著者
齋藤 克幸 坂本 英雄 七条 武志 小川 良雄 吉田 英機
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.141-148, 2007-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

精漿inhibin Bと造精機能の関係を評価し, 精漿inhibin Bが造精機能の有用な指標であるか検討した.対象は不妊症患者81名 (平均年齢36.4歳) で, 精液検査で13名は無精子症33名は乏精子症, 35名は精子濃度が正常であった.血清inhibin B, LH, FSH, testosterone, 精漿inhibin B, transferrin濃度を測定し, 精液検査を行い総精子数精子濃度を検討に用いた.精漿inhibin B濃度は1111±1665pg/ml, 血清inhibin B濃度は149.4±83.42pg/ml, 精漿transferirn濃度は86.88±99.87ng/mlであった.無精子症群, 乏精子症群, 正常精子群の3群間の比較で血清inhibin B濃度, 精漿inhibin B濃度transferrin濃度に有意差 (p<0.001) を認めた.血清inhibin Bは総精子数 (r=0.33) , 精子濃度 (r=0.451) , 血清LH (r=-0.434) , 血清FSH (r=-0.580) , 精漿transferrin (r=0.370) と有意な相関を認めた.精漿inhibin Bは精子濃度 (r=0.395) , 血清FSH (r=-0.259) , 精漿transferrin (r=0.647) と有意な相関を認め, 精漿inhibin Bは造精機能の指標と考えられた.しかし, 精漿inhibin Bは血清inhibin Bより精漿transferrinと強い相関を示していたが, 血清inhibin Bに比べ血清FSHと精子濃度との相関は弱く, 血清inhibin Bに比し造精機能を評価する上で有用性に欠けると考えられた.
著者
有馬 雅史 坂本 明美 幡野 雅彦 徳久 剛史 岡田 誠治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

転写抑制因子であるBCL6はTh2サイトカインの産生に対して負の制御を行っている可能性が示唆されている。我々は、Th2型気道炎症を呈する気管支喘息の病態の解明や新たな治療の開発のための基盤研究として、BCL6のTh2サイトカイン産生および喘息性気道炎症における作用メカニズムについて解析した。本研究では、以下の点について明らかにすることができた。1.BCL6はT細胞によるTh2サイトカインの産生を抑制し、少なくともIL-5遺伝子はBCL6の標的遺伝子であり、その機序としてIL-5遺伝子の第4エクソンの3'末端の非翻訳領域にBCL6が直接結合して転写活性を抑制することを示した。2.BCL6はTh1細胞や休止期のTh2細胞に対してIL-5遺伝子のstabilityに関与する。3.マウスの喘息モデルでBCL6の強発現によってのTh2サイトカイン産生を抑制し、好酸球を中心とする気管支喘息の気道炎症を減弱することによって気道過敏性の亢進を抑制した。3.BCL6は樹状細胞(DC)の分化や機能を介してTh2細胞の分化を制御する。したがって、BCL6はリンパ球以外に抗原提示細胞の機能も制御してTh2型反応を総合的に制御すると考えられた。以上よりBCL6はリンパ球とDCの両方に対してTh2細胞の分化や機能を制御してTh2喘息性気道炎症の病態に関与する可能性があることを示した.このような研究成果は単に気管支喘息の治療法の開発につたがるばかりか、アレルギー性疾患の発症メカニズムの解明にもつながることが期待できる点において大変重要である.
著者
大迫 茂人 坂本 平守 浅井 英世 佐野 光仁 愛場 庸雅 近藤 千雅 北尻 雅則 坂下 啓史 東川 雅彦 村本 大輔 奥村 隆司
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.10-15, 2009

