著者
小林 康宏 知野 豊治 吉田 隆幸 松田 賢一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.96, no.520, pp.13-17, 1997-02-14
参考文献数
8
被引用文献数
3

基板裏面に形成したガイド穴を用いた垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)とシングルモードファイバとの結合効率について計算による基礎検討を行った。我々はこれまでに4×3のVCSELアレイに対するガイト穴を用いたパッシブアライメントにより、マルチモードファイバとの結合において平均81.3%の結合効率を達成している。この結合方法をシングルモードファイバに適応する場合、計算の結果、80%の結合効率を得るためにはレーザと裏面ガイド穴との距離を100μm程度、アライメントのずれを±1μmにまでする必要があることが分かった。
著者
小林 篤人 窪野 隆能
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス
巻号頁・発行日
vol.97, no.329, pp.1-6, 1997-10-17
参考文献数
8
被引用文献数
1

小形の電磁継電器で発生する開離不能故障を防止することを目的として、試作したAu接点に接触力を印加した状態でしゅう動を与え粘着力の測定を行った。その際、接触面積を推定する目的でしゅう動前後および粘着力を測定するために接点を引き離していく途中で接触力がゼロになったときに接触抵抗の測定を行った。その結果から、しゅう動回数が増加しても接触面積がある値以上に増加しないことおよびこのときの接触面積を用いて計算した見かけの応力が結果的にミーゼスの降伏条件を満足することを示した。また、降伏応力、引張り強さおよび摩擦係数から粘着力を推定する方法を提案した。
著者
橋本 洋志 坪井 利憲 大山 恭弘 苗村 潔 天野 直紀 石井 千春 小林 裕之
出版者
東京工科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,日常生活で現れる手の動き(箸や鉛筆の使い方,玉遊び等)を時系列データとして取得し,動きの特徴を表す特徴量を抽出して保存する(アーカイブ(archive)と称す)とともにこの特徴量をハンドガイド(写真参照手に装着して自動制御によりワイヤー型アクチュエータで5本の指を動かす)に送ることにより,ハンドガイドを手に装着した人間に,力覚として手の動きそのもののインストラクションを行えるようにすることにある。本年度では,前年度までの実験結果を基にして,次の成果を得た。● 指関節角度の時系列データに対する主成分分析法により,第1主成分が,動きの巧みさの指標となりうること,また,指関節角度の時系列データのうち,箸使いでは,人差し指と中指の間の角度に対する標本分散が,箸使い上手さの指標となりうることがわかった。● 玉回しでは,親指を含めた3本の指先関節が周期的に動くことが上手さの鍵となることがわかった。また,手の動きに関連して,副次的に次の知見を得た。● 手の力覚を用いて,人間の周囲にある障害物環境を認職できるという視覚の代替感覚を実現できることを明らかにした。● 人間がレクリエーションの一環として太極拳の動作を行うとき,手先の動きが重要であることが判明した。これは上手に動こうとするときの指標として,手先でバランスをとったり,スムーズな動作移行のときに手先反動を用いているためで,人間の動作と手の動きとの関連性に注目することが必要であることがわかった。以上の知見をもとに,指先のみならず手先の動きがしなやかになるようなインストラクションディスプレイのプロトタイプを構築し,臨床実験を通してその高い利便性・使用性を立証した。さらに,指先のモーションアシストデバイスを試作し,指の感覚とその動かし方に関する幾つかの知見を示した。
著者
小林 真也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.69-78, 1996-02-25
参考文献数
12
被引用文献数
9

