著者
亀山 祐美 田中 友規 小島 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

2025年には日本に認知症患者が700万に増えると予測されており、その前段階の軽度認知障害MCIも400万人程度いると言われている。正常からMCIになる、また、MCIから認知症になる高齢者を早期に発見し、介入できるよう、認知症早期発見ツールを開発し一般化させることを予定している。認知症の早期発見ツールは、どこでもでき、特別なスキルを要さず、簡便、安価であることが求められている。高齢者健診の一環で、スクリーニングができることが理想である。顔(表情)で認知症を診断できないだろうか。顔や声をAIで認知症か正常かスクリーニングできれば、採血や注射、放射線、腰椎穿刺などの侵襲は一切なく、費用も安い。
著者
小島 登喜子 末高 武彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.663-674, 1997-10-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

歯科衛生士の職業寿命や需要供給量について明らかにするため,17都府県に在住する歯科衛生士1,712人を対象として「歯科衛生士の業務従事状況調査」を実施した。回答者は749人であり,歯科衛生士免許取得後の既婚率は6〜10年目で57%, 16〜20年目で88%である。歯科衛生士業務への従事率は,未婚者では1〜5年目で94%, 6〜10年目で88%,11〜15年目で82%, 16〜20年目で77%であり,既婚者ではそれぞれ61, 50, 48, 55%である。このうち,フルタイム従事者は,未婚者では1〜5年目で98%で,その後徐々に低下し16〜20年目で87%となり,既婚者では1〜5年目で92%で,その後次第に低下し16〜20年目で68%となる。日本人女性の将来生命表に基づく死亡率と上記の既婚率,業務従事率,フルタイム従事率をもとに,歯科衛生士免許取得者1万人の免許取得後40年目までの業務従事率を推計すると,フルタイム従事率は10年目で58〜66%,20年目で37〜44%, 40年目で35〜42%となる。また,パートタイム従事者も加えた総従事率は10年目で64〜71%,20年目で54〜60%,40年目で52〜58%となる。歯科衛生士養成数が現在の入学定員で今後も推移すると仮定したとき, 2020年における業務従事歯科衛生士推計数は,フルタイム従事者が約126,000〜145,000人となり,パートタイム従事者も加えると約160,000〜177,000人となる。
著者
平川 経晃 小寺 良尚 福田 隆浩 公益財団法人日本骨髄バンク 黒澤 彩子 田島 絹子 山崎 裕介 池田 奈未 小島 裕人 田中 秀則 金森 平和 宮村 耕一
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.153-160, 2018

<p>骨髄バンクコーディネートにおける実情把握を目的として,2004年1月~2013年12月に日本骨髄バンクへ登録された患者18,487人,ドナー延べ223,842件の解析を行った。末梢血幹細胞移植例は除外した。移植到達患者あたりのコーディネート件数の中央値は11件,登録から移植までの日数中央値は146日,登録患者の40%が移植未到達であった。HLA6/6抗原フルマッチドナー推定人数が多い場合に,移植到達率が上昇し,移植到達日数が短縮した。ドナー側のコーディネート終了理由は年齢・性別で異なり,20代男性ドナーは健康理由による終了率が低く,ドナー都合による終了率が高かった。複数回コーディネートを受けたドナーのうち,前回の終了理由が患者理由の場合,ドナー理由で終了した場合と比較して採取到達率が高かった。本結果を基盤情報として,より効率的で迅速なコーディネートを目指した施策の検討が必要であると考えられた。</p>
著者
小島 泰雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

