著者
大島 康行 角皆 静男 小川 利紘 内嶋 善兵衛 樋口 敬二 根本 敬久
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

国際学術連合は1990年から10年計画で“地球圏一生物圏国際協同研究計画"(IGBP)ー地球変化の研究ーを実施することを1986年のベルンの総会で決定した。この研究は生命をはぐくんでいるかけがえのない環境、全地球システムで起っている変化、さらに人間活動による影響の在り方を、全地球システムを調節している物理的、化学的、生物的過程の相互作用の面から記述し、理解することを目的としている。1986年以来IGBP特別委員会で精力的に研究計画が検討され、4つの研究領域とこの領域の研究を進めるための共通プログラムを設定した。さらにこれらを基礎に13のコアプロジェクト案が提出されている。本研究班は国際的に対応しつつ、日本における実施計画案を関係諸学会の意見を聞きつつ、また日本学術議のIGBP分科会(人間と環境特別委員会)と緊密な連絡をとりつつ日本における実施計画案の精細についてまとめ、また研究組織について検討した。検討の過程で(1)地球変化は地球の物理・化学・生物の諸過程の複雑な相互作用によっており、従来には例をみない多数の分野の研究者がそれぞれの課題ごとに密接な協力が必要であること。(2)国際研究計画に積極的な役割を果すため国際的、地域的協力のもとに独創的な研究を進めること。(3)日本の地理的条件と研究者層、研究の現況を考慮して研究対象地域を設定すること。を確認し、広義のモンス-ンアジア地域、西太平洋地域、極域を主たる研究地域に設定した。また次の6つの研究の柱をたて各課題を研究することとした。その柱は(1)大気微量成分の変質および生物圏との変遷、(2)海洋における物質循環と生物生産、(3)陸上生物群集への気候変化の影響、(4)気圏・水圏・陸圏と生物圏間の相互作用を考慮した気候解析とモデリング、5)環境変化のモニタリング、(6)古環境の変遷、である。
著者
大島 康行 広瀬 忠樹 内嶋 善兵衛 小川 利紘 角皆 静男 吉野 正敏
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1991

国際学術連合(ICSU)で計画された地球圏ー生物圏国際協同研究(IGBP)は検討を重ね1990年秋5つの課題について研究がまず始められた。日本も積極的にこの研究計画に参加協力するため,昨年学術会議,改租されたIGBP国内委員会と密接に連絡をとりつつ、本研究課題の研究を進めた。1.関連国内外の関係諸機関と連繋し,関係資料の収集整理を行なった。資料は大島,吉野で保管している。2.すでに実施している5つの課題については,各課題ごとに小委員会をつくり,日本の実施計画の検討と各国際SSCの連絡にあたっており,一部は研究が開始された。(旅費は主として各小委員会の開催に使用)3.日本の実施計画案の英文レポ-ト(JAPANーIGBP REPORT No1)をつくり,国際機関,国内機関,各国関係者に配布した。4.国内に広く情報を衆知させるため,IGBPニュ-スNo1,No2を作成し,関係各所に配布した。5.日本学術会議主催のIGBPシンポジウムの報告を英文で作成,近く出版の予定である。6.本研究班が中心になり,アジアーモンス-ン地域を中心としたIGBP国際シンボジウムを早稲田大学国際会議場で1992年3月27日〜29日開催する。全体会議は組織委員会を兼ねて行はれた。プロン-デングは本年秋出版の予定である。
著者
麻生 武彦 岡野 章一 藤井 良一 前田 佐和子 野澤 悟徳 三好 勉信 佐藤 夏雄 江尻 全機 佐藤 薫 小川 忠彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