マルチプロセッサシステムでは, 処理速度を最も速くするためにどのように各プロセッサにタスクを割り当てていくか, つまりタスクスケジューリングが重要な問題である. 実際のマルチプロセッサシステムのタスクスケジューリングではプロセッサ間の通信にも時間がかかり, 個々のタスクの処理時間のみならず, 通信時間も考慮しなければならない. 本論文ではこの問題に対する最適解への近似精度の高い一方法を提案する. 提案方式は, リストスケジューリングの一種であり, 各タスクの処理時間のみによって決定されるプレプライオリティと, タスクとプロセッサごとに求められる通信削減時間によりタスクプライオリティリストを決定する. 各タスクのプレプライオリティの値はそのタスクに依存する複数のタスク依存系列のうちの最長パスの長さである. また, 通信削減時間とは, 他のプロセッサで実行した場合に必要であるがプライオリティを求めようとするプロセッサで実行する場合には必要のない通信の時間である. 常微分方程式の数値解法の一つであるRunge-Kutta 法と, FFTの二つのプログラムを対象に, 完全網システムにおいて従来方式との比較を行い提案方式の優位性を示す. また, 不完全網システムに対しても提案方式が良好な割当てを行えることを示す. 更に, 乱数を用いて生成したタスク集合に対しても, 提案方式が優れていることを示す. また, 割当てに要する時間を実測し, 提案方式が問題の規模に対して多項式時間で解けることを示す.
著者
山下 隆男 塚本 修 大澤 輝夫 永井 晴康 間瀬 肇 小林 智尚
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,地球温暖化による気候変動に伴い巨大化する台風,ハリケーン,サイクロンを対象として,わが国の主要湾(大阪湾,伊勢湾,有明海・八代海),メキシコ湾およびベンガル湾における,高潮,高波,強風,豪雨、洪水に関する災害外力の上限値を評価することを目的とする。このため,以下の3研究課題について,各々のサブテーマを分担課題として研究を進め,災害外力の上限値解析を行った。(1)スーパー台風(ハリケーン・サイクロン)の数値モデル(2)台風と海洋との相互作用(3)スーパー台風による災害外力の上限値解析。最終年度に得られた成果をまとめると、以下のようである。1.海水温の上昇により、熱帯性低気圧がどの程度巨大化するかを、地上風速、降雨量とについて数値的に検討した。海面水温の2度の上昇は海面風速(せん断応力)降水量(陸上および海上)に極めて甚大な影響を及ぼすことを示した。2.台風と海洋の相互作用では、台風による海水混合で台風が弱体化する機構を示した。さらに、海上の降水量、河川からの出水により海洋表層の淡水成分が増加すれば、成層構造が強化され、台風による海水の混合過程が弱まれば、台風が減衰しにくくなる可能性を示した。3.災害外力の評価では、沖縄県において台風の巨大化を考慮した高潮ハザードマップを作成し公表した。4.気候変動の捉え方として、地球の平均気温のように指数関数的に増加するトレンドとしての上昇以外にも、太平洋、大西洋、インド洋等の海洋振動の影響による数十年周期の変動(ゆらぎ)を、適応策において考慮することの重要性を指摘した。
著者
小林 孝一
雑誌
科学研究費補助金研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2011-06-10

本研究課題では,ハイブリッドシステムの制御における計算の効率化に取り組んだ.成果として,有限オートマトンの安定化に基づくモデル予測制御手法,およびオフライン計算とオンライン計算の両方を用いた精度保証付き近似解法を提案した.また,数値実験により計算の効率化が実現されたことを確認した.さらに応用として,ブーリアンネットワークモデルで表現される遺伝子ネットワークの解析と制御にも取り組んだ. : In this research, fast computation algorithms for hybrid systems control have been addressed. As important results, a stabilizing model predictive control method using stabilization of finite automata, and an approximate algorithm using both offline and online computations have been proposed. In addition, the effectiveness of the proposed methods has been shown by numerical examples. Furthermore, analysis and control of gene regulatory networks has been addressed using Boolean network models.
著者
河野 修三 小林 功 織田 豊 羽田 丈紀 大森 秀一郎 笹屋 一人 羽野 寛 山崎 洋次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.200-204, 2000-02-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

