著者
初田 隆 吉田 和代
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.359-373, 2012-03-25

胎内あるいは出生時の記憶を描写した絵(「胎内記憶画」とする)では,光や音,水,へその緒,包まれている様子などが,ジグザグ線や二重円,マンダラ型などの描画パターンで表現されており,それらは,母子にとって意味のあるシンボルだと思われる。そこで,幼児の表現活動を活性化させるとともに,望ましい母子関係への気づきを促すために,「胎内記憶画」を描く活動が有効なのではないかと考えた。本論では,ワークショップ「ママのおなかにいた頃を思い出そう-絆のドローイング-胎内記憶」の実践及び胎内記憶画の分析を通し,以下の点を明らかにした。(1)胎内記憶に関する子どもの発話を,「五感」,「感情」,「姿勢や動き」の3つに分類し,それぞれに対応する描画パターンやシンボルを確認するとともに,胎内記憶画の解釈を行った。(2)母子ワークショップにおいて「胎内記憶画」を用いることによって,幼児の表現活動を活性化させるとともに,母子の絆を深めるといった効果が確認できた。
著者
中野 壮陛 藤本 哲男 吉田 正徳
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.361-369, 2006-06-01
参考文献数
21
被引用文献数
1

The purpose of this research is to create an optimal strategy to convert the Japanese medical device industry into a highly competitive power in the field by analyzing its corporate activity. In this first report, we are analyzing the market of medical products in Japan in the period from 1999 to 2003, the cause of why Japan is less than competitive in this field was studied. Multiple linear regression analysis was applied to 80% of medical devices in the domestic market. In the analysis, a dependent variable was a corporate share in the market, and explanatory variables included: a market growth rate, a global competitiveness index, a human body risk index, and quantity of products manufactured. As a result of the analysis, it was revealed that the global competitiveness and the human body risk index give respectively a positive and a negative correlation with the domestic corporate share. It is supposed that the main cause of low global competitive power in the Japanese medical device industry is that the industry tends not to develop new products due to the high risk of human life, and therefore it is difficult for the industry to develop products effectively. As a conclusion, it is necessary to research the detail activities of companies especially in this low competitive field.
著者
吉田 敬 高村 明 梅田 秀之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではr-processやνp-processなど重元素合成に関するネットワークの拡張やニュートリノ駆動風におけるこれら重元素合成の計算を行い,r-processのベータ崩壊率に対する依存性や極超新星のニュートリノ駆動風におけるνp-processについて調べた.しかしニュートリノ自己相互作用については動径方向近似での計算は可能となったが角度依存性の導入や最終的な定式化には至らなかった.そのため今後も研究を継続していきたい.超新星元素合成についてはニュートリノ元素合成で作られるフッ素の銀河化学進化や超巨大質量星を起源とする極超新星における元素合成の特徴を明らかにした.
著者
吉田 博宣 坂本 圭児
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.78-83, 1987-03-31
被引用文献数
2 2

前年に引続き、ニレ科樹林の残存形態を調査した。今回は、京都市街のより広い範囲でニレ科樹林(木)の分布と樹木の形状を調査し、さらに、その中で調査区を設けて残存形態と土地利用との関係について調べた。その結果、ニレ科樹林(木)の残存は社寺境内や旧屋敷跡等の歴史的な土地に多く、その樹木景観は歴史的土地利用景観の1つの象徴であることが確認された。また、残存過程について、いくつかの類型か考察された。
著者
吉田 博宣 坂本 圭児 河合 健
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.228-233, 1988-03-31
被引用文献数
1 3

京都市街地に孤立木として残存するニレ科の大径木について,所有者と周辺住民にアンケート調査を行い,その意識を調べた。所有者では社寺と民家などその立場の違いで,また,住民では残存木からの距離の違いで意識が異なることが判明した。所有者と住民では残存木に対する判定構造に違いがあるが,ともに「迷惑さ」と「歴史性」または「評価性」という相反する意識の均衡のうえで残存が維持されていることが考察された。
著者
吉田 京子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.423-444, 2004-09-30

