著者
山本 淳一 澁谷 尚樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-70, 2009-03-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
3

本論文では、2004年にわが国で制定された「発達障害者支援法」が示している発達障害への支援のありかたについて、応用行動分析学がどのように貢献できるかを概説した。応用行動分析学のもつ「科学性」と「包括性」を整理し、それが、「発達障害者支援法」にうたわれている理念に一致していることを指摘した。次に、「自閉性障害」「注意欠陥/多動性障害」「学習障害」をとりあげて、以下の点についてエビデンスにもとづく支援方法を吟味した。(1)それぞれの発達障害にはどのような特徴があるか?(2)科学的な発達支援方法がどのように明らかにされてきたか?(3)より大きな支援プログラムがどのようにつくられ、その効果が大規模研究によってどのように分析されてきたか?(4)そのような研究を基盤にして、どのように支援ガイドラインが提示されてきたか?(5)様々な特徴をもつ個人に対して、様々な実践現場で活用するために、新たな研究と実践がどのように発展してきたか?その結果、研究成果を受けてガイドラインが提示され、ガイドラインをさまざまなニーズをもつ個人に適用するための方法が開発され、さらに新たな支援成果が蓄積される、という一連の発達支援の発展を抽出した。研究というのは、研究そのもので完結するのではなく、支援そのものの質の向上を促すための必要条件であることを示し、今後の研究課題を討議した。
著者
山本 緑 石井 祐次
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.41-46, 2018 (Released:2018-06-16)
参考文献数
21

Objective: Smart drugs are widely used for nonmedical reasons in Western countries.  Given that smart drugs are often used for years, long-term effectiveness and safety are essential, but particularly difficult and costly to determine.  The use of smart drugs seems to be common among individuals in cognitively demanding environments, such as schools and universities, although the actual consumption of smart drugs has not been elucidated in Japan.  To monitor the prevalence of smart drugs among undergraduates, we conducted an awareness survey in Kyushu University and Healthcare Management College.Results: We found that 98% of students had never used smart drugs.  When asked “Would you like to use smart drugs ?” 55% of the students answered “No,” 10% answered “Yes,” and 33% answered “I couldn’t say.”  No associations were observed between these answers and sex, drinking, smoking, and pressure on academic performance.  It is suggested that users of soft enhancers, such as caffeine-containing products for cognitive enhancement, are more likely to use smart drugs.  We found that half of the students had used energy drinks for neuroenhancement prior to an exam.Conclusion: The present study indicated a low prevalence of smart drug use compared with that in other countries, whereas the use of caffeine-containing products for cognitive enhancement appeared to be similar to Western usage.  Furthermore, approximately 30% of the students agreed with the use and effectiveness of smart drugs.  Further studies of smart drugs among students should be conducted to prevent the abuse.
著者
山本 広太 工藤 彰洋 武居 周
出版者
Japan Society for Simulation Technology
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.27-37, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
22
被引用文献数
2

Currently, in the design and evaluation of acoustic environments such as concert halls and live houses, the importance of acoustic analysis technology is increasing due to the dramatic performance improvement of computers in recent years. Due to the large-scale of the analysis area and expansion of the analysis frequency band, it is necessary to solve the large scale problem more than before in the wave acoustic analysis. Therefore, in this research, we are researching and developing a large-scale sound field analysis method based on the parallel finite element method. The iterative domain decomposition method is employed in the analysis method as parallel technique. In this research, pre-conditioners for the interface problem in the iterative domain decomposition method are considered. As a result, we have found that the balancing domain decomposition method is the most effective acoustical analysis. We also confirmed that the acoustic analysis code is very high accuracy with errors within the allowable range in a numerical analysis.
著者
山本 陽子 渡邉 聡明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では大腸特異的VDRKOマウスを作出し、炎症性腸疾患および炎症性発癌モデル実験をおこない、両疾患に対する大腸のVDRの機能解明をめざした。大腸特異的VDRKOマウスは炎症性発癌による死亡率が高かったが、生存したマウスについては両モデルともコントロールマウスとの差は認められなかった。これは両モデルにおいてコントロールマウスの大腸におけるVdr遺伝子発現が減少したためであると考えられた。一方コントロールマウスで高頻度に認められた脱肛および腸管の周辺組織への癒着は大腸特異的VDRKOマウスでは認められず、大腸のVDRがこれらの表現型に関与していることが示唆された。
著者
山外 功太郎 山本 誠一
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09101160)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.7-9, 1999-08-30

