著者
山本 定博 AHMAD Zahoor AHMAD ZAHOOR
出版者
鳥取大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

世界各地で家畜糞などの有機性廃棄物の不適切な農地還元による環境汚染が深刻化しており,とくにリンの非点源汚染は,富栄養化による水圏の深刻な汚染要因となっている.本研究は土壌からのリン溶脱抑制のために,別セクターで産する廃棄物のリン保持特性に着目し,2種類の資材(高炉砕;BFS,上水処理沈殿残渣;WTR)とリン吸着資材として注目を集めるハイドロタルサイト(HYD)を土壌に添加してトウモロコシを栽培し,リンの溶脱抑制と作物への利用効率との関係からリン保持資材の効果を検討した.土壌は砂質マサ土とローム質土壌を供試し,WTR,BFSを5%,HYDを0.25%相当量土壌に添加した.リン源は,牛ふん堆肥(堆肥区)とリン酸二水素カリウム(化学肥料区)を各300kgP/ha相当添加した,播種後7週間ポット栽培し,収穫後作物体を分析した.作物体乾物重は,土壌よりもリン源の影響を受け,堆肥区では化学肥料区より大きく劣った.リン吸着資材(以下PRM)添加効果は土壌によって異なった.マサ土では,すべてのPRM添加により,リン吸収が抑制され乾物重が低下したが,ローム質土壌ではBFS添加により乾物重の増加が認められた.ポットからのリン溶出も土壌によって異なった.マサ土では高濃度のリンが排出され,とくに化成肥料区の栽培初期で顕著であったが,PRM添加によって大きく低減できた.ローム質土壌では,マサ土とは異なりPRMによる明確なリン溶脱抑制効果は認められなかった.以上,PRM添加効果は土性によって異なり,砂質土壌ではリン溶脱抑制効果は大きいが,逆に作物へのリン可給度を低下させるマイナス面が明らかになった.今後,リンの溶脱と肥効のバランスを考慮した資材利用方法とPRM吸着リンの長期的スパンでの可給化等の検討が必要であるが,廃棄物をリン保持資材として環境保全と食料生産の両面で有効活用できる可能性,方向性を示すことができた.
著者
臼井 キミカ 上西 洋子 辻下 守弘 佐瀬 美恵子 白井 みどり 佐々木 八千代 兼田 美代 津村 智恵子 後藤 由美子 山本 美輪 山本 裕子 川井 太加子 鷹居 樹八子 柴田 幸子 杉山 百代 中村 里江 北沢 啓子 南部 純子 浅田 さゆり 才木 千恵 正田 美紀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究目的は、重度認知症高齢者の基本的な生活支援技術を明らかにして、その研修プログラムを開発し、重度認知症高齢者のQOLの向上を図ることであり、目的達成のために重度認知症高齢者を対象とした2カ月間の小集団回想法、6カ月間の手織りプログラム、5週間の生活支援技術に関する介入、及び国内外の看護職等への面接調査を通じて重度認知症高齢者への日常生活支援技術研修プログラムを作成し、複数回の研修を実施しそのプログラムが有効であることを評価した。
著者
山本 福壽 崎尾 均 長澤 良太
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ハリケーンの高潮により、湿地林では在来樹種のヌマスギやヌマミズキ林が被害を受け、外来のナンキンハゼとセンダンが繁茂していた。時空間的解析、現地調査、および生理的実験からナンキンハゼの耐水性、耐塩性は在来樹種に拮抗することを確認した。この結果ミシシッピ氾濫原では、大規模攪乱によりナンキンハゼは急速に分布域を拡大する可能性が示唆された。センダンは耐水・耐塩性は小さいが、局所的に純林を形成していた。
著者
山本 映子 北川 早苗
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.111-123, 2007-03

