著者
豊原 憲子 山本 聡 長谷 範子 土居 悟 岡田 正幸
出版者
大阪府環境農林水産総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

難治性小児気管支喘息による入院児童に対し、種まき-栽培-収穫-摂食の行程を中心とした園芸プログラムを実施した結果、活動による呼吸機能の低下は認められず、栽培体験と児童個人への管理責任の設定と栽培した植物を自宅家族に持ち帰ることが植物へのこだわりを高めて自主的行動を誘導した。このプログラムにより一症例で顕著なストレス軽減が認められ、病棟内での行動の改善と退院につながるなど、プログラムによる精神的安定と退院の時期に関連性があった。プログラムを提供する庭園内での児童の行動解析から、下草が繁茂して見通しの悪い植生が行動の制限要因となった。
著者
深野 佑公 山本 繁弘 大野 和彦 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.47-47, 2003-02-15

我々は並列言語Orgel の開発を行っている.Orgel は,並行/並列の実行単位であるエージェントをストリームと呼ぶ通信路で結び,明示的なメッセージ送信を行う言語である.Orgel では,プログラマが問題をエージェントという並列実行単位に切り分けることに加え,ストリームによる通信路接続網の構造をすべて宣言的に記述するので,コンパイル時に並列モデルが明確になっており精度の高い静的解析が可能である.本発表では,このOrgel の特徴を生かして,動的なオーバヘッドを最小限にした最適化を行う手法を提案する.プログラム全体の構造および粒度,通信量が完全に把握できれば,すべて静的に最適化することも可能である.しかし,Orgel では再帰的な接続も記述できるため,実際に生成されるエージェント個数および構造は必ずしも静的には決まらない.また,通信対象は分かっても送信するメッセージの個数やエージェントの粒度は実行時にしか分からない.したがって,各プロセッサの処理量が偏らないよう静的に全体をスケジューリングすることは困難である.そこで,コンパイラは静的にエージェントの持つ量的な性質を解析し,エージェント割当てやスケジューリングをするための情報をランタイムに渡す.ランタイムは,この情報をもとにノード数やプロセッサの現在の負荷などを考慮して,負荷が均等になり通信量が多いエージェントは同一プロセッサになるように割り当てる.また,同一プロセッサ内では依存解析等に基づいてスケジューリングを行う.本手法を実装し,14 クイーンを解くプログラムで従来のOrgel ランタイムと性能比較を行った.その結果,従来版と比べ最大1.7 倍の速度向上が得られた.We are developing a parallel language called Orgel.In the execution model of Orgel,a set of agents are connected with abstract communication channels called streams.The agents run in parallel sending asynchronous messages through the streams.In an Orgel program, each unit of parallel execution is speci ?ed as an agent by the programmer.The connections among agents and streams are declaratively speci ?ed.Thus,parallel execution model is clear and the highly accurate static analysis is possible.Utilizing these features,we propose an optimization scheme that minimizing the dynamic overhead.If the complete structure of the whole program is known at compile time,static optimization will be sufficiently effective. However,in Orgel,the number of agents and structures actually generated are not always static,because recursive connection is supported.Moreover,although a communicating pairs of agents are known at compile time,the number of messages and the granularity of agents are known only at runtime.Therefore,it is difficult to balance loads on the processor by whole static scheduling.Thus,in our scheme the compiler outputs an analysis result to instruct the runtime how to allocate and/or schedule an agent when its quantitative attributes are known. Considering the number of processors and the present load of each processor,the runtime uses this information for optimization;it allocates agents balancing loads and minimizing inter-node communication.It also schedules agents on each node considering dependencies. We designed and implemented the system.As the result of evaluation using 14-Queen solver, we obtained 170%speed-up.
著者
船越 進太郎 山本 輝正
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.201-208, 1996-09-05

