著者
LONDONO B John Makario 小林 芳正
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.31-47, 1994-05-20

1990年8〜9月,ネバド・デル・ルイス(NRV)火山でいくつかの高周波火山性群発地震が,5カ所におかれた可搬式3成分デジタル地震計で記録された.この期間に3つの群発地震が記録されたが(8月28日,9月11日,9月17日),それぞれの群の震源は,活動している火口周辺の,互いに異なる領域内に決定された.スペクトル解析と波形の観察から,同一の群に属する多くの地震は,同一観測点ではよく似たスペクトルと波形を示すが(ほとんど相似),群が変わると非常に違った形状になることがわかった.これは,一つの群発地震中,震源時間関数がどの地震でも互いに似ているためと考えられる.また,同一群の地震でも観測点が変わるとスペクトルが異なっており,伝播経路の効果が強いと考えられる.これらの群発地震と比較するため,9月11日の群発地震の震源領域に近い領域で起こったいくつかの孤立的な地震を同様に解析した.これらの孤立的地震のスペクトルと波形は,同一の観測点でも,異なる観測点間でも互いによく似ていた.このことは,孤立的地震では経路効果はあまり強くないことを意味し,孤立的地震の経路が,経路効果の強い群発地震とは,性質の異なる領域を通っているためと考えられる.今回の解析から,NRVの高周波群発地震はある決まった領域内に起こること,それぞれは特有のスペクトルと波形を持つことがわかった.孤立的地震は均一な領域などで不均質な領域で起こり,この不均質のために観測点ごとに経路効果が異なるものと考えられる.NRV周辺各点のスペクトル間の相似性からNRV地域は3つの地帯に分けられそうである.
著者
田渕 祥恵 小板橋 喜久代 柳 奈津子 小林 しのぶ
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リラクセーション法(呼吸法)による睡眠改善効果を検証することを目的に基礎研究を実施した。健常成人を対象に腹式呼吸法を実施する対象者(実験群)と実施しない対象者(対照群)を無作為に振り分け、腹式呼吸法の有用性について検討した。その結果、5日間の腹式呼吸法の練習を実施した後、就寝直前に腹式呼吸法を実施した場合には入眠潜時(就床から入眠までの時間)が短縮されることが示唆された。
著者
中村 太士 森本 幸裕 夏原 由博 鎌田 磨人 小林 達明 柴田 昌三 遊磨 正秀 庄子 康 森本 淳子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

森林、河川、農地生態系について、物理環境を基盤とした生息場評価手法を確立した。また、それぞれの生態系において、生息場の連結性や歴史的変化、倒木などの生物的遺産を考慮する新たな復元手法を開発し、実験的に成果を得た。また、魚類、昆虫、植物、両生類、鳥類、貝類、哺乳類など様々な指標生物を設定し、モニタリングや実験結果によりその成否を評価する手法を確立した。環境経済学や社会学的立場から、再生事業や利用調整地区の導入に対する地域住民、利用者の考え方を解析し、将来に対する課題を整理した。
著者
小林 吉之 嶺也 守寛 藤本 浩志
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-92, 2006-05-01
被引用文献数
4 3

水平ではない障害物が跨ぎ越え動作に与える影響を評価するため,若年成人被験者に高さの異なる水平な障害物と角度の異なる前額面上で傾いた障害物を跨いで越えさせ,その際の歩容を3次元動態計測装置VICON-512を用いて計測した.計測したデータより外側及び内側MP関節に貼付したマーカから障害物までの距離をそれぞれ外側つま先クリアランス,内側つま先クリアランスと定義し,水平な障害物及び前額面上で傾いた障害物間で比較を行った.その結果,高さの異なる水平な障害物間では外側内側共につま先クリアランスに有意な差が認められなかった.一方前額面上で傾いた障害物を跨いで越えた際には外側つま先クリアランスが有意に減少した.これらのことからヒトが前額面上で傾いた障害物を跨いで越える際には,水平な障害物を跨いで越えるときほど余裕を持ってつま先を持ち上げておらず,障害物につまずく可能性が増加していることが示唆された.
著者
小林 吉之 嶺 也守寛 藤本 浩志
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.73, no.725, pp.274-279, 2007-01-25
被引用文献数
1