In this paper, we describe the comparison of Rn-222 concentrations between wooden house and reinforced concrete apartment. The portable Rn-222 monitoring system, which can measure the maximum 4 sites simultaneously, was employed for this survey. The indoor Rn-222 concentration level of the wooden house was almost equivalent to that of the outdoor. In the reinforced concrete apartment, the maximum indoor Rn-222 concentration was more than 150[Bq/m^3], about 10 times higher than that of the wooden house.
著者
山本 健二 浅尾 哲次 赤峰 昭文 中西 博 TETSUJI Asao 浅尾 哲治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

歯周病の主要な病原性細菌Porphyromonas gingivalis(以後ジンジバリス菌)は自身の生存戦略に必須の物質として2つの主要なシステインプロテアーゼArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)を産生している。両酵素は細胞内外に存在し多様な機能を果たしている。細胞外にあっては、両酵素は歯周組織を直接したり、宿主の生体防御機構を破壊したりして歯周病原性を発現する一方、菌体にあっては自身の成長・増殖に必須のヘムやアミノ酸の獲得や菌体表層蛋白質の具プロセシング、血球凝集素活性やヘモグロビン結合活性などに強く貢献していることが明らかにされた。本研究の目的は、両酵素のこうした多様な機能の詳細な機能の解明を通じて、これらを薬物標的とした創薬研究を推進することにあった。とくに本研究では、Rgpに対する特異的な天然ならびに人工の阻害剤が探索され、それらの有効性を検定するとともに歯周病治療薬として実用化していくための具体的な方法論が検討された。天然の阻害物質としては、土壌の放線菌FA-70株の培養物中に本酵素活性を阻害する物質(FA-70C1と命名)を同定・単離し、構造を決定した。本物質は構造式C_<27>H_<43>N_9O_7で表され、分子量606の新規物質であった。またヒト唾液中にRgpを阻害する物質としてヒスタチンが同定された。ヒスタチンを含む宿主蛋白質のRgpによるペプチド結合の切断特異性に基づいて10種類以上のオリゴペプチドが合成され、その中から、Rgpを強く阻害するトリペプチド化合物(KYT-1と命名)を見出した。FA-70C1およびKYT-1はともにRgp活性を10^<-8>Mで80%以上阻害するのに対し、宿主のシステインプロテアーゼのカテプシンB、L、K、Sは同じ濃度で50%以下の阻害しか示さなかった。また、両阻害剤はRgpがもつコラーゲン分解能や免疫グロブリン分解能を強く阻害した。
著者
加藤 敏文 井上 嘉則 上茶谷 若 齊藤 満 加賀谷 重浩 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.335-340, 2012-04-05
参考文献数
21
被引用文献数
5

固相抽出剤形状の多様化を目的として,逆相/陰イオン交換複合モード型ポリマー系吸着剤をポリエチレン粉末で焼結した多孔質円柱状の固相抽出剤を調製し,固相抽出特性を評価した.作製した焼結型固相抽出剤はモノリス様の連続孔を有しており,高流速下でも被検化合物を定量的に抽出可能であった.中性,塩基性及び酸性薬物を用いて抽出特性を調べたところ,中性及び塩基性薬物は疎水性相互作用により明確に保持され,メタノールで定量的に回収された.酸性薬物は疎水性相互作用と陰イオン交換相互作用が加味された複合相互作用により保持され,ギ酸添加メタノールで定量的に回収可能であった.焼結用樹脂の<ruby><rb>撥</rb><rp>(</rp><rt>はっ</rt><rp>)</rp></ruby>水性によるイオン交換相互作用の低下が懸念されたが,その影響はほとんどなく明確なイオン交換相互作用を発現した.本検討で用いた焼結法は円柱状だけでなく多彩な形状の固相抽出剤を作製可能であるため,固相抽出剤の多様化手法として有用である.
著者
山本 亜紀 神部 芳則 大田原 宏美 柏崎 明子 山下 雅子 林 宏栄 野口 忠秀 森 良之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.95-99, 2017-12-30 (Released:2018-01-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

65歳の男性。繰り返す口内炎を主訴に,近医から当科を紹介され受診した。初診時,口腔内には多数のアフタを認めたが,偽膜形成は認めなかった。細菌培養検査にてカンジダ陽性であったため抗真菌薬を使用したが症状を繰り返した。外陰部潰瘍を認めていたことから内科に対診したところ,HIV感染が判明した。その後,HIV治療が開始され,現在は口腔内症状も改善し経過観察を行っている。
著者
高島 利幸 早野 剛 金山 保夫 岡崎 留美 片岡 辰雄 秋山 陽 村田 光明 山本 力 岩谷 高行 保坂 敏行 野本 敏秀
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.647-650, 1978
被引用文献数
1