1992年および1993年,6月から10月にかけて,長野県乗鞍高原(東経137°37',北緯36°06',標高1,450m)および石川県白峰村市ノ瀬(東経136°37',北緯36°10',標高830m)の登山センターなどの建物の下でコウモリに食された蛾の翅を集め,同定するとともに前翅長を測定した.乗鞍高原の建物の天井部分はクビワコウモリEptesicus japonensis,ヒメホオヒゲコウモリMyotis ikonnikovi,ウサギコウモリPlecotus auritus,コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,カグヤコウモリMyotis fraterが夜間休憩場所として使用しており,中でもクビワコウモリが多く,時には200頭を数えた.ここでは餌となった8科114種の蛾を同定したが,小型の種が多く,未同定個体も含め前翅長は19.3±6.53(x^^-±S.D.)mmであった.これに対し,市ノ瀬の建物天井部分には主としてキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumが多く,わずかにカグヤコウモリが含まれていた.ここでは10科42種の蛾を同定したが,ヤママユガ科,スズメガ科などの大型種が多く含まれていた.前翅長は47.3±15.56(x^^-±S.D.)mmで,乗鞍高原のものとは大きな差があった.乗鞍高原で見られるコウモリは小型種が多く(前腕長33-45mm;優占種クビワコウモリ38-43mm),市ノ瀬で見られるコウモリはそれより大型種が多かった(前腕長36-65mm;優占種キクガシラコウモリ56-65mm).昆虫食のコウモリの中でキクガシラコウモリは他の種より大型であり,大型の蛾(前翅長の最大は81.6mmのヤママユ)から小型の蛾までを捕っていた.これに対し,クビワコウモリは小型種であり,より小さな蛾(前翅長の最大は42.4mmのシロシタバ)を捕っていた.キクガシラコウモリは餌を捕まえるとき腿間膜(足の間の膜)を使用することが知られる.そのため,大型種から小型種までさまざまな大きさの餌を効率よく捕っているのかも知れない.また,コウモリの休憩場所で夏眠するAmphipyra属のシマカラスヨトウA.pyramidea,オオウスヅマカラスヨトウA.erebina,ツマジロカラスヨトウA.schrenckiiがコウモリの餌の中に含まれていたが,資料の収集した日時から夏眠が終了して,夏眠場所を離れた個体であると推測された.
著者
山本 富久 中曽根 英雄 松沢 康宏 黒田 久雄 加藤 亮
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.329-336, 2004-05-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

The water quality and discharge from a tea field area in Shizuoka were measured daily and the outflow loads of fertilizer components in runoff water estimated. The results are as follows: The amount of nitrogen fertilizer applied was about 1000kg·ha-1·yr-1 in the tea field. The annual of T-N effluent load from the tea field was 531kg·ha-1·yr-1 and it was 49% of the amount nitrogen fertilizer applied. 97% of the T-N load was composed of the NO3-N load. Its outflow load, which consisted of storm water, was 51%. The outflow NO2-N and NH4-N loads were small in the first half of the investigation period. The T-P outflow load from the tea field was 0.18kg·ha-1·yr-1 and the leaching rate was very low, at 0.05%. Most of the phosphate fertilizer was absorbed by the red-yellow soil in the tea field. The average T-P concentration was as low as 0.01 mg·l-1. However, the T-P concentration was very high after heavy rain in June and September of 2000. Storm water had a T-P outflow load concentration of 64%. The K+ outflow load was estimated to be 89kg·ha-1 for the year. The leaching rate was 14%. The percentage was very low because K+ was absorbed by surface soil containing clay minerals. The annual Mg2+ and Ca2+ outflow loads were 292kg·ha-1·yr-1 and 266kg·ha-1·yr-1, respectively. Their leaching rates were 63% and 26%, respectively.
著者
山本 繁弘 大野 和彦 中島 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.83-83, 2002-03-15