1.中国の辛い地域<br> 四川料理が辛いことを説明するのは、夏が暑いことを論じるようなある種の徒労を感じる作業である。「麻辣」が正しい辛さの表現である、四川料理にも辛くない料理がある、湖南人の方が「怕不辣」であるといったことも、耳を傾けるべき指摘であるが、ここでは中国のどこが辛い料理を好むのかについてなされた興味深い報告を紹介したい。藍勇(2001)は、シリーズとして刊行された中国12省市の料理書の調味記載を定量的に分析(「辣度」)し、辛さの地域分化を提示している(下表)。この表は、中国食文化の多様な地域的展開において、一つの特色ある地域文化として四川料理を捉えるべきことを示唆している。<br>2.とうがらしの伝播<br> 辛い四川料理はそれほど長い歴史をもつものではない。その辛さにはとうがらしが主たる貢献をなしていることから、新大陸原産のそれが四川に到達して以降であることは容易に思い至るだろう。<br> この方面の研究も近年、詳細さを深めている。丁暁蕾・胡乂尹(2015)は、明清期の地方誌に記載されたとうがらし関連の記載を全国にわたって丹念にたどり、とうがらしの中国国内での伝播を復原している。初期のとうがらしの呼称である「番椒」は、明朝末期から18世紀までは主に東南沿海地区と黄河中下流という離れた2つの地域で確認され、19世紀前半に東南沿海から北上および内陸に展開している。四川の方志にとうがらしの記載が見られるのは、19世紀になってからとする。方志が数十年間隔で編纂されたことを加味するならば、四川でのとうがらしの普及が18世紀に遡る可能性はあるが、それにしても清朝中期のことである。<br> 新大陸原産の作物が、現代中国の農業と食において欠くべからざる存在となっていることは、とうもろこしやさつまいも、じゃがいもといった主食となる作物、あるいはトマト、なす、かぼちゃといった野菜の名を挙げるだけで十分に理解されよう。これらの入っていない中国料理はなんとみすぼらしいことだろうか。こうした新大陸原産作物の伝播は、時間と空間において決して単純なものではなく、繰り返し様々なルートでもたらされたものとされる(李昕昇・王思明2016)。<br>3.自然地理と歴史地理<br> 熱帯で栽培される胡椒と異なり、とうがらしは温帯でも栽培できる香辛料であり、新大陸から運び出された種子は持ち込まれた世界各地に定着していった。食文化の地域性は、その素材となる動植物の分布・農牧業を媒介項として、気候や地形といった自然地理と結びつけられて解釈されることが一般的である。中国は季節風により夏季温暖多雨であり、とうがらしは農耕地域であればほとんどの地域で栽培しうる。したがって中国における辛さを好む地域性は異なる理路で説明されることが求められることとなる。<br> とうがらしは、寒冷や湿潤に伴う身体的反応と結びつけられてきたが、類似の気候条件で辛さを好まない地域を容易に提示できることから明らかなように、環境決定論的な単純な推論は説得力を持ち得ない。そこで考慮すべきなのが、社会経済的な、あるいは文化的な、言い換えれば歴史地理的な推論である。<br> 現在、中国では各地で四川料理が食べられているが、共通するのがその庶民性である。とうがらしの入った料理は素材の善し悪しをそれほど問わない。とうがらしが定着していった清朝中期、四川はまさにフロンティアであった。多くの移民を受け入れ、人口過剰な情況になった四川には普遍的な貧しさがあり、「開胃」(食欲増進)に顕著な効果のある(山本紀夫2016)とうがらしは、地域住民に歓迎されたと考えられる。<br> ただし前近代の農村の不安定性は、四川に特権的な貧しさを認めないであろう。そこで食文化の連続性が浮かび上がる。中国在来の香辛料である花椒が陝西から四川にかけて多く使われていたとする指摘は、さらに深く考究してゆくに値するであろう。<br> モンスーンアジアに視野を拡げると、胡椒産地であるインドが熱烈なとうがらし受容地域であるのに対して、食文化に関して多様な地域性をもつ中国がとうがらしの受容において選択的であることは、まさに食文化の連続性を物語る対照性と言えるのではないであろうか。
著者
小島 廣光
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.7-44, 1984-12
著者
小島 庸平
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.315-338, 2011-11-25 (Released:2017-05-19)

本稿は,長野県下伊那郡座光寺村で農村負債整理組合法に基づいて実施された無尽講整理事業の実施過程を分析することを課題とする。座光寺村では,1920年代の養蚕ブームを背景に,インフォーマルな金融組織である無尽講が「濫設」されていたが,大恐慌期にはその多くが行き詰まり,村内における階層間対立を激化させる一因となっていた。だが,戦間期の無尽講は,部落や行政村の範囲を超えた多様な共同性の中で組織されており,債権債務関係と保証被保証関係が複雑に折り重なっていたため,その整理は極めて困難なものであった。無尽講をターゲットとした同村の負債整理事業は,進捗自体は極めて遅々としていたものの,地縁的な関係を超えて集団的に取り結ばれた無尽講の貸借関係を,同一部落内における個人間での「区人貸」に再編し,その結果,30年代後半の経済好転に伴う余剰資金の預金先は,産業組合に代表される制度的な金融機関へとシフトしていった。無尽講の整理を1つの目的とした農村負債整理事業の歴史的意義は,「講」型組織の「村」型組織化(を通じた解体)にあったと言うことができる。
著者
加藤 茂 酒井 裕司 小島 紀徳
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.305-317, 2013 (Released:2014-09-17)
参考文献数
70

