著者
山本 宗一郎 三田村 啓理 黒川 皓平 國森 拓也 堀 正和 荒井 修亮
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.355-364, 2022-09-15 (Released:2022-09-29)
参考文献数
31

マコガレイ成魚30個体に水温・深度ロガーを装着し,2017年7月3日に周防灘姫島地先で放流して2個体から12-1月までのデータを得た。高水温となる9月の2個体の経験水温の最頻値は24-25℃(53.9-57.6%)であった。最高経験水温は27℃に達したが26℃以上の頻度は3.9-4.5%と低かった。深度データからは離底行動が観測され,連続した離底行動後に生息水深,生息水温,分布域等が変化した。よって,天然海域では26℃未満の水温帯で生息可能であり,離底行動は移動に関連していたと考えられた。
著者
堀内 隆彦 田中 緑
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,将来の豊かな社会発展に寄与するために,産業応用を目指した独創的・先駆的な研究に取り組む.具体的には,これまで管理された実験室環境において実施されてきた視知覚実験を実生活空間へと展開し,一般の照明環境下に設置された種々のディスプレイを用いた視覚実験を丁寧に実施する.これらの実験結果を解析することによって,新しい視物質であるipRGCの影響を考慮した色再現モデルを構築する.さらに,標準化されているデバイス間のカラーマネージメントシステムとの互換目指したプロトタイプシステムの構築を通じて,カラー画像再現における産業界の次世代デファクトスタンダードとなる基盤を確立する.
著者
堀 まどか ホリ マドカ Madoka HORI
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2009-09-30

