著者
大嶺 聖 安福 規之 宮脇 健太郎 小林 泰三 湯 怡新 TANG Yixin 山田 正太郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

建設発生土や廃棄物をリサイクルする場合には,実際の建設にかかる費用だけでなく環境負荷に関する影響も考慮することが望ましい。また,各種リサイクル材に対して,材料作製に伴う環境負荷および廃棄物削減に伴うメリットを何らかの数値として算出し,環境負荷低減効果を表すための評価手法を構築する必要がある。本研究では,有害物質の溶出抑制効果を持つ混合地盤材料の開発を行うとともに,リサイクル材を用いる場合の環境負荷の低減効果を定量的に表す手法を提示した。廃棄物の有効利用法として,バイオマスの炭化物としての活用および都市ごみ焼却灰の地盤材料としての有効利用を例に,再資源化の効率について考察を行った。得られた結論は以下のとおりである。1)都市ゴミ焼却灰に炭化物を混合することでの重金属溶出が抑制される。また、木炭を混合しても,都市ゴミ焼却灰と同様の透水性および圧縮性を有し,力学的にも地盤材料として活用できると考えられる。2)炭化物の吸水性によってセメント安定処理土中の水セメント比を低下させ,強度が増加する。また,セメント安定処理土からの溶出が懸念されている六価クロムの溶出量を木炭混合によってある程度抑制することができる。3)刈草炭化物を混合することで、いずれの火山灰質粘性土についても強度改善効果が認められた。生石灰と刈草炭化物を質量比1:1で混合すると,生石灰添加量を軽減できるなど効果が大きい。4)都市ごみ炭化物を最終処分場における覆土材として利用した場合,廃棄物層から溶出される重金属や無機塩類等陽イオンに対する吸着効果が発揮されるため,浸出水質の早期安定化が期待される。5)リサイクル材の製造工程におけるCO_2排出量と廃棄物の活用に伴うCO2削減量を算定し,再資源化効率の評価法を示した。その結果,製造時のCO_2排出量が小さく,多くの廃棄物を使用している材料ほど再資源化効率が高いことが示された。
著者
斉藤 功 小林 元夫 金井 鐘秀
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

矯正治療における歯の移動に際しては、機械的外力に対して歯根膜線維芽細胞が多様な生物化学的応答を示すことが報告され、それに引き続いて生ずる破骨細胞および骨芽細胞による骨の吸収・形成に何らかの影響を及ぼしていると考えられている。本研究では、in vitroの実験系を用いて培養したヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)にメカニカルストレスを加え、そ培養上清が骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)にどのような影響を与えているかについて検討した。HPLFは、13-16歳の患者の小臼歯から採取した継代8-12の培養細胞を、また骨芽細胞様細胞としては、継代17-19のMC3T3-E1細胞をそれぞれ実験に用いた。メカニカルストレスは、コンフルエントになったHPLFの細胞層上にカバースリップを置き、その上にガラス製円筒をのせ1.0g/cm^2で加圧した。HPLFをそれぞれ1, 3, 6, 12, 24時間加圧した後、conditionedmediumを採取し、stressed conditionedmedium (S-CM)とした。一方、加圧実験と同様の条件で培養して加圧を行わずに採取したHPLFのconditionedmediumをnon-stressed conditionedmedium (NS-CM)とし、さらに細胞培養していないmediumをcontrol medium (CM)とした。S-CM, NS-CM, CMをそれぞれ6well dish上でコンフルエントになったMC3T3-E1細胞に添加し、24時間インキュベーションを行った後、ALPase活性およびcAMP産生量を測定した。その結果、S-CMによってMC3T3-E1細胞のALPase活性とcAMP産生量とは、NS-CM, CMを添加した場合と比較して時間依存的に有意に上昇した。このことから、S-CMはMC3T3-E1細胞の細胞分化能ならびに細胞応答性を上昇させていることが明らかとなった。また、Indomethacinを添加することで、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性が有意に抑制されたことから、S-CMによるMC3T3-E1細胞のALPase活性の上昇にはプロスタグランディンが関与していることが示唆された。
著者
小林 正弥 金原 恭子 一ノ瀬 佳也
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、ハーバード大学のマイケル・サンデル(Michael Sandel)教授のDemocracy's Discontents-America in search of a Public Philosophy(Belknap Press, 1996)の翻訳プロジェクトを進めると共に、マイケル・サンデル教授を招聘した国際シンポジウムを開催し、「憲政政治」についての世界的な水準での理論的検討を行なった。
著者
田中 成美 原 暢助 森田 辰男 石川 真也 森口 英男 小林 裕 戸塚 一彦 大場 修司 徳江 章彦 米瀬 泰行
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.1927-1932, 1984-12-20

