著者
堀田 裕子
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.119-132, 2010

テレビゲーム体験は、M.メルロ=ポンティの理論からどのように考察できるだろうか。彼は「奇妙な」空間に関する考察で、異なる空間への「投錨」とそのための「投錨点」の必要性を論じている。投錨は「構成的精神」によるのではなく、身体が新たな空間内の諸対象を「投錨点」として、そこに住みつくということである。だがその投錨(点)は対象ではなく地であり、異なる空間を同時にとらえることはできない。<br>テレピゲームにおける「客観視点」は、「主観視点」とは異なり、画面上にキャラクターが登場しそれを操作するプレイヤーの視点である。この時、キャラクターの身体は投錨点となり、プレイヤーの動きに応じてキャラクターは同時に動く。この現象を「同期」と呼ぶ論者もいる。だが、この考え方は二重の空間把握と物理的身体を前提しており、身体はその特質からしてまず「潜勢的身体」としてとらえる必要がある。<br>また、奥行の考察からは、対象同士、そして対象と身体もけっして並列的な関係にあるのではなく、互いに他方を導き入れる「含み合い」の関係にあることが示される。そして、この「含み合い」を「投錨」の観点から理解することで、ゲーム体験においてはプレイヤーの身体とキャラクターの身体とがまさしく「含み合い」の関係にあることが分かる。そして、過去・現在・未来もまた「含み合い」の関係にあるとともに、地となり時間を湧出する、潜勢的身体のもつ非反省的な主体性は、ゲーム体験によって解体されることはない。
著者
堀田正敦 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[255],
著者
廣畑 吉昭 小野 滋 薄井 佳子 馬場 勝尚 辻 由貴 廣谷 太一 関根 沙知 堀内 俊男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.1089-1093, 2021-12-20 (Released:2021-12-20)
参考文献数
16

症例は14歳の男児.Haller index 4.1の漏斗胸に対してNuss法を施行した.術後経過は良好で術後12日目に退院した.術後35日目の夜間から胸痛,体熱感が出現し,翌日から嘔吐を認めた.近医を受診し,頻脈と単純X線検査で心拡大を指摘され,心膜炎の疑いで当院救急外来を受診した.超音波検査で心囊液の貯留と心房心室の拡張障害を認め,心タンポナーデと診断した.心囊ドレナージ術を施行したが,発熱が遷延し,排液は減少せず,細菌培養検査では菌を同定できなかった.ペクタスバー®(メディカルU&A,以下バー)の偏位もないことから,反応性の心囊液貯留と診断し,ドレナージ術後4日目にバー抜去術を施行した.抜去術後に症状は直ちに改善し,抜去術後11日目に退院した.Nuss法の合併症として,反応性の心囊液貯留による遅発性の心タンポナーデは非常に稀で重篤な合併症であり,遅発性合併症の可能性に留意してフォローする必要がある.
著者
Adam H. Sobel 堀之内 武
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.167-173, 2000-04-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
29
被引用文献数
11 12

ITCZやモンスーントラフ域で観測される回転性の総観規模風速擾乱の幾つかの側面は、大きなメソスケール対流システムに特徴的な振幅や時・空間スケールを持つパルス的加熱に対する、乾燥・静止大気の線形応答を考えることで理解できることを議論する。その鍵は、短波長のロスビー波の平均流から見た群速度、位相速度は小さいことと、加熱が赤道上よりも赤道から少し離れた位置にあるほうがロスビーモードの応答は遥かに大きなエネルギーを持つことである。故に、観測される擾乱に似た特徴を持つ総観規模ロスビー波は、大きなメソスケール積雲システムが発達する赤道を少し離れた領域に存在するということになる。
著者
川堀 真人 藤村 幹
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.154-158, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
12