我々は並列言語Orgelの開発を行っている.Orgelは,並行/並列の実行単位であるエージェントをストリームと呼ぶ通信路で結び,明示的なメッセージ送信を行う言語である.Orgelでは,プログラマが問題をエージェントという並列実行単位に切り分けることに加え,ストリームによる通信路接続網の構造をすべて宣言的に記述するので,コンパイル時に並列モデルが明確になっており精度の高い静的解析が可能である.本発表では,このOrgelの特徴を生かして,動的なオーバヘッドを最小限にした最適化を行う手法を提案する.プログラム全体の構造および粒度,通信量が完全に把握できれば,すべて静的に最適化することも可能である.しかし,Orgelでは再帰的な接続も記述できるため,実際に生成されるエージェント個数および構造は必ずしも静的には決まらない.また,通信対象は分かっても送信するメッセージの個数やエージェントの粒度は実行時にしか分からない.したがって,各プロセッサの処理量が偏らないよう静的に全体をスケジューリングすることは困難である.そこで,量的な性質が分かった時点でエージェントを,割当てやスケジューリングできるように,コンパイラは静的解析による結果をランタイムに渡す.ランタイムは,この情報をもとにノード数やプロセッサの現在の負荷などを考慮して,負荷が均等になり通信量が多いエージェントは同一プロセッサになるように割り当てる.また,同一プロセッサ内では依存解析などに基づいてスケジューリングを行う.We are developing a parallel language called Orgel.In the execution model of Orgel,a set of agents are connected with abstract communication channels called streams.The agents run in parallel sending asynchronous messages through the streams.In an Orgel program, each unit of parallel execution is speci fied as an agent by the programmer.The connections among agents and streams are declaratively speci fied.Thus,parallel execution model is clear and the highly accurate static analysis is possible.Utilizing these features,we propose an optimization scheme that minimizing the dynamic overhead.If the complete structure of the whole program is known at compile time,static optimization will be sufficiently effective. However,in Orgel,the number of agents and structures actually generated are not always static,because recursive connection is supported.Moreover,although a communicating pairs of agents are known at compile time,the number of messages and the granularity of agents are known only at runtime.Therefore,it is difficult to balance loads on the processor by whole static scheduling.Thus,in our scheme the compiler outputs an analysis result to instruct the runtime how to allocate and/or schedule an agent when its quantitative attributes are known. Considering the number of processors and the present load of each processor,the runtime uses this information for optimization;it allocates agents balancing loads and minimizing inter-node communication.It also schedules agents on each node considering dependencies.
著者
山本 隆彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

体内に埋込まれた人工心臓に対して非侵襲にエネルギーや情報を伝送する方法として体外結合型経皮エネルギー情報伝送システムはきわめて有用である.本研究ではエネルギー伝送のための磁束と情報伝送のための磁束が直交関係となり,相互干渉のきわめて少ない一体型経皮トランスフォーマの試作と評価を行った.今年度は研究開発中の一体型経皮トランスフォーマの実用化に向けて,着脱の容易が容易になるような機構の導入およびシリコーンによるコーティングを行い,このときのエネルギー及び情報伝送特性を評価した.その結果,試作した経皮トランスフォーマにより,全人工心臓駆動定格消費電力の2倍に相当する40Wのエネルギーを伝送可能であると同時に.4.800bpsの通信速度において1Mbitの情報を誤りなく伝送可能であることを確認した.次に,東京医科歯科大学において研究開発中の補助人工心臓MedTech Heartの実用化を目指し,薬事法により定められているEMCに関する性能評価を行った.その結果,試験項目の一つであり,空間を介して外部に対し放出する電磁波を測定・評価する放射性妨害波試験においてCISPRの限度値を超過した.電磁波の放射源の一つとして各部を電気的に接続するためのケーブルがアンテナとして動作していることが明らかとなったため,ケーブルのシールド,さらに施したシールドを接地し再度放射性妨害波の測定を行った.その結果,外部に対して放出する電磁波の強度をCISPRの限度値以下に低減することができた。また,本対策を行っだ状態において外部電磁界に対する耐性を評価する放射イミュニティ試験を行った.その結果,誤作動は一切確認されなかった.本研究において行ったEMC対策の手法はMEdTech Heartを実用化する上できわめて有用であると同時に、医療現場における電磁環境向上にも大いに貢献するものと考えている.
著者
西村 尚之 白石 高子 山本 進一 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.31-36, 1991-07-25
被引用文献数
3 2

下層にヒサカキ等の常緑広葉樹が優占する成熟したコナラ林内に, 低木層を除去した区(L区)と低木層及びリター層を除去した区(C区)の地床処理区と無処理区(N区)を設け, コナラ実生の発生, 生残を3年間定期的に調査した。林床の相対照度はどの時期も地床処理区で高かった。実生の発生数はC区で最も多かった。無処理区での実生の発生は地床処理区に比べ約1カ月遅かった。どの区も早く発生した実生の初期死亡率は低く, 地床処理区では最終調査時のその生残率は遅く発生した実生に比べ高かった。発生当年の実生の生残率は無処理区で有意に低く, 翌年の生残率はL区, C区, N区の順で高かった。無処理区では発生後3年間ですべての実生が死亡した。分枝した実生の出現率は地床処理区で高く, 分枝個体の生残率は未分枝個体に比べ有意に高かった。本林分では自然状態の地床でのコナラ実生の定着はきわめて困難であるが, 低木除去の処理によりコナラ実生の生残に有利な環境が形成されることがわかった。
著者
山本 洋司 朴 光来 中西 康博 加藤 茂 熊澤 喜久雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.18-26, 1995-02-05
被引用文献数
14