イスラーム世界全般に見られる(聖者)廟参詣は、これまで専ら文化人類学的研究の対象とされてきた。それらは、廟参詣を「公的」イスラームとは異なるものとして捉え、一般信者による「民衆的」行為として語ることが多い。しかしながら、イスラームには廟参詣を教義的イスラームと深く関わるものとして捉える事例も存在している。その一例として本論が採りあげるのが、十二イマーム・シーア派のイマーム廟参詣理論である。同派のイマーム廟参詣は、単なる墓参りではなく、「原初的過去からの伝統の継承」であり、「イマーム性の原理の確認行為」であり、そこから得られる報酬は、シーア派信者としての義務を果たした結果得られる正当な権利と理解されている。同派のイマーム廟参詣は、民衆による自発的実践行為であると同時に、「イマーム」に関わる点において、知識人側からも綿密な理論化を受けたものであり、正式なイスラームの信仰行為として展開されているものである。
著者
吉田 渡 藤城 有美子
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-34, 2012-02-10 (Released:2012-02-22)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ポリオ体験者の装具受容れ意識と現在のQOLに対する装具の貢献度を,装具の導入状況別に明らかにすることを目的として,507人を対象に質問紙調査を実施した (回収率58.8%).対象者を装具の検討なし群,未使用群,継続群,再開群,中断群に分類し,受容れ意識については継続・再開・中断群で,装具貢献度については継続・再開群で比較した.受容れ意識では,「装具導入の阻害要因」は全群で同程度に強く意識されていたが,「装具導入の促進要因」,「装具使用のメリット」は継続群で高く,特に心理的側面での差が見られた.主観的な装具貢献度は,継続群で高かった.使用継続には,生活の中で装具の利用価値を実感する必要があること,再開群ではそのメリットを感じないまま必要に迫られて装具使用を再開し,適切な受容れがなされていない可能性があることが示唆された.ポリオ体験者のwell-beingのためには,心理社会的側面にも配慮した装具の提供を行うことが望まれる.
著者
高橋 正人 原沢 延幸 吉田 博久
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.455-458, 1990-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

ポリエチレンオキシド (PEO) /ポリメタクリル酸メチル (PMMA) ブレンド中でのPEOの等温結晶化過程に及ぼすPMMAのタクチシチーならびに分子量の影響を検討した. 結晶化速度はPMMAの組成と分子量の増加に伴い遅くなる. ブレンド試料の融解熱はPMMA分子量には依存せず, PMMA組成が増加すると小さくなる. また, 融解熱はPMMAタクチシチーに依存しアイソタクチック, シンジオタクチック, アタクチックの順に小さくなる. 結晶化の活性化エネルギーはPMMA組成と分子量には依存せず, PMMAタクチシチーに依存し, アイソタクチック, シンジオタクチック, アタクチックの順に小さくなる.
著者
竹内 徳男 細川 信男 吉田 政次
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醗酵工學雑誌 (ISSN:03675963)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.21-29, 1972-01-25

The characteristics of proteolysate in 1) enzyme miso (E.M.) manufactured with only the protease preparation, Biosaime A, prepared from Aspergillus oryzae and 2) ordinary miso (O.M.) prepared by the usual method using koji were compared. Both E.M. and O.M. miso were manufactured with the same procedure except koji in O.M. was replaced with Biosaime A in E.M. 1. Liberated amino acid patterns in the defatted soybean flour with Biosaime A were virtually similar to that of free amino acid in E.M. 2. Free, bound and whole amino acid patterns of E.M. were not markedly different from that of O.M. This seems to indicate that the main effect of Biosaime A closely resembles the proteolytic action of koji. However, in the E.M., pyroglutamic acid and free arginine content were greater, on the contrary, aspartic acid and glutamic acid were less than those of O.M. It was suggested from the above results that Biosaime A is deficient in some enzymes, such as glutaminase and asparaginase. 3. Distributive patterns of peptides and their bound amino acid composition were fairly similar in the three types of miso, i.e., O.M., E.M. and half koji miso, examined. These results infer that the greater part of peptides originated from soybean protein and not from enzyme protein or microorganisms. Peptide content in miso were 25-29% (calcd. as amino acid) to whole amino acid, 20.6-24.2% (as nitrogen) to the total nitrogen and 30-34% (as nitrogen) to water soluble nitrogen, respectively. 4. Forms of glutamate in O.M. and E.M. miso were as follows : insoluble type 16-17 and 18% ; bound type about 40 and 36.5% ; free type 36-38 and 29.1% ; and pyroglutamic acid 4-7 and 16.3% respectively. 5. During the process miso-making, loss of amino acids was observed. The degree of loss, in order of magnitude was whole koji>half koji>E.M.
著者
MIAH Mohammad Noor Hossain 吉田 徹志 山本 由徳 新田 洋司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.672-685, 1996-12-05
参考文献数
31
被引用文献数
5

