著者
古田 智久
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.1-14, 2002-11-10 (Released:2009-05-29)

In a famous essay entitled 'Two Dogmas of Empiricism', W. V. O. Quine rejected two important doctrines that had been supported by many empiricists. One is the doctrine that a clear distinction can be made between analytic and synthetic statements. The other is the doctrine that every meaningful statement can be reduced to some statement constructed of terms which refer to immediate experience.In this paper, I intend to rehabilitate analyticity, syntheticity and reductionism. First, analyticity is separated from apriority and necessity, and then the reason is given why I regard holism of 'Two Dogmas' as the verificationist one [1]. Next, I survey the views of H. Putnam and J. J. Katz [2]. In the following section, two viewpoints, dynamic and static points of view, are introduced into the arguments in question [3]. On these considerations, I specify the contexts to which the above three notions are applied, although trivial or narrow in the range.
著者
古川 智史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.135-157, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,1990年代以降の広告産業を取り巻く環境の変化の中で,東京における広告産業の組織再編の実態と地理的集積の変容を考察することである.広告関連企業の分布を1980年と2010年で比較した結果,銀座や神田を中心に,依然として都心部5区に集中する傾向が強いものの,グローバル化による外資系広告会社の立地の増加や,渋谷周辺にインターネット広告企業の新たな集積の形成がみられた.このうち,大手広告会社は,2000年以降,従来外部化していた広告制作の垂直統合,積極的な専門広告会社の設立,他企業の買収を進め,グループの競争力を強化している.その結果,都心部にグループ企業の集積が形成されている.広告制作会社は,広告主のニーズに対応するため,Webを中心として業務範囲を広げ,外注先と柔軟な関係を形成する傾向にある.そのため,広告制作会社にとって都心部に立地する利点は大きく,このことが地理的集積の維持に寄与していると考えられる.
著者
田力 正好 安江 健一 柳田 誠 古澤 明 田中 義文 守田 益宗 須貝 俊彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.118-130, 2011-03-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
30
被引用文献数
3 2

岐阜県南東部および愛知県西部を流れる土岐川(庄内川)流域の河成段丘を,空中写真判読によりH1~4面,M1~3面,L1~3面の10段の段丘面に分類した.それらの段丘面のうち,L2面は,構成層中の試料の14C年代値,構成層を覆う土壌層中の指標テフラ(鬼界アカホヤテフラ),段丘面の縦断形と分布形態,段丘構成層の厚さに基づいて,酸素同位体ステージ(MIS)2の堆積段丘面と同定された.M2面は構成層と指標テフラ(阿蘇4テフラ,鬼界葛原テフラ)との関係,構成層およびそれを覆う風成堆積物の赤色風化に基づいて,MIS6の堆積段丘面と同定された.これらのことから,これまでMIS6の堆積段丘の報告がほとんどなかった中部地方南部において,その分布が確認された.M2面とL2面の比高から,土岐川流域の隆起速度は0.11~0.16 mm/yrと求められた.
著者
古関 喜之
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.449-469, 2008-07-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

2002年にWTOに加盟した台湾は, 国際競争力を持っ輸出型産業としての農業の体質強化を図っている. 本稿では, 日本への輸出拡大を図っているマンゴーの重要な生産地域である台南県玉井郷を対象として, 経済のグローバル化に伴って, 台湾のマンゴー栽培がどのような条件のもとで行われているのかを明らかにし, マンゴー輸出の発展の可能性とその課題にっいて検討した. 生産面では, 生産者の高齢化, 後継者不足, 臨時雇用への依存, 市場価格の低迷などの問題を抱えている. また, 流通面では, 価格や労働の面で生産者の利益を守ることができる農会による共同販売が十分な役割を果たしていないことが明らかになった. 農家がマンゴー栽培を継続するためには, 安定した収入が確保できる販路を確立することが必要である. しかし, 現在台湾が最も重視する日本市場との関係をみると, 生産と輸送のコストが高いため, 市場での厳しい価格競争にさらされている. 台湾が日本市場ヘマンゴーの輸出を続け, 発展させていくためには, 日本の輸入業者から求められているトレーサビリティーへの対応と, 安定供給のための保証価格や栽培契約を導入するなどの取組みが必要である. 他国との厳しい競合の中で, 安全性や品質による差別化が不可欠である.
著者
古田 拓也
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.77-91, 2014-03-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
34