症例は73歳の男性.平成7年12月5日に直腸癌に対して前方切除を施行し, 平成9年8月26日には孤立性肝転移に対して肝S7を部分切除した.術中超音波検査では, 切除域に門脈浸潤などを疑う所見はみられなかった.しかし病理組織検査では, 腫瘍は長径17mmの腺癌の多発結節で, その結節は系統的に胆管の腫瘍浸潤として分布しており, 切除断端は陽性であった.平成10年7月8日に肝右葉切除, 横隔膜合併切除術を施行した.病理組織検査では, 前回の切除部位は壊死を伴い空洞状になっていて, この中に癌細胞の遺残はみられなかった.癌細胞は空洞直下の門脈域胆管内にみられ, 中枢側に向かって発育していたが, 切除断端は陰性であった.肉眼的にも認知される転移性肝癌の胆管内発育はまれである.門脈域胆管浸潤による断端陽性症例では系統的肝切除が有効である.
著者
笹尾 哲夫 小林 秀行 川口 則幸 真鍋 盛二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2002-05-05
参考文献数
4

国内4カ所の新しい電波望遠鏡を連動させて従来の百倍の精度で星の位置を測り,地球の公転を利用した三角測量でわが銀河系(天の川)の立体地図を作ろうという計画がスタートした.これにより,銀河系における暗黒重力物質(ダークマター)の質量の把握とか,宇宙距離尺度の直接検定などの新しい成果が期待される.この計画の現状を紹介するとともに,ねらいと意義,高精度実現の仕組み等について解説する.
著者
田中 隆昭 陣野 英則 新川 登亀男 小林 保治 吉原 浩人 高松 寿夫 蔵中 しのぶ 松浦 友久 丹羽 香
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

2000年12月、研究所発足。2001年3月、周以量氏(現在中国首都師範大学副教授)、林忠鵬氏(現在客員研究員)を招聘、田中所長が加わり、早稲田大学で講演会。参加者約50名。2001年9月、二日間にわたり国内・海外研究員全員と北京大学の韋旭昇氏、北イリノイ州立大学のジョン・ベンテリー氏等を招聘して早稲田大学にて国際シンポジウム「古代日本・中国・朝鮮半島文化交流の新展開」。参加者約150名。この成果は近刊の『交錯する古代』(勉誠出版)に反映される。2002年7月、シンポジゥム「21世紀に向けての日中比較文学」を中国・長春市にて東北師範大学で共催。研究発表者日本側20名、中国側28名。参加者約200名。この成果の一部が2003年2月の『日本学論壇』に反映された。2002年11月、二日にわけて王宝平氏(浙江大学)・高文漢氏(山東大学)・孟慶枢氏(東北師範大学)・林嵐氏(東北師範大学)を招聘して、田中所長と石見清裕氏(教育学部)が加わり講演会。参加者約80名。こうした海外との学術交流と平行して、毎月一回『日蔵夢記』講読会を開催。本文整理・訓読・語釈・現代語訳を確定。この成果に関連する学術研究論文を加えて、近刊の『日蔵夢記大成』(勉誠出版)に反映される。また一方では日中比較文献目録の作成も進めているが、まもなく一定の成果を公表することが可能である。
著者
小林 圭 山田 啓文 桑島 修一郎
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、カンチレバーを用いた周波数検出型バイオセンサーにおいて、その最小検出質量を決定する周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案し、また実際にノイズ評価を行うことで、その妥当性を評価した。従来、カンチレバーの共振周波数を検出する周波数検出型のバイオセンサーでは、その変位を検出する変位検出系のノイズによって周波数ノイズが決定されると考えられてきた。つまり、周波数変調(FM)通信と同様に取り扱われてきたのである。しかしながら、実際にバイオセンサーで用いられるカンチレバーの機械的Q値は非常に低く、しばしば10以下となるため、そうした取り扱いが妥当であるかについては疑問視されてきた。我々は、変位検出系のノイズが自励発振ループ内で発生することを考慮に入れた、カンチレバーの周波数ノイズを定量的に予測するモデルを考案した。これにより、低Q値のカンチレバーの周波数ノイズも正確に予測することができるようになった。また、この妥当性を実際に液中で自励発振させたカンチレバーの周波数ノイズを計測することにより確認した。一方、カンチレバーの変位検出系の低ノイズ化対策をさらに進め、10fm/√Hz以下を達成した。また、このように十分に変位検出系を用いた場合、カンチレバーの変位をセンサー出力とする変位検出型のバイオセンサーにおいて、本研究課題で提案した多重反射方式のカンチレバーセンサーは平行レーザ光を用いれば、感度の向上に大きく寄与できることを示すことができた。
著者
丸井 英幹 山崎 俊哉 梅原 徹 黒崎 史平 小林 禧樹
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.173-182, 2004-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
2