To determine the accuracy of foot position sense in the means of foot placement, young adults were asked to place either medial edge or lateral edge of their feet along the base line on the floor as close as possible, and the edge of placed feet were scanned by using laser displacement gauge. From the collected data, constant error, the distances between the edge of placed feet and the base line on the floor, and absolute error, the absolute distances between the edge of placed feet and the base line on the floor were denned and compared between the medial or lateral trials, and dominant leg or indominant leg. The statistical analysis showed significant differences of constant error between the trials only. The trials to place their medial edge tend to place their feet away from the base line, and the trials to place their lateral edge tend to place their feet in to the base line. These results indicate that we tend to expect the position of our feet more medially than actual, and these discrepancy may be one of a reasons of tripping or banging of our feet to the obstacles while walking.
著者
小林 吉之
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,ヒトが歩行中に転倒するもっとも主要な要因である『つまずき』が生じる一因を解明するために,これまで著者らが行ってきた研究で得られた知見を基に,ヒトが歩行中に足部の位置をどの程度正確に知覚できているか,その特性を実験的に明らかにすることを目的とした.本研究の結果,ヒトの足部は歩行中遊脚期にも30mm程外側に偏っている事が確認された.
著者
森 英樹 右崎 正博 大久保 史郎 森 正 大川 睦夫 小林 武
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

平成4年度は、3年間にわたる本研究の最終年度であったため、2年間の成果をふまえ総括的な検討をおこなった。すなわち、日本を含む先進資本主義国の従来の憲法学における議会制民主主義と政党制の理論史的枠組みを検討し(1年目)、各国の集中的検討による普遍性と固有性を析出し、あわせて日本の現状分析をおこなう(2年目)という研究成果にもとづき、日本の政治文化状況のもとで政党への国庫補助の妥当性にかんして一定の結論をみちびき出した。具体的には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、ニュージランドの各国における政党国庫補助の現状分析と、それを支え、あるいは批判する理論状況を検討したが、その結果みえてきたのは、各国における大衆社会の進行による議会制民主主義の形骸化、それにともなう選挙戦の変容などの共通点とともに、その背景にある各国の議会制民主主義の歴史の偏差であった。これらの成果をふまえ、日本で進行中の「政治改革」による選挙制度改革と政党国庫補助導入の動きを批判的に分析した。かくして、日本の「政治改革」を、先進資本主義諸国で共通に進行する新たな統治戦略としての政治改革との連動性のなかに位置づけることができ、日本固有の政治風土のなかで、いかに国民主権と民主主義を実現することが可能かについての共通の認識をうることができた。
著者
小林 哲夫 森 牧人 長 裕幸 荒木 卓哉 安武 大輔 北野 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

半乾燥地の黄河上流域(甘粛,中国)に実験圃場を設置し,また日本における室内実験を併用して,二種類の塩類化土壌の改良技術,すなわち灌漑畑地の塩類化プロットから塩類を除去する有効な技術として著者によって提案されたPSW-Well法と,土壌からの塩類吸収能力が高い作物(クリーニングクロップ)の栽培に基づく生物学的改良法,についての実験を行った.その結果,両方法が有効に機能するための必要条件が示された:(1)PSW-Well法は,流域内の帯水層系が均質で,宙水面が発達しないことが有効に機能するための必要条件である.(2)クリーニングクロップは,塩類をよく吸収するだけでなく,水要求度が低いことが必要である.
著者
小林 淳二 野原 淳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脂質代謝を制御する酵素であるLPLとHTGLの活性を測定する簡便な系を確立し、その臨床意義を検討した。LPL活性はTG、RLP-TG,sdLDLと逆相関、HDL-Cと正相関したしたが、ANGPTL3と相関なし。一方、HTGL活性はTG、RLP-TG、sdLDLと相関せず、HDL-C、ANGPTL3と逆相関した。ANGPTL3によるHTGL活性抑制は見られなかった。以上から、ANGPTL3とHTGL両者の上流にそれらの制御にかかわる因子が存在し、それぞれを逆方向に制御する可能性が示唆された。
著者
池田 光穂 太田 好信 狐崎 知己 小林 致広 滝 奈々子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

