著者
有松 優行 渥美 生弘 諏訪 大八郎 大熊 正剛 土手 尚 石田 惠章 齋藤 隆介 古内 加耶 小林 駿介 伊藤 静 德山 仁美 中安 ひとみ 出口 美義 光定 健太 角屋 悠貴 武田 栞幸 田中 茂
出版者
日本脳死・脳蘇生学会
雑誌
脳死・脳蘇生 (ISSN:1348429X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.91-94, 2022 (Released:2022-08-26)
参考文献数
8

【目的】本人,家族に臓器提供の意思があったが虐待の可能性が否定できなかったために臓器提供に至らなかった1例を報告する。【症例】13歳,男性。現病歴:自宅内で首を吊っていたところを発見され,救急搬送された。経過:搬送後に経口挿管を行い,アドレナリンを投与し自己心拍が再開した。入院4日目に脳幹反射が消失し,CT検査で脳浮腫,脳波で平坦脳波を確認した。本人の保険証に臓器提供の意思が確認され,家族にもその意思があった。しかし,来院前日に父親が患者を叱責した事実が明らかになった。警察と児童相談所へ照会を行い,院内の倫理委員会で,虐待の事実は確認できないが可能性が否定できないとされた。「法的脳死判定マニュアル」1)で,脳死判定の除外例に「被虐待児,または虐待が疑われる18歳未満の児童」をあげていることから,脳死判定を行わず臓器提供も行わない方針とした。【まとめ】虐待の否定ができないことが臓器提供を行うことができないことに直結する現制度は,患者本人の意思を尊重できない可能性がある。
著者
小林 繁子
出版者
法制史学会
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.113-138,en7, 2016-03-30 (Released:2022-03-05)

本稿は、近年進展の著しい歴史的魔女研究の動向を整理し、その論点と課題を明らかにするとともに、隣接諸分野との接続、発展の可能性を提示することを目指すものである。魔女研究には、裁判・支配の実態と、魔女の表象という大きく二つの問題領域が互いに関連しあいながら存在している。前者においては、犯罪史研究の隆盛に刺激を受け、魔女犯罪を刑事司法一般に位置付ける試みがなされている。また魔女犯罪の政治性を巡って提唱された「道具化」論は、人類学的・民俗学的知見に基づいた近世社会・国家の魔術性という前提を得て相対化されつつ、これを支える地域研究の事例が蓄積されている。国家形成と魔女迫害との関連を問う研究においては、地域研究に基づき学識法曹の役割、共同体内における在地役人の位置づけなど、近世的支配をより立体的に描き出す指標として魔女研究が有効であることが示された。 後者の問題領域においては、知識人の悪魔学テキストのみならず絵画やビラ・版画などが分析対象となっている。作り手と受け手の相互作用に対する分析視角には、メディア学や社会学における転回の影響が認められる。ジェンダーを巡る研究においては、これまで等閑視されてきた男性魔女の存在も取り上げられるようになった。日本でも個別の研究成果は現れているものの、今後はそれらを研究プロジェクトとして統合・総括することが望まれよう。
著者
小林 仁 渥美 公秀 花村 周寛 本間 直樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.180-193, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,人々によってすでに馴致された生活環境を対象として,その環境を一瞬未知の状態へと変換し,新たな馴致を促すという一連の流れを発生させる手法について,実践プロジェクトによるアプローチを試みた。Moscovici(1984=八ッ塚,未公刊)による社会的表象の議論をもとに,社会的表象としての現実の馴致プロセスについて概観し,その後,原(2005)の「未知化」という概念を参考に,未知化の技法と未知化後に事象を再び馴致してゆく方法について検討した。「未知化」の方法として,プロジェクト型ツールの設計および実践を行った。実践のフィールドとして,筆者らが所属する大阪大学キャンパスを設定した。参加者が阪大(ハンダイ:大阪大学の略称)に関する情報を詳細に獲得し,各々が今まで知らなかった阪大を再発見してゆくDATA HANDAIプロジェクトは,2005年10月より始まり,2007年9月現在も継続して進行中である。活動は領域横断的に実施され,教員5名と学生20名あまりを中心として活動を行った。プロジェクトの成果として数十枚に及ぶ情報カードを作成した。結果として,参加者の言説の変化や活動に関するエスノグラフィーが得られた。本研究では,このプロジェクトを対象として,未知化を解説し,既知から未知へ,そして新たな既知として現前する社会的表象の分析を行った。
著者
小林 藤次郎
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.597-607, 1985-10-30 (Released:2008-07-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2
著者
小林 祐介 大槻 明
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.186-193, 2018-05-26 (Released:2018-06-08)
参考文献数
23

2018年現在,日本ではコメ(米)を食べない人が増加しており,実質的なコメ離れが起きている.そこで,本研究では,特に若者世代がコメを食べない理由について明らかにすることを目的に,独自にアンケート調査を行い,得られたアンケート結果データを元に,クラメール連携相関及び対応分析を用いた計量アプローチにより分析を行った.この結果,主食にコメを食べない人の特徴や原因が明らかとなった.
著者
小林 茂
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.113-140, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
90