The aim of this paper is to present John Lockeʼs arguments in the Two Treatises of Government as a comprehensive response to Robert Filmerʼs vehement criticism of the contract theory. Filmer argues that contract theory neither works in theory nor in practice, and so is, as such, a theory of anarchy. Partly accepting these criticisms, Locke constructs a contract theory such that Filmerʼs attacks lose their theoretical sting, that is, an individualistic contract theory which rejects the stigmatization of anarchy. However, Lockeʼs reconstruction is based on the theological foundations which we cannot reasonably share today. Acknowledgement of this fact, in turn, enables us to appreciate the contemporary significance of both Locke and Filmer.
著者
古郡 規雄 下田 和孝
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.259-265, 2020-10-25

パーソナリティとは,個人の感情,認識,欲望,行動のパターンにおける一貫性と一貫性を説明するために使用される抽象化されたものである.近年,ビッグ・ファイブ理論の一般的普及や,行動遺伝学,神経生物学等の発展を背景にして,パーソナリティに対する関心が高まっている.次元論的人格理論のうち代表的なものとしては,Cloninger による7次元モデルやCosta & McCrae によるビッグ・ファイブ理論がある.近年の分子遺伝学の進歩によりパーソナリティに関与する遺伝子は数多く,一つ一つの効果は小さいと結論づけられている.本稿では7次元モデルとビッグ・ファイブ理論を紹介し,過去に我々が行った研究ではドパミンDRD4遺伝子多型は新規性追求と血液型ABO 遺伝子多型が固執に影響を及ぼしていた.今後は,脳画像研究や神経生理学的検証でさらなる確認試験が必要となる.
著者
名古屋 祐子 宮下 光令 入江 亘 余谷 暢之 塩飽 仁
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.53-64, 2020 (Released:2020-04-07)
参考文献数
38

【目的】看護師による代理評価を用いて終末期にある小児がん患者のQuality of Life(QOL)とその関連要因を検証する.【方法】2015年10月〜2016年2月に国内の小児がん治療施設に勤務し,終末期にある小児がん患者を担当した看護師を対象とし,看護師によるQOL代理評価尺度(Good Death Inventory for Pediatrics: GDI-P)22項目とその関連要因を調査した.【結果】18施設から患者53名分の代理評価を得た.GDI-P8下位尺度のうち「からだや心の苦痛が緩和されていること」が最も平均が低かった.GDI-Pの総得点は,ケアの構造・プロセスの評価と正の相関がみられ(r=0.58),死亡場所は症例数に偏りがあったが集中治療室の場合は自宅や病棟より得点が低かった.【結論】苦痛緩和が最優先課題であるとともに,ケアの構造・プロセスの評価がQOLと関連している可能性が示唆された.
著者
藏田 伸雄 古田 徹也 久木田 水生 近藤 智彦 村山 達也 佐藤 岳詩 森岡 正博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は北海道哲学会でシンポジウム「人生の意味」(研究代表者・藏田伸雄、研究分担者・森岡正博、研究協力者・山田健二)、日本倫理学会でワークショップ「「人生の意味」の哲学的・倫理学的議論の可能性」(研究代表者及び研究分担者・村山達也、研究協力者・文武吉沢、研究協力者・長門裕介)、科学哲学会でワークショップ「分析哲学/現代形而上学で「人生の意味」や「死」について「語る」ことはできるのか」(研究代表者及び研究分担者・久木田水生、研究協力者・鈴木生郎)を実施し、本研究の研究成果の一部を公開した。また研究代表者の藏田は日本生命倫理学会で「「人生の意味」というカテゴリーを生命倫理領域で用いる場合に注意しなければならないこと」と題する発表を行い、「人生の意味」に関する議論を終末期医療に関する生命倫理問題に接続することを試みた。また研究分担者と研究協力者による研究会も開催し、研究協力者の北村直彰氏によって死の形而上学について、また杉本俊介氏によって「人生の意味」とWhy be Moral問題についての検討を行った。また本研究課題に関連する問題についていくつかの論考を発表している研究分担者の山口尚氏の一連の論文を批判的に検討することを通じて、人生の意味と「決定論」や「自然主義」との関連について明らかにすることができた。特に、今年度は青土社の雑誌『現代思想』が分析哲学に関する別冊を発行したが、その中で研究分担者の森岡、村山、研究協力者の山口がこの研究班での研究の成果や、本研究と関わる内容について論文を掲載している。また本研究班での研究内容とは異なるが、研究分担者の近藤と古田は「道徳的な運」に関する研究成果を発表している。「道徳的な運」の問題は、本研究の直接的なテーマではないが、「人生の意味」に関する問題とも深く関わる。

