In addition, it is expected to be difficult for even a legitimate user to leak his/her unclear pass-image precisely to anyone with words via e-mail or telephone.
著者
原田 俊亮 田中 正晴
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1488, pp.13-14, 2015-11-09

エフエム東京は世界最大級のオーディオネットワーク「TuneIn」と連携し、外国人向け多言語情報配信チャンネル「TOKYO FM WORLD」を2015年10月5日に本格スタートした。TOKYO FM WORLDのオフィシャルホームページを開設し、月間6000万人以上のアクティブリスナーを抱え…
著者
本廣 孝 河野 信晴 富永 薫 石本 耕治 原田 素彦 中島 哲也 今井 昌一 西山 亨
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.296-305, 1975-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9

Urinary tract infection in children is a world-wide problem and some management is required in correct bacteriological diagnosis. Recently, dip-slide culture method is conveniently used in Europe for systematic screening of bacteriuria and its reliability for detection of bacteriuria has been reported by many investigators.The authors tested the accuracy of a dip-slide system “Uromedium” developed in our country by comparing the results with that from the pour-plate method.In 57 to 100 percent of 545 cases, results obtained from Uromedium were accorded with that from the pour-plate method, and the specificity of Uromedium was estimated 73 percent. Bacterial numbers in urine specimens determined by both method ranged below 102 to over 106 per ml and several species of gram-positive cocci, gram-negative bacilli, and fungus were isolated. For all the organisms linear regressive lines were obtained between bacterial numbers determined by both methods and the coefficients (γ) were 0.82 to 0.98. These findings suggest that “Uromedium” is a satisfactory method for systematic screening of bacteriuria and diagnosis of urinary tract infection.
著者
原田 篤史 漁田 武雄 水野 忠則 西垣 正勝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1997-2013, 2005-08-15

現行のユーザ認証方式は,汎用性と利便性の高さから文字をベースとしたパスワード方式が主流となっているが,人間にとって長くランダムな文字列を記憶することは容易ではなく,新たなパスワードを設定するたびにユーザは記憶に関する大きな負担を要求される.そのため,人間の画像認識能力の高さを利用して認証情報の記憶の負荷を低減させる画像認証方式が注目されている.しかし,多くの画像認証方式は毎回の認証時にパスワード画像がディスプレイ上に表示されるため,認証時の覗き見攻撃に対して脆弱であった.そこで本論文では,有意味なオリジナル画像に対してモザイク化をはじめとする不鮮明化処理を施すことで一見して無意味な画像を作成し,それをパスワード画像として用いることで覗き見攻撃への耐性を有する画像認証方式を提案する.正規ユーザは,パスワード画像登録時に不鮮明化処理を行う前のオリジナル画像を見ることができるため,不鮮明化されたパスワード画像をオリジナル画像の持つ意味と結び付けて記憶することができる.そのため,認証試行時には画面上に表示される自身の不鮮明なパスワード画像を容易に再認識することが可能となり,記憶の負荷は小さくなる.一方,オリジナル画像を見ることのできない他のユーザが当該ユーザの認証行為を覗き見たとしても,意味を認識できない不鮮明なパスワード画像を記憶にとどめておくことは困難である.また,他者が正規ユーザからパスワード画像の意味を言葉で教えられたとしても,不鮮明なパスワード画像を教えられた意味どおりに認識することは困難であるため,本方式は正規ユーザからのパスワード漏洩に対してもあるレベルの耐性を有する.
著者
今村 光章 石川 聡子 井上 有一 塩川 哲雄 原田 智代
出版者
日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.22-30, 2003-09-30
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
佐々木 修 釘宮 敏定 田所 正人 田浦 幸一 新里 健 草場 照代 松隈 玄一郎 船越 衛一 河野 茂 原田 孝司 宮崎 正信 宮原 嘉之 大園 恵幸 錦戸 雅春 松屋 福蔵 齊藤 泰 高木 正剛
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-43, 1998
被引用文献数
1

