著者
畦地 拓哉 平井 由児 上原 由紀 笹野 央 吉澤 寿宏 松本 博志 青嶋 瑞樹 内藤 俊夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.649-654, 2019-09-20 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19

自然弁の感染性心内膜炎(IE)のempiric therapy としてEuropean Society of Cardiology(ESC)ガイドライン2015 ではampicillin(ABPC),cloxacillin(MCIPC),gentamicin(GM)の3 剤併用が推奨されている.本邦では黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤はABPC/MCIPC 合剤(ABPC/MCIPC)のみであり,これまでにIE のempiric therapy を目的としたABPC/MCIPC 投与例は報告されていない.本研究では, 2015 年1 月から2017 年8 月までに,当院でABPC/MCIPC が投与された症例のうち,改訂Duke 診断基準に基づき,自然弁によるIE と確定診断された症例を対象に,ABPC/MCIPC の感受性・安全性・アウトカムについて検討した.なお,18 歳未満の症例及びABPC/MCIPC 投与量が24g/日未満の症例は除外した.対象は8 名(男性5 名,女性3 名),年齢は34~76 歳(中央値68.5 歳),基礎疾患は自己弁弁膜症6 名,糖尿病3 名であった.対象患者の血液培養からmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)2 例,viridans group streptococci(VGS)属3 例,その他3 例を検出し,8 例中7 例ではABPC 又はMCIPC に感性を示した.Definitive therapy に変更するまでの投与期間は2~6 日(中央値3.5 日)であり,この期間において有害事象による中断はなかった.MSSA 2 例は中枢神経病変を合併し,definitive therapy 目的にABPC/MCIPC が継続された.うち1 例は投与開始12 日目に先行する皮疹と急性腎不全が出現しvancomycin+ceftriaxone に変更となった.IE 患者のempiric therapy として数日間のABPC/MCIPC 24g/日投与は血液培養から検出された病原体全てに感受性を示し,有害事象は認められなかった.またMSSA はIE の代表的起因菌であり,本邦でも中枢移行性が良好な黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤の必要性が再認識されるべきであると考えられた.
著者
吉澤 晋 飯倉 洋治 松前 昭廣 菅原 文子 小峯 裕己
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.313-329, 1991 (Released:2018-05-01)

近年,喘息その他のアレルギー性疾患が社会的な問題となって来ている。その原因としては食物以外に,大気汚染,ダニ,花粉,カビ等居住環境に関連した多くのものが挙げられているが,特にカビは住宅の断熱性・気密性の向上と生活様式の変化に関連しでいるものと考えられている。この研究は,カビ・アレルギーの実態,患者の居住環境のカビ汚染の実態,評価方法,成育条件等の調査を通して,被曝量の予測,総合的対策について検討したものである。まず小児アレルギー疾患とカビについて住宅構造との関連について既知の知見をまとめた。住宅室内に成育するカビについての調査を夏季・冬季に行ない,成育する状況およびその主要なカピの属・種を求めた。さらに在来からの知見により,住宅に成育するカビの主要なもののまとめを行なった。住宅の空気経路による被曝の評価のためには,多数の住宅における測定が必要であり,患者家族に測定を依頼するためにパッシプ型の測定器の基本特性を求めた。カビ粒子に対して,12時間程度の被曝を計測する落下法が利用できることが分かった。カビの成育について,壁面の水蒸気圧と結露の影響を実際の住宅で調査を行なった。また,各種の相対湿度に対する建築材料,畳等におけるカビの成育速度,および更に温度変動を与えた時の成育速度への影響等を求めた。最後にこれらの調査に基づいて,住宅室内におけるカビ・アレルギーの防止対策の提案を行なっている。
著者
吉澤 一巳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.530-534, 2018 (Released:2018-06-01)
参考文献数
25

モルヒネに代表される医療用麻薬は,緩和医療をはじめとする疼痛治療の主役を担う薬であり,現在ではモルヒネ,フェンタニル,オキシコドンに加えてメサドン,タペンタドール,ヒドロモルフォンなど選択可能な医療用麻薬が増加している.しかし,「麻薬を使うくらいなら痛みを我慢する」と考えるがん患者は少なくない.重要なことは,医療用麻薬の適正使用であり,医療用麻薬に関する誤解や偏見を払拭するような取り組みを推進しつつ,同時にその取り組みが行き過ぎにならないよう,乱用防止の啓発活動も必須であることを強く認識しなければならない.
著者
森 哲也 金内 誠 進藤 斉 角田 潔和 吉澤 淑 小泉 武夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-15, 2004-01-31
参考文献数
26
被引用文献数
1