2 0 0 0 OA 古事類苑

著者
神宮司庁古事類苑出版事務所 編
出版者
神宮司庁
巻号頁・発行日
vol.歳時部2, 1914
著者
瀬古 弘 小司 禎教 堀田 大介 小泉 耕 幾田 泰酵
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

大雨に供給される下層インフローの水蒸気分布を改善することにより,降水予報の精度を向上させることが期待できる.ここでは船舶GNSSで得られた東シナ海の水蒸気量をデータ同化に用い,九州北部で発生した大雨へのインパクトを調べた.船舶GNSSのデータ同化により,東シナ海の水蒸気分布が修正し,九州北部の大雨の降水予報が改善する場合もあることが確認できた.さらにバイアス補正と正時に加えて15分前,30分前の観測値を加えた実験の結果から,より正しい可降水量をより多くの点で与えることが重要であることがわかった.本研究は,「ビッグデータ同化とAI によるリア ルタイム気象予測の新展開」(JST AIP JPMJCR19U2), ポスト「京」プロジェクト重点課題4「観測ビッグデー タを活用した気象と地球環境の予測の高度化」(課題 ID: hp190156)の 支援を受けたものです.
著者
古宮 伸洋
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.47-52, 2016-06-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
21

西アフリカで甚大な被害をもたらしたエボラウイルス病(Ebola Virus Disease: EVD)流行は対策強化の成果として現在のところほぼ終息している. EVDに関する新たな知見が多く得られた一方で,不明な部分も多く残されている.エボラウイルスが患者体内に長期間存在し感染源になりうることが示されたがその機序は不明である.治療においては画期的な治療方法はなく,古典的な支持療法が基本となることに変わりはない.新しく開発されたワクチンは曝露後接種であっても高い有効性を示した.検査では迅速診断キットの開発が進められている. 現地では「患者発生ゼロの継続」を目標として,患者発生時の早期探知及び対応,医療施設における基本的な感染対策の強化が進められている.落ち着いた状況になりつつあるが,エボラ生還者(Ebola survivor)が偏見や後遺症に悩まされている状況は続いている. 流行によって医療,経済や教育に至るまで社会全体がダメージを受けており,流行再燃のリスクも依然として存在している.保健医療システムを包括的に強固にすることがEVDを含めた様々な感染症の流行への備えとして望まれる.
著者
古屋 晋一
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1-2, pp.10-14, 2019-06-05 (Released:2019-09-30)
参考文献数
26

音楽演奏に見られる巧緻な運動は,幼少期からの訓練によって獲得される技能である.しかし,膨大な訓練を経てもなお,演奏技能の個人差は大きく,さらには訓練の過程で局所性ジストニア等の脳神経疾患を発症し,技能を喪失することも少なくない.そのため,熟達支援と故障予防の両方の観点から,訓練の量よりも質,すなわち適切な訓練とその機序の理解が求められる.本稿は,脳神経系が筋骨格系の持つ多数の自由度(筋や関節)を協調して制御する仕組みに着眼を置き,このような身体運動の協調構造が演奏技能の洗練や喪失に伴い,どのように変化するのか,さらには協調構造の変容が演奏技能とどのように関わっているかについて,神経生理学実験と数理手法を組み合わせた近年の研究成果を中心に概説する.
著者
古林 万木夫 谷内 昇一郎
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.144-151, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1

醤油は大豆と小麦を主原料とする日本を代表する発酵調味料の1つであるが, これまで醤油中の両アレルゲンの残存性について詳細な研究が行われていなかった. そこでわれわれは, さまざまな免疫学的検査手法により醤油醸造工程中の小麦アレルゲンならびに大豆アレルゲンの消長を調べた. その結果, 小麦のたんぱく質に比べて大豆のたんぱく質は諸味中では完全に分解されず, 生揚には小麦アレルゲンが残存しないが, 大豆アレルゲンは残存することが確認された. 次の火入工程により, 生揚に残存する大豆アレルゲンが熱変性を受けて火入オリとして不溶化することや, 不溶化した火入オリが, その後のオリ下げ・ろ過工程で除去されることで最終の火入醤油には大豆アレルゲンが残存しないことが確認された. 醤油中のアレルゲンの分解・除去には, 麹・諸味工程に加えて, 火入・オリ下げ・ろ過工程が重要であることが示された.