自治医科大学泌尿器科において,1974年4月15日の開院より9年間に尿路変向術が施行された症例は100例で,男子78例,女子22例,男女比は3.5対1であった.最年少者は4歳,最年長は84歳,平均年齢は60.2歳であった.原因疾患は膀胱腫瘍76例,子宮癌6例,尿道癌4例,前立腺癌3例その他の悪性腫瘍3例で良性疾患は8例であった.施行された尿路変向術は,膀胱瘻造設術8例,腎瘻造設術7例,カテーテル尿管皮膚瘻造設術56例,回腸導管造設術9例,尿管S状結腸吻合例であった.100例全例の5年相対生存率は51.2%で,膀胱移行上皮癌のため膀胱全摘術を施行した53例の5年相対生存率は58.7%であった.膀胱全摘術とともに尿路変向術を行った61例の術後死亡率は4.9%であった.これらの膀胱全摘術の症例の術後早期合併症及び晩期合併症について尿路変向術式別に比較,検討した.
著者
松尾 和枝 喜多 悦子 酒井 康江 佐藤 珠美 小林 益江
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

昨年の調査で得られた『雪の季節の出産が大変である』この住民の声を踏まえて、雪の季節の出産を避ける。また出産時、救急車で運ばれなければならない状況を早期に発見し、対処方法を検討する。この2つの目的のために、「予防と早期発見」が必要であることを住民達自身が気づくように、健康学習会と意見交換会を行った。女性集団、男性集団をそれぞれに集めて、日本から持参したマギーエプロンを用いて、出血や分娩の経過に異状をもたらす妊娠中の母体の状態を視覚的に示した。その体内で起きている異常を視覚的に理解すると、住民達は、早期発見の必要性と検診の必要性を理解することができた。現地ナース、助産師が健診受診による早期発見対処の可能性について補足説明をした。助産師は、パクリット村の方言を加えたペルペル語でアズロのマタニティ病院での制度、システム、経費について説明を加えた。最初は、雪の季節を避けた計画妊娠について、神のみが知ることと、全く聞く耳を持たなかった年配の女性達も、助産師の説明で理解をした。また、男性たちも雪の季節に妻や子を救急車で搬送をすることの負担や、その結果、娘を失った辛く悲しい経験を共有し、今回の健康教育内容を家族や地域に広めていくことを約束した。今回の健康学習会は、バクリット村住民の約20数名に伝えたに過ぎない。村の住民に妊娠出産についての正しい情報提供と、その正しい知識に基づく適切な保健行動の形成については、今後も継続的な啓蒙普及活動が必要であると考える。今後は、B村のナースとデレゲションの助産師と継続的な連携を持ちながら、活動の定着、妊婦・乳幼児死亡ゼロの村を目指した住民の意識・行動の変容やスタッフの活動の評価も行って行きたい。今回の調査活動並びに健康学習会の一連の過程を、現地看護職に紹介し事例検討を行なった。彼らは、病院で患者を待っていたことを反省し、医療職が現地に出向いて地域の問題に気づき、住民と共に健康問題の改善に努力するアウトリーチの活動の必要性に気付いた。
著者
土井 悦四郎 小林 猛 久保田 清 河村 幸雄 上野川 修一 松野 隆一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究班は2グループよりなる。1のグループは、化学工学的手法を用いて研究を行い、2のグループは、分子論的手法を用いて、研究し、両者の討論により研究を進めてきた。1のグループは、食品のマイクロ波加熱を、速度論的に解析する手法を開発し、エクストルージョンクッキング、高周波処理による水分収着挙動を熱力学関数による解析を行った(久保田)。高度不飽和脂肪酸の包括、粉末化による酸化抑制効果を包括剤としてマルトデキストリン、プルラン、カゼインナトリウウム、及びゼラチンを使用し、酸素透過速度により評価した。そして拡散速度が、膜の含水率に依存する事を見いだした(松野)水/油/乳化剤の三成分よりなるW/O/W型エマルシヨンについて分散小胞粒子の水透過性、ゼーター電位に及ぼす小糖類の影響を詳細に調べた(松本)。2のグループは、モノクローナル抗体を用いて、β-ラクトグロブリンの変性構造の中間状態における立体配置を検出することに成功した(上野川)。α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンの混合系あるいは他のタンパク質の加熱ゲルの構造と、ゲル形成機構を明らかにした。大豆タンパク質の加工特性並びに生理機能(抗高血圧症)の分子機構を検討した(河村)。卵白アルブミン、血清アルブミン、リゾチームなどの各種食品タンパク質の加熱ゲル形成過程を詳細に検討し、普遍性のあるゲル網目構造の形成機構に関するモデルを構築し、その妥当性を証明した(土井、中村)。1と2のグループの結果を総合して食品物性の分子論的知見と化学工学的手法による結果の矛盾点を討論し、食品物性研究の新しい方向を見いだした。以上の結果は今後のわが国の食品科学研究にたいして新しい方向を与え、食品製造、加工の実用面にも大いに貢献するものである。
著者
小林 三衛
出版者
茨城大学
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報 (ISSN:03882950)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-14, 2007