From the beginning of the Sino-Japanese War in 1937 to the end of the WWII in 1945, Japanese military occupied wide areas in East and Southeast Asia and the Western Pacific. Along with the extension of the front, Japanese military's weather surveys replaced existed local ones and interrupted their continual observation. In addition to ground observation, it carried out upper-air observation with pilot-balloon and radiosonde to support its air forces on the basis of the extended survey network. As for the data accumulated up to the end of the WWII by Japanese military, however, it has been believed that they were lost in the disturbances of war and to restore this wartime discontinuity is almost impossible. Scrutinizing book stocks of several institutions at home and in the United States, such as the Library of Congress, the author found not a few unused materials, in which wartime weather data had been recorded. In this paper, following up the wartime vicissitudes of Japanese weather survey, he reviewed instructive cases, where such materials had been rescued successfully, in order to promote the efficient search of buried data in the near future.
著者
中村 和之 酒井 英男 小林 淳哉 小田 寛貴 浪川 健治 三宅 俊彦 越田 賢一郎 佐々木 利和 瀬川 拓郎 中田 裕香 塚田 直哉 乾 哲也 竹内 孝 森岡 健治 田口 尚 吉田 澪代
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、14~16世紀のアイヌ文化の状況を明らかにすることである。この時期は、近世のアイヌ文化の成立期であるが、文献史料と考古学資料が少ないため、状況がわかっていない。そのため、漢語・満洲語・日本語史料の調査を行うと同時に、遺物の成分分析や年代測定、それに遺跡の電磁探査など、さまざまな分析方法で情報を収集した。その結果、14~15世紀の北海道でカリ石灰ガラスのガラス玉が発見された。本州でほとんどガラス玉が出土しないので、アムール河下流域からの玉と考えられる。この時期は、元・明朝がアムール河下流域に進出した時期に重なるので、北方からの影響が強くアイヌ文化に及んだことが推定できる。
著者
小林 史岳 唐澤 忠宏 松下 智人 小松 修 安達 亙
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.499-503, 2017-11-30 (Released:2017-12-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

ツキヨタケ中毒の6 例を報告する。ある住民が採取してきたキノコを,バター焼きにして近隣住民6 人で食べた。食事開始1 時間から1 時間30分で嘔気が出現し,全員が当院救急外来を受診した。救急隊により,摂取したキノコがツキヨタケである可能性が示された。入院し対症的,保存的加療を行ない,全員翌日に退院した。しかしながら, 1 名が退院翌日からの腹痛,食思不振のため,もう1 名が退院当日からの嘔吐,下血のため,退院翌々日に再入院となり,後者はCT で十二指腸から空腸に強い壁肥厚を認めた。 ツキヨタケ(Lampteromyces japonicus)による典型的な症状は,摂取後30分から3時間での嘔吐,下痢,腹痛だが,重症例では数日後に腸管の浮腫をきたすことがあるため,注意が必要である。
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0376, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
小林 基
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.376-394, 2018-09-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
52

農産物産地の形成と産地間競争に関する既往の研究では,イノベーションが競争を駆動するものとして認識されていたが,その具体的なプロセスと地域的差異については必ずしも詳しく論じられていない.本稿は農業において技術の研究開発から普及を経て導入に至る過程をつなげて把握すべく,イチゴの品種の育成・普及を素材として検討した.この結果,まず,規模の大きな産地は小さな産地より速く品種が普及する傾向にあること,大きな産地ほど多くの品種が育成・登録されていることが伺えた.また,大きな産地では県内の試験場で育成された特定の品種の最終的な普及率が高かった.これらの産地では農協を通じた系統出荷率が高く,農協は,新品種への転換の方針決定と情報提供により,普及の速さと最終的な普及率を高めていた.産地におけるイノベーションは,研究の規模と蓄積,生産者の組織化の態様という各産地の事情を反映した過程であるといえる.

3 0 0 0 OA 滝の川の図

著者
小林清親 画
出版者
松本平吉
巻号頁・発行日
1878
著者
小林 頼太 長谷川 雅美
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.2, pp.169-173, 2005-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17

Xenopus laevis, a frog commercially traded as a laboratory and pet animal, was first recorded in the wild at four localities in the Kanto plain, central Japan. Frogs found in the Tonegawa River might be a feral population established in the past decade because several X. laevis have been collected intermittently since the late 1990's. It is uncertain, however, whether Xenopus found at three other localities (Hasuike Pond in Fujisawa City, Inbanuma Pond in Shisui Town, and A ditch in Nagara Town) have established feral populations because there are few or no subsequent capture records since the first record at each locality.
著者
小林 謙一郎
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.348-353, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

歯科診療所における針刺し・切創の実態や,B型肝炎ワクチンの接種状況は明らかではない針刺し・切創を原因とする血液・体液媒介性感染症の予防を目的とし,実態を把握するためアンケート調査を行った.東京都墨田区内の歯科診療所に勤務する医療従事者(歯科医,歯科衛生士,歯科助手)を対象とした.墨田区内130施設中69施設よりアンケート調査票を回収し,計97名(歯科医師74名,歯科衛生士13名,歯科助手10名)の回答を得た.歯科医師の70.3%,歯科衛生士と歯科助手を合計した中の77.2%が針刺し・切創を経験していた.歯科医師は,診療中の麻酔用注射針による針刺しが多く,歯科衛生士や歯科助手では,針刺し・切創の原因器材や状況は様々であった.歯科診療所に勤務する医療従事者のB型肝炎ワクチン接種率は59.4%であった.歯科衛生士,歯科助手,50歳以上の歯科医師において特にB型肝炎ワクチンの接種率が低かった.また,針刺し・切創発生時に適切な対応(流水による創部の洗浄と病院の受診)を行ったものはわずか9%であった.歯科診療所では,多くの医療従事者が針刺し・切創を経験しているが,B型肝炎ワクチンの接種率や針刺し・切創発生時の対応は十分ではない.