最終年度におけるそれぞれのサブテーマの実績概要は以下のとおりである1.EISCATレーダーによる極域電磁圏熱圏大気ダイナミックスに関しては2003年11月11日から19日における8日間のキャンペーンデータ等をもとに、流星レーダー等との比較、イオン温度からの中性温度の導出における定量的な誤差評価、中性温度における大気潮汐成分の解析検討、F層イオン温度の緯度分布と電離層等価電流の分布の比較による両者の密接な関連の解明等を行った さらに下部熱圏における大気ダイナミクスの理解のため、EISCATキャンペーン観測データ解析から準2日波、大気潮汐波、平均風の高度変動および緯度変動、イオンドラッグ加速度、コリオリ加速度、および全加速度の導出とそれらの比較を通してのイオンドラッグの重要性の吟味等を行った。またオーロラ粒子エネルギー導出のための4波長フォトメータ観測をトロムソにて実施し、電子密度高度分布をEISCAT観測データと比較した2.流星レーダーによる極域中間圏・下部熱圏大気ダイナミックス観測ではスバルバールでの4年余の連続観測により、極域大気潮汐波クライマトロジーの解明を行うとともに、トロムソ流星レーダー、EISCATレーダー、MFレーダーとの観測値の直接比較、NSMRレーダーとの比較による大気潮汐波モードの解明、高エコー率を利用しての大気重力波の水辺伝播方向解析と平均流とのかかわり、運動量輸送等について検討した3.HFレーダーによる極域電磁気圏・熱圏ダイナミックスの観測については、EISCATヒーティング装置を用いたSuperDARN CUTLASSレーダーとの共同実験により周期の異なる地磁気脈動の励起伝播について興味ある結果を得た4.オーロラ夜光スペクロトグラフによる極冠域オーロラ・夜光の観測では、酸素原子発光および酸素イオン輝線発光と、ESRによる電離層の電子温度・密度、イオン温度、イオン速度の同時観測データから、低エネルギー電子降下時に磁力線に沿った速度数100m/sのイオン上昇流が発生することを定量的に明らかにした。5.ALISによるオーロラ・大気光トモグラフィ観測では、ヒーティングとの同時観測、しし座流星群の光学観測などが試みられたほか、先端的逆問題手法のトモグラフィー解析への応用研究を始めた6.数値モデリングと総合解析においては中間圏・熱圏下部における半日潮汐波の日々変動について、大気大循環モデルによる数値シミュレーションにより調べた。特に、下層大気変動が、中間圏・熱圏下部の半日潮汐波に及ぼす影響および太陽放射量の日々変動(F10.7の日々変動)が熱圏の大気潮汐波に及ぼす影響を調べた。また流星レーダーで見出された12時間周期付近のスペクトル等についてもモデルによる検討を行った
著者
山崎 由美子 小川 昭利 入來 篤史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.366-377, 2008 (Released:2010-02-15)
参考文献数
57
被引用文献数
9

Researchers studying symmetry, one of the requirements for establishing stimulus equivalence, have contrasted inferences made by human and nonhuman animals and suggested that inference in each animal species is determined by several biological factors developed in the course of the evolution of a given species. This paper reviews the relevant experimental studies with human and nonhuman animals, including studies of young children, individuals with developmental disabilities, and nonhuman mammals. This work indicates that developmental, ethological, and behavioral factors are closely related to produce symmetry. In searching for the neural factors of symmetry, evidence from fMRI studies suggests that brain activity associated with equivalence relationships occurs in the processing of stimuli with or without temporal order. Thus, further research on the processing of temporal-spatial factors of stimuli is needed in both human and nonhuman animals. A detailed analysis of human subjects failing to establish equivalence relationships, and of nonhuman animals performing prerequisites for symmetry, such as identity matching and matching by exclusion, is crucial for understanding the biological origins of symmetry inferences.
著者
小川 宣子 田名部 尚子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.65-70, 1988-06-20