近年, 透析患者の増加に伴い, 動脈硬化性疾患の合併は大きな問題となっている. 腹部大動脈瘤 (abdominal aortic aneurysm, AAA) や閉塞性動脈硬化症 (arteriosclerosis obliterans, ASO) は, その治療として外科手術を要することがあり, 透析患者の生命予後, quality of lifeの観点からも重要な疾患である. 今回我々は, 当院における透析患者のAAA4例およびASO3例の血行再建術症例の臨床的検討を行った.<br>AAAの症例は年齢45-61歳で, 全例高血圧を伴い, 透析導入後6か月-6年であった. 2症例が腹痛ないし背部痛を訴えたが, 2症例は腹部腫瘤触知が発見の契機であった. 4例ともinfrarenal typeで, 3例にY graft, 1例にstraight graft置換を施行し, 全例とも予後は良好である.<br>3例のASOは年齢51-67歳で, 2例で高血圧を伴い, 発症は透析導入後5年4か月-19年3か月とAAAに比し長期間の症例が多かった. いずれの症例も, 下肢痛・間歇性跛行・足趾壊死などの症状, 所見を認めた. 2例は左側のiliac~popliteal arteryの閉塞で, 自己大伏在静脈によるfemoro-popliteal bypass術を施行, 他の1例は右側のcommon~external iliac arteryの閉塞で, femoro-femoral cross over bypass術を2回施行した. 術後1例は予後良好であるが, 2例はASO以外の死因で死亡した.<br>近年, 手術手技の向上および周術期の透析管理の進歩により, 透析患者に対し安全に手術が施行し得るようになってきたが, ASOの症例は, 必ずしも予後が良好でない場合もあり, 治療法選択, 手術時期に対するさらなる検討が必要と思われた.
著者
原田 直哉 中島 容子 中村 徹 橋本 平嗣 林 道治 堀江 清繁 赤崎 正佳 小林 浩 井上 芳樹 高井 一郎 潮田 悦男 大井 豪一 小畑 孝四郎 喜多 恒和 下里 直行
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-10, 2013

妊婦健康診査(以下,健診)をほとんど受診することなく分娩に至る妊婦健診未受診妊婦(以下,未受診妊婦)に関する既報では多くが施設単位であるため,奈良県全体での実態を把握するためのアンケート調査を実施した.未受診妊婦の定義は,(1)全妊娠経過を通じての産婦人科受診回数が3回以下,または(2)最終受診日から3カ月以上の受診がない妊婦,のいずれかに該当する場合とした.県内のすべての分娩施設に対し,平成22年1月からの1年間の分娩数と,未受診妊婦があれば個別に母児の状況を調査した.年間11,168例の総分娩数中の11例(0.10%)の未受診妊婦を認めた.初産婦は4例(36.4%)で,5回あるいは7回と多産の経産婦もいた.未入籍は9例(81.8%),妊娠のパートナーと音信不通になっている者が5例(45.6%)いた.重篤な合併症を認めた母体が3例(27.3%),集中治療室に収容された新生児が3例(27.3%)であった.産褥健診を受診しなかった1例(9.1%)は,新生児の1カ月健診も受診しなかった.未受診を防ぐことは,母児の健康を確保するだけでなく,周産期母子医療センターへの患者集中を防ぎ,周産期の医療資源の有効利用にもつながるため,社会全体でその解消に取り組む必要がある.また未受診であった妊婦に対しては,虐待のハイリスクグループと考え,その後を通常の妊婦と異なる個別の対応を行うことにより,虐待を防止することができるかもしれない.〔産婦の進歩65(1):1-10,2013(平成25年2月)〕
著者
パーカー ジョセフ ドン 身内 賢太朗 水本 哲矢 西村 広展 奥 隆之 澤野 達哉 篠原 武尚 鈴木 淳市 高田 淳史 谷森 達 上野 一樹 原田 正英 池野 正弘 田中 真伸 内田 智久 服部 香里 岩城 智 株木 重人 岸本 祐二 窪 秀利 黒澤 俊介 松岡 佳大
出版者
日本中性子科学会
雑誌
波紋 (ISSN:1349046X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.218-222, 2013