「水戸地方裁判所の決定」の検討である。「生命・健康に危険のない質の飲料水,生活用水を確保すること」を人格権と位置づけ,「法的に最大の保護に値する」とし,これが処分場から流出する汚水によって侵害される可能性がある場合には,差止めることが認められるとしており,高く評価される。ついで,処分場から排出される汚水が田野川に流入し,これによって,「水道水が汚染される可能性」を認め,「それを利用している債権者らの被保全権利の侵害の可能性を否定できない」として,「保全性があるものと思料される」と結論づけていることは,先駆的・画期的である,といえる。また,田野川の水を農業用水としている債権者らについて,「水質が害され,水利権が侵害される可能性が高く,その侵害の程度が深刻である場合には,その行為を事前に差し止めることも認められる」としている点も,重要であるが,「農業用水は,水道水のように直接汚染水そのものが人体に影響を及ぼすものではない」ので,「事前差止めまでを求める保全の必要性はない」と判断していることには賛成できない。なお,地下水の汚染の可能性はないとして,その汚染を認めていない点については,疑問である。
著者
小林 憲正 奈良岡 浩 三田 肇 橋本 博文 金子 竹男 高野 淑識 VLADIMIR A. Tsarev
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

模擬星間物質に重粒子線などを照射して合成した「模擬星間有機物」と、炭素質コンドライト中の有機物を分析し、両者と生命起源の関連について考察した。模擬星間環境実験では分子量数千の複雑態アミノ酸前駆体が生成する。これが星間や隕石母天体中での放射線・紫外線・熱などでの変性により隕石有機物となったことが示唆された。原始地球へは宇宙塵の形で有機物が供給された可能性が高く、その分析が必要である。宇宙ステーション上で宇宙塵を捕集する条件を検討中である。
著者
佐藤 節郎 舘野 宏司 小林 良次 坂本 邦昭
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.317-327, 1998-12-28
被引用文献数
4