野口米次郎(1874-1947)は、英語・日本語で多彩な言論活動をくりひろげ、二〇世紀前半期には国際的に広く知られた日本詩人であった。従来、英文学分野での野口の英米文壇との関わりを論じる研究は行われてきたものの、日本文学の側からは研究がほとんどなされていない。野口の生涯を基礎資料や出典文献の吟味を経て通観した著述や、それをふまえた研究も行われてこなかった。野口が日本文学史の主流から排除された理由は、彼が戦時期に「帝国メガフォン」として活動した為、敗戦後、長く忌避されたことにある。こうした研究上の欠落を是正するため、本論は野口の戦時期活動を含め、従来の研究の欠落部分であった日本文壇における活躍を検証し、国際的文化思想潮流の中における野口の生涯を捉え直そうとするものである。<br /> それゆえ、本論は第一に、明治・大正・昭和の敗戦時にまで及ぶ野口の生涯を通じて、その活動の全容を明らかにし、これによって従来の研究の克服をめざす。第二に、野口の文学世界の本格的な探究を基盤づけるために、野口を取り巻き、変動を重ねた同時代の国内外の諸文学の動向を明らかにし、それらとの関係の再考を試みる。第三に、野口米次郎は、文芸にとどまることなく、日本美術や浮世絵、能・狂言の海外への紹介者として活躍した。このことが海外のジャポニスムにどのように働きかけ、どのような役割を担ったのかを考察する。総じていえば、野口という人物とその作品の再評価を課題の中心に据えるが、そのために、従来の日本文学・英文学という個々の領域を超え、文化全般さらには思想全般の国際的、国内的な動向とを関連づけて野口米次郎の足跡を考察する。<br /> 本論は大きくわけて、三部構成をとる。第一部「出発期―様々な〈東と西〉、混沌からの出現」では、詩人野口米次郎がどのように自己形成を遂げていったかを明らかにする。第一章で野口の渡米までの成長過程における英語学習の様子や、早くから芭蕉俳諧に親しんでいたこと、渡米の動機などを考察する。第二章では、アメリカ西海岸のボヘミアニズムの潮流下で、ポーやホイットマンを尊敬しそれらを芭蕉俳諧と重ねて理解した野口が、詩人としていかにデビューしたかを、その周辺の詩人たちの理解や当時の国際的な文化潮流とあわせて、伝記的に再確認する。第三章は、ジャポニズム小説の隆盛期の流れに棹さして執筆した日記風小説に焦点を当て、野口の視点の独自性と問題意識の原点を探る。第四章は、英国詩壇で一躍人気を博したことについて、一九〇三年当時の野口が翻訳や英詩作に対していかなる自覚や意図を持っていたのかを探る。また英国詩壇で野口の英詩の方法や表現がいかに受容されたかを検討する。<br /> 野口の人生中期を捉える第二部「東洋詩学の探求と融合―〈象徴主義〉という名のパンドラの箱」では、東洋の伝統と西洋のモダニズム詩論との交差の中で、野口の詩学や詩作がどう展開したかの分析を試みる。第五章では、野口の一九〇四年の帰国が、日本の詩人たちによる象徴主義詩の移入時期と重なっていたこと、野口が象徴主義を芭蕉と比較して説明したその先に、日本国内での芭蕉再評価の気運を認めうることを明らかにする。第六章では、日本帰国後の野口が積極的に英文執筆に取り組み、国外の様々な新聞雑誌に、舞台芸術や美術そして政治状況などの多岐多彩な著述を書き送り、日本文化の海外発信に努めていた点を分析する。また帰国後に刊行した詩集や評論集が、海外では不可解と思われていた「日本」の本質や日本人の精神構造を伝えるために書かれていることを考察する。第七章では、日本文化の解説者として重要な役割を演じた一九一四年の英国講演をとりあげる。野口が芭蕉俳諧の精神哲学と詩学を論じたことは、国内外に多大なインパクトを与えた。第八章では、欧米モダニズム思潮の中での野口の位置と評価、その時代背景について考察する。英詩改革を試みた英詩壇が東洋への指向性を深めてゆく様子を、インドの詩人たちとの関係などをも含めて明らかにする。第九章では、従来ほとんど研究がなされてこなかった、大正期詩壇の中で野口が果たした役割と存在意義を、幾つかの詩誌から解明する。大正から昭和への転換期には、様々な思潮が混沌として渦巻いた。野口はこの時期、文化相対主義的な観点から国内外に向けて伝統意識と前衛意識について語っている。第十章ではこれら両者の重なりが、昭和初期に日本主義が立ちあがってくる兆しと如何なる関係にあったかを浮き彫りにする。第十一章では、野口がL・ハーンについて残した著述とその内容を明確にし、日本主義の潮流に巻き込まれる「境界人」としての二人の位置について考える。 第三部は「「二重国籍」性をめぐって―境界者としての立場と祖国日本への忠誠」と題して、文明批評家としての国内外の評価も確立していた野口の、後半生における屈折を、国際関係論、東西文明交渉史、植民地主義批判に目配りしつつ論じる。第十二章では、野口の〈境界〉性や自己存在の不安定さについて、従来指摘されてこなかった幾つかの局面から論究する。野口は人類の普遍主義に立つ文化相対主義の立場から、自国の文化を創出することを考えていた。時代は彼に政治問題や民族・国家の独立問題と関わることを要請し、かつ野口自身もそれを当然のことだと考えていた。しかし、二〇世紀の国際関係は、その立場に亀裂や動揺を生みだしてゆく。その実態を捉える。第十三章では、早くからインドとアイルランド文学の共通性を意識していた野口のアジア認識を、インドとの関わりを中心に論じる。野口のインドに対する発言や論述といえば、従来はもっぱらR・タゴールとの論争ばかり注目されてきたが、それは野口と「インド」との関係の一頁に過ぎないことを、インドで発掘した資料などをもとに明らかにする。第十四章は、野口の戦時期の詩について、従来知られていなかった作品にも照明を当て、野口米次郎の詩想の全容の解明に努め、その内部にかかえた亀裂の様をあきらかにする。第十五章は、敗戦後の野口と没後の評価を扱い、野口の遺志が受けつがれてきたことを示す。<br /> 野口は、国際的な象徴詩運動が様々なモダニズムへと分化してゆく中で、前衛性と庶民性、国際性と地方性、そして民族の魂といった要素の融合する二〇世紀の詩精神を守り育てることに腐心し、大正期の詩壇で尊敬を受け、また海外に自分なりの日本文化の神髄を紹介することに邁進して国際的に活躍の場を拡げた。象徴性、暗示性、幽玄の世界、精神性を表現することが、野口の「詩一つに生きる」ことであり、文化相対主義の立場から日本文化の普遍性を敷衍することを、野口は自らの使命とした。しかしそのことが、戦争の時代には、野口の中に自分自身では処理しきれない問題を抱かせることになった。<br /> 野口が自らを「二重国籍者」と述べたとき、それは自嘲であっただけではなく、精神的複合性をもった詩人としての自覚であり、「近代」的視野を持つ国際人としての自負でもあった。本論は、蹉跌の思いと痛みを抱えて、激動の時代を生きぬいた野口米次郎というひとりの詩人の軌跡を、二〇世紀における国際詩想潮流の動きと文化交流の実態とに重ね合わせながら、解明することをめざした。この詩人の達成と挫折とが共に、日本近代のたどった思想史や文化史の展開を照らし出している。
著者
舟橋 満寿子 長 博雪 鈴木 康之 工藤 英昭 松尾 多希子 許斐 博史 堀口 利之 林田 哲郎 玉川 公子
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.647-656, 1993-09-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
14
被引用文献数
10 2