私たちの研究は、メキシコとグアテマラ両国における先住民(先住民族)について、先住民運動の中にみられる政治的アイデンティティについて現地に赴く民族誌調査を通して明らかにしてきた。具体的には、世界の他の地域での民主化要求運動、すなわち自治権獲得運動、言語使用の権利主張や言語復興、土地問題、国政への参加、地方自治などの研究を通して、(a)外部から見える社会的な政治文化としての「抵抗」の実践と(b)内部の構成員から現れてくる文化政治を実践する際の「アイデンティティ構築」という二つのモーメントと、その組み合わせのダイナミズムからなる資料を数多く得ることができた。
著者
小林 優
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ホウ素は植物の生育に不可欠の元素であり、欠乏すると組織の壊死や不稔など多様な生理障害が発生する。しかしホウ素が不足することでそれら障害が発生するメカニズムは明らかでない。このメカニズムを解明するため、植物の培地からホウ素を除去したときに生じる応答を詳細に解析した。その結果ホウ素が欠乏すると細胞に活性酸素が蓄積し、それが原因で細胞死に至ることが明らかとなった。また植物細胞は培地からのホウ素消失を直ちに感知することも明らかとなった。
著者
小林 太郎 武部 純 似内 秀樹 古川 良俊 石橋 寛二
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-15, 2006-01-10
被引用文献数
3 2

症例の概要: 患者は54歳の男性. 1992年6月に左側口底部の腫瘤に気づき, 岩手医科大学歯学部附属病院口腔外科を受診した. 同年9月に下顎左側口底癌の診断のもと, 腫瘍摘出術が施行された. その後, 左側下顎骨放射線性骨壊死と下顎骨骨折が認められたため, 1993年3月に左側下顎骨区域切除が行われた. 術後経過は良好であったが再建は行われず, 1996年2月に補綴的機能回復を目的として第二補綴科を受診した. 下顎の患側偏位により上顎との咬合接触関係が失われていたため, 下顎顎義歯装着後, 1997年11月に下顎顎義歯ならびに下顎歯列との咬合接触部を設けた口蓋床を製作し装着した. 2001年4月に下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床を再製作後, 患側への偏位の抑制と咀嚼機能の改善が認められている.<BR>考察: 下顎の偏位の防止と咀嚼機能の回復を目的として, 口蓋部の咬合接触域にパラタルランプを付与した口蓋床を装着した. その結果, 咀嚼筋のバランスを保つことができ, 下顎の患側への偏位の抑制を図ることができた. 咀嚼機能と構音機能の改善程度を評価したところ, 下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床の装着により摂取可能食品の増加が認められた. また, 狭まったドンダーズ空隙を広げることにより, 構音機能の改善も認められた.<BR>結論: 下顎骨非再建症例における下顎顎義歯と, これに咬合接触する口蓋床の装着は, 下顎の患側への偏位の抑制と咀嚼機能の回復に有効であることが示された.
著者
半田 直史 小林 一三
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