&nbsp;&nbsp;大阪府における新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査結果を過去 5 年間にわたり検討し,本事業の評価を試みた。<br/>&nbsp;&nbsp;対象児は聴覚スクリーニング後に要検査児として大阪府下の36精密聴力検査施行病院耳鼻咽喉科に紹介された新生児達である。<br/>&nbsp;&nbsp;調査項目は10項目であるが,今回は上記の目的に関係の深い 3 項目について検討した。<br/>&nbsp;&nbsp;精密聴力検査医療機関を受診した児数は平成14年度159名より年々増加し,平成18年度は372名と順調にのびていた。また,精密聴力検査を受けた児数も平成14年134名から増加し平成18年度は318名であった。<br/>&nbsp;&nbsp;その受診児に対する精密聴力検査の結果の中,難聴児の検出数とその率は平成14年度では63名47%であったがその後,年々増加し平成18年度では194名61%であった。他方,両側性高度難聴児の検出は平成18年度でも受診児中精密検査を受けた318例中29例であった。<br/>&nbsp;&nbsp;スクリーニング検査結果と精密聴力検査結果を比較して両検査結果が一致している割合は平成14年度の35.4%から年々上昇し平成18年度には63.5%と高まっていた。この事実から両検査施行者の検査技術の向上などがうかがわれる。<br/>&nbsp;&nbsp;上述調査の結果は耳鼻咽喉科の観点からみると大阪府における本事業は順調に歩んでいることを示す一面と考えられる。
著者
坂本 光弘 松本 理器 十川 純平 端 祐一郎 武山 博文 小林 勝哉 下竹 昭寛 近藤 誉之 髙橋 良輔 池田 昭夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001180, (Released:2018-09-29)
参考文献数
26
被引用文献数
4 2

自己免疫性てんかんが近年注目されているが,抗神経抗体以外の特異的な診断法は確立していない.今回我々は最初に病歴・臨床症候,次に検査成績と2段階で自己免疫性てんかんを診断するアルゴリズムを作成し,臨床的有用性を予備的に検討した.自己免疫性てんかんが疑われた70名に後方視的にアルゴリズムを適応した.MRI,髄液,FDG-PET検査のうち,2項目以上異常所見があれば診断に近づく可能性が示された.一方で抗体陽性13名のうち2名は,第一段階の臨床症候で自己免疫性てんかんの可能性は低いと判断された.包括的抗体検査のもと診断アルゴリズムの更なる検証,改訂が望まれる.
著者
杉田 収 中川 泉 飯吉 令枝 斎藤 智子 小林 恵子 佐々木 美佐子 室岡 耕次 坂本 ちか子 杉田 靖子 曽田 耕一 濁川 明男
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
看護研究交流センター年報
巻号頁・発行日
vol.17, pp.6-13, 2006-07

化学物質過敏症(CS)発症者の発症原因になった化学物質と,発症者が反応する空気中化学物質との関連性を,空気中の化学物質56項目を分析することで検証した.その結果,発症原因化学物質と思われる一般名テブコナゾール,化学名a-[2-(4-クロロフェニル)エチルトa-(1,1-ジメチルエチルト1H-1,2,4-トリアゾールートエタノールにはヒドロキシル基(-OH)と塩素(C1)が存在した.一方発症者が「入れる建物」と「入れない建物」のそれぞれの空気中化学物質の分析比較から,発症者が反応する空気中の化学物質は,ヒドロキシル基を有するブタノールと塩素を有するトリクロロエチレンであることが推定された.上越市立小学校全児童12,045名のCSに関連する症状について,無記名アンケートによる実態調査を行った.回収数は10,348名分(回収率85.9%)であった.CS診断基準では主症状5項目,副症状9項目,さらに眼球運動や化学物質の微量負荷試験などの検査が取り入れられているが,ここでは一般市民向けアンケート用であることから「検査」を省略し,診断基準に準じた症状の13項目について,それぞれ「大いにある」「ある」「少しある」「全くない」の選択肢で調査した.各項目について「大いにある」「ある」を「症状あり」とした場合は,主症状2項目・副症状4項目以上,及び主症状1項目・副症状6項目以上の児童は21名(0.2%)であった.一方「少しある」を加えて「症状あり」とした場合は618名(6.0%)であった.
著者
菊池 淳 坂本 菊男 中島 格 江崎 和久 楠川 仁悟
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 = Stomato-pharyngology (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.317-326, 2004-06-01
参考文献数
13
被引用文献数
9