脳梗塞, 外傷性脳損傷, 脊髄損傷など多くの中枢神経疾患に対して幹細胞を中心とした細胞治療が基礎的研究の段階を経て, 臨床研究の段階へと入ってきている. 一部では少人数での安全性・有効性をみるearly phaseの治験の成功を踏まえ, 比較的大人数のlate phaseの治験へと移行しつつあり, その後の上市や保険承認など産業化への道筋が見えてきている. 本発表では, 中枢神経疾患に対する幹細胞の特徴・作用機序を概説し, その後, 最近報告された運動機能障害を有する慢性期頭部外傷に対する遺伝子改変他家骨髄由来幹細胞 (SB623) の安全性と有効性に関する研究 (StemTra研究) の結果について報告する.
著者
堀 源一郎
出版者
東京大学理学部
雑誌
東京大学理学部弘報
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.32-34, 1988-03
著者
門馬 久美子 前田 有紀 梶原 有史 森口 義亮 酒井 駿 野間 絵梨子 高尾 公美 田畑 宏樹 門阪 真知子 鈴木 邦士 千葉 哲磨 三浦 昭順 堀口 慎一郎 比島 恒和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.530-543, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント・スクリーニング検査時に,良性腫瘍に関する予備知識があれば,腫瘍発見時の対応,適切な方法での組織採取が行える.・内視鏡検査にて隆起性病変を認めた場合は,存在部位,形態,表面性状,色調,硬さ,透光性,可動性,大きさ,個数,びらんや潰瘍形成の有無などを観察し,必要があればEUSの所見も加え,質的診断を行う.・最終的には,病理組織学的な診断が必要であるが,上皮が滑って生検しにくい場合は,ボーリング生検あるいはEUS-FNABにて,腫瘍本体を採取する.特に,2cmを超える腫瘍では良悪性の鑑別が必要である.・画像だけでは診断できないGIST,平滑筋腫,神経鞘腫の鑑別には,c-kit・desmin・S-100蛋白の3種類の免疫組織化学的検査が必要である.
著者
世古口 悟 廣瀬 瞳 池田 佳奈美 山根 慧己 濱田 聖子 堀田 祐馬 山田 展久 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一 松林 宏実
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.184-190, 2020-04-01 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

針刺し事故の現状およびワクチン接種の問題点を検証する目的で,2012年1月から2019年7月までに当院で報告のあった,針刺し切創・皮膚粘膜曝露138症例の検討を行った.職種は看護師52.9%,常勤医師23.9%の順で,事務職は1.4%(2例)であった.経験年数1年未満が23.2%で,汚染に伴う感染例はなかった.曝露時のHBs抗体価が10 mIU/ml未満の割合は23.7%で,HBs抗体の自然低下41.9%,ワクチン接種終了前の曝露35.5%,ワクチン不応9.7%,ワクチン接種非対象者6.5%であった.針刺し事故は,事務職にも発生しており,全ての医療従事者を対象としたワクチン接種が必要である.また就業開始前のワクチン接種による抗体獲得および抗体価の定期的な測定を検討する必要がある.
著者
恩地 森一 道堯 浩二郎 堀池 典生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.518-523, 2006 (Released:2007-02-21)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1
著者
堀 晄
出版者
金沢大学文学部考古学講座
雑誌
金沢大学考古学紀要 (ISSN:09192573)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.54-57, 2008-03-26
著者
君付 隆 松本 希 柴田 修明 玉江 昭裕 大橋 充 野口 敦子 堀切 一葉 小宗 静男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.158-163, 2011 (Released:2012-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

語音聴力検査における最高明瞭度は聴覚閾値の上昇に伴い低下する。しかし、どの程度の難聴で最高明瞭度がどの程度になるか明らかな基準はない。今回、604 耳において純音聴力検査閾値と最高明瞭度の相関関係を解析した。明らかな相関関係を認め([最高明瞭度]= - 0.92 ×[聴力レベル] + 117.04、R = - 0.83)、閾値の上昇に伴い最高明瞭度は低下した。伝音難聴では聴力レベルと比較して最高明瞭度値が良好であった。聴神経腫瘍では、中等度以上の難聴症例で純音聴力検査の悪化以上に最高明瞭度が低下していた。スピーチオージオグラム曲線の傾きは正常、伝音難聴、内耳性難聴、後迷路性難聴において差を認めなかった。ロールオーバーの陽性率は内耳性難聴で 60.6%、聴神経腫瘍で 56.6%と差を認めなかった。
著者
井上 剛志 堀部 朋宏 内海 政春 安達 和彦
出版者
一般社団法人 ターボ機械協会
雑誌
ターボ機械 (ISSN:03858839)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.359-369, 2012 (Released:2015-03-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1