本研究は,理由が判明しないまま不登校を繰り返す小学生の心の理解に,児童に関わる重要な非専門家も加わるコミュニティ援助の具体手段の中で宿題コラージュ法・かばん登校がもたらした効果を検討し,不登校支援に示唆を得ることを目的とした。小学校1年次より,毎年不登校を繰り返し,4年生の夏休み明けから不登校となった男児のコラージュ作品を分析し,「コラージュ法による攻撃性の発見」で得られた特徴が全て含まれていることが判明した。しかし,攻撃性の他に,対人恐怖,自我同一性の問題などが男児の不登校という現象の深奥に秘められていることも示唆された。コミュニティ援助という臨床心理学的対応の結果として,不登校は一応の解決に至った。コミュニテイィ援助にコラージュ制作という専門技法を用いることが,不登校児童への対応の1つの可能性として,活かしていくことが考えられる。
著者
利安 義雄 大辻 永 山本 勝博
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では4本の柱を立て、「総合的な学習」への活用のカリキュラムを開発した。1.伝統的染色技術の教材化「水戸黒染め」の再現と簡便法を確立し、文部科学省のSPP事業の教員研修において実践を行った。一方,茨城の大洗海岸において採集した海藻(アオサ、カジメなど)を用いて海産物による染色法を開発し、地域のこども科学館で実践した。海藻からの色素の抽出について適正なpHを調べて、授業時間内に効果的に抽出できる条件を見つけた。2.茨城県の地震関連教材前年度開発した簡易水平動地震計で新潟中越地震および茨城県周辺の多くの地震を計測できた。今回は、地震が発生すると計測を始める簡易上下動地震計を開発した。作動するセンサーはカラクリ技術で作り、記録ドラム部分はオルゴールを使用し、、振動本体部分は木製にした。さらに、最近の茨城地方に発生した地震の各観測地点でのデータから振動開始時間と震度の分布マップを作った。3.茨城県の塩に関わる教材化。茨城県海岸地方の釜や塩に関連した地名と古代製塩との関係と、昔塩の内陸への輸送路になった「塩の道」の調査を行った。また塩の字名の多い大子町の湧水、鉱泉、温泉水の水質分析(イオン分析)を行った。ジュラ紀の八溝中生層は非常にきれいな水が多く、主要な溶存イオンは、重炭酸カルシウムである。一方、第3紀層に属する北田気・浅川層は、鉱泉・温泉群が多く分布して、溶存イオンは硫酸ナトリウム・塩化ナトリウムが多かった。また、水戸の名産梅干を作るときの梅酢より、正八面体の食塩を析出させる条件を見出した。4.山寺の水道の教材化永田茂衛門・勘衛門親子の江堰に関する文献調査をすすめた。一部の成果を、SPP事業中学校理科教員研修において実践を行い、自然と人間とがかかわった「総合学習的な学習」への地域教材の一例として提示した。
著者
山本 荘毅
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, 1980-09-15

地下水の人工かん養に関する諸問題を, 人工かん養の歴史, 人工かん養の目的, 人工かん養の方法, 人工かん養における検討事項, ヨーロッパの人工かん養の実情などの項目から論じたものである。土質力学的視点からすれば, 地表流下水を人為的に地下に貯留して再利用しようとする地下水人工かん養の問題は, 地下水の地盤浸透現象との関連から論じられる。人工かん養の方法には直接法と間接法があること, 人工かん養を実施する場合には, かん養技術, 地下水管理, 経済性, 環境に対する影響などを検討すべきであると指摘している。また, ヨーロッパの人工かん養に関しては, 水温0〜15℃, 濁度の大きい河水を揚水して氷河堆積物であるエスカーの上まで圧送, このエスカー斜面に池を掘って浸透を行っているスウェーデン・ウプサラの例, オランダ・ハーグの人工かん養池, ドイツ・ルール河畔アルテンドルフの施設, フランス東南部シャトルナールとサン・アンジオールでの人工かん養, ソビエト連邦での例などについて説明している。
著者
山本 芳彦 金子 昌信 小林 毅 坂根 由昌 川中 宣明 川久保 勝夫
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.ジーゲル関数の2等分値、5等分値に関する数値計算と数式計算により、それらのみたす代数方程式やその値により生成される虚2次体上に類体としての導手をいくつかの例において決定した。特に等分値を24乗する前の値について、多くの予想が得られた。またデデキントのエータ関数の比に代数的性質についても実験した。2.山本と金子は楕円モジュラー関数について、各レべルのモジュラー方程式を計算し、それを用いて楕円曲線のスーパーシンギュラー(s.s,)素点を求めた。金子はエルキーズの定理の別証明を得ると同時に法Pのモジュラー方程式の解となるA.A.jー不変量についていくつかの結集を得た。3.山本は1.の結果を用いて虚2次体の類数の法2^nに関する合同式を与えた。また、実2次体の位数2のイデアル類の連分数展開の周期に関して合同関係のあることを示した。4.実2次体の極限公式を異なる方式で求めそれらの比較を行った。それらを代数的数の対数の2次形式で表わす問題については発展がなかった。5.(1)川中は有限体上に一般線型群のシンプレクティック対合に関する対称空間における球関数を決定した。(2)小林と村上はYangーBaxter方程式の解から絡み目の不変量を定義し、それと絡み目の被覆空間のベッチ数との関係を得た。(3)川久保はコンパクトリー群が作用する場合のコボルディズム定理を一般の形で与えた。(4)坂根はリッチ曲率が正のコンパクトケーラーアインシュタイン多様体で等質空間でないものの例を与えた。(5)西口はK3ー曲面の退化を小磯は3次元開半球面内の極小曲面を研究した。(6)宇野は有限群の表現を研究した。(7)村上と尾関は等質空間とリー群について研究した。
著者
山本 光重 佐藤 智和 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.627, pp.55-60, 2002-01-23
参考文献数
6

