著者
于 楊 日永田 智絵 堀井 隆斗 長井 隆行
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.4F2OS25a03, 2020 (Released:2020-06-19)

近年,スマートフォンやタブレットなどデジタル端末の発展により,ユーザーが視聴できる動画は膨大な量に達している.こうした中で,消費者のニーズに対応するパーソナライズされたビデオコンテンツの分類,検索および配信は依然として解決すべき課題である.一般に,人間は情緒的特性に基づいて映画や音楽を選ぶ傾向がある.従って,感情喚起を分析することで,この課題に対して一つの指針が得られる可能性がある.動画によって喚起される感情は,オーディオとビデオの両方のモダリティに関係している.そこで本研究では,マルチモーダル情報の統合によって動画による感情喚起を推定する深層学習モデルを提案する.映画データベースを用いた実験により,マルチモーダル情報を統合したことによる推定性能の変化について検証し,従来手法に比べ推定精度が向上することを示す.また最近話題となっているAutonomous Sensory Meridian Response (ASMR) 動画を解析し,感情喚起と閲覧回数,高・低評価数など視聴者の行動との関係性を検証する.
著者
宇都宮 高賢 柴田 興彦 菊田 信一 堀地 義広
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.169-174, 2005 (Released:2009-06-05)
参考文献数
26

難治性の慢性直腸肛門痛症例,男性19人,女性42人について肛門管内を双極刺激電極を挿入し低周波電気刺激を週1~2回,一回5分間行いその効果について検討した.これら症例のうち男性9人,女性12人について低周波電気刺激前後における左側肛門管組織血流量の測定を行った.症例の肛門内圧検査を行い随意最大収縮圧100mmHg以上の症例(機能正常群)と100mmHg以下(機能低下群)に分けて検討した.男性では,機能正常群が多く,女性では機能低下群が多かったが,慢性直腸肛門痛との関連はなかった.痛みが消失するまでの刺激回数は平均3.5±1.6回であり,98%に効果を認め,59%に痛みの完全消失が得られた.肛門管組織血流量,血流速度は低周波電気刺激により男性で64%,女性で33%の有意な増加がみられた(p<0.Ol).肛門管内低周波電気刺激は,慢性直腸肛門痛症例に対して簡便有効な治療方法であった.
著者
堀内 昶 池田 清美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.836-844, 1983-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
52

原子核のクラスター模型は, はじめは殻模型を補完するものとして, 最近では広い質量数及びエネルギー領域に適用しうるものとして用いられ, 軽い核の構造とその動的性質を記述するに不可欠な模型の一つとなっている. クラスター模型は"原子核内で核子が局所的に強く相関しあう部分的小集団"であるクラスターを単位とし, そのクラスターの集合体で取扱う模型である. それ故クラスター相関が強く現れる際には, クラスター間相対運動が原子核の運動様式の基本となるとする立場の模型である. この意味で, 殻模型とは立脚点が質的に異なる模型である. この解説は, 原子核の分子的 (クラスター) 構造の我国を中心とする研究について概説し, 近年活発となって来ている周辺研究分野との結びつきについて紹介するものである.
著者
堀口 康太
出版者
日本老年行動科学会
雑誌
高齢者のケアと行動科学 (ISSN:18803474)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.66-81, 2022 (Released:2022-12-30)

本研究の目的は,組織公平性,組織からのサポート,役割葛藤および役割のあいまいさという3つの職場要因と高齢労働者の仕事への自律的動機づけとの関連を検討することであった。本研究では,組織公平性と組織からのサポートは,自律的動機づけと正の関連を示し,役割葛藤および役割のあいまいさと自律的動機づけは負の関連を示すという仮説を検証した。調査は,企業に勤務する高齢労働者771名に対して行い,558名から回答を得た(Mage=62.00歳, SD=1.35歳,男性93.7%[n=523],女性4.3%[n=24],不明2.0%[n=11])。重回帰分析の結果,組織からのサポートが自律的動機づけ(「内発・貢献・自己発揮」,「獲得・成長」)と正の関連を示し,組織公平性は「内発・貢献・自己発揮」と正の関連を示した。一方,役割葛藤は自律的動機づけと負の関連を示した。したがって,本研究の仮説はおおむね支持された。本研究から高齢労働者の仕事への自律的動機づけの維持・向上のためには,上司からの公平な人事評価,上司・同僚との間の支援的な関係性,そして,業務上の役割を明確にできるようなサポート等,支援的な組織づくりをしていくことの重要性が示唆された。
著者
乾 彰夫 樋口 明彦 佐野 正彦 平塚 眞樹 堀 健志 三浦 芳恵 Andy BIGGART
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.120-131, 2021-06-25 (Released:2023-06-26)
参考文献数
36