睡眠時無呼吸症候群 (SAS) に対するUPPPの適応を, 外来診療の段階の簡易検査で決められないか検討した.用いた検査は, 口腔・咽頭の所見, セファログラム, いびき音テスト, AHIの結果である.根治になるための条件として,(1) 口蓋扁桃肥大 (2) いびき音テストで咽頭閉塞が左右型 (3) 顎顔面形態のリスクが小さい, ことが考えられた.顎顔面形態の評価には, 健常者のプロフィログラムを正常フレームとして, 患者のセファログラムに当てはめる方法で行った.この方法で, 簡易に顎顔面形態のリスクを判定することができた.また, UPPP単独では根治的効果が得られなくても, CPAPなどSASに対する他の治療法を補助するための治療として重要であると考えられた.
著者
坂本 淳哉 片岡 英樹 吉田 奈央 山口 紗智 西川 正悟 村上 正寛 中川 勇樹 鵜殿 紀子 渋谷 美帆子 岩佐 恭平 濱崎 忍 三村 国秀 山下 潤一郎 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1138, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大腿骨近位部骨折(以下、近位部骨折)術後の多くの症例では、痛みは骨折部や術創部がある股関節周囲に発生し、骨癒合と術創部の治癒が進むに従い消失する。しかし、これらの治癒が進んでも痛みが残存する症例や、股関節周囲の遠隔部に痛みが発生する症例も存在し、このような症例では痛みが理学療法プログラムの進行の阻害・遅延因子となることがある。このような近位部骨折術後の痛みの実態に関しては経験的には把握しているものの、痛みの発生率や発生部位、程度などの基礎資料を提示した報告は非常に少ない。そこで、本研究では近位部骨折術後の痛みの実態把握を目的に理学療法開始時からの痛みの発生状況を調査した。【方法】対象は、2008年7月から2009年8月までに当院整形外科にて観血的治療を受け、理学療法を行った大腿骨頚部骨折23例、大腿骨転子間骨折3例、大腿骨転子部骨折22例、大腿骨転子下骨折5例、大腿骨転子部偽関節1例の計54例(男性9例、女性45例、平均年齢83.1歳)で、術式の内訳は人工骨頭置換術11例、ガンマネイル12例、compression hip screw (以下、CHS)15例、鍔つきCHS 6例、ハンソンピン7例、その他 3例である。なお、理学療法は平均して術後8.3日から開始した。調査項目は1)安静時痛(背臥位)、動作痛(起き上がり、立ち上がり、歩行)を有する対象者の割合(以下、有痛者率)、2)安静時痛、動作時痛の発生部位、3)安静時痛、動作時痛の発生部位の中で最も痛みが顕著であった部位(以下、最大疼痛部位)の痛みの程度とした。なお、痛みの発生部位については対象者がその部位を身体図に提示した結果を用い、川田らの報告(2006)に準じて腰部、鼠径部、臀部、大転子部、大腿前面、大腿外側、大腿内側、大腿後面、膝部以下の9箇所に分類した。また、痛みの程度はvisual analog scale(以下、VAS)で評価した。調査期間は理学療法開始時から12週後までとし、上記の調査項目の経時的変化を捉えるため2週毎に行った。そして、対象者を理学療法開始時の改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点により21点以上の非認知症群と20点以下の認知症群に分け、分析を行った。【説明と同意】本研究は、当院臨床研究倫理委員会において承認を受け、当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。【結果】安静時痛の有痛者率は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約47%であったが、4週後には非認知症群が約5%、認知症群が約11%に減少した。また、安静時痛の発生部位のうち鼡頚部、大転子部といった股関節周囲が占める割合は理学療法開始時、非認知症群が約20%、認知症群が約7%であったが、これは4週後にほぼ消失した。一方、動作時、特に歩行時痛の有痛者率は理学療法開始2週後で、非認知症群が約70%、認知症群が約83%で、6週後でも両群とも約40%までしか減少せず、それ以降も増減を繰り返した。また、理学療法開始時の動作時痛の発生部位は両群とも、大腿後面・内側・外側・前面および膝部以下で全体の約60%以上を占め、この傾向は12週後でも変化なかった。痛みの程度として、非認知症群の安静時痛のVASは理学療法開始時から12週時まで1以下であったが、認知症群は理学療法開始時から2週後まで2~3と非認知症群より高値を示した。また、動作時痛のVASは理学療法開始時、非認知症群が4.6、認知症群が6.5と認知症群が高値を示し、両群とも経時的に減少したが、12週後でも非認知症群が3.0、認知症群が4.6と認知症群が高値であった。【考察】今回の結果から、安静時痛の有痛者率は経時的に減少し、特に股関節周囲に存在する痛みが消失した。つまり、安静時痛は近位部骨折の受傷、あるいは手術侵襲といった組織損傷に伴う炎症に起因した痛みであると推測できる。一方、動作時痛、特に歩行時の有痛者率は経時的に減少するものの、残存する傾向があり、その発生部位も骨折部位から離れた大腿部や膝部以下に認められることから、炎症に起因したものとは考えにくい。次に、非認知症群と認知症群を比較すると安静時痛、ならびに動作時痛の有痛者率やその発生部位について違いは認められず、このことから痛みの発生状況に関しては認知症の影響は少ないといえる。ただ、痛みの程度に関しては認知症群が非認知症群より高いことから、情動面が影響しているのではないかと推察される。【理学療法学研究としての意義】近位部骨折術後の痛みについて、有痛者率、発生部位、ならびにその程度といった実態の一部を明らかにしたことは今後の理学療法を考える上でも貴重な基礎資料になると考えられる。
著者
芹澤 志保 中澤 理恵 白倉 賢二 大沢 敏久 高岸 憲二 山路 雄彦 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.483, 2003