犬によるこう傷事故の発生原因を明らかにする目的で, 1975年4月1日から1976年3月31日までの366日間に都内で発生したこう傷事故2, 180件のうちの2, 164件と, 同期間内の主要な気象条件のうちの天気・日照時間・可照時間・気温・湿度との因果関係を追求したところつぎの結果を得た.<BR>1. 天気とこう傷事故発生との関係では, 雨あるいは雨模様の天気の日にはやや事故が減少する傾向がみられた. しかしほかの天気状況と比較して有意差は認められなかった.<BR>2. 日照時間ならびに湿度とこう傷事故との間には, 相関関係は認められなかった.<BR>3. 可照時間とこう傷事故との間には相関 (r=0.8638) が認められ, 両者がかなり密接な関係にあることが明らかとなった. また気温との間にも相関関係 (r=0.6514) が認められた.<BR>以上の結果から, 主要な気象条件のうちで可照時間および気温が犬を誘発して, こう傷事故の発生をもたらす要因となることがうかがえた.
著者
山本 昭夫
出版者
農林水産省農業生物資源研究所
雑誌
農業生物資源研究所研究資料 (ISSN:09156836)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-118, 2001-03
被引用文献数
3

「生物の多様性に関する条約」の発効により、遺伝資源の国際移転を行う際には、その利用から生ずる利益を遺伝資源提供者と利用者の間で公平・衡正に配分することとなった。FAOの「植物遺伝資源に関する国際的申し合わせ」は、現在、同条約との整合性を図るべく改定交渉中である。交渉における核心は、現実的な利益配分の仕組みを組み込んだマルチラテラルな遺伝資源交換の仕組みを構築することである。
著者
加藤 大樹 高橋 絢子 松本 大和 笹崎 晋史 高橋 絢子 松本 大和 野村 こう 高橋 幸水 天野 卓 山本 義雄 並河 鷹夫 万年 英之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.149-155, 2013-05-25
参考文献数
17

バングラデシュ在来ヤギ53個体とフィリピン在来ヤギ30個体におけるmtDNA D-loop HVI領域の塩基配列を決定し,DNAデータバンクにあるアジア在来ヤギの情報を加え,A,Bハプログループの起源について考察を行った.バングラデシュとフィリピン在来ヤギではそれぞれ25および5ハプロタイプに分類され,AおよびBハプログループから構成されていた.両国の在来ヤギのBハプログループにおける塩基置換率は,それぞれ0.0009と0.0006であり,極めて低い多様性を示した.また家畜化起源を推測するため,中東からの地理的距離と塩基置換率の相関を調べた.Aハプログループにおける順位相関係数は<I>r</I>=-0.7200であり有意な負の相関を示した(<I>p</I>=0.0469).一方,Bハプログループにおいては有意な相関を得られなかった(<I>p</I>=0.7782).この結果は,ヤギのAハプログループの起源が中東である仮説を支持していたが,Bハプログループの起源に関しては不明確であった.
著者
本庄 将也 飯塚 博幸 山本 雅人 古川 正志
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.744-755, 2016-08-15 (Released:2016-09-28)
参考文献数
18
被引用文献数
3

近年注目されている実数値最適化手法の一つに粒子群最適化(Particle Swarm Optimization, PSO)がある.PSOは群知能の一種であり,複数の探索単位(粒子)が互いに情報共有を行いながら解の探索を行う.多点探索を行うメタヒューリスティクスとしては遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm, GA)が有名であるが,多くの実数値最適化問題においてPSOのほうがGAに比べて高速に良い解を発見できることが知られている.本研究では,組合せ最適化問題の一種である巡回セールスマン問題(Traveling Salesman Problem, TSP)に対して短時間で良い解を得ることを目的として,PSOを基にしたアルゴリズムである挿入操作PSO戦略を提案する.提案手法では,粒子の解候補は実数値ベクトルではなく巡回路として表現され,粒子間の相互作用は部分経路挿入によって行われる.本論文では,挿入操作PSO戦略について説明し,数値計算実験からパラメータと得られる解の良さと必要な時間の関係について調査し,パラメータ調整の指針を示す.また,各ベンチマーク問題に対して提案手法とGAなどの代表的なメタヒューリスティクスを適用し,提案手法がこれらの手法より短時間で良い解を求められることを示す.
著者
鈴木 徳一郎 山本 匠 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.16, pp.1-8, 2010-02-25
参考文献数
18