1990年代以降,若者の大人への移行は著しく長期化した。若年労働市場の悪化は離家や家族形成に深刻な影響を与えている。しかし国による社会保障制度の差は,それらへの影響に違いをもたらしていることが考えられる。すなわち若者への保障が厚い制度のもとでは労働市場でのリスクは必ずしも直接に離家や家族形成に影響を与えない一方,それが乏しい制度のもとでは影響が直接的であることが予想される。本研究では若者の離家と家族形成への社会保障制度の効果について,日英比較を通しての検証を行う。日本の若者への社会保障は極めて限定的である。一方イギリスのそれは近年大きく後退したもののなお一定の厚みがある。分析結果からは,家族形成において,イギリスでは労働市場におけるリスクに対して社会保障が一定の緩和機能を果たしている一方,日本ではその効果はほとんど見られないことが示された。
著者
井尻 篤木 吉木 健 根本 洋明 田中 浩二 嶋崎 等 前谷 茂樹 峯岸 則之 中村 晃三 森本 陽美記 堀 あい 米富 大祐 中出 哲也
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.53-57, 2010 (Released:2011-04-09)
参考文献数
9

MRIで嚢胞性髄膜腫と診断した犬3例をその画像所見から人医療のナタの分類より、タイプ別に分類し、手術を行った。タイプIIIの症例1、2は造影されている充実性の腫瘍のみ摘出し、タイプIIの症例3は造影されている嚢胞壁と腫瘍の両方を摘出した。その結果、全症例において症状の改善がみられ、症例1は嚢胞の内容液の分泌能が低下し、症例2、3は嚢胞が消滅した。症例3は腫瘍が新たに摘出部位の反対側から発生したが、3年生存している。

2 0 0 0 OA 鼻閉と音声

著者
平川 勝洋 益田 慎 川本 浩子 堀部 よし恵 石井 秀将 夜陣 紘治
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.162-168, 1997-05-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Nasal obstruction is evaluated by several methods, such as measurement of nasal resistance with a nasomanometer and of nasal capacity by acoustic rhinometry, while in everyday life nasal obstruction is sometimes impressed (evaluated) by an acoustic clue, i.e. hearing the voice.In this study the possibility that acoustic impression allows evaluation of nasal obstruction was examined in normal volunteers and patients who underwent sinus surgery. The acoustic impression of nasal obstruction, the nasal flow resistance and the nasal cavity volume were compared with self-evaluation values of obstruction. The coincidence rate of evaluation by acoustic impression is equal to that of the nasal flow resistance. Acoustic analysis of the humming sound suggests a possibility that the nasal obstruction indicator is in the regions below 800Hz and above 3000Hz.
著者
井上 学 道堯 浩二郎 高橋 和明 安倍 夏生 岡 清仁 布井 弘明 上田 晃久 島瀬 公一 日浅 陽一 堀池 典生 三代 俊治 恩地 森一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.459-464, 2006 (Released:2007-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
12 11

症例は,54歳の女性.全身倦怠感と黄疸と肝機能異常(T.Bil 2.9mg/dl, AST 1143IU/l, ALT 1767IU/l, γ-GTP 158U/l)により急性肝炎と診断.入院後,安静のみで経過観察し,劇症化,遷延化することなく軽快退院した.海外渡航歴,薬剤服用歴はなく,A, B, C型肝炎ウイルスマーカー陰性,抗核抗体陰性.発症1カ月前にイノシシ肉を摂取していたため,E型肝炎ウイルス(HEV)マーカーを測定したところ,IgM型HEV抗体及びHEV-RNAが陽性であり,急性E型肝炎と診断した.HEV genotypeは3型であった.当初はイノシシ肉の摂食による感染が疑われたが,調理行為により感染した可能性も考えられた.海外渡航歴のない国内発症の急性E型肝炎としては,本例が四国からの初報告例となる.
著者
河岡 義裕 堀本 泰介 五藤 秀男 高田 礼人 大隈 邦夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