【目的】我々は、群馬県高校野球連盟(県高野連)からの依頼により第84回全国高校野球選手権群馬県大会においてメディカルサポートを行った。以前より高校野球全国大会ではメディカルサポートによる傷害予防がなされているが、本県では今回が初の取り組みとなった。本研究の目的は、メディカルサポートの内容を紹介すると共に今後の課題を検討することである。【対象及び方法】対象は、第84回高校野球選手権群馬県大会4回戦(ベスト16)以降に出場した延べ32チームとした。メディカルサポートを行うため、群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じ、本県内の理学療法士にボランティア参加を募った。県高野連から依頼のあったメディカルサポートの内容は、投手及び野手別のクーリングダウン(ストレッチング)指導であり、これら指導内容を統一するため事前に3回の講習会を行った。また、高校野球における投手では連投となることが多いため、投球イニング、肩および肘関節の痛みの有無、疲労感等に関するチェック表を作成した。準決勝・決勝戦を除き試合会場は2球場であり、各球場に理学療法士は投手担当2名、野手担当4名以上、医師は1名以上が常駐するよう配置した。【結果及び考察】メディカルサポート参加者は、理学療法士延べ64名(実数40名)、医師9名(実数5名)であった。その内訳は、投手担当が延べ19名、野手担当が延べ46名であった。メディカルサポート内容は、クーリングダウン、試合前および試合中のアクシデントに対するテーピング、熱中症対策であった。準々決勝の1チームと決勝の1チームを除く30チームに対してクーリングダウンを行った。投手は延べ37名であった。投手の肩および肘の痛みについては、肩外転位での外旋で痛みを訴えたもの0名(0%)、水平内転で痛みを訴えたもの1名(2.7%)、肘に痛みを訴えたもの11名(29.7%)であり、肘痛が最も多かった。また、テーピングは延べ13名(実数6名)に実施し、その全員が野手であった。さらに、熱中症に対する応急処置として理学療法士・医師が相当数救護にあたり、過呼吸に対する応急処置の依頼もあった。これらクーリングダウン以外のサポートは、当初県高校野球連盟より依頼されていなかったものであるが、現場では外傷・熱中症などの応急処置は必要不可欠であったためすべてに対応した。今後の課題として、メディカルサポートの内容について県高野連と調整すると共にテーピングを含めた応急処置に関する技術の確認などの必要性が示唆された。
著者
坂本 孝
出版者
日経BP社
雑誌
日経トップリーダー
巻号頁・発行日
no.311, pp.28-30, 2010-08

「人はどこまで信用できるのか」。退任後、悩む日々を送りました。「社員に裏切られた」とも正直、思った。性善説と性悪説がぐるぐると自分の中で揺れ動いた3年間でした。 迷いを抱えながら、月に1度、京セラの稲盛和夫名誉会長の話を聞く。そんな生活を過ごしました。私は、稲盛さんが主宰する経営勉強会「盛和塾」に長年通っていますので。
著者
藤邉 祐子 坂本 保子 羽入 雪子
出版者
八戸学院大学短期大学部
雑誌
八戸学院大学短期大学部研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.31-40, 2018-03-30