1995年4月3日, 1996年4月28日および同年5月24日にハリビユ種子をそれぞれ, 17.8, 26.7および26.7g/aの量で播種した後, トウモロコシ(品種:Pioneer 3352)を666本/aの密度で播種した。リビングマルチとしてイタリアンライグラス(品種:タチワセ) をトウモロコシと同時に0.3および0.6kg/aの量で播種, または, アトラジン+アラクロールを10.0+10.8 a.i.g/aの量で土壌散布した。播種後5.5-11週に, トウモロコシとハリビユを定期的に刈り取り, リビングマルチ区および除草剤区の両草種の生長およびトウモロコシの窒素吸収の推移を無処理区と比較した。また, トウモロコシ収量と収穫時のハリビユの生長を同様に比較した。4月3日播種トウモロコシでは, リビングマルチは競合によりハリビユを十分に抑制したが(Fig. 1), 同時にトウモロコシとも激しく競合し, トウモロコシの生長は有意に減少し, トウモロコシの葉の窒素含有量も低下した(Fig. 2, Table 2, 3)。4月28日播種トウモロコシでは, リビングマルチは一定のハリビユ抑制効果を示し (Fig. 1), トウモロコシの生長と葉の窒素含有量にもほとんど影響を与えなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。5月24日播種トウモロコシでは, イタリアンライグラスが出芽後の高温により十分に生長しなかったため, リビングマルチはハリビユを抑制できず(Fig. 1), また, トウモロコシの生長や窒素吸収に影響を与えることはなかった(Fig. 2, Table 2, 3)。いずれの播種日のトウモロコシも, 生育期の純同化量(NAR)は, いずれの調査日においても有意な雑草防除処理間差が認められず, イタリアンライグラスと激しく競合した4月3日播種におけるリビングマルチ区のトウモロコシにおいても, NARの明確な低下は認められなかった(Table 3)。リビングマルチ区トウモロコシの収穫時には, 4月3日播種ではハリビユが全く認められず, 4月28日播種ではハリビユが認められたものの, その密度と重量は無処理区に比べ有意に小さく, 5月24日播種ではハリビユの密度と重量は無処理区とほぼ同等であった(Fig. 4)。トウモロコシ収穫時の無処理区のハリビユの密度と重量は, 4月28日および5月24日播種において4月3日播種よりも小となった(Fig. 4)。リビングマルチ区のトウモロコシ収量は, 無処理区に比べ, 4月3日播種で34-40%, 4月28日播種で11%減少したが, 5月24日播種ではリビングマルチ区と無処理区の間に有意な差は認められなかった(Fig. 5)。アトラジン+アラクロールの土壌処理は, トウモロコシの生長, 生長期の窒素吸収および収量を低下させることなくハリビユを十分抑制できた(Fig. 1-5, Table 2, 3)。イタリアンライグラスリビングマルチは, 若干の減収を前提とすれば, 4月下旬に播種するトウモロコシにおいてハリビユの防除のために利用が可能であり, また, 有機物の連続的な投与により土壌処理剤の効果が不十分な圃場では有効な技術となりうると考えられた。
著者
吉田 教明 古賀 義之 阿部 理砂子 小林 和英 佐々木 広光 荒牧 軍治
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.240-246, 1998
被引用文献数
1

非対称フェイスボウの作用および副作用を明らかにし, 本装置の臨床上有効なデザイン, あるいは副作用を削減する方法を究明するために, フェイスボウ形態を変化させた時に, 大臼歯に作用する力系がどのような影響を受けるかについて研究を行った.アウターボウの一側を他側に比べて長くした場合と側方拡大した場合の左右側大臼歯に働く遠心力, 側方力およびモーメントを骨組構造解析法を用いて算出し, 以下の結論を得た.1. フェイスボウの非対称性を増すことで, 片側の大臼歯をより遠心に移動させる効果は大きくなるが, 同時に側方力も増加し, 大臼歯の交叉咬合を生じる危険性が高くなることが明らかになった.2. フェイスボウの非対称の度合にかかわらず, 左右大臼歯にはほぼ同じ大きさの遠心回転モーメントが生じた.従来の研究より, 非対称フェイスボウのもう一つの副作用と考えられていた, 大臼歯の捻転度の左右差を増長するような効果は生じにくいと考えられた.3. 非対称フェイスボウの副作用を削減するために, フェイスボウを極端に非対称に作製することを避けることが推奨される.遠心移動を必要としない大臼歯側のアウターボウ後端をフェイスボウチューブの位置とし, 遠心移動が必要な大臼歯側のアウターボウ後端をその位置からアウターボウに沿って25mmから30mm延長するか, 15mm延長して側方に30mm拡大すると, 非対称フェイスボウの作用と副作用のバランスのとれた効果を発揮するデザインになると考えられた.
著者
玉川 洋一 杉本 章二郎 小林 正明
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