金華火腿から分離された微生物309株より, 火腿脂質の不飽和化に関与する菌株のスクリーニングを行い, 糸状菌6株を選抜した。この中でA-59は脂質中の不飽和脂肪酸の割合が82.0%と選抜菌株の中で最も高く, 特にオレ・イン酸, リノレン酸含有率が高かった。A-59は各種形態試験の結果, <I>Aspergillas oryzae</I>と同定された。本菌株は, 培養温度25℃, 初発pH6.0, 0.5%コール酸ナトリウム, パルミチン酸とステアリン酸を炭素源として, その比率が60 : 40で最も高い不飽和脂肪酸量を示した。また, 本株はパルミチン酸, ステアリン酸を菌体内に取り込み, オレイン酸やリノール酸, リノレン酸を生産していると推察した。以上より, 火腿脂質の不飽和化は<I>A. oryzae</I> A-59を中心とする6株が作用していることが明らかとなった。
著者
野崎 淳夫 清澤 裕美 吉澤 晋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.69, no.576, pp.37-42, 2004-02-28 (Released:2017-01-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

In recent years, air cleaners are often used because of increasing interest in room air quality. However, there is currently no unified method for determining the removal effectiveness of air-cleaners. Here, we report the results of experiments on five type of domestic air cleaner units in a experimental room, using ETS(Environmental Tobacco Smoke). This study was carried out to determine the removal effectiveness of air cleaners on suspended particulate matter evaluated employing an index of equivalent clean air rates(ECAR). The results showed that the removal rates of suspended particulate matter were 59.1〜125.7(m^3/h) for 0.3μm particles, and 115.5〜188.7(m^3/h) for 0.5μm particles respectively with fan-filter units. The rates were much lower for the electro-static collector type unit without fan : 3.9(m^3/h) for 0.3μm particles, and 14.8(m^3/h) for 0.5μm particles respectively
著者
聞きて文 吉澤弥生
出版者
吉澤弥生
巻号頁・発行日
2011
著者
吉澤 剛
出版者
研究・技術計画学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, pp.703-708, 2013-11-02

一般講演要旨
著者
吉澤 ひかり 蝦名 康彦 今福 仁美 鈴木 嘉穂 若橋 宣 宮原 義也 出口 雅士 山田 秀人
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.9-16, 2019

<p>正常胎児と全奇胎の双胎(complete hydatidiform mole coexistent with a fetus;CHMCF)はまれな疾患であり,2~10万妊娠あたり1例とされる.CHMCFは母体合併症が高率であり,また存続絨毛症などの続発性疾患(gestational trophoblastic neoplasia:GTN)のリスクが全奇胎単体より高いとされる.今回われわれは,2006~2015年の10年間にCHMCFの3症例を経験したので報告する.CHMCFの診断週数は12~14週であり,3例中2例は排卵誘発による妊娠であった.母体合併症は,妊娠悪阻(1例),性器出血(3例)であった.CHMCFについて,生児獲得率が低く,母体合併症やGTNのリスクが高いことを説明したところ2例は妊娠中絶を希望した.残りの1例は妊娠継続を希望した.しかし肺転移が判明し21週で妊娠中絶となった.3例中2例にGTN(奇胎後hCG存続症1例,臨床的侵入奇胎1例)を認め,化学療法にて寛解した.CHMCF症例においては,早い週数で妊娠を中断した場合でも,GTNの発症に十分注意して管理する必要があると考えられた.〔産婦の進歩71(1):9-16,2019(平成31年2月)〕</p>
著者
吉澤 大輔 横澤 肇
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.45-48, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

樹木は, 樹種によって異なる遺伝的形質とその樹木が存在する周囲の生育環境によって生長が決定され, 生育環境に適した樹形を形作る.樹木の生長要因には, 光, 重力, 風, 温度, 水, 地質などが挙げられる.本研究では, その中で光環境が樹木に与える影響に注目して生長シミュレーションを行うことにより, 生育環境に適応して生長する樹形の多様性を表現する.特に, 樹木の経年変化と下枝の枯れ上がり, そして, 複数本の樹木が密集した条件における, 樹木間の相互作用による特徴ある樹形の形成を表現する.
著者
吉澤 晋
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、様々な海洋環境から分離した発光細菌の発光色を詳細に調べ、発光細菌発光色の生態学的意義の解明を目指した。発光色を調べた結果、発光細菌の放つ光の色は単一ではなく、複数のバリエーションがあることが分かった。また、極大波長が480 nm以下の発光色を持つ株は細胞内に発光色を変化させる蛍光タンパク質を持つことが明らかになった。
著者
新井 利明 関口 知己 佐藤 雅英 木村 信二 大島 訓 吉澤 康文
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.2492-2504, 2005-10-15