インフルエンザは毎年のように高齢者やハイリスクグループの超過死亡の原因となっている。また前世紀には3度の世界的大流行を起こし、数千万人もの命を奪った。ワクチンは感染症予防において最も有効な手段のひとつである。現在わが国で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、症状の重篤化は予防できるが、感染そのものの予防には限界がある。米国で承認された弱毒生ワクチンは数アミノ酸が自然変異によって変化した弱毒化ウイルスであり、病原性復帰の危険性が指摘されている。1999年に我々が開発したリバース・ジェネティクス法により、任意に変異を導入したインフルエンザウイルスを人工合成することが可能になった。本研究では、リバース・ジェネティクス法を用いて、より安全かつ効果的なインフルエンザ生ワクチンの開発を目的とした。今回は、インフルエンザウイルス増殖に必須の蛋白質であるM2蛋白質に欠損変異を導入し、生ワクチン候補株となるかどうかを確認した。M2蛋白質に欠損変異を導入したウイルス株は、培養細胞を用いると親株と同様に効率よく増殖するが、マウスを用いた実験では弱毒化していることが明らかになった。このようにリバース・ジェネティクス法を用いることで、従来の生ワクチンよりも安全なワクチン株の作出が可能になったといえる。今後は、他のウイルス蛋白質にも人工的に変異を導入し、さらに安全で効果的なインフルエンザ生ワクチンの開発に努める。
著者
堀田 一樹 木村 正典 宮田 正信 竹中 幸三郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.203-206, 2010 (Released:2011-03-16)
参考文献数
8

観葉植物のポトスとサンセベリアを用いて,明,暗条件下での植物のガス交換とホルムアルデヒド濃度を閉鎖系チャンバー内で測定した。その結果,ポトスでは暗期よりも明期で活発なガス交換がみられるとともに,ホルムアルデヒド濃度も明らかに低下した。一方,サンセベリアは暗期でガス交換が若干みられ,ホルムアルデヒド濃度も低下する傾向が若干みられた。以上のことから,観葉植物のホルムアルデヒド除去効果には植物のガス交換が影響していることが示された。しかし,ガス交換とは関係なくホルムアルデヒド濃度が減少していたことから,植物体への吸着の可能性が示された。
著者
山口 由美 五條堀 孝
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-6, 1996-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
25
著者
森田 健宏 堀田 博史 佐藤 朝美 松河 秀哉 松山 由美子 奥林 泰一郎 深見 俊崇 中村 恵
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.61-77, 2015 (Released:2017-09-14)
参考文献数
40

乳幼児のメディア使用については、その賛否や使用のあり方など、わが国でも様々な研究や提言等が見られるが、それらに大きな影響を及ぼしている先行的な知見の1つにアメリカの専門機関における声明文等がある。本研究では、最近発表されたアメリカ小児科学会(AAP)の「Media Use by Children Younger Than 2 Years.(2011年11月)」およびアメリカ幼児教育協会(NAEYC)「Technology and Interactive Media as Tools in Early Childhood Programs Serving Children from Birth through Age 8.(2012年1月)」の内容について、関連する文献と共に調査し、わが国における今後の乳幼児のメディア使用の課題について検討した。
著者
堀川 将幸 藤村 諒 佐藤 浩一郎 寺内 文雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.4_45-4_54, 2022-03-31 (Released:2022-04-26)
参考文献数
16

本稿では,精神的充足に向けたデザインを行うための指針を導出することを目指し,習慣化に関する主体的行動を対象とした精神価値の成長要因を明らかにしている。具体的には,まず,ハマるに至るきっかけから定着化するまでの習慣化に関する主体的行動を調査し,その経験価値の変化の特徴を分析し,これらの結果に基づいた経験価値変化モデルを提案している。次に,習慣化,定着化に至った主体的行動の事例を対象として,評価グリッド法とクラスター分析を実行した。その結果から,習慣化に関する主体的行動における精神価値の成長に起因する4つの心理状態「高揚感」「平穏感」「好奇心」「向上心」が,価値実感期,価値成長期,価値定着期の3期において変化し,定着化するプロセスを示している。また,各状態の具体的な成長要因として,価値実感期での感動体験や潤沢な体験,価値成長期での共同体験や上達体験,価値定着期では日常化体験や到達体験を導いている。さらに,これらの成長プロセスの変遷を考察することで指針構築の一助とした。
著者
堀田 一弘
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.258-267, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
90
被引用文献数
1

