著者
西川 稿 土屋 昭彦 高森 頼雪 原田 容治 堀部 俊哉 広津 崇亮
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.237-245, 2021-05-15 (Released:2021-05-17)
参考文献数
6

【背景】がんの早期発見は重要であり,簡便で高精度ながん検査が求められている。広津らによって開発されたNematode-NOSE(以後N-NOSE)は,尿を検体として線虫Caenorhabditis elegans(以後C. elegans)の優れた嗅覚を利用した簡便ながん検査であり,先行研究では95.0%の特異度と95.8%の感度が報告されている。【対象】本研究では消化器系がん74例と非がん30例の尿検体を用いN-NOSEの性能の検証を行った。【結果】N-NOSEインデックスは,がんと非がんで有意差p<0.0001が認められ,ROC解析ではAUC=0.774が示された。がんの感度は81.1%と高く,特異度は70.0%であった。がん種別の感度は食道癌80.0%,胃癌68.8%,大腸癌80.0%,肝細胞癌90.9%,胆道癌100%,膵臓癌80.0%,ステージ別ではIで76.9%,IIで90.9%と早期から高い感度を示し,腫瘍マーカーとの大きな違いが見られた。N-NOSEインデックスと,被験者の年齢,性別,合併症,肝機能,腎機能,尿一般定性には有意な関係性は見られなかった。【結語】これらよりN-NOSEは非侵襲で高感度かつ簡便ながんのリスク検査となり得ることが示唆された。
著者
鳥居塚 和生 平井 康昭 堀 由美子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

硫酸亜鉛(5%) 20μL点鼻による嗅覚障害モデルマウスを作成し,嗅球中モノアミン含量への影響について電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー法により検討した.その結果,対照群に対して,硫酸亜鉛を点鼻投与した群のドーパミン(DA)組織重量は低下することがわかった.この嗅覚障害モデルマウスに対して,漢方処方の加味逍遥散(KSS:柴胡,芍薬,朮,茯苓,当帰,甘草,牡丹皮,山梔子,薄荷,生姜)を経口投与した群では, DA組織重量の低下が抑制された.構成生薬10種より一味の生薬を除いた処方を作成し生薬の寄与を検討したところ,加味逍遥散の脳内モノアミン含量に対する障害改善効果は,構成生薬が総て揃った処方としたときが最も高く,一味を抜くことで弱まることを確認した.また甘草,芍薬,生姜,朮が効果に大きく寄与することが示された.また感覚器入力に対する行動薬理学的検討を実施した.その結果,嗅覚障害モデル動物が記憶学習障害の評価モデルの一つとなりことを明らかにした.またこのモデルにおける嗅球におけるドーパミンレベルの著しい低下と,受動的回避課題の大幅な減衰を引き起こすことに関与する物質を明らかにする目的で,嗅球における神経伝達物質の機能を持つとされるL-カルノシン(β-alanyl-L-histidine)の関与について検討した. L-カルノシンの腹腔内投与により用量依存的にマウスの常同行動を惹起した.またこれらはドーパミン受容体拮抗剤のクロロプロマジン,ハロペリドールおよびドーパミン合成酵素阻害剤で抑制された.中枢におけるドーパミン神経系における制御にL-カルノシンが寄与することを示した.またドーパミンの再取り込み阻害剤ノミフェンシンの投与で,記憶学習障害が顕著な改善を示すことを明らかにした.
著者
松館 弘 大竹 公一 堀田 明男 藤谷 俊実
出版者
Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.4-12, 1978

航空写真撮影用無線操縦模型飛行機は, 学術調査や人跡未踏地の調査の一手段として用いられ, 航空写真撮影用プラットフォームの一つとして位置づけられてきた。<BR>しかしながら, 従来の無線操縦模型飛行機は, 安定性, 安全性, 操縦性, 作業性等に若干の問題があった。<BR>本論文は, これらの問題点を改良して, 従来の固定翼式に比較して実用上, 格段に向上した性能を持つフレキシブル翼を有する小型飛行機を設計製作し, ハッセルブラッドMK-70を搭載して行なった航空写真測量実験およびその結果について報告するものである。
著者
手塚 和佳奈 佐藤 和紀 堀田 龍也 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46046, (Released:2022-10-27)
参考文献数
13