<p>We have developed a prototype time-resolved neutron imaging detector employing a micro-pattern gaseous detector known as the micro-pixel chamber (μPIC) coupled with a field-programmable-gate-array-based data acquisition system. Our detector system combines 100μm-level spatial and sub-μs time resolutions with a low gamma sensitivity of less than 10<sup>-12</sup> and high data rates, making it well suited for applications in neutron radiography at high-intensity, pulsed neutron sources. In the present paper, we introduce the detector system and present several test measurements performed at NOBORU (BL10), J-PARC to demonstrate the capabilities of our prototype. We also discuss future improvements to the spatial resolution and rate performance.</p>
著者
深井 康子 守田 律子 原田 澄子 稗苗 智恵子 中根 一恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】富山県に伝承されている家庭料理のなかで、主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】平成26~29年度に県内の6地区(朝日町、黒部市、滑川市、富山市、射水市、氷見市)で60歳代~70歳代のとやま食の 匠・伝承の匠の認定者及び食生活改善普及員の女性6名を対象に、昭和30年~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行った。調査した料理から主菜に分類されるものを抽出した。また富山県の食文化関連の書籍や文献等を参考に、上記以外の主菜を検索し、主菜の特徴をまとめた。<br>【結果】富山県の主菜は、四季を通じて食べられる豊富な魚料理が特徴である。富山湾は、温暖な対馬海流と立山連峰からの伏流水が流れ込むため、水温が1~2度と低く、海洋深層水が層をなしている。海底には魚の餌となるプランクトンが豊富にあるため、魚種が豊富である。3月~5月が旬の滑川漁港で水揚げされる「ホタルイカ」は刺身、酢味噌和えにした。4月から11月には新湊漁港で獲れる「白えび」は干したり、から揚げや大門素麺のだしのつゆに用いた。かき揚げで食べるようになったのは20年ほど前からである。通年漁獲される「バイガイ」は旨煮にして、日常や正月に食べた。県内全域では魚の保存と昆布のうま味を生かした昆布じめを作った。昆布に魚を挟んだ独特の昆布料理で先人の知恵により受け継がれてきた。県境に近い宮崎海岸では「すけそう鱈」でたら汁にした。「真鱈」は昆布じめにしたあと、味付けした真子を和えて子付けにして日常や正月に食した。鱈は干し鱈として長期保存し、棒鱈の甘煮にした。氷見漁港で獲れる「ぶり」は刺身、ぶり大根にした。日常によく食べる「いわし」は酢を入れて醤油で煮たり、すり潰してすりみにして味噌汁にした。大衆魚の「イカ」は刺身、イカの鉄砲焼き、里芋とイカの煮物にしてよく調理した。
著者
塩田 雄太郎 森 由弘 青山 重男 原田 淳一 瀬崎 達雄 長田 高寿 高橋 清 木村 郁郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.289-293, 1988-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
15

消化器並びに呼吸器症状を呈する19歳白人の膵嚢胞性線維症の1症例を報告する. 患者は生来健康であったが, 19歳より咳嗽, 喀痰, 下痢を繰返すようになった. なお患者の兄はすでに膵嚢胞性線維症と診断されている. 胸部X線写真ではびまん性の小結節状陰影があり, 両側肺野に気管支の走向に一致した線状陰影が認められた. 肺機能検査では軽度の閉塞性換気障害が認められた. 膵外分泌機能の低下があり, 腹部のCTでは膵の萎縮が認められた. 汗のナトリウム, クロールは高値を示した. また成人の膵嚢胞性線維症に多い合併症とされる鼻ポリープ, 耐糖能の低下も認められた. 本邦では本症の報告は少なく, また成人になって症状が出現するのは稀とされているが, 本症例においては全体に症状が軽いためにこのような経過をとった可能性が考えられた.
著者
原田 隆史 大谷 由里子 奥寺 憲穂
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.244, pp.72-75, 2005-01

——2004年を振り返ると、イラク問題に揺れ、大型台風に新潟県中越地震。殺人も増え、今の日本の歪みへの警鐘が一気に吹き出た観があります。原田 私らには考えられないようなことが、今の日本には起こってます。典型が、インターネットでつながった者が集まって、集団自殺。気の毒です。
著者
金本 光一 原田 中裕 古川 宏
出版者
一般社団法人日本医療機器学会
雑誌
医療機器学 (ISSN:18824978)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.396-404, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