オペレーティングシステム(OS)はこれまでに多くのものが開発されているが,ユーザの要求が多様であり,すべての要求を満足するOS開発は不可能に近い.そこで,1台のマシン上に汎用OSと特定の目的を持つ専用OSを共存させ各々機能補完する仮想計算機機能のナノカーネルを提案し,実現した.豊富なソフトウェア資産を活用できる汎用OSと特殊機能を有する専用OSを1台のマシン上に共存させ,互いに機能補完させることができる.ナノカーネルは,上記の目的を達成するために,(1)複数OS共存オーバヘッドを削減するための資源分割機能,(2)OS間の機能補完を可能とするOS間連携機能,(3)OSの信頼性を向上させる障害監視,回復機能と擬似不揮発メモリ機能などで構成する.これらの限定した機能を実現することで,ナノカーネルは複数OSの共存を可能とし,補完環境をオーバヘッド2%以内で達成できることを確認した.また,汎用OSとリアルタイムOSの共存環境を構築し,汎用OS環境では不可能であったマイクロ秒単位の応答性を確保できることを確認し,ナノカーネルの持つOS間機能補完を実証した.さらに,専用の高信頼OSからの汎用OS障害情報の収集や汎用OSの再起動処理を実現し,システムの信頼性向上にも有効であることを確認した.
著者
山﨑 薫 石神 優紀子 綿貫(吉澤) 仁美 奈良 一寛 池田 加奈 飛川 由梨枝 田中 友里恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】自然界には多くの有用微生物が存在し,近年,自家製の天然酵母を使用したパン作りが注目されている。そこで,自然豊かな本学町田校舎敷地内に生息する野草から野生酵母を採取することを目的とし,パン製作への応用を検討した。【方法】試料に本学の敷地内から採取した12種類の野草を用い,各試料を1.0%糖液に浸け,30℃で24~48時間培養後,普通ブイヨン寒天培地等にて培養,目視にて形状別にコロニーを釣菌し,液体培地に培養,酵母様の細菌が単一になるまで寒天培地から釣菌,液体培地への培養を繰り返し行い,目的の酵母を単離した。単一になった菌は形状や構造などを肉眼・顕微鏡観察,カタラーゼ活性試験等を行った。加えて,糖の資化性試験を行った。市販ドライイーストを比較対照のためにポジティブコントロールとして使用した。単離野生酵母を食品(パン)に応用するために,市販温州ミカンを活用した自家製天然酵母パンの製作方法を参考に,市販温州ミカン発酵液+ノアザミ酵母(本学敷地内より分離)発酵液を調整し,実際にパン製作をして市販ドライイーストで製作したパンと比較した。【結果】一試料から平均3~5種の形状が異なるコロニーを確認し,野草から7種の酵母様の細菌を採取した。糖資化性テストの結果,いずれも病原細菌ではないことが明らかになった。単離ノアザミ酵母発酵液に市販温州ミカン発酵液も併用した自家製天然酵母パン製作を行ったところ,発酵時間は市販ドライイーストを用いた場合の約3倍近くかかったが,ドライイースト利用時に劣らない発酵力が認められた。今後は単離した野生酵母のみにて,パン製作に必要な発酵力を持たせる条件を探索していく予定である。
著者
久野 譜也 田辺 解 吉澤 裕世
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.91-97, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

我が国では,今後10 年間で高齢化の加速度的進行に加えて人口減がみられることにより,健康は単に個人の課題としてだけではなく大きな社会的課題となり,国民の安心及び経済力の維持という視点でも重要な課題となる.特に,生活習慣病の克服は重要な命題であるが,国民が生活習慣,特に運動と食事をうまくコントロール出来れば,それらの課題への対処法になる可能性が示唆されている.しかしながら,運動や食事コントロールの困難さは依然として解決されていない.さらに,望ましい運動量の実施ができている国民は,依然として全体の3割にすぎない.それゆえ,生活習慣予防における運動の重要性のエビデンスの蓄積をさらに拡充すること,「運動をいかに生活スタイルに溶け込ませるのか」という研究が現在求められている.