兵庫県神戸市に計画された高速道路の予定地で,着工直前になって絶滅危惧種のハリママムシグサが発見された.路線の変更による影響の「回避」は困難で,道路建設の影響圈に自生するすべての個体の移植によって個体数の維特をはかる保全対策をとった.移植に先だって自生地で分布,個体形状,性表現,光環境,土壌条件,植生を,移植先の候補地で光環境,土壌条件と植生を調査した.調査の結果,ハリママムシグサは林冠がうっ閉するまでの早春の光環壌にめぐまれる谷沿いの落葉広葉樹林の林床で,乾きにくい砂質土壌の場所に自生することがわかった.種子繁殖にかかわる性表現は個体サイズに依存しており,雌個体はもっとも明るい場所に自生することから,雌への成長には一定の年限,光環境にめぐまれる必要があると考えられた.調査結果をもとに移植先の候補地から適地をえらび,個体形状を測定して可能なかぎり適期に移植した.
著者
小林 昭三
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

科学概念の形成を効果的に実現する最先端のIT利活用で力学分野、又は圧力・熱分野、等を詳細に記録し分析・検証する授業法を研究開発し、DVD教材集やウェブ資源に集大成して広く普及した。1.抵抗が極小な教材(超軽量台車、スペースワープ機材、ホバークラフト)活用で、運動法則、運動量、エネルギーなどの分野でも効果的な概念形成をするIT based授業を新展開した。2.ドライブレコーダーという装置で車の日常的な運動を記録して位置・速度を風景動画と同期・提示する(エクセル活用も可能)授業モジュールを開発をした。3.GPS装置で多様な運動(飛行機、新幹線、自転車、ランニング等)の3次元位置情報から効果的な速度概念の形成を可能にした。4.無線LANセンサー・PC装置、携帯センサー装置等の先進的IT活用で効果的授業法を開発した。5.空気抵抗や水の粘性抵抗が支配的な「空中や水中での物体の運動」の教材を研究開発した。6.最先端の動画DVDやMeb資源を蓄積し生徒・学生・教員への実習で初中高理科の改善に寄与した。2005PCカンファレンスの実行委員長として「情報教育の課題と展望一アジア諸国と日本」でASPEN韓国NPC・キム教授、前ASPEN議長代理・リー教授の招待講演を企画成功させた。ICPE2005インドでの講演、ICPE2006東京会議(8月13日〜18日)やASPEN香川Workshop(8月10日〜12日)の組織者として講演やワークショップを企画、等で上記諸成果を発表して国際的にアピールし、超軽量台車・紙カップ教材などを国際的に広く普及した。日本物理学会シンポでは「ICPE2006東京会議の報告と世界の物理教育の動向」の招待講演をした。国内外の学会や教育現場の教員研修・研究会や生徒・学生への実習を広く行ない、初・中・高教育における最先端のIT活用理科の新展開と再構築を進めた。
著者
鎌田 東二 梅原 賢一郎 河合 俊雄 島薗 進 黒住 真 船曳 建夫 原田 憲一 藤井 秀雪 中村 利則 小林 昌廣 尾関 幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本語の「モノ」には物質的次元、人間的次元、精神的・霊的次元が含意されているという問題認識に基づき、日本文明の創造力の基底をなすその三層一体的な非二元論的思考の持つ創造性と可能性、またその諸技術と表現と世界観をさまざまな角度から学際的に探究し、その研究成果を4冊の研究誌「モノ学・感覚価値研究第1号~第4号」(毎年3月に研究成果報告書として刊行)と論文集『モノ学の冒険』(鎌田東二編、創元社、2009年11月)にまとめて社会発信した。また最終年度には、「物からモノへ~科学・宗教・芸術が切り結ぶモノの気配の生態学展」(京都大学総合博物館)と、モノ学と感覚価値に関する3つの国際ンポジウムを開催した。
著者
小林 酉子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