多収性の半矮性インド型水稲品種(桂朝2号, IR36; SDI)と日印交雑型水稲品種(アケノホシ, 水原258号; JI)の乾物生産特性と穂重に対する出穂期前後に生産された乾物の分配率などについて, 日本型水稲品種[農林22号, コガネマサリ; 穂重型(JP), 金南風, 中生新千本; 穂数型(JN)]を対照品種として, 作期を2回[移植日1992年5月15日(ET), 6月9日(LT)]設けて圃場試験を行い検討した. 多収性品種(JI, SDI)の穂揃期の葉面積指数(LAI)は両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間での減少割合が大きく, 収穫期には低い値を示した. SDIとJIの穂揃期地上部乾物重は, LTのアケノホシを除いて, 両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間の乾物重の増加量に有意差はみられなかった. 特にSDIでは登熟期間のLAIの減少割合が大きく, また, 登熟期後半のSPAD値が大きく低下したことと相まって, 登熟期間の個体群生長速度は最も低くなった. SDIおよびJIの収穫期の穂重はJP, JNと比較してETでは20〜30%, LTでは18〜20%高かった. また, 両作期のSDIとJIの収穫期の地上部乾物重に対する穂重の割合は, JP, JNと比較して有意に高く, この差が穂重差に反映されたものと考えられた. 穂重に対する出穂期までに茎葉に蓄積された乾物の分配率をみると, ETではJPとJNの平均値よりSDIとJIが約2倍, LTではSDIが約4倍それぞれ高い値を示した. 穂揃期の穂重(シンク容量)は収穫期の穂重と有意な相関関係を示し, シンク容量の大きい品種は登熟期間の地上部乾物重増加量が少なくなる傾向がみられた. また, 茎葉に蓄積された同化産物の穂重への分配率はシンク容量と関係が深いことが認められた.
著者
別所 遊子 長谷川 美香 細谷 たき子 出口 洋二 安井 裕子 吉田 幸代
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