本研究は,写真を読み取る力の育成を目指した小学校第6学年児童向けの教材に繰り返し取り組む学習指導の効果を検証した.この学習では,①児童が写真の読み取りを行った結果を文章でまとめ,②その内容を児童同士が話し合い,③最後に教師が1名の児童の読み取りの結果を学級に共有した.写真を読み取る力の育成を目指した小学校第6学年児童向けの教材に繰り返し取り組む学習指導を全14回実施した結果,10回目から写真を読み取る力が向上した.
著者
神山 真美 堀本 ゆかり 高島 恵
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.635-638, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

〔目的〕作業療法士および理学療法士の職業生活満足度に影響を与える要因を明らかにする.〔対象と方法〕本校卒業生で就業年数1年目から9年目までの作業療法士65名,理学療法士80名の計145名を対象に,WEBアンケートにて職業生活(11項目)の満足度を調査した.〔結果〕職業生活全体の満足度への影響を与える要因(標準化回帰係数)は,仕事に対するやりがい(0.279)仕事の内容(0.275),教育・能力開発のあり方(0.210),職場の人間関係・コミュニケーション(0.150),賃金(0.149),雇用の安定性(0.119)が採択された.〔結語〕自己成長・キャリアに意味付けされる要因が重要であることが示唆された.
著者
伊達 一穂 大月 敏雄 志岐 祐一 堀内 啓佑
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.88, no.810, pp.2241-2249, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
11

This study analyzed housing types called “jūtaku katashiki” and these supplied numbers to each housing estate to clarify the characteristics of housing design by type planning called “kata keikaku” of wooden row houses projects for rent by Dojunkai Foundation. The findings are as follows: 1) The housing types are 15. 2) The housing types supplied the earlier period were designed by each housing estate. The housing types of the latter period were standardized to types of two-unit by two-story and four-unit by two-story (separate households on the 1st and 2nd floors), and the "kata keikaku" method was established.
著者
黒木 暢一 堀口 みなみ 田井 博 谷口 正次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.1225-1231, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

症例は69歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.CTにて最大37mm大の含気性の腫瘤像が胃に4個と空腸に1個みられた.空腸の腫瘤は内腔を占め,口側腸管は拡張して腸液が充満していた.柿の嗜好歴があり腫瘤は柿胃石と考え,胃石が空腸に陥頓したものと診断した.腹膜刺激症状はみられず,緊急手術ではなく,まず保存的加療を選択した.イレウス管を挿入し減圧後,コーラ溶解療法を行ったところ,胃石は回腸まで移動した.最終的に回腸に嵌頓したため,経肛門的にシングルバルーン内視鏡を挿入し,鉗子口からコーラを注入,スネア破砕を行い,胃石を回収することに成功した.結石分析はタンニン98%であり,柿胃石に矛盾しなかった.
著者
堀口 逸子 本田 恭平 高田 拓哉 石橋 由基
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.85-92, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
30

本報告では,医療提供者とがん患者との間で行われる,医薬品の使用に伴う避妊の必要性に関するリスクコミュニケーションについて考察する.20歳代から40歳代の男女2,000人を対象に,Webサイトを利用した質問紙調査を実施した.10の用語のうち,最も認知率が高かったのは「抗がん剤」で79.8%だった.しかし,半数以下の用語で,認知率が20%以下だった.これらの結果から,医療提供者は情報提供の際に,コミュニケーションスキルを駆使する必要がある.「医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンス」は,患者に対して正確な情報を提供するためのツールになる.ホームページ上の表現を精査したり,用語集を用意したりすることで,医療提供者と患者双方のコミュニケーションの負担を軽減し,理解を促進することができると考えられる.
著者
堀 香苗 折田 洋造 竹本 琢司 藤田 浩志 山本 英一
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 補冊 (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.Supplement69, pp.42-46, 1994-03-10 (Released:2012-11-27)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