Nitrate concentration and δ^<15>N value in the groundwater in Miyakojima islands, Okinawa, were measured during 1992-1993. Waters from the shallow and the deep wells at ten separate sites were sampled. Mineral contents and natural nitrogen isotope abundance (δ^<15>N) were analyzed using liquid chromatography and the mass spectrometry (Finnigan MAT 252). Except for the waters which were directly influenced by sea water invasion, most of the groundwater showed small variations among their mineral contents and δ^<15>N values. Average nitrate nitrogen concentrations were 1.4-l1.5 mg L^<-1> and average δ^<15>N values were+4.3-+9.7‰. From the nitrate concentration and δ^<15>N value observed, the type of groundwater could be categorized into four groups, such as high δ^<15>N and high nitrate, high δ^<15>N and medium nitrate, low δ^<15>N and medium nitrate, and low δ^<15>N and low nitrate, reflecting the main source of nitrate contamination, such as animal and domestic waste, animal waste and soil organic matter, soil organic matter and chemical fertilizer, and chemical fertilizer, respectively. It was discussed that the lowest δ^<15>N value was higher than the δ^<15>N value of the chemical fertilizers used in this islands ( -3.9- -1.4‰). Therefore, considerable amounts of nitrogen must be lost by ammonium evaporation or denitrification after fertilization.
著者
松浦 茂 長部 悦弘 山本 光朗
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)研究代表者は、満洲語档案と探検記録とによって、清朝の繊維製品がアムール川下流・サハリン地方に流入する過程と、同地域の辺民がそれを衣料その他に受容する過程を明らかにした。またそれらの一部は、この地域の交易のネットワークを通じて、周辺地域に流れたことを解明した。研究代表者はまた、満洲語档案に現れる北方の少数民族の言語をとりあげて、その意義と、それがなぜ満洲語の中に入ったかを考えた。たとえば清の漢文献においては、17世紀のアムール地方に現れたロシア人を「羅刹」と記すが、その語源は、サンスクリット語ではなくて、アムール地方の少数民族が、これらのロシア人をロチャ(ルチャ)と呼んだことに由来することを明らかにした。こうした視点は、北方史の研究に不可欠である。(2)研究分担者は、15世紀以前の北方の少数民族について、研究を行なった。金朝を作った女真は、後に中国本土に移住して、漢族と雑居するようになると、漢姓を名のることが多くなった。ただその理由はさまざまで、それにより民族的なアイデンティティーを失ったという見方は、単純にすぎるということを明らかにした。研究分担者はまた、古林・遼寧省と内蒙古自治区・山西省に分布する、鮮卑族の史跡に関する近年の報告・記事・論文を、日本と中国の学術雑誌などから拾い出して、そのリストを作成した。(3)研究代表者と分担者は、明朝がアムール川の河口に建設した奴児干都司と永寧寺について、従来の学説を再検討した。とくに永寧寺碑文の内容を吟味して、当時の交易のネットワークについて考察した。このことについては、さらに研究を深めてから発表するつもりである。
著者
山本 富久 中曽根 英雄 松沢 康宏 黒田 久雄 加藤 亮
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.399-404, 2005-04-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
51
被引用文献数
1 1

The study area was located in the Makinohara collective tea fields in Shizuoka, Japan. There are flourishing tea industries in this area. The quality and level of the groundwater were observed from Jun. 2002 to Sept. 2003 and examined on the basis of hydrogeology. The Makinohara plateau comprises of clay layers between gravel beds. It yielded discontinuous water qualities caused by perched water in a geological structure. The average concentrations of T-N and NO3-N in the surface water were 26.4 mg·l-1, 23.8mg·l-1, respectively. In contrast, for the groundwater, these concentrations were 17.2 mg·l-1 and 12.6 mg·l-1, respectively. The average concentrations of T-P were 0.012 mg·l-1 in the surface water and 0.022 mg·l-1 in the groundwater. This difference is caused by the dilution effect and release of phosphorus from on aquifer. The annual groundwater effluent loads of nitrogen and phosphorus from the catchments of the Makinohara plateau were 406 t·y-1 and 0.7 t·y-1, respectively.
著者
長田 義仁 グン 剣萍 安田 和則 八木 駿郎 山本 眞史 川端 和重
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

