著者
山本 健 田野 俊一 橋山 智訓 岩田 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.16-19, 2015 (Released:2016-02-26)

人間が知的創造的活動を行う上で記憶は重要である。しかし、高度化した情報メディアとのインタラクションは複雑化し、複雑なインタラクションを用いることで記憶に悪影響を与えることが問題とされている。記憶には短期記憶と長期記憶の二種類あり、両側面から問題について検討する必要がある。短期記憶の問題として、短期記憶の容量は限定的であるにもかかわらず、インタラクションに短期記憶の容量を使用してしまいアイディアの忘却が生じる。長期記憶の問題として、外部記憶装置に頼った記憶に関するメタ記憶の欠如により、記憶にアクセスできず記憶の死蔵が発生する。本研究では、情報メディアとのインタラクションに関して問題を指摘し、解決方法の提案を行う。
著者
小澤 慶祐 本田 晋也 松原 豊 高田 広章 加藤 寿和 山本 整
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2020-ARC-240, no.37, pp.1-8, 2020-02-20

近年,先進運転支援システムや自動運転の普及により,車載システムのアーキテクチャおよび車載システムの研究開発が変化している.そのような車載システムの研究開発において,プロトタイプ開発では設計生産性の高い ROS2 を,製品開発では信頼性の高い AUTOSAR-AP をソフトウェアプラットフォームとして使用することが考えられている.しかしながら現状では,ROS2 を用いたプロトタイプから AUTOSAR-AP を用いた製品とする設計フローが確立していない.そこで本研究では,ROS2 から AUTOSAR-AP への移行を含む設計フローの提案,検討を行った.はじめに,設計フローの要件を提案し,提案した要件を満たすような設計フローの提案を行った.次に,設計フローの検討のために,ROS2 で作成された自動走行ロボットのデモアプリケーションを AUTOSAR-AP のアプリケーションに書き換えるケーススタディを行った.最後に,ケーススタディの結果を踏まえ,提案した設計フローのより詳細な検討を行った.結果として,ROS2 から AUTOSAR-AP への開発環境の移行は可能であるが,効率的な移行のために ROS2 での開発時に記法や使用する機能を一部制限することが好ましいと考えられる.
著者
餅原 弘樹 山本 泰大 川村 幸子 木下 寛也 古賀 友之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.165-170, 2023 (Released:2023-06-19)
参考文献数
8

Mohsペースト(以下,MP)は,悪性腫瘍による皮膚自壊創の症状を緩和させる.MPの使用は患者のQOLを改善させる一方でさまざまな使用障壁が報告され,とくに在宅医療での使用報告は少ない.われわれはガーゼを支持体としてMPを厚さ約1 mmにシート化する工夫により,在宅医療でMP処置を実践している.本報ではその具体例を,訪問診療を受ける乳がん患者への使用を通して報告する.患者の主な症状は滲出液による痒み,臭気,自壊創そのものによる左上腕の動かしにくさであったが,週1回の処置を3回実施した後,いずれの症状も改善した.MPのシート化により,物性変化や正常皮膚への組織障害リスク,処置時間や人員配置といった使用障壁が下がり,MP処置を在宅医療にて開始できた.MPはシート化により,居宅でも初回導入が可能であり,既存の報告と同様に症状を抑える効果が得られる可能性が示唆された.
著者
田中 夏樹 岡西 尚人 稲葉 将史 山本 紘之 川本 鮎美 早川 智広 加藤 哲弘 山本 昌樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O032, 2008 (Released:2008-12-09)

【はじめに】 母趾種子骨(以下、種子骨)障害に対しては、保存療法が第一選択となるが、そのほとんどが足底挿板による免荷の有効性を報告するものである。今回、足底挿板が処方できない状況であった症例の理学療法を経験した。Dynamic Alignmentを変化させるべく運動療法を行うことで種子骨周囲の運動時痛が消失した。本症例におけるDynamic Alignmentの特徴と理学所見、荷重時における種子骨の疼痛との関係について考察を踏まえ報告する。 【症例紹介】 症例は野球、空手を行っている中学1年の男性である。2年前から両側種子骨周囲に運動時痛を訴え、本年5月に歩行時痛が憎悪したため当院を受診し、理学療法開始となった。 【初診時理学所見】 両側とも種子骨を中心に圧痛を認め、歩行時痛(右>左)を訴えた。歩行時footprintにて両側ともに凹足傾向であった。また、Thomas testが陽性/陽性(右/左)、SLRが50°/50°、大腿直筋短縮テストが10横指/5横指(殿踵部間距離)と股関節周囲筋に伸張性の低下を認めた。足関節背屈可動域は25°/25°であり、両足をそろえたしゃがみ込みでは後方に倒れる状態であった。歩容はmid stance以降、支持脚方向への骨盤回旋が過度に認められた。 【治療内容および経過】 腸腰筋、大腿直筋、hamstringsを中心にstretchingおよびself stretchingの指導を行い、距骨を押し込むためのTapingを指導した。また、3週後からはショパール関節のmobilizationを行った。5週後にはThomas testが両側とも陰性化、SLRが80°/80°、大腿直筋短縮テストが0横指/0横指と改善を認め、歩行時、ランニング時の疼痛が消失し、全力疾走時の疼痛程度が右2/10、左1/10と改善した。 【考察】 hamstringsのtightnessによる易骨盤後傾、重心の後方化に拮抗するため、股関節屈筋群の活動量が増加し、腸腰筋、大腿直筋のtightnessが出現したと推察された。そのため、股関節伸展可動域の低下が生じ、歩行ではmid stance以降に骨盤の支持脚方向への過回旋による代償動作による足角の増加に加え、凹足傾向と足関節背屈可動域の低下によりmid stance~toe offにかけて荷重が足部内側へ急激に移動することで母趾球への荷重が過剰となり歩行時痛が出現していると推察された。そのため、股関節周囲筋のtightnessを除去するとともにショパール関節のmobilization、足関節背屈可動域増加を目的としたtapingを行い、toe off時における母趾球への過剰な荷重を回避することで種子骨への荷重による機械的ストレスの減少を図ることが可能となり、運動時痛が軽減、消失したと考えた。有痛性足部障害といえども、全身の機能障害が関与しているケースもあると考えられ、足底挿板療法以外にも症状改善に足部以外の部位に対するアプローチの有効性が示唆されたものと考える。
著者
石川 彩夏 荒川 さやか 石木 寛人 天野 晃滋 鈴木 由華 池長 奈美 山本 駿 柏原 大朗 吉田 哲彦 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.159-163, 2023 (Released:2023-06-08)
参考文献数
8