近年,CAPTCHA を攻撃する不正者は,CAPTCHA の解読に自動プログラムを使うのではなく,ネット上の一般ユーザを労力として活用するようになってきている.この攻撃は,リレーアタックと呼ばれ,不正者が正規サイトの CAPTCHA 画像をコピーし,不正者自身が運営するサイトに転載することによって,不正者のサイトを訪問する閲覧者に CAPTCHA を解かせている.リレーアタックにおいては,CAPTCHA を不正に (不正だと知らずに) 解読するのは人間であるため,自動プログラムに対するいかなる難読化技術も役に立たない.そこで,本稿は正規サイトへのアクセスを行っている不正者サイトの IP アドレスと CAPTCHA の解答を行っている一般ユーザが操作する PC の IP アドレスの差異を用いたリレーアタック検知方式を提案する.It has been recently reported that malicious users who attack CAPTCHAs are gradually changing their strategy from using automated programs to using human solvers. Such malicious users try to bring net-surfers around the world together by hosting some attractive web site. The malicious web site accesses a victim web site to obtain a CAPTCHA test on the victim site. Then, the malicious site relays the CAPTCHA test to net-surfers who are visiting the malicious web site. The CAPTCHA test will be solved by the net-surfers, and thus the malicious web site can send the CAPTCHA response to the victim site. This is how the malicious web site can use those net-surfers as human resources to solve CPTCHA test on victim web sites. These kinds of attacks are called relay attacks. So far, many researches have studied to improve CAPTCHAs' tolerability against a various attacks conducted by automated programs (malwares). Those countermeasures will, however, not work at all, since the attackers are human beings in the relay attacks. Therefore, we urgently have to tackle the relay attacks. This paper focuses on the difference in PC between the entity who accesses the victim site and the entity who solves the CAPTCHA test under the circumstance relay attacks are conducted. Based on the observation, we propose a relay attack detecting scheme by comparing the IP addresses of the accessing entity with that of the solving entity.
著者
神田 鉄平 池田 慎 大内 真菜美 長﨑 絢子 山本 理恵 森下 友裕 前田 憲孝 佐々木 崇了 古本 佳代 加計 悟 村尾 信義 古川 敏紀
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-12, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
10

メデトミジン(MED)が引き起こす体温低下に対して加温輸液を静脈内投与することの効果について健康なイヌを用いて検討を行った。生理的食塩液(control)あるいはメデトミジン40 μg/kgを筋肉内投与し、同時に10 ml/kg/hrでリンゲル液を室温(RT)あるいはアニメック(ANI)、メディテンプ(MEDI)という二種類の加温装置を用いて4時間の静脈内投与を実施した。MED-ANI群では体温低下が僅かに緩和される傾向がみられたが、加温しない群と比較して統計学的に有意な差は認められなかった。結果から、イヌにおいて本条件での加温輸液の投与はメデトミジンによる体温低下を有意には抑制しないことが示された。

2 0 0 0 OA 2. 全天周撮影

著者
庄原 誠 佐藤 裕之 山本 勝也
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.652-657, 2015 (Released:2017-09-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
高橋 英紀 山本 博 鈴木 啓助 守屋 開
出版者
The Society of Agricultural Meteorology of Japan
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.77-82, 1978
被引用文献数
3

人為的な湖の形成 (ダム等) や消滅 (干拓等) が周辺の自然や農業に及ぼしている影響を質的に量的に把握することを目的として湖周辺の局地気候に関する研究を開始した。今回観測を行なった洞爺湖は直径が約10km, 周長46kmの円形に近いカルデラ湖である。観測は1977年1月20・21日に行なった。自動車の屋根にとりつけた直径0.3mmの銅・コンスタンタン熱電対により気温を測定し, ペンレコーダーに記録しながら湖岸にそって周回した。得られた結果を要約すると次のごとくとなる。<br>(1) 観測期間中の水温は1~5℃であったのに対し, 気温は最高約-2℃, 最低-15℃で水温-気温差は最大10℃であった。<br>(2) 湖周辺の風向は昼間には一般風の影響をうけていたが夜間には周辺から湖に向って風が吹き込んでいた。<br>(3) 湖周辺の気温は一般風の影響の強い昼間には湖の風下では風上に比べ約2℃高温であった。<br>(4) 夜間の気温分布は昼間に比べ場所による変動が大きく地域により約5℃の差があった。