本研究は母性看護実習終了後に学生が「命の尊厳」をどのようにとらえたかを分析し、実習指導の示唆を得る目的で行った。対象者は看護系短期大学生84名で、自由記述されたデータを内容分析した結果、4つのカテゴリーが見出された。学生は、実習を通して「命」の重みを学び、褥婦と新生児の看護を体験していく中で「自分も周囲の支えがあって成長してきた」と気づきを得られていた。また、医療における「看護師の役割」を再認識し、命の尊厳について問われることで、命に対する価値観を表現できていた。母性看護実習で学ぶことのできる生命の誕生、新しい命を育むという場面から、「命の尊厳」について考え学ぶことのできる教育や実習指導が重要であることが示唆された。
著者
湯川 夏子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.190, 2010

【目的】行事食の現状を明らかにするため、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として近畿2府4県において、行事食の認知状況および摂取状況等の調査を行った。本報では、京都府出身学生家庭における年末年始の行事食の現状と、学生とその親世代の食経験の比較を行った結果を報告する。<BR>【方法】2009年12月~2010年4月、近畿2府4県の大学に在籍する学生およびその家族を対象として質問紙調査を行った。日本調理科学特別研究の全国統一様式の質問紙を使用し、集合自記法および留置法にて行った。京都出身者の学生182名とその家族(親世代)90名を解析対象とし、「正月」「人日」「大みそか」の行事食に関して集計・解析した。<BR>【結果】正月料理の食経験は学生・親世代ともに全体的に高かった。しかし、屠蘇、数の子、田作り、昆布巻き、煮しめ、なますについて、有意に学生の食経験率が低かった。親世代は、お節料理9品目のうち、8品目は「毎年食べる」と回答した人が6割以上いたが、なますは「食べなくなった」と回答した人が多かった。その他に、棒だら、たたきごぼう、くわいがよく食べられていた。お節料理は全体的に、家庭で作る割合が減少し、購入する割合が増加していた。雑煮は、約6割が白味噌、約3割がすましであり、ほかに赤味噌や小豆の雑煮が見られた。七草は、行事の認知度は高いものの、七草粥の食経験は学生で約6割であり、親世代との有意差がみられた。年越しそばは多くの家庭で喫食率が高かった。<BR> 以上の結果より、年末年始の行事食は、親子の世代間において食経験の較差がみられると共に、家庭で作る行事食が減少しつつある現状が明らかとなった。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 河野 篤子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>平成21,22年度日本調理科学会特別研究で「行事食・通過儀礼食」の全国調査をおこない、京都府において行事や儀礼の認知度や経験度、またそれらに関わる食の喫食状況について世代間や地域差の検討をおこない報告した。またハレの食事にかかせない赤飯・餅・寿司・団子について調べ、行事食・通過儀礼食における米の利用状況の違いを明らかにした。今回はこれまでの結果をふまえ、行事や通過儀礼における家庭での食の調理状況や入手方法の解析から、行事食・通過儀礼食の伝承について比較検討することを目的とした。<br><b>【方法】</b>平成21年12月~22年3月に日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を用い留置法で調査を実施した。10年以上京都府に在住する者を調査対象とし、行事食では調理状況や食べ方について以前と現在の状況、子世代(10・20歳代)191名と親世代(40・50歳代)115名について世代間の比較をおこなった。また京都市内とその南北で地域差がみられるため地域の状況も比較検討した。<br><b>【結果】</b>両世代で「家庭で作る」と答えた者の割合が高いものは、雑煮、七草粥、上巳の寿司、冬至のかぼちゃ、年越しそばであった。以前と現在の入手方法をみると、「家庭で作る」から「買う」への増加がみられるものがある一方で、差がないもの、減少する割合に比べ「買う」の増加がわずかのものがみられ、全体に喫食自体が減る中、調理技術の伝承が難しい傾向がうかがわれた。行事食、通過儀礼食ともに最も「家庭で作る」割合が高い傾向にあるのは北部地域であったが、3地域ともに現在は「家庭で作る」割合が減少傾向にある。三世代同居家庭の方が認知度、経験度が高い結果にあったが、核家族化の進行もありさらに次世代へ伝承されにくい状況が進むと考えられる。