Foreign bodies in the paranasal sinus are not rare in the field of otorhinolaryngology. Here we report a case of a foreign body retained the paranasal sinus for 13 years.The patient was a 26-year-old woman whose chief complaint was postnasal drip. Thirteen years earlier, she had fallen from a bicycle into a bamboo thicket and a piece of bamboo had pierced the outer part of the right root of the nose. She had undergone operqtuon to remove the bamboo by an external incision, but a residual foreign body was observed by CT. We removed the foreign body by radical surgery on the paranasal sinus. Postoperative CT showed no residual foreign body and the course was good. There were no complications such as oculomotor disturbances before or after surgery.This case is reported as a patient with a long-term foreign body in the paranasal sinus. Some discussion of the literature also presented.
著者
堀 進悟 副島 京子 篠澤 洋太郎 藤島 清太郎 武田 英孝 木村 裕之 小林 正人 鈴木 昌 村井 達哉 柳田 純一 相川 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement5, pp.11-14, 1997-12-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
6

近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
著者
本村 友一 平林 篤志 久城 正紀 阪本 太吾 船木 裕 安松 比呂志 益子 一樹 八木 貴典 原 義明 横堀 將司
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.37.3_11, (Released:2023-06-28)
参考文献数
22

背景 我が国で外傷診療の質が経年的に評価された研究は少ない.対象と方法 2009-2019年に千葉県内で発生した交通事故による24時間以内死亡者のうち救急隊接触時に生命徴候が認められた患者 (patient with sign of life : SOL+) を対象とした. 警察, 消防および医療機関から経時的な情報が収集され, 事例検討会 (peer review) で各症例は「防ぎ得た外傷死Preventable Trauma Death : PTD」, 「PTDの可能性 (potentially-PTD : p-PTD) 」および「救命不能」に分類された.以下の仮説を検証した. (1) PTDとp-PTDの割合 (以下PTD率) は経年的に低下した (2) PTDとp-PTDで循環管理と止血術に問題がある (3) SOL+を多数受け入れている救命救急センターではPTD率が低い結果 対象785例のうち65例がPTD, 86例がp-PTDと判定された. 仮説(1)(2)(3)はいずれもその通りであった. (2)では70例 (46%) で循環管理/止血術に問題ありとされた.結語 千葉県の交通事故死亡事例においてPTD率は経年的に低下した. PTD/p-PTDの46%で初療室での循環管理/止血術に問題があった.
著者
佐藤 大記 二瓶 真人 堀野 智史 北沢 博 三浦 克志
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.123-128, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

【背景】そばによる即時型食物アレルギーは学童期以降で頻度が高い. また他の食品に比べ, アナフィラキシーを起こしやすく, 寛解しにくいといわれている. そばアレルギーに対する経口免疫療法の論文報告はない. 【方法】アナフィラキシー既往のあるそばアレルギー児のうち文書で同意を得られた患児に対して入院管理下に十割そばの食物経口負荷試験を行い, 安全に摂取可能な量を確認した. 自宅でそばを連日摂取し, 4週間ごとの外来食物負荷試験で20から50%ずつ増量するプロトコルで緩徐経口免疫療法を実施した. 【症例】症例1 : 8歳男児. 7歳時にそば打ちの会場でアナフィラキシーを認め, 当科を受診した. 症例2 : 11歳男児. 5歳時にそば一人前を初めて摂取しアナフィラキシーを認め, 当科を受診した. 【結果】それぞれ1年, 3年の期間をかけてアナフィラキシーをきたすことなく維持量 (150g, 200g) に到達した. 【結語】そばアレルギーにおいても緩徐経口免疫療法が有効な症例が存在することが示唆された.
著者
堀田 宣之
出版者
Society of Environmental Conservation Engineering
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.277-282, 2006-04-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
36
著者
岡本 宜高 柳原 伸洋 橋口 豊 山口 育人 小長谷 大介 堀内 隆行 野村 真理 河村 豊
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

日本やドイツなどの第二次世界大戦の敗戦国の「戦後」に関しては、戦争責任や「過去の克服」に関する研究が国内外で進展してきた。一方で戦勝国の「戦後」については、大戦中の戦略爆撃による非戦闘員の大量殺戮、大戦後の統治領域での植民地主義や人種主義の継続など、数々の問題が指摘されているものの十分な研究がなされてこなかった。こうした状況を踏まえ、本研究は戦勝国の中からイギリスに焦点を当て、大戦から受けた複合的、重層的な影響を、外交史、西洋史、文化史、科学史の知見を融合して学際的かつ包括的に検証し、「戦後」をめぐる研究に戦勝国と敗戦国という境界線を越えた形での新たな視座を提示することを目指す。