16〜18歳の女子206名を対象とした蛋白質食品の好みに関する調査を行った。因子分析を行った結果「こってりとした味で油脂を多く使う」と「調味料添加無」の因子に分かれ、豚肉は様々な料理が広く分布し、料理方法として様々な料理が存在していた。又、魚と豆腐は、クラスター分析の結果から一つのクラスタを形成しており、嗜好の点からはよく似た食品であった。又、16〜18歳の女子がよく知っている料理の頻度には調理形態、様式形態が大きな影響を与えていた。
著者
黒田 一雄 勝間 靖 岡田 亜弥 北村 友人 澤田 康幸 山田 肖子 米澤 彰純 浜野 隆 小川 啓一 澤村 信英 杉村 美紀 吉田 和浩 園田 茂人 鈴木 隆子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の成果は、政治経済社会のグローバリゼーションによって、従来国家(ナショナル)のレベルにおいて主な政策決定がなされてきた教育においても、世界的(グローバル)もしくは地域的(リージョナル)なレベルでの政策の立案や実施の重要性が増しつつあることを明らかにしたことである。これらの成果は、様々な国際会議や出版を通じて、日本や国際社会の国際教育交流・協力・連携の実践・政策過程に対して、実際にインプットされた。
著者
高永 茂 小川 哲次 田口 則宏 田中 良治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

医療面接について社会言語学的・語用論的な分析を行なった結果、相互行為空間の形成の仕方や発話内容の修復などが明らかになった。言語学の分野から社会言語学とポライトネス理論、発話行為論の知見を導入し、歯科医とSP(模擬患者)の意見を総合しながらコミュニケーションモデルを構築した。2006年度から3回にわたって「医療コミュニケーション教育研究セミナー」を開催し、医療とコミュニケーションに関わる各々の研究者が研究成果を持ち寄って知識と経験を共有することができた。
著者
小川 浩三
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.p37-91, 1987
著者
小山 信明 小川 恭男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.264-270, 1994-10-31
被引用文献数
3

ネザサの全面開花が生育に及ぼす影響を,阿蘇北外輪山域のネザサ型放牧草地(標高920m)を対象に,1991-1992年にかけて調査した。(1)1991年の出穂稈数は0本/m^2であったが,1992年の出穂稈数は1420-2204本/m^2で全面開花した。(2)最大地上部重は,1991年には274.4-297.5gDM/m^2であったが,1992年は64.5-69.8gDM/m^2で前年の約23%にすぎなかった。(3)地下部重は,1991年の4月には1823-1909gDM/m^2であったが,8月には1776-1897gDM/m^2と少なく,11月には2173-2536gDM/m^2と再び増加した。一万1992年では4-11月にかけて減少し,特に8-11月にかけて多量の枯死がみられた。このため1992年4月21日には地下部生存部分重は1609-2093gDM/m^2あったが,11月13日には24-60gDM/m^2と約2%に減少した。(4)窒素年間吸収量は,1991年では4.40-5.15gN/m^2であった。しかし,1992年は-8.30--10.67gN/m^2で,多量の窒素がネザサから失われた。以上の結果から,全面開花するとネザサの生育は地上部・地下部ともに低下し,更に夏-秋にかけて地下部が多量に枯死し,それに伴ってネザサから多量の貯蔵窒素が失われた。
著者
小川 泰浩 清水 晃 久保寺 秀夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.329-336, 2006-10-01
被引用文献数
2

1995年に雲仙普賢岳噴火活動が終息し数年が経過した時点において,降下火山灰が堆積した林地と火砕流堆積地における火山噴出物表層の透水性変化過程を明らかにするため,表層の飽和透水試験と土壌薄片による表層の土壌微細形態を解析した。リターが地表に堆積したヒノキ林地と広葉樹林地の火山灰層では粗孔隙が分布し,透水性はリターの堆積によって向上していた。ヒノキ林地の中でもリターが地表にみられない場所の火山灰層には薄層がみられ,孔隙率と飽和透水係数はヒノキリターが堆積した火山灰層に比べ低い値を示した。この薄層は,表面流で移動した火山灰が堆積して形成された堆積クラストであると考えられた。火砕流堆積地では細粒火山灰が流出した結果,孔隙特性が良好となって表層の透水性が上昇したと推察された。噴火活動終息後数年が経過することにより,林地と火砕流堆積地における表層の透水性には違いがみられ,土壌微細形態解析によってこの違いはリターの堆積や細粒火山灰の流出に伴う表層の堆積構造の変化により引き起こされていると推察された。
著者
小川 数也 松崎 加奈恵
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-46, 1987-07