(I)ソフト&ウエット人工筋肉となるゲル基本素材の創成基本素材とする高分子ゲルにダブルネットワーク-(DN)構造を導入することで、圧縮強度、引張り強度が数メガパスカル(MPa)に達する超高強度ゲルの合成法を発見した。さらに、DNゲルの第一網目における数10nm〜数μmスケールのVoid構造を系統的に変化させることで、ゲルをBrittleからDuctile的な振る舞いまで系統的に制御することに成功した。DuctileのDNゲルがNecking現象を示し、20倍までも伸びることを発見した。この優れたゲル材料を人工関節軟骨へ応用するために、低摩擦性、高強度性を併せ持ったゲルの創製を図り、その結果、破壊強度数十メガパスカル、破壊エネルギーが1000J/cm^2以上、表面摩擦係数10^<-5>〜10^<-4>という従来にないゲルの創成に成功した。(II)ゲル基本素材の生体代替運動システムへの応用展開(I)で創製したゲルは固体素材では実現不可能な柔軟性と運動性、そして耐衝撃性を併せ持つ。このゲルを人工軟骨、人工半月板に応用するために、その耐摩耗性、生体内耐久性、および生体親和性を評価した。数種類のDNゲルは100万回、走行距離延べ50kmのPinonFlat型摩耗試験で、摩耗率10^<-8>〜10^<-7>mm^3/N・mに達する高い耐摩耗性を示し、これは超高密度ポリエチレン(摩耗率10^<-7>mm^3/N・m)を凌駕する結果であり、ゲルの特性としては驚異的なものである。DNゲルのBlock皮下埋め込み試験、ペレット筋内埋め込み試験を行い、数種ゲルの中、PAMPS/PDMAAmゲルが人工軟骨の素材に最も有望であることを明らかにした。さらに、PAMPS/PDMAAmゲル人工軟骨を試作し、関節内埋植試験を行った結果、関節内異物特性は低く、使用した人工軟骨研究用標準動物モデルでは、明らかな有害性は検出されなかった。さらに、PAMPS/PDMAAゲル人工軟骨を関節表面から数mmのギャップを作るように埋植すると、この表面である生体内局所(ln situ)に正常関節(硝子)軟骨を自然再生することが出来るという、これまでの世界の常識を覆す発見をした。
著者
山本 博美 若松 秀俊
出版者
足利工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本年度は、3年間にわたって開発した通信回線を含む電子保護システム全体について、実際に特別養護老人ホ-ムの施設で運用を繰り返し、その信頼性や経済性などについて研究を行った。まず、特別養護老人ホ-ムに設置した電子保護システムに、前年度までにシュミレ-ションを行って確認したパ-ソナルコンピュ-タ-とモデムを接続し、さらにNTTの電話回線を接続した。また実際に監視側コンピュ-タ-(研究室)から施設側コンピュ-タ-をアクセスし、徘徊デ-タの転送収集を平成3年3月から平成4年3月の期間にわたり、繰り返し行った。同時に市販の多機能ポケットベルが作動することを確認し、老人の外出時の救護が平均約10秒程度であることがわかった。これは介護者が、救護のために警戒する出入口に急行し、出入口に設置してある警報解除スイッチを操作した時間である。このことから電子保護システムは、介護者が目 を離した隙に徘徊性老人が外出しても、確実に警報を発し介護者も平均10秒以内に急行していることからいって、その有用性が確認できた。つぎに、電話回線を通じて施設側コンピュ-タ-から送られてくる警報デ-タは、収集プログラムの改良を行い、短時間で転送できるようデ-タ圧縮転送方式およびデ-タ処理のプログラムを開発した。なお、監視システムをパ-ソナルコンピュ-タ-で構成できたので、経済性の面で有利である。また今後は、一施設のみならず栃木県圏内の数ケ所の施設間で、ネットワ-クを構築し、電話回線を通じて送られてくる警報デ-タの処理および分析が必要である。また、デ-タの送信時のノイズ等による影響については、ソフトウエアの開発によりその影響を取り除き、確実にデ-タ送信できるシステムに改良した。
著者
Mafi Shaban Ali VANG Le Van 中田 恵久 大林 延夫 山本 雅信 安藤 哲
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.361-367, 2005-11-20
被引用文献数
2