原子力発電所およびその周辺施設等における主に建屋内の漏洩放射能のモニターを行うため,ガンマ線のコンプトン散乱を利用した数個のシンチレーターからなるリアルタイム型全方向有感型の検出器の開発を行った.2インチのNaI(Tl)シンチレーターとプラスチックシンチレーター等を組み合わせて,角度分解能5°でガンマ線のエネルギー同定可能な検出器のプロトタイプを2つ製作し,ガンマ線源の飛来方向を視覚的に捉えるための描画ソフトも開発した.
著者
小林 達夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

Quark, Leptonの質量や混合角の起源を探ることは、素粒子論の中で重要な課題の1つです。また、超対称模型の枠組みでは、現実的な湯川行列を生み出す機構は、超対称性の破れの項への影響を考えながら議論すべきです。更に、超対称性の破れの項については、フレーバー間の縮退度に関して大きな実験的制限があります。上述のようなことを踏まえ、縮退したsfermionの質量を導きつつ湯川結合の階層構造を与えるような模型を研究しました。まず、超対称標準模型に加えて超共形固定点をもつようなSCセクターのある模型を研究しました。この超共形ダイナミックスがquark, leptonに大きなanomalous dimensionを生成するので、この模型では湯川結合の階層構造を出しつつ、縮退したsfermion質量を導くことが可能です。また、似たような結果を導く別の模型としては、余剰次元がwarp背景幾何上の模型を研究しました。この模型では、湯川結合の階層構造の生成に役立つのは、5次元bulk massによる、bulk場の局在化です。更に、ラディオンにより超対称性の破れが起る場合には、フレーバー問題も改善されることが分かりました。また世代間にS_3離散対称性を課すような模型を調べました。このような対称性はこれまで提案されてきましたが、我々の模型の新しい点はHiggsセクターにもこの対称性を課せるようにHiggsセクターを拡張した点で、そのため、超対称性の破れの項もこのような対称性をもつと仮定でき、FCNCへの効果を実験の制限程度に下げることに役立ちます。更に、弦理論の枠内で湯川結合の計算をしました。特に、興味があるのはorbifold模型で、なぜなら階層的な湯川結合が導けることが知られているからです。これまで代表的なmoduliへの依存性は分かっていましたが、今回我々は様々なmoduliへの依存性を計算しました。我々の結果の中で、現象論的に重要なことの1つは、湯川結合での物理的なCPの破れに関しては、ある特定のmoduliしか関与しないことを示した点です。
著者
小林 正史 北野 博司 設楽 博巳 若林 邦彦 徳澤 啓一 鐘ケ江 賢二 北野 博司 鐘ヶ江 賢二 徳澤 啓一 若林 邦彦 設楽 博己 久世 建二 田畑 直彦 菊池 誠一
出版者
北陸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

縄文から古代までの調理方法を復元し、土鍋の形・作りの機能的意味を明らかにする、という目的に沿って、ワークショップ形式による土器観察会、伝統的蒸し調理の民族調査(タイと雲南)、調理実験、を組み合わせた研究を行った。成果として、各時代の調理方法が解明されてきたこと、および、ワークショップを通じて土器使用痕分析を行う研究者が増え始めたことがあげられる。前者については、(1)縄文晩期の小型精製深鍋と中・大型素文深鍋の機能の違いの解明、(2)炊飯専用深鍋の確立程度から弥生時代の米食程度の高さを推定、(3)弥生・古墳時代の炊飯方法の復元、(4)古墳前期後半における深鍋の大型化に対応した「球胴鍋の高い浮き置き」から「長胴鍋の低い浮き置き」への変化の解明、(4)古代の竈掛けした長胴鍋と甑による蒸し調理の復元、などがあげられる。