花火ショーの演出作業において, 花火師は花火の打ち上げ位置, タイミングや音楽との同期などの多くの要素を決定する必要がある.しかし従来, 花火師は危険性や金銭的なコストの問題から演出結果を視覚的に確認することができず, 演出作業を円滑に行うことが困難であった.そこで, 本研究では, 効率のよい演出作業を実現するための花火演出支援システムを提案する.ユーザは計算機を用いて打ち上げ位置, 花火の種類, 打ち上げタイミング, 音楽といった情報を入力し, 演出作業を行う.演出結果は入力されたデータに沿って, 花火の実写映像を利用して計算機上でシミュレートされ, モニタやHMD上に可視化される.これによって, 花火師は効率よく作業を進めることが可能となる.
著者
山本 将之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.6, pp.1-7, 2009-09-05

情報セキュリティの重要性が社会的に認識され、対策が進んでいる一方で、情報セキュリティが阻害され、情報漏えいなどの事件・事故の発生も相次いでいる。人的対策の一環として組織と従業員等との間で情報セキュリティに関する契約を締結する場合が多くある。しかし、それらの契約の性質、責任については、過去の情報セキュリティ事件・事故に関連した裁判等でも明らかにはなっていない。そこで本稿では、裁判例や調査報告書などから情報セキュリティに関する契約がどのように扱われていたかを確認し、その契約の性質、責任の内容について検討する。Today, importance of information security is getting to be known as a social matter, on the other hand, the number of information security incidents such as information leakage has increased. In order to deal with human issues, employers and employees often make contracts related to information security.However, the responsibilities in those contracts are not made clear from most cases such as judgmental cases. This report will discuss the aspects of how the information security contracts were handled, and will examine the nature and responsibilities in those contracts by referring to past judgmental cases and investigation reports.
著者
石田 栄美 石塚 英弘 根岸 正光 山本 毅雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 情報学基礎研究会報告
巻号頁・発行日
vol.97, no.86, pp.109-116, 1997-09-11
参考文献数
12

先に発表した, 大きな分野を対象とする大量の自然語テキストデータの検索・分類のための単語リスト作成方法を詳しく検討した. 情報処理学・農芸化学・土木学などの学会予稿抄録の一部を単語リスト作成用データとし, 他を検索・分類用データとした. 単語リストの選択基準に含まれる二つのパラメタを変えて検討したが, 単語リストの大きさや内容は大きく変わるものの, 互いに離れている上記3分野間では, 分野推定の結果は安定していることがわかった. さらに, 分野に重なりのある電子情報通信学を加えて影響を調べた. また, これらの単語リストを応用して文献の分野関連度, 文献集合の分野関連度などを求める方法を示した.
著者
山本 正信
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

人間の動作を測定しコンピュータグラフィックス上で再現するシステムは,モーションキャプチャーと呼ばれている.モーションキャプチャーは,ゲームやアニメーションなどでのキャラクタの動作生成,スポーツにおけるトレーニングの評価,リハビリテーションにおける治療の評価など広い領域で使用されている.しかし,それらの多くは人体に特殊な装置を取りつけたり,予めマーカーを貼りつけることが多く,自然な状態で人間の動作を測定することが難しい.そのため,非接触に人間の動作を測定できる装置が望まれている.本研究では,市販のビデオカメラを使用することにより,人体に接触することなく自然な動作を測定する手法を提案した.一つのカメラからでは,人体全体を観測することが難しいため,複数のカメラを使って身体動作を測定するシステムを構成した.このシステムを使って野球の投球動作のような素早い動きの測定に成功した.さらに,この測定システムの応用を試みた.一つは動作認識である.測定した人体全体の運動パラメータを動作の特徴を失うことなく2個に圧縮した.これは動作を2次元平面上に視覚化して表せることを意味し,文字認識の技法を用いて動作の認識を行うことが狩野である.実際,ラジオ体操第1に含まれる9種類の動作の認識に成功した.もう一つの応用は,パフォーマンスアニメーションである.この動作測定装置を組み込んだアニメーションシステムを構成し,代表的な演技を測定し動作データベースを作成した.動作をこのデータベースから引用することによりアニメーションを楽に作成することができる.実際,グリム童話の一つを題材に4分程度のコンピュータアニメーションを楽に作成することができる.実際,グリム童話の一つを題材に4分程度のコンピュータアニメーションを制作した.このシステムでは,キャラクタのモデルを動作の測定とアニメーションの作成に共用しているので,動作データのフォーマット変換が不要である.
著者
石川 義孝 宮澤 仁 竹ノ下 弘久 中谷 友樹 西原 純 千葉 立也 神谷 浩夫 杜 国慶 山本 健兒 高畑 幸 竹下 修子 片岡 博美 花岡 和聖 是川 夕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

わが国在住の外国人による人口減少国日本への具体的貢献の方法や程度は、彼らの国籍、在留資格などに応じて多様であるうえ、国内での地域差も大きい。しかも、外国人は多岐にわたる職業に従事しており、現代日本に対する彼らの貢献は必ずしも顕著とは言えない。また、外国人女性や国際結婚カップル女性による出生率は、日本人女性の出生率と同程度か、より低い水準にある。一部の地方自治体による地道な支援施策が注目される一方、国による社会統合策は不十分であり前進が望まれる。