微生物ゲノムに修復されないDNA二本鎖切断が残されると細胞死を起こす。そのため大腸菌から高等生物まで、DNAの二本鎖切断に対して相同組換え機構などの手段を備えている。大腸菌がゲノムにコードするDNA切断酵素としてI型の制限酵素があるが、この酵素は特定のDNA塩基配列を認識してもそこでDNAを切断しないでDNAをたぐり、別の酵素分子に邂逅した所でDNAを切断する。私たちは、この不思議な現象が正常なDNA複製をモニターし、異常があれば複製フォークを切断して、ゲノム、あるいは細胞の生死をコントロールする事を示唆する実験結果を得た(Nucleic Acids Res印刷中)。II型制限酵素が、その遺伝子を失った細菌のゲノムを切断して殺す「分離後宿主殺し」に関して、その細胞死への抵抗手段として、細菌から高等生物まで広く保存されている相同組換え経路(RecF経路)が重要であることを示した(Microbiology印刷中)。さらに、多くのタンパク質が同時に働くことが遺伝学的な解析から知られていた、この大腸菌のRecF経路による二本鎖DNA切断を修復を試験管内再構成実験で初めて成功した(Genes Dev印刷中)。また、RecBCD酵素によってプロセスされたDNAを引き継ぐRecAタンパク質については、RecAタンパク質と蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を精製し、その生化学的特徴を詳細に解析した。実は野生型のRecAタンパク質にGFPを融合させると酵素機能は消失する。そこで私は、これまで研究から活性が向上していることが知られている変異RecAタンパク質にGFPを融合することで、活性を維持したまま蛍光RecAタンパク質を得ることに成功し、これを1分子解析系に導入して、これまでに報告されている野生型RecAタンパク質の挙動と比較することができた(論文投稿中)。
著者
小林 繁
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、障害児・者の学習文化活動を保障していくための課題と方向性を探っていくことを意図して、全国の先進事例や先行研究の調査とともに、全国の市町村自治体での取り組み状況についてのアンケート調査を実施した。そこでは、この間の生涯学習施策の進展に伴って、障害をもつ人の学習・文化保障の取り組みがどの程度進んでいるかを具体的に把握、分析する課題意識のもとに考察を行った。まず先進事例としては、東京を中心に行われている障害者青年学級(教室)、障害をもつ人を対象とした講座および届けるという発想にもとついたアウトリーチサービスの取り組み、大学で行われているオープンカレッジ、社会教育施設での対応、などについての調査見学を行った。また、全国調査の結果からは、まず学校週5日制対応の事業については、圧倒的に多くの市町村ではその対応がなされていない状況が明らかとなり、障害をもつ児童が地域で生き生きと学習文化事業に参加していく取り組みが求められていることを提起した。また、障害をもつ人が参加できるような配慮をしている事業を実施している自治体が回答した自治体総数の30%であり、依然として課題が大きいことがあらためて確認された。その意味で、教育を受ける権利を保障する責務を負う教育行政、とりわけ社会教育行政の役割と課題が浮き彫りにされたと同時に、とりわけスタッフやボランティアといった人的な面とプログラムなどのソフトの面からの学習支援のあり方を先進事例の取り組みから学んでいく必要性を強調した。そうした点をふまえ、最後にまとめとして、以下の視点の重要性を提起した。(1)学習権保障の視点(2)ノーマライゼーションとポジティブアクションの視点(3)社会教育施設・機関の役割
著者
小林 淳子 森鍵 祐子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 細谷 たき子 赤間 明子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

出産後の母親の喫煙予防に資する基礎資料を得るために,母子手帳交付に来所した妊婦をコホートとして母子手帳受領時,妊娠末期,出産後の3回縦断的に調査した。その結果母子手帳受領時,出産後ともに喫煙には出産経験有,身近な喫煙者有が関連し,母子手帳受領時にはさらに若年齢が関連した。妊娠を契機に禁煙した妊婦は79.2%,その内出産後の再喫煙率は15.8%であった。妊娠が判明しても喫煙を継続した妊婦5名中4名(80.0%)が出産後は禁煙した。また,妊娠初期の禁煙支援として「意識の高揚」,「自己の再評価」を活用する妥当性が示唆された。
著者
小林 好宏
出版者
山口大学東亜経済学会
雑誌
東亞経濟研究 (ISSN:09116303)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.19-50, 1963-10-31