Vegetated coastal habitats - mangrove forests, salt-marshes and seagrass meadows - for blue carbon sink purposes are very important ecosystems. They provide valuable ecosystem functions, including a large carbon sink capacity and very rich biodiversity for human sustenance. Mangrove forests are considered bio indicators among marine-river estuary ecosystems in sub-tropical and tropical regions of the world. It is a unique habitat for several fresh and salt water species. The present research is aimed at studying the carbon accumulation and food cycle system in a rehabilitated mangrove site in southern Thailand. The rehabilitation of mangroves at abandoned shrimp ponds in Nakhon Si Thammarat, southern Thailand, has been taking place since 1998. Almost seven million mangrove trees have been planted over 1200 ha of abandoned shrimp ponds and new mud flats. It is observed that the mangrove plantation increases the population of species like crab, shellfish, shrimp and fish at the rehabilitated mangrove site. The food cycle system of the rehabilitated mangrove site and its surrounding mangrove forests is being studied. Stable isotopes such as δ15N and δ13C are monitored as a primary parameter to study the food cycle system in the mangrove forests and the coast around the mangrove forests. It has been found that the δ15N content in living organisms gradually accumulates from small phytoplankton to large fish in the food cycle system. The δ13C content in living organisms also gradually accumulates from phytoplankton to large fish in the food cycle system. The analysis data reveals that carnivorous fish enter the 12 to 13th stage of the food cycle system, which is triggered by the fall of mangrove leaves in the rehabilitated mangrove forest. Carbon portion of the soil also increased at the rehabilitated mangrove planting site. The rehabilitated mangrove forest will act as a sink source for atmospheric carbon and develop rich biodiversity of a marine-river estuary ecosystem.
著者
小島 匡治
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.294_1, 2017

<p> スポーツ基本法や2020年東京パラリンピック開催などを背景に、障害者スポーツへの理解促進と共生社会実現の取組が進められている。競技レベルの認知度が高まる一方で、レクリエーションや日常生活レベルに対する環境整備も課題となる。そのような中で我々は、高校卒業後成人移行期にある重度肢体不自由者対象の支援を試みている。この対象群は、卒後の生活環境変化から余暇が上手く過ごせず、身体的疲労やストレス蓄積などの問題を抱え、それが生活習慣病や二次障害を引き起こすことも予測される。また、外出には介助が必要なため、家族の負担が高まるなどの問題も抱える。そこで、平成26年度より、作業所帰りにスポーツセンターで同様な課題を抱える同世代の仲間と運動・スポーツに親しみながら、運動習慣のきっかけづくりを支援するプログラムに取組んできた。その結果、スポーツを通じた健康管理をより主体的に行なうようになるなどの変化が現れている。そこで、今回は、これまでの実践結果を考察し、今後に向けた支援のポイントを報告する。</p>
著者
水落 次男 小島 直也
出版者
東海大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