三宅島周辺浅海域に生息するムギワラエビの摂餌生態を実験室内にて観察した。本種には3タイプの摂餌方法がみられる。第1のタイプは鉗脚で歩脚のGroomingやCleaningを行った後,第3顎脚を使って鉗脚指節・掌節剛毛に捕捉された懸濁物質塊を掻き取り,これを摂蝕する方法である。この行動は休みなく,ほぼ規則的に行われる。現場で固定した標本の胃内容物は,デトライタスと砂粒であったことから,この摂餌方法が基本的なものと思われる。第2のタイプは粉末餌料等を投与した直後にみられるもので,第3顎脚を伸ばし,盛んにすき取り運動を行い懸濁餌料を直接捕捉する方法である。また,餌料を投与すると歩脚を順番にゆるやかに伸ばし,タイプIの摂餌も同時に始まる。第3のタイプは狭い容器内でみられた特殊な場合で,海綿類など他の試料と一緒に入れた際,これを鉗脚・第3顎脚で直接捕捉しむさぼり喰うものである。本種はツノサンゴ類やヤギ類に懸着共生するのに都合の良い極めて長い歩脚を有しているが,これを十脚甲殻類に広くみられるGroomngやCleaningの他に,摂餌の機能に利用している。なお,これまでの観察記録から,本種の寿命はほぼ一年,抱卵は年1回と推定される。
著者
小川 知之 亀高 惟倫 永井 敦 小川 知之
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では工学に登場する非整数階微分方程式の解析およびその差分化を行った。また高階微分方程式の境界値問題のグリーン関数についてソボレフ不等式の最良定数計算への応用を中心に調べ、さらにパターン形成の問題と関連して分岐解析法を整備した。得られた結果は以下の通りである。1.流体力学に登場する非整数階微分方程式であるチェン方程式において、ピューズー展開法を用いてミッタークレフラー関数解を求めた。またこれらの初期値問題は、ミッタークレフラー関数の漸近挙動を用いることにより、(非整数階微分を含まない)2階および4階常微分方程式の境界値問題で近似されることを証明した。2.地球内部のマントルの運動に関連して,球面上でのラプラス作用素の有限要素法による差分化を行い、反応拡散系でのパターン形成の数値シュミレーションを行った.この問題はレーリー・ベナール対流のパターン形成などとも関連し,分岐理論による解析法を整備した.球面上に現れたパターンの球面調和関数による分岐解析などは今後の課題である.2.弾性理論に登場する4階常微分方程式の境界値問題のグリーン関数の区間長依存性を調べた。その結果、4階特有の興味深い現象が現れることを発見、解析的に証明した。同時に2M階常微分方程式のグリーン関数があるヒルベルト空間の再生核であることを証明し、この結果をソボレフ不等式の最良定数計算に応用した。
著者
工藤 栄 田邊 優貴子 飯田 高大 辻本 惠 小川 麻里 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.421-436, 2008-11-28

第49次日本南極地域観測隊(第49次)夏隊において,湖沼観測として湖沼環境観測,生物・生態学的研究試料としての湖水と湖底の生物群集採取,及び現場実験を宗谷海岸露岩域にある複数の湖沼で実施した.この湖沼観測報告は南極観測事業第VII期計画の一般プロジェクト研究(P3)「極域環境変動と生態系変動に関する研究」及びモニタリング研究観測(M4)「生態系変動のモニタリング」の両課題にかかわる観測を記録したものである.野外観測は2007年12月22日から2008年2月13日の期間,砕氷船「しらせ」が昭和基地沖近傍に滞在中に実施した.今回は夏季の湖沼環境変動と湖底の生物(藻類群集)の応答を集中的に観測すべく,スカルブスネスの長池にて観測とサンプリング・現場実験を繰り返し実施する一方,きざはし浜生物観測小屋から徒歩日帰り圏内にある周辺の14湖沼,及びヘリコプターを利用した日帰り観測にてスカルブスネス東部の4湖沼,及び他の露岩,スカーレンにあるスカーレン大池,ラングホブデ域の雪鳥池・東雪鳥池,ぬるめ池にて湖沼水質環境観測と試料採集を適宜実施した.このうち,スカルブスネス東部のなまず池 (仮称)では潜水による水中設置ビデオ装置の回収と,湖底のコケ類・藻類が作り上げている「とさか・筍状」の群落の採集,ラングホブデぬるめ池では湖底から小型カイアシ類の定量サンプリングを実施,これらを研究試料として日本に持ち帰ることができた.また,第47次隊により雪の堤防の決壊の発見(第46次越冬期間中に決壊したとみられる)が報告されたラングホブデ南部の平頭氷河末端にあった「氷河池」(仮称)の現状視察も実施,決壊前後での3m以上と思われる大幅な水位変動痕からフィルム状の生物試料を採集し持ち帰った.
著者
小川 泉 岸本 忠史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