This study investigated which alarm sound is easiest to distinguish from the background noise. The experiment measured the perception time of some alarm sounds such as: meaningful verbal alarms, meaningless verbal alarms, pulse sounds and melodic alarms. The intensity of each alarm sound-type was increased stepwise against the level of background noise. It was discovered that the alarm sound could be distinguished when the peak value of the spectrum of the alarm sound was equal to or a little bit larger than the level of the spectrum of the background noise. The sound level required for the different types of alarm sounds to be perceived was investigated. This investigation discovered that the pulse sound and meaningful voice alarm were easy to perceive but general melodic alarms were not easily perceived at the same sound level. It was estimated that a smaller alarm sound could be detected if the characteristics of the alarm sound are designed with the background noise taken into account.
著者
原田 一道 横田 欽一 相馬 光宏 北川 隆 北守 茂 柴田 好 梶 厳 水島 和雄 岡村 毅与志 並木 正義
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.961-967_1, 1981-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
32

胃結核は稀な疾患であるが,われわれは最近の5年間に3例の胃結核を経験した. 第1例は46歳の男性で胃体上部後壁に不整形で,潰瘍底が凹凸不整の大きな潰瘍をみた.内視鏡直視下胃生検による組織像でラングハンス巨細胞と類上皮結節の所見を得,結核による潰瘍性病変と診断した. この病変にストレプトマイシン(SM100mg/ml)3~5mlの局注療法を行い,約3ヵ月後に潰瘍の疲痕をみた.第2例は67歳の男性で,胃前庭部にIIa+IIcの早期胃癌を,また胃体上部前壁に粘膜下腫瘍をみとめた.この腫瘍が術後の組織学的検討で結核性病変と診断し得た.第3例は66歳の女性で噴門直下に不整形の潰瘍性病変を伴う腫瘤があり,内視鏡直視下生検による組織学的所見から結核性病変と診断し,抗結核剤(PAS,KM,INAH)の投与と共にSMの局注療法を試みた.その結果約4ヵ月後に腫瘤はほぼ消失し,潰瘍性病変は瘢痕化した.胃結核が内科的治療で治癒した例は極めて稀で,抗結核剤の局注療法を試みたものは過去にないので報告する.
著者
原 邦夫 森 美穂子 石竹 達也 原田 幸一 魏 長年 大森 昭子 上田 厚
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.97-103, 2007
被引用文献数
2

2002年2月に校舎の改装工事の終わった小学校の教室にただちに入室した小学生女子が化学物質過敏症を呈した。転校後に症状が改善したため,教室内空気質が主な原因とみられた。本研究の目的は,ホルムアルデヒドおよびVOCs濃度の経時変化の特性を明らかにし,学校の改装についての改善策を示すことである。<BR>我々は対象の校舎改装後小学校の教室内のホルムアルデヒドおよびVOCsの気中濃度を2002年の3月から2か月ごとに2年間測定した。アルデヒドは2,4-DNPH捕集-HPLC法,7VOCs成分(日本の厚生労働省が規制している11成分の内のトルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレン,<I>p</I>-ジクロロベンゼン,テトラデカンおよびフタル酸-<I>n</I>-ブチル)はTenaxTA捕集-加熱脱着-GC/MS法を用いた。総VOCs濃度はトルエン濃度換算して求めた。対象の教室の総VOCs濃度は,外気の濃度の数倍であり,教室内にVOCsの発生源があったことを示唆した。また,2年間の結果は物理化学的な性質に応じてホルムアルデヒドおよびVOCs濃度の経時変化は3様に分かれることを示した。すなわち,(1)1年目の夏に最高濃度を示し急激に減衰した物質として,トルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレン,(2)2年目の夏にのみ高濃度を示した物質として,ρ-ジクロロベンゼン,(3)夏に1年目および2年目ともに高濃度を示す二峰性の濃度変化を示した物質として,ホルムアルデヒド,テトラデカン,フタル酸ジ-<I>n</I>-ブチル,に分類された。これらの結果は,塗料に含まれるトルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレンは最初の夏で急速に揮発し,家具や内装材に含まれるホルムアルデヒドおよびフタル酸ブチルは低濃度ではあるが高温多湿の夏に毎年揮発することを示した。以上のことから,我々は学校での改装工事は少なくとも休みの前半に行い,とくに暑い夏に揮発させることを推薦した。