感染症に対する生体防御において細胞性免疫反応の重要性が報告され、病原体に対する細胞性免疫を誘導するワクチンの開発が感染防御や発症の制御に重要であることが指摘されており、そのためには細胞性免疫を誘導できるアジュバントが必要である。しかし、ヒトに対して使用できる安全なアジュバントは見あたらない。そのため、細胞性免疫誘導能をもち、しかもヒトに対して毒性がなく安全なアジュバントの開発は、今後の感染症に対するワクチンの開発にとって非常に重要である。我々は、ヒトの生体内に広く存在する糖蛋白質の特定の糖鎖と脂質から成る人工糖脂質の作製に成功し、この人工糖脂質で被覆したリポソームに封入抗原に対する細胞性免疫を強く誘導するアジュバント作用があることを見いだした。そこで本研究では、この人工糖脂質被覆リポソームを様々な感染症に対する細胞性免疫誘導型ワクチンのアジュバントとして利用するために、感染モデルとしてHIVおよびリーシュマニア原虫を用いて、これら病原体に対する蛋白質・ペプチドワクチンやDNAワクチンを試作し、そのワクチン効果を評価し、抗原提示細胞を用いて人工糖脂質の作用機構を解析する。本年度は、リーシュマニア原虫を用いたワクチン効果の評価系の確立を試みた。マンノペンタオース(M5)とジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を還元アミノ化反応で化学的に結合させM5-DPPEを合成した。また、リーシュマニア原虫から可溶性蛋白質を調製し、この可溶性蛋白質を抗原とし、この抗原を封入した人工糖脂質被覆リポソームを作製した。この抗原封入人工糖脂質被覆リポソームでBalb/cマウスを免疫後、リーシュマニア原虫をマウスのfoot padに経皮感染させ、感染によるfoot padの腫脹を経時的に測定し、人工糖脂質被覆リポソームワクチンのリーシュマニア原虫感染に対する有効性の評価を行った。その結果、抗原のみあるいは人工糖脂質で被覆していない抗原封入リポソームで免疫したマウス群は著しいfoot padの腫脹が認められたが、この抗原封入人工糖脂質被覆リポソームで免疫した群のマウスではfoot padの腫脹は対照群と比べて顕著に小さかった。この結果は、この抗原封入人工糖脂質被覆リポソームで免疫することによって、リーシュマニアの感染がある程度予防できたことを意味している。
著者
松岡 温彦 加納 郁也 小島 敏宏 小林 一 佐藤 道彦 水野 統夫 宮崎 泰夫
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-29, 2010

Resort Office Research Group has continued the research for three years and this paper is our final report. We discussed, had fieldworks, and carried out an experimental project. We could deepen the concept of the resort office and make clear its problems. We classified the resort office into two types: individual type and corporate type. The former is offices that self-employed individuals open at resort places on their own accounts, and the latter is offices that firms open for their management purpose. These two types are different from each other in some respects. We think that corporate type is harder to develop than individual type because of economic reasons. Nevertheless, we emphasize the importance of the resort office. The merit of the resort office is creativity and it is the key element of the global competition in the knowledge society.
著者
黒崎 瞳 小島 慶子 山本 貴子 山口 佳奈江 関田 洋子 田内川 明美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.301, 2011