A finite-element model is derived for high-pressure fuel turbopump(HPFTP)rotor system. It considers the effects of gyro-moment, axial force and rotor dynamic fluid forces acting on the impellers, the inducer, the seal, and the turbine. The damped natural frequencies, real parts of eigenvalues, and mode shapes of the rotor system are analysed over the range of 0∼45,000rpm and the results are validated by comparing them with existing experimental data. The effects of gyro-moment, axial force and rotor dynamic fluid forces on the dynamical characteristics of the system are investigated. As a result, it is shown that axial force has a small effect and is considered negligible, wheareas gyro-moment and rotor dynamic fluid force have a relatively large effect on the dynamical characteristics of the rotor system. The frequency response curve of the unbalance response of HPFTP is also obtained using a numerical simulation and the results correspond to its actual vibration phenomenon.
著者
長野 和雄 志村 恭子 三嶋 真名美 井上 司 桐山 和也 須藤 美音 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.81-94, 2020-11-12 (Released:2021-04-23)
参考文献数
39

本研究はアスファルト道路舗装材の改質によって夏季の屋外歩行者への熱的影響を緩和できるかを検討した.密粒,透水性,遮熱性,保水性アスファルト舗装および対照として芝生を加えた5種類の舗装体を豊田市内の屋外試験場に各5m四方の大きさで敷設した.観測項目は,各舗装体における鉛直温度分布・4成分放射量・蒸発水量,代表1点における気温・湿度・風向・風速・降水量・全天日射量,透水性舗装および保水性舗装の2小試験体の含水量変化であった.最も表面温度が低かったのはアルベドが約0.2であった芝生で,次いでアルベドが約0.3と最も高かった遮熱性舗装であった.アルベドが芝生と同程度であった保水性舗装の表面温度は遮熱性舗装よりわずかに高かった.これは芝生と保水性舗装では蒸発冷却によって表面温度上昇が抑えられていたためである.遮熱性舗装とは対照的に,密粒・透水性舗装はアルベドが0.1未満のため表面温度が非常に高いが,上向き短波長放射量は非常に少なかった.そのため新たに開発した体感指標・有効受感温度OETを用いて評価すると,全放射の体感影響は遮熱性舗装が最も大きく,保水性舗装が2番目に小さく,芝生が最も小さかった.ただし晴天日が続くと芝生の蒸発冷却効果は低下するが保水性舗装では継続するため,保水性舗装は歩行者の熱ストレス緩和に対し効果的と評価された.
著者
稲木 健太郎 泰山 裕 三井 一希 大久保 紀一朗 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46058, (Released:2022-07-26)
参考文献数
7

本研究は,児童が学習方法を自己選択する授業の経験と学習方法のメタ認知の関係を調査し,学力の高低ごとに検討することを目的とした.調査対象の授業を週15コマ程行った学級を高頻度群,週3コマ程行った学級を低頻度群とし,学習方法のメタ認知に関する振り返りの記述数と学力との関係を分析した.結果,経験頻度と学力の二要因が,学習方法のメタ認知的活動に関係する可能性が示唆された.一方,学習方法のメタ認知的活動を適切に行うには,学習方法を自己選択する経験だけでなく,学習方法に合わせたメタ認知的活動を適切に行うための支援や,学力下位群への支援が必要となる可能性が示唆された.
著者
岡村 明浩 島村 綾 三河 直美 山田 祥朗 堀江 則行 塚本 勝巳
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.20-00070, (Released:2021-05-13)
参考文献数
24
被引用文献数
1

人工種苗由来の完全養殖ウナギの白焼きについて,官能評価および化学・物性分析を行った。成鰻生産,焼成加工は静岡県内の養魚場,加工場で行った。同所で生産した天然種苗由来の従来型養殖ウナギを比較対照とした。官能評価では,完全養殖の方が脂ののり良く,皮がかたいと評価された。一方,化学分析では,脂質含量に差は無かったものの,粗脂肪中の高度不飽和脂肪酸は完全養殖の方が有意に少なく,官能評価に影響した可能性がある。また,物性分析によれば,身と皮の破断強度は完全養殖の方が有意に高く,官能評価の結果と一致した。