嚥下・呼吸障害を呈する重度重複障害児者の一部に誤嚥防止を目的として気道・食道の分離を試み,単純気管切開を含め各術式の有効性を比較検討した.その結果,喉頭気管分離術が,下気道感染症の激減,呼吸機能・嚥下機能・栄養状態の改善,経口摂食の獲得,術後合併症の少ないことなど,すべての面で他の術式より優れていた.彼らの生活は受動的になりがちだが,外科的方法も含め呼吸・嚥下という生命の基本のリハビリテーションを適切に行うことで能動的な活動を引き出しえた.ただし術後再閉鎖の可能性は彼らには少ないので,手術的方法を選ぶ場合,十分利点・欠点を検討し,彼らの生活の質の向上をめざすものであるべきと思われる.
著者
山田 洋一 堀本 ゆかり 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.589-595, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

〔目的〕理学療法非熟達者の視線を測定することで,動作探査能力を分析し技能指標の手がかりを模索する.〔対象と方法〕対象は養成校4年生12名.腱板断裂術後の肩挙上を投影し,プロフィール告知前後の停留点の測定と,「疾患名」「注目点」「注目点の変化」「動作分析の注目点」を回答させ視線特性を検討した.〔結果〕疾患名の正答者は1名で,告知前後の停留回数は肩関節・肩甲骨周囲・肘部で有意な差があった.注目点は,全員が肩関節,肩甲骨周囲を注目していると回答し,計測による結果と一致していた. 告知後,視点ポイントが変化したと回答した者は,停留点が絞られ,停留回数は減少していた.〔結語〕非熟練者にとって容易な課題を提示することで,視線は分析に必要なポイントに視点をコントロールでき,情報収集が可能になると考える.
著者
大久保 暢子 亀井 智子 梶井 文子 堀内 成子 菱沼 典子 豊増 佳子 中山 和弘 柳井 晴夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-38, 2005-03-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

看護大学における高等教育・継続教育としての e-learning (以下 EL と称す) は, 時間的・物理的制約を解消する有用な手段である. 今回, 国内の保健医療福祉機関に勤務する看護職計1,270名 (有効回答率36.6%) を分析対象として EL に関するニーズ調査を行った. その結果の一部を参考に仮説を立て, 因果モデルを想定し, 因子分析・共分散構造分析を用いて説明を試みた.結果: (1)「直接交流がないことへの不安」,「ELの内容や費用への不安」,「1人で学習することによる不安」といったEL受講への不安がなければ「ELの受講希望」は高くなり, 中でも「直接交流がないことへの不安」が「EL受講希望」に最も強く影響していた. さらに, (2) 大学の単位や認定看護師の教育単位といった「単位取得が可能」であれば「EL受講希望」は高くなることも明らかとなった. 以上のことから, 看護高等教育・卒後教育におけるEL導入は, スクーリングや対面式講義など直接交流の機会がもてること, 大学や認定看護師の講義単位が取得できることが重要であることが示唆された.
著者
仲西 修 山室 宰 福井 偉功人 神 房次 冨宿 博隆 木庭 浩高 堀内 信子 西 正勝
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.265-267, 1995-08-25 (Released:2017-12-21)
参考文献数
5

The activity of topical anesthesia for the needling pain of local anesthetic injection was examined by using visual analog scale in the eight healthy volunteers. Volunteers were applied topical anesthesia (5% benzocaine) or placebo at mucobuccal region of canine. The needling pain of local anesthetic injection was assessed at mucobuccal region of canine at 1.5 minutes after applying topical anesthesia or placebo. There were no significant differences between these two groups ; one was applied topical anesthesia, the other was applied placebo. We assumed that the time allowed from application of topical anesthesia to local anesthesia to local anesthetic infiltration was not long enough to cause differences.
著者
堀之内 若名 内野 良子
出版者
一般社団法人 日本臨床看護マネジメント学会
雑誌
日本臨床看護マネジメント学会誌 (ISSN:24352691)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.11, 2020 (Released:2020-09-17)
被引用文献数
1

本研究の目的は、地域包括ケア病棟を基盤とした研究の動向と内容を明らかにすることである。医学中央雑誌web版(Ver.5)を用い検索を行った。抽出された文献は121件であり、そのうち研究目的に適切と判断した103件を対象とした。研究報告は2016年から年を追うごとに増加傾向であり、研究の目的は【退院指導・支援の現状と課題の明確化】【高齢者に多い症状・疾患を持つ患者への看護の質向上】【患者の身体機能の検証】【退院支援に係るツールの活用効果の検証】【転帰先・再入院に影響する要因の明確化】【地域包括ケア病棟看護師としての成長】【地域包括ケア病棟の有用性・充足度の検討】【看護師のストレスと対処の明確化】【病棟薬剤師の有用性】の9に分類された。
著者
内堀 朝子 松岡 和美 南田 政浩 矢野 羽衣子
出版者
日本手話学会
雑誌
手話学研究 (ISSN:18843204)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.67-88, 2011-12-19 (Released:2012-12-20)
参考文献数
33