一、市場価格は、市場の競争形態によって異なる。二、日本においてはアメリカに較ベて、競争的市場、寡占的競争市場などが、いわゆる独占的市場と同時に広範に存在しており、したがって価格体系も一層複雑である。三、日本においては大企業とならんで弱小企業が広範に存在しており、その生起と淘汰のプロセスを通じて大企業の拡張がなされる。これは市場が大企業のみから成る場合に比し、大企業それ自身の拡張を強める。四、日本においては、特に新製品生産部門、あるいは成長産業と言われる分野で、マーケットシェアー獲得の競争が行なわれ、量産によるコストダウンと相俟って、少数企業によって、市場が支配されているにも拘わらず、価格が低下している。五、日本とアメリカの価格動向を比較すると、日本では卸し売り物価は短期的に変動するが長期的には安定しているのに対し、消費者物価は長期的に上昇している。アメリカでは、全体として価格は下方硬直的であり、長期的に上昇傾向にある。六、日本とアメリカの価格動向で最も特徴的なのは、資本財物価と消費財物価の相対的関係であり、日本では両者の相対価格は安定、乃至消費財価格の上昇で特徴づけられるのに対し、アメリカでは、資本財価格の相対的騰貴がいちぢるしい、これは一九二九年以来特に明瞭にあらわれている。更に近年は財政支出に関わる物価の騰貴率が激しい。七、日本の価格変動を需要要因とコスト要因からのみみると、需要要因に大きく支配されており、賃金及び原料によるコストプッシュはあまりみられない。八、アメリカにおいては、鉄鋼、電力、燃料等の主要原料がきわめて高価格であり、これが原料のコストプッシュをもたらす主要因となっている。九、主要原料の高価格は、これら部門における管理価格による高価格決定に原因がある。十、物価の動きに関しては、需給面のみならず、通貨供給と生産の関係が重要な役割を演じている。日本において、通貨の増大率と生産の増大率とを比較すると、通貨の増大率の方がより大である。このことから、これまで日本ではオーヴァーローンによって生産を剌戟して来、それがインフレ傾向をもたらして来た面があると言いうる。十一、日本とアメリカの価格体系が、それぞれ資本蓄積にどのように作用しているかをみると、アメリカでは、資本財部門の相対価格の騰貴が、資本財部門を含む全産業のコスト高をもたらしている。これに対して日本では、公的部門の価格が資本蓄積を促進するように作用しており、一部産業における独占的高価格にも拘わらず、原料のコストプッシュの影響はアメリカのように強ぐない。十二、日本においては、国家が企業の資本蓄積を促進させ、生産を拡大させるように働らくのに対し、アメリカでは、むしろ国家が財政支出を通じ、高価格で買入れることにより、市場を創出するように作用する。十三、アメリカにおける資本財価格の相対的騰貴は、実質消費を高め、貯蓄を抑える。これはケインズ的な立場からすれば、不況の防止になるようにみえる。けれどもここから高蓄積をもととする経済の高成長はもたらされない。日本は全体的傾向としては丁度これと逆であり、高貯蓄、高蓄積であった。問題はその貯蓄を吸収するに充分な投資があるかどうかであり、日本においては強い投資意欲に支えられ、高貯蓄率にもとづく高成長が実現されて来た。十四、資本財価格に関して重要なことは、それが他産業における費用にはねかえってくるこ上である。資本財価格の騰貴は、一部は資本財部門内部の循環的関係を通じ、また一部は消費財部門との取引を通じて、全体としてコストの圧迫をもたらす要因となる。資本財価格の騰貴は、マクロ的には、好況の指標のように見做されて来たが、ミクロ的に個別企業の立場でみると、コストの圧迫として作用する。この問題は、プライスの側面だけではなく、コストの側面からも、すなわち費用-価格関係として把握されねばならない。
著者
井上 洋一 加島 勝 小林 牧 鈴木 みどり 白井 克也 神辺 知加 鷲塚 麻季 藤田 千織 鬼頭 智美 遠藤 楽子 田沢 裕賀 高梨 真行
出版者
独立行政法人国立文化財機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

アンケート調査に基づき抽出した国内外の主な博物館・美術館等における教育・普及事業の現地調査を通し、博物館教育・普及事業の現状と課題を明確化させた。また、国内外の博物館関係者らとの連携により、国の違いによる伝統と文化の多様性の意義を確認するとともに、そこから日本の伝統文化に関する先駆的教育・普及理論のあるべき姿を提示した。さらに、新たな古美術鑑賞法や実践的な博物館教育・普及プログラムを制作・実施した。
著者
小林 雅実
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.270-279, 1991-06-28
被引用文献数
3 1

ニフェジピンの炎症組織におよぼす影響を検索した。60匹のウィスター系ラットの背部に滅菌綿球を挿入してcotton pellet肉芽腫を形成し,24時間後よりニフェジピン投与(100mg/kg)を開始し,投与期間別に次の4群に区分した。1,2,4週間投与(1,2,4週群)および,4週間のニフェジピン前投与を行った後に綿球を挿入し,術後さらに4週間投与(前投与群)とし,各群についてコントロールは同匹数とした。実験期間終了後,屠殺,肉芽腫を摘出し,湿重量,タンパク質,ハイドロキシプロリンの定量ならびに組織学的検索を行ったところ,次の結果を得た。すなわち,肉芽腫の湿重量,タンパク質量は1週間目に増加し,その後経時的,または薬剤投与による変化はなかったが,ハイドロキシプロリン量は経時的にも,薬剤投与によっても増加する傾向があり,前投与により,さらに増加が認られた。また,組織学的所見では,著明な炎症性細胞浸潤と肉芽組織の増生がみられ,膠原線維は経時的に増加し,ニフェジピン投与によって束状の線維が増加する傾向が認られた。