目的 在宅痴呆症高齢者の,基礎調査後10年間の死亡率,死因および死亡の場所を調査し,また存命者とその介護者に対して生活の状況の調査を行い,痴呆症高齢者に対する地域看護援助のための基礎データを得る。対象と方法 1992年に福井県K市において,在宅高齢者全員を対象に実施した生活基礎調査,および二次調査により,精神科医が痴呆症と診断した201名について,死亡の状況を人口動態調査死亡標等により調査した。また,存命者とその介護者に面接し,ADL等の状態を調査した。結果 (1)痴呆症コホート201人のうち,10年後の死亡者は170人,転出者は3人であった。(2)痴呆症コホートの実死亡数は,K市の同年齢層の高齢者について算出した期待死亡数(年齢補正)の,1.42倍であった。(3)Kaplan-Meier生存曲線による平均生存時間は4.32年で,死亡関連要因として,男性,後期高齢者,鑑別不能型,中等症・重症,寝たきり,歩行障害,食事障害,等が,またCox比例ハザードモデルによる分析では,性別,年齢階級,寝たきり,歩行障害が抽出された。(4)痴呆症高齢者は脳血管疾患で死亡する割合が高く,脳血管性痴呆では全死因の約半数であった。(5)在宅者は入所者よりもADLの自立度が高かった。(6)在宅継続の要因として,痴呆症高齢者のADLが高く,寝たきり度が低い,介護代行者がいる,介護者に被介護者に対する愛情があり,介護継続意思が強い,などがあげられた。考察 本研究の対象者は,一市における全数調査において医師により診断された集団であり、死亡状況を人口動態調査票から把握したので,データの信頼性が高いといえる。本研究の結果から,痴呆症の発症および予後のために脳血管疾患の予防が重要であり,痴呆症高齢者の生活の質と生命予後のためには,歩行能力の維持,寝たきり予防が重要であるといえる。
著者
立山 晋 SRI Lespari DARNAS Dana SRI Utami Pr HERNOMOADI H EMIR A.Sireg GATUT Ashadi SINGGIH H.Si 内田 和幸 三澤 尚明 飯田 貴二 山口 良二 延東 真 後藤 義孝 掘井 洋一郎 HERMONOADI Humit A.GANI Asike EMIR A Sineg SRI Utami Rr SINGGIH H Si 村上 昇 AGKA Sri Les 玉井 理 HUMINTO Hern DANA Darnas PRAMONO Sri RUMAWAS Will ASHADI Gatut SIGIT Singgi 吉田 照豊 青木 宙
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は、インドネシアにおける家畜及び魚類疾病の発生状況の実態調査と各々の疾病の解析を目的に、宮崎大学とインドネシア・ボゴール農業大学の大学間協力研究として行なわれた。平成5年〜7根の3年間で得られた研究成果の概要について大別して下記に述べる。1.インドネシアと宮崎における家畜疾病の発生状況の比較・検討。インドネシアの家畜がおかれている環境を知る目的で、宮崎大学とボゴール農業大学で1990年から1994年の過去5年間に剖検されたイヌの主要疾病について比較・検討した。その結果、ボゴール農業大学で剖検されたイヌ、548例中、もっとも頻繁にみられた疾病は、腸炎(63.5%)、滲出性肺炎(50.6%)、胃炎(48.7%)、間質性腎炎(36.3%)であり、宮崎大学で剖検されたイヌと比較して、これらの疾患の発生率は極めて高かった。この原因として、通常これらの炎症性疾患は、ウイルスや細菌を中心とする伝染病していることを反映しているものと考えられる。日本ではこの様な感染症、特にパルボウイルス、ジステンパーウイルス、伝染性肺炎ウイルス、レプトスピラ等のワクテン接種により、これらの疾患が有効に低減しているため、インドネシアにおいても、同様な防疫対策を図ることにより、これらの伝染病の低減が期待できるものと考えられた。2.インドネシアの家きん疾病の解析。ニワトリ、ハトなどの家きんは、インドネシアの主要な産業動物である。本研究では、ニワトリの伝染性ファブリキウスのう炎(ガンボロ病)とマイコプラズマ感染症について、各々病理学的、微生物学的に調査した。ガンボロ病は鳥類特有の免疫系繊維であるファブリキウスのうを選択的に侵態するウイルス性疾患であり、本症に罹患したニワトリは免疫不全に陥いり、種々の細菌・ウイルスなどに感染しやすくなる。インドネシアにおける本病の漫延状況を知る目的で、インドネシアのニワトリを業収・剖検し、肉眼的にガンボロ病が疑われた36例について病理組織学的に検討した。この結果、36例中24例のファブリキウスのうに著明なリンパ球の減少、細網内及系細胞の増生、線維化などがみとめられ、伝染性ファブリキウスのう炎ウイルスの抗原が12例で検出されたこのことからインドネシアのニワトリには広く強毒のウイルスが漫延しているものと推察された。一方、マイコプラズマ症はニワトリの上部気道感染症であり、本病自身は重大な病変を引き起こすことは稀れであるが、種々の細菌・ウイルス感染症が併発しやすい。本研究では、インドネシアの5つの農場より、ニワトリの血液を採取し、合計49例についてELISA法により、マイコプラズマ・ガリセプティカムの抗体価を測定した。その結果、1農業では抗体陽性率が15.4%と低くかったが、その他の農場では70%〜100%と極めて高い陽性率を示し、マイコプラズマ症が広く漫延している現情が把握された。3.インドネシアの魚類疾患に関する検討。インドネシアのグラミ-養魚場における疾患の発生情況を知る目的で、瀕死のグラミ-50例を剖検し、病理学的に検討した。その結果もっとも高率に認められたのは抗酸菌感染による肉芽腫性皮フ炎であったが、その他、肝や脊づいの変性・壊死など何らかのビタミン欠乏症に起因すると思われる病変が多発していた。これはインドネシアの養魚場では鶏フンをエサとして使用していることから幼魚が種々とのビタミン欠乏症に陥りやすいものと予想された。従って、インドネシアの養魚場における疾患防止のためには、伝染病に対する防疫と同時に飼養形態の改善を図る必要があると思われる。以上今回の大学間協力研究で得られた実績の概要を示した。本研究では、インドネシアの寄生虫病についても若干の知見を得たがここでは省略した。得られた知見については、インドンシアの関係者と協議し、問題点などを指摘した。今回の研究の成果は、今後、インドネシアの家畜・魚類の疾患を低減するうえで貴重な基礎データとなりうるものと期待している。