<はじめに><BR>脳疾患患者は呼吸筋の麻痺や委縮・咳嗽反射の低下、長期臥床により肺合併症発生リスクが高くなる。<BR>A病棟は2010年1年間で脳疾患患者のうち意識レベルJCS_III_桁・挿管患者の40%が肺合併症を発症していた。そこで、スタッフの呼吸ケアに対する意識の向上が必要だと感じ勉強会・チェックリスト表を用いた結果、呼吸ケアに対する意識向上につながったので報告する。<BR><研究方法><BR>1 期間:2011年1月~4月<BR>2 対象者:病棟看護師23名<BR>3 方法:<BR>(1)呼吸理学療法の勉強会<BR>(2)呼吸ケアチェックリストの作成・活用<BR>(3)勉強会・チェックリスト使用前後でのアンケート調査<BR><倫理的配慮><BR>アンケートは個人が特定できないように無記名とし、知りえた情報は研究以外に使用しないことを説明した。<BR><結果><BR>勉強会への出席率は52%。欠席したスタッフにも勉強会のプリントを配布した。<BR>呼吸ケアはチェックリストを用い清潔ケア時・検温時に観察した。<BR>アンケート回収率は勉強会前後ともに95%であり、チェックリスト使用率は78%だった。<BR>アンケート結果では背部の聴診・正しい部位を聴取しているスタッフは勉強会前0%、勉強会後95%であった。<BR>またチェックリスト活用後はステートを持ち歩くようになったと100%回答し、チェックリスト以外でも肺音を聞くようになったスタッフ90%であった。<BR><考察><BR>勉強会後に背部の聴診・正しい部位を聴取しているスタッフが増加した事から、実施不十分だった背景には知識不足や意識が低かった事、が考えられる。また、一人では体動不能な患者の背部聴取が困難であったが2人で実施することで統一が図れた。このことから多忙な業務の中でも日常業務の1つとして根拠をもって呼吸ケア実施することで、意識付けにつながったと考えられる。<BR><まとめ><BR>肺ケアに対する看護師の意識向上には、観察やケアの根拠や必要性を理解し、日常業務の中にとりこみ継続していく事が有効である。
著者
竹田 圭佑 竹島 英祐 小島 聖 渡邊 晶規 松﨑 太郎 細 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0726, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】関節拘縮の予防,治療は理学療法士の責務であるといっても過言ではない。関節拘縮の病理組織学的観察を行った先行研究では,関節前方にある脂肪体の萎縮,線維増生,うっ血を認めている。関節における脂肪体は,その柔軟性による関節周辺組織の保護だけでなく,関節運動の緩衝材としての役割を担うとされ,関節可動域運動(以下,ROM-ex)では脂肪体の可動性が確認されている。関節拘縮予防や治療の目的で,脂肪体に対しマッサージやストレッチを行い柔軟性の維持・改善を図る手技が散見されるが,脂肪体に対する機械刺激の効果や組織学的変化は不明である。そこで今回,ギプス固定期間中の膝関節にROM-exを行い,関節拘縮(膝蓋下脂肪体の変化)の予防効果を組織学的に観察,検討を行うことを目的とした。【方法】対象は8週齢のWistar系雄ラット15匹(256~304g)を用いた。1週間の馴化期間を設けた後,無作為に通常飼育のみ行う群(以下,正常群)(n=5),不動化のみ行う群(以下,拘縮群)(n=5),不動期間中にROM-exを行う群(以下,予防群)(n=5),の3群に振り分けた。不動化は右後肢とし,擦傷予防のため,予め膝関節中心に後肢全体をガーゼで覆い,股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大底屈位の状態で骨盤帯から足関節遠位部まで固定した。固定肢の足関節遠位部から足趾までは浮腫の有無を確認するために露出させた。予防群へのROM-exは,期間中毎日ギプス固定を除去し,麻酔下で右後肢に10分間実施した。ROM-exは約1Nの力で右後肢を尾側へ牽引し,その後牽引力を緩める動作を10分間繰り返した。速度を一定に保つためメトロノームを用い,2秒間で伸展―屈曲が1セット(1秒伸展,1秒屈曲)となるようにした。実験期間はいずれの群も2週間とした。期間終了後,実験動物を安楽死させ,股関節を離断して右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節を通常手技にてHE染色標本を作製した。標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。観察部位は,関節前方の膝蓋下脂肪体とし,取り込んだ画像から脂肪細胞の面積を計測した。各群の比較には,一元配置分散分析を適用し,有意差を認めた場合には多重比較検定にTukey-Kramer法を適用した。有意水準は5%とした。【結果】拘縮群,予防群では同様の組織変化がみられ,膝蓋下脂肪体における脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。脂肪細胞の面積は正常群1356.3±275.1μm2,拘縮群954.6±287.7μm2,予防群1165.0±316.6μm2で全ての群間において有意差が認められた(p<0.05)。【結論】ギプス固定による2週間の関節不動によって膝蓋下脂肪体には脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。不動化により脂肪体は萎縮するものの,予防介入することでその萎縮は軽減できることが示唆された。
著者
桑原 聡 平山 惠造 小島 重幸
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.104-112, 1993-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1

小脳・小脳脚梗塞47例において臨床症状とMRI所見を分析し, 病変部位と運動失調の予後との関係および小脳内体性局在を検討した.四肢の運動失調は41例でみられ, 発症後1年以内に消失した予後良好群は32例 (78%) で, 1年以上持続した予後不良群は9例 (22%) であった.小脳皮質または下小脳脚病変側の予後は良好であるのに対し, 歯状核+上小脳脚あるいは中小脳脚全体の病変例の予後は不良であった.小脳求心系病変 (中, 下小脳脚) と遠心系病変 (歯状核, 上小脳脚) の運動失調に差異はみられなかったが, 後者では後に企図振戦, 律動性骨格筋ミオクローヌスが出現し日常生活動作を妨げた.四肢の運動失調と小脳病変局在との関係は認められなかったが, 失調性構音障害は小脳上部病変で, 眼球測定異常は小脳下部病変で多く発現し, 小脳における体性局在を示唆するものと思われた.