二重ベータ崩壊・暗黒物質などの超稀現象探索実験を行うために必要な高感度放射線検出用シンチレータ(主としてフッ化カルシウム結晶)の開発研究を行った。結晶中に含まれる放射性不純物の低減を図るとともに、結晶の組成や物理パラメータを操作することによる高感度化(バックグラウンド低減)の可能性を探った。これらの研究の結果、不純物濃度の低減と、冷却による粒子弁別の効率化を確認し、高感度化が可能であることを示した。
著者
家村 浩和 小川 一志 五十嵐 晃 高橋 良和 松久 貴 佐藤 忠信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、隣接する橋桁構造系や隣接建物系を取り上げ、それらの連結装置による連結により、同時振動制御を行うことを目的として、理論的実験的側面から種々の検討を行った。得られた主な結果は、次のとおりである。1) 大地震に対する制震システムにおいては、入力レベルに関わらず装置の性能制約範囲を超えない制御を実現する必要がある。特にアクティブマスダンパー装置における補助質量の変位制約問題を解決するために提案されている非線型可変ゲイン制御の実用性を検証するため、AMD装置を実物大構造フレームに実装した実験を行った。可変ゲイン制御アルゴリズムにより十分な制震効果を確保しつつ、装置の能力を有効に用いた制御が実現されることを示した。2) 阪神高速3号神戸線の震災復旧において、上部をラーメン構造とし橋脚の下端部に免震支承を設置するタイプの道路橋が建設されている。このタイプの免震橋では地震時において、免震支承には水平変形だけでなく、従来考慮されていなかった曲げ(回転変形)や軸力の変動が生じる。そのためそれらの効果の影響を実験的に評価する必要がある。そこで本研究では、多軸載荷が可能となる実験システムを用いて免震支承(LRB)の載荷実験を行い、水平変形・回転変形・変動軸力同時載荷条件下での復元力特性を検討した。その結果、変動軸力の効果は、回転変形の効果に比べ復元力特性への影響が大きいこと等を示した。3) 隣接する橋桁構造系や隣接建物系を制震する手法として、両者をジョイントダンパーで連結し、一体的に制御する方法が提案されている。本研究では5層と3層の隣接構造物の応答低減効果を得る手法として、LQ理論及びH^∞理論により制御器を設計し、シミュレーションを行った。特に制御における時間遅れの問題を取り上げ、数値モデルに対する検討を行った。その結果、H^∞制御においてはLQ制御に比べてはるかにロバスト安定性が得られ、ジョイントダンパーへの適用において優れていることが示された。
著者
田邉 裕貴 小川 圭二
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セラミックス被覆鋼の高機能化を図るための新表面改質手法として 「成膜後レーザ焼入れ処理」 を提案し, 本手法の効果を調べた. 各種セラミックス被覆鋼に対して本処理を適用し, 薄膜の割れ, はく離等の損傷, 硬さや破壊強度の低下を生じることなく材の焼入れが可能で, 密着強度と耐摩耗性を向上させることができることを明らかにした. また, 本処理を応用した実部品を試作し,本手法の実用化の可能性についても検討した.