Since Japanese Sign Language(JSL) is a human language, as clearly shown by previous studies, it should be possible for JSL to have a hierarchical structure that can be generated as a result of the application of syntactic operations. This paper deals with one such case, i.e. embedding a clause into a verb complement position, and is aimed at developing a solid basis for the syntactic analysis of JSL. In order to confirm that JSL actually has a complement structure, clauses selected by a verb of saying and thinking were compared with direct quotation clauses. The differences examined in this paper concern word order, the possibility of topicalization, and the possibility of WH-question formation. The basic word order of a sentence with a complement clause is SOV, whereas that with a direct quotation is OSV. A sentence with a complement clause allows topicalization and WH-question formation, while one with a direct quotation does not allow either of them. The difference in the grammatical acceptability of topicalization and WH-question formation suggests that a sentence with a complement clause can undergo syntactic operations such as Move (or Internal Merge), Whereas one with a direct quotation clause cannot
著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2318, (Released:2018-10-26)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
尾崎 一郎 堀田 秀吾 徐 行 郭 薇 山本 龍彦 町村 泰貴 池田 公博 米田 雅宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、ツイッターやフェイスブックに投稿された愚行に関するいわゆる「炎上」に見られるように、近時ネット上で頻繁に見られるようになっている私人間の相互監視と過激な制裁行動を実証的に分析し、個人の自由やプライバシーや適正な手続といった国家法の理念から乖離した一般人の法意識を明らかにする。現代のネットワーク社会において人々が抱いている秩序意識の構造を解明することで、人権を基軸とした法の理念と安全や道義性を重んじる社会の規範意識とを適切にすり合わせることのできる新しい国家法の役割を示すことができる。情報通信技術が高度に発達した現代社会における法の位置付けを再考する研究である。
著者
堀内 正浩 佐藤 雅幸
出版者
専修大学スポーツ研究所
雑誌
専修大学スポーツ研究所紀要 (ISSN:21895260)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.27-31, 2022-03-31

上肢ジストニア(書痙,奏楽手痙)に対するボツリヌス毒素療法(Botulinum toxin therapy : BTX)・MAB療法(muscle afferent block)について検討した.2021年9月時点で,針筋電図を用い上肢ジストニア(書痙,奏楽手痙)の患者に対してBTX療法やMAB療法を継続している患者18名(男性9名,女性9名,平均年齢53.3歳,平均投与回数18.9回)について検討した.疾患は,書痙が7例,奏楽手痙が3例,上肢ジストニア(範囲が広いもの)が8例であった.症状を分類すると①母指が屈曲するもの ②手首が掌屈するもの ③手首が背屈するもの ④範囲が広いもの ⑤母指以外の指に限局するもの5種類であった.全例においてBTX療法やMAB療法の有効性が認められ治療が継続されており,有害事象も認められなかった.上肢ジストニア(書痙,奏楽手痙)にはBTX療法やMAB療法は有用であるが,注射部位の選択には注意を要する.
著者
堀井 幸江 松村 篤 クルス アンドレ フレイリ 石井 孝昭
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.25-30, 2007-05-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

バヒアグラスを用いて,アーバスキュラー菌根菌,Gigaspora margarita胞子を短期間で簡便に生産する手法を確立するため,バヒアグラスの水ストレス状態や胞子生産の指標となる菌根菌生長促進物質量との関係,生産された胞子の発芽や発芽菌糸の感染力について調査した.その結果,短期間に多数のG. margarita胞子を生産するためには,ゼオライト土壌に栽植したバヒアグラスの葉の水ポテンシャルを-1.2MPa前後の水ストレス状態に陥らす方法が有効であることが明らかとなった.特に,37μmのナイロンメッシュ・シリンダーを用いた方法は,シリンダー外へ生長した外生菌糸から形成された胞子を採集でき,根や土壌などの夾雑物が極めて少ないきれいな胞子を容易に得ることができた.接種1か月後にはポット(直径24cm)当たり約26,000個,3か月後には約52,000個,5か月後には約50,000個の胞子を生産できた.新しく生産された胞子の発芽率は良好であり,感染力も充分であった.多数の胞子を生産した水ストレス処理区ではバヒアグラス根内のトリプトファンダイマー含量が高かった.このため、根内のトリプトファンダイマー含量は胞子形成の指標になることが示唆された.これらの結果は,今回開発した簡便な胞子生産技術が大型の胞子を形成する菌根菌にとっても極めて有効であり,菌根菌の活用場面を拡げる上で大いに貢献することを示唆している.