ミカンハモグリガの処女雌抽出物をGC-EADおよびGC-MSにて分析し, ランダムスクリーニングですでに雄の誘引物質として見出されている(7Z,11Z)-7, 11-hexadecadienal (Z7,Z11-16:Ald)が真の性フェロモン成分であることを確認した.第2成分の探索を目的にZ7,Z11-16:Aldに関連化合物を混合しカンキツ園で誘引試験を行ったところ, 共力効果は認められず, いくつかのモノエン化合物はZ7,Z11-16:Aldの誘引活性を強く阻害することが明らかになった.さらに, 合成フェロモンを用いた交信撹乱技術を確立するため, 以下の2つの実験でZ7, キャップを配置した.誘引される雄蛾の数はコントロールに比べ低下せず, 明瞭な定位阻害効果は認められなかった.一方, Z7,Z11-16:Aldを1本当たり60mg封入したポリエチレンチューブを圃場に配置した実験では, 本種の卵や幼虫の新葉における密度低下を認めるに至らなかったが, モニタリングトラップへの雄の定位が強く阻害される結果を得た.すなわち, 無処理区では7月から9月の間に一晩当たり27〜127頭の雄蛾が誘引されたのに対し, 1ha当たり500本あるいは1300本のチューブを処理した圃場では, 雄蛾はほとんど誘引されなくなった.
著者
平賀 紘一 山本 雅之
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.グリシン開裂系構成酵素をコードする遺伝子の発現が協調的に調節されているかどうかを知る目的で研究した。このためには、本酵素系は4種の構成酵素から成るので、少なくともこの中の2種の蛋白をコードするcDNAをまずクローン化しなければならない。そこで、我々はまず、本酵素系が触媒する反応の最初の段階に必要なグリシン脱炭酸酵素とH蛋白のそれぞれをコードするcDNAをクローン化した。Hー蛋白cDNAは840塩基長であり翻訳開始メチオニンから164アミノ酸より成るHー蛋白前駆体をコードしており、これに続いて約300塩基の非翻訳領域をコードしていた。一方、グリシン脱炭酸酵素cDNAは3514塩基長であった。翻訳開始メチオニンコドンはcDNA中に含まれていなかったが、遺伝子をクローン化して解析すると、cDNAの5'末端から24塩基上流にそのメチオニンコドンが発見された。グリシン脱炭酸酵素前駆体は1004アミノ酸から成る分子量約12万の大きなサブユニットであった。3.この2種のcDNAをプローブとして、35:11:1の割合で本系活性を示す肝腎、脳での両遺伝子の転写、両mRNAの存在量を調べた。その結果、これらの臓器ではグリシン脱炭酸酵素遺伝子とHー蛋白遺伝子は1:2の比率で転写されるが、転写量は比酵素活性の違いを反映していた。また、両mRNA量はどの臓器でも等モルずつ存在していたが、それらの絶対量はやはり、比酵素活性の比率と等しい割合で各臓器に分布していた。これらの結果は、グリシン開裂系構成酵素遺伝子の発現は協調的に起こるよう調節されていることを示す。4.しかし、心筋、脾など本系活性を示さない臓器では、グリシン脱炭酸酵素遺伝子だけが発現しておらず、本系構成酵素遺伝子は臓器により、ある時は協調的に、或は非協調的に発現される。
著者
鈴木 秀美 山田 健太 砂川 浩慶 曽我部 真裕 西土 彰一郎 稲葉 一将 丸山 敦裕 杉原 周治 山本 博史 本橋 春紀 岩崎 貞明 笹田 佳宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の放送法は, 放送事業者の自律を前提としているため, 放送事業者が政治的に偏った番組や虚偽の事実を放送して番組内容規制(番組編集準則)に違反しても, 放送法には制裁がなく, 電波法による無線局の運用停止や免許取消は強い規制であるためこれまでに適用されたことがない。結果として, 違反があると, 行政指導として, 実質的には行政処分である改善命令に近い措置がとられているが, このような手法には表現の自由の観点からみて重大な問題があることが明らかになった。日本では現在, 通信・放送の融合に対応するため通信・放送法制の総合的な見直しが行われている。本研究は, 現行法制が内包している憲法上の問題を新しい法制に積み残さないために, 問題点を整理・分析したうえで, ありうる改善策を提示した。