チューダー朝初期に王侯貴族のお抱え劇団が誕生してからエリザベス時代に至って商業劇団が最盛期を迎えるまで、この間の演劇がどのような演出の下で、どのような衣装で演じられたかを明らかにした。宮廷饗宴を演じていた俳優たちが宮廷外でも演じるようになると,饗宴衣装が民間の商業劇場へ流れ,ロンドンの市井の劇場でも使用された可能性が高い。本研究では,チューダー朝期を通じての演劇の演出と衣装の変化を追って,英国ルネサンス盛期の商業劇場の舞台がどのような有様であったかを検証した。
著者
持田 邦夫 小林 浩之 横山 保夫
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ゲルマニウム-ゲルマニウム結合を骨格とする新しいσ共役系ポリマー(ポリゲルマン)を合成し、その薄膜における有機感光体としての評価を行った。以下、成果をまとめる。(1)σ共役系ポリゲルマンおよびその関連化合物の合成…従来のジクロロゲルマンのナトリウム金属還元法の他、ヨウ化サマリウム(II)による還元法や触媒による開環重合法の開発、さらにはπ系の置換したゲルマニウム-ゲルマニウム結合を骨格とする新しいポリマーの合成にも成功した。(2)ポリゲルマンは薄膜の物性研究…合成したポリゲルマンの可視・紫外吸収極大(300-350nm)やイオン化ポテンシャル(5-6eV)の物性研究を行った。(3)キャリヤ-輸送能力の検討…TOF法を用いて、その値が10^<-4>-10^<-5>cm^<-2>/V.sであることを見いだし、感光体として従来にない能力を有することがわかった。(4)イオンラジカルの研究…キャリヤ-輸送を理解するため必要なポリゲルミル陽イオンラジカルの研究を放射光を用いて行なった。発生した陽イオンラジカルの吸収極大は可視・紫外部に存在し、その分子量が伸びるに従い吸収極大が長波長にシフトをすることを見いだした。(5)ポリゲルマン薄膜の光、熱分解特性…溶液状態と比較しながら検討した。
著者
小林 正則 國土 典宏 関 誠 高橋 孝 柳澤 昭夫 前川 勝治郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2399-2403, 1999-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

症例は66歳の女性. 他院にてS状結腸癌にて結腸切除術1年後, 肝転移を来たし当科にて肝左2区域切除, S6部分切除を施行した. 入院時血清AFP1,036.8ng/mlと異常高値を認めた. 肉眼的に根治であったが術後短期間に皮下組織内および残肝に再発し初回手術より1年4か月後(肝切除より94日後)死亡した. 病理組織像では, 原発巣および肝転移巣ともに通常の大腸癌に見られる腺腔形成部と明るい細胞質を持つ細胞がシート状に配列した部(hepatoid differentiation)よりなっていた. AFP産生性は免疫組織学的に原発巣および肝転移巣の両者で検出された. AFP産生大腸癌の報告はきわめてまれであるが, 予後不良なこのようなタイプの大腸癌の存在することを念頭に置き, 診療に当たる必要があると考えられた.
著者
上田 明良 小林 正秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.77-83, 2001-05-16
参考文献数
22
被引用文献数
3

生立木へのカシノナガキクイムシの飛来消長を樹幹に巻き付けた粘着紙による捕獲で調べたところ, 最初の穿孔が観察された直後に雌雄の飛来数がピークに達し, その後急速に減少した。衰弱または枯死した木に対してはこれ以後の飛来はほとんどなかったが, 健全木では飛来が継続し, 8月中・下旬から9月中旬にかけて再び増加した。飛来数の合計はコナラ健全木で多かった。しかし, 最初のピークにおける飛来数は, 同所で同時に穿孔を受け始め, その後生残したコナラと枯死したミズナラでは, 枯死したミズナラの方が多かった。飛来数は1.6m高よりも0.5m高の方がいずれの調査木でも多かった。ヨシブエナガキクイムシはカシノナガキクイムシよりも飛来が1〜2週間遅れた。捕獲数は全ての枯死木で多かったが, 健全木の中にも多いものがあった。捕獲された高さについては傾向がなかった。