画像認識分野では,ILSVRC2012でconvolutional neural networkが圧倒的勝利を収めて以降,大量の教師付き画像とconvolutional neural networkを用いることがデファクトスタンダードとなった.しかし,最近になり,教師なし表現学習やconvolutional neural networkとは異なる方法であるTransformerを用いた認識法が提案され,ディープラーニングに基づく画像認識は更に進展しつつある.本稿では,教師なし表現学習とTransformerを中心に最近の画像認識の研究動向を紹介する.
著者
金子 仁 Cecchini Nicole M. 清水 敬樹 光銭 大裕 堀越 佑一 松吉 健夫 鈴木 大聡 佐藤 裕一 三宅 康史
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.844-851, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

アメリカ合衆国パラメディックは,病院前救護で多彩な医療行為を実践する。このパラメディックを養成する1施設の調査を行った。全米標準カリキュラムに基づいた教育プログラムと学生64名の臨床経験を調査した。課程期間44週間で学生は516時間の講義とシミュレーション手法を含む実習,病院実習234時間(以下,中央値),救急車同乗実習329時間,救急車でのインターンシップ80時間を経験した。この間,学生は成人患者136人,高齢者82人,小児43人の傷病者・患者,それに伴う病態を多数経験した。指導および監督下で,学生は実際の傷病者・患者に対して経口気管挿管5回,静脈路確保86回,薬剤投与106回を含む侵襲的処置を実施した。救急車同乗実習では学生が主体でチーム指揮,傷病者対応を行う実践的実習が実施されていた。米国の標準的パラメディック養成教育は長時間の病院と救急車での臨床的経験を提供し,侵襲的処置を自ら判断,実施するon-the-job教育が行われている。
著者
井上 和久 堀 彰穂 友成 真一
出版者
日本国際観光学会
雑誌
日本国際観光学会論文集 (ISSN:24332976)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-122, 2015 (Released:2019-06-12)
参考文献数
49
被引用文献数
1

The content tourism and “the Holy Land pilgrimage” are established as a general noun, and have been increasingly taken up by the media. This study is intended to consider about the way of regional formation clarifying the utilization of the contents. This paper took up cases which apply contents on railways in Japan, and clarified the effectiveness of regional formation. The examined cases are in the area of tourist resort, streetcar and local train. In addition, this paper took up and analyzed the cases of Kyoto city especially. Furthermore, this paper clarified the problems of regional formation by applying of contents and suggested the ways of solution considering sustainable regional formation.
著者
並木 淳 山崎 元靖 船曵 知弘 堀 進悟 相川 直樹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.295-303, 2009-06-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
16

【目的】救急患者の意識レベル評価に際し,わが国で広く用いられているJapan Coma Scale(以下JCS)による誤判定の要因を明らかにする。【方法】当救急部で3年間に取り扱った救急車搬入の患者データベースから,頻度の高い8通りの意識レベルをGlasgow Coma Scaleのeye, verbal, motor(以下EVM)スコアに基づいて選択し,模擬患者が演ずる意識レベルを標準的な手順で診察するシミュレーションビデオを作製した。経験の少ない医療従事者として 1 年目初期臨床研修医94人を対象に,ビデオを用いたJCSによる意識レベルの判定テストを行い,その解答結果を解析した。【結果】JCSの誤判定率は, 8 つの設問の平均で19 ± 15%(平均±標準偏差)。JCS 0, 300の誤判定は稀だったが,JCS 2, 10, 200は20%以上の誤判定率であった。設問のJCSスコアと誤判定されたJCSスコアを対比すると,意識レベルを良い方に誤判定する傾向が示され,とくに軽度~中等度の意識障害でその傾向が強かった。設問でシミュレーションされたEVMスコアと誤判定されたJCSスコアを比較した結果,JCS誤判定の主な要因は次の3点であった。1)最良運動反応の「M4:逃避(正常屈曲)」を 「JCS 100:はらいのけるような動作」とする誤り。2)発語反応の「V4:会話混乱(見当識障害)」を「JCS 0:意識清明」とする誤り。とくに最良運動反応が「M6:命令に従う」の場合に「JCS 0:意識清明」と誤判定される。3)開眼反応における「E3:呼びかけによる」をJCS 1 桁とする誤り。とくに発語反応が「V4, 5:会話可能」な場合にJCS 1 桁と誤判定される。【結論】JCSによる救急患者の意識レベル誤判定の主な要因は,逃避と疼痛部位認識の運動反応の区別,見当識障害と意識清明の区別,呼びかけによる開眼反応の判定である。