【緒言】緩和的放射線療法などによりがん疼痛が緩和されオピオイドを中止する際,身体依存による興奮,不眠,下痢などの離脱症候群を起こす場合があるため,適切に対処する必要がある.【症例】72歳男性.食道がん術後.経過中,仙骨,右腸骨転移による腰痛,右下肢痛が出現.オキシコドン(以下,OXC)を開始したが緩和せず,メサドン(以下,MDN)に切り替え,並行して緩和的放射線療法を施行した.疼痛は徐々に緩和し,MDNを漸減,OXCに切り替え後20 mg/日で患者の強い希望にて終了した.内服中止後から静座不能,不安,下痢が出現し離脱症候群と診断.OXC速放製剤,フェンタニル貼付剤,スボレキサントを併用し離脱症状の治療を行った.【考察】オピオイド中止時は10%/週より遅い減量が望ましく,最小用量に減量した後の中止が推奨される.離脱症状にはオピオイド速放製剤を用い,症状コントロールと並行して漸減を試みるとよい.
著者
藤澤 和謙 桃木 昌平 山本 清仁 小林 晃 青山 成康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
応用力学論文集 (ISSN:13459139)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.385-394, 2006-08-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

Studied herein is theoretical mechanism of the failure of an embankment caused by overflowing from a reservoir. An experiment has been conducted to observe the phenomenon, and the theory of the mechanism has been developed on the basis of the erosion and the stability of the slope subjected to the erosion. Shallow water equation considering the slope angle has been used to describe the erosion, and Mohr-Coulomb failure criterion has been applied to the stability analysis. The results allow the surface profile and the erosional speed to be determined as functions of imposed parameters. At the end of this paper, we have discussed the scope of application, and examined the theory by an additional experiment.
著者
室賀 紀彦 山本 健久
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.46-55, 2014-07-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
58
被引用文献数
4 2

Foot-and-mouth disease (FMD) is a highly contagious disease of cloven hoofed livestock animals such as cattle and pigs. Since the FMD is endemic in many Asian countries, Japan always faces the threat of FMD invasion from nearby countries. Therefore, preventive measures against introduction of FMD agents via animals and animal products imported from affected countries should be adequately conducted. In addition, when the outbreak occurred, strict control measures such as prompt destruction of animals in the affected farms and movement restriction in the surrounding farms should be implemented. Although these control measures should be based on the recent scientific knowledge, these knowledge are in many different literatures and finding suitable information in a short occasion is always difficult. In this review, we tried to present the resent knowledge found in scientific papers regarding the feature of FMD virus, symptoms found in infected animals and various routes of infection. In addition, we discussed current strategies taken in Japan and pointed out some issues worth to be considered for improvement of these strategies in future.
著者
川上 貴代 平松 智子 田淵 真愉美 我如古 菜月 山本 沙也加 秋山 花衣 岸本(重信) 妙子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.32-39, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
14

【目的】本研究は病院給食におけるハラール対応の現状を調査し,イスラーム教など宗教や食の信念をもつ患者の受け入れ体制の整備や対応の基礎資料とすることを目的とした。【方法】中国地方A県内の病院161施設に所属する管理栄養士を対象に,2019年12月,病院での個別対応食に関するアンケートを郵送し自己記入式アンケート調査で実施した。122施設(回収率75.8%)から回答を得てすべて解析に用いた。解析はχ2 検定,またはFisherの直接法で行った。【結果】宗教への個別対応の実施率は30.3%で病床数が多い病院ほど実施している傾向があった。ハラール対応経験のある割合は,調査対象全体の14.8%であり,既存献立の禁忌食品を除去・代替えして提供する病院が多かった。無効回答を除く120例のうちでハラールについて知っている,または聞いたことがあると回答した者は87.5%であり,ハラールを知っていると答えた者は全く知らないと答えた者と比較して,留意すべき食品として「豚肉」「アルコール飲料」「アルコール類」を選択する者が有意に高く,「醤油」については選択する者が高い傾向であった。【結論】今回,対象とした病院管理栄養士のハラールの認知度は高い一方で,給食における対応経験のある病院は少なかった。ハラール対応の具体的方法に関して,施設間での情報共有や学習の機会を持つことが重要と考えられた。
著者
貝沼 重信 山本 悠哉 伊藤 義浩 押川 渡
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.497-503, 2011-11-15 (Released:2012-04-21)
参考文献数
12
被引用文献数
9 12

鋼構造物を腐食による致命的損傷に対して,安全に供用するためには,部材・部位レベルの腐食環境を定量的に把握した上で,その経時腐食挙動を評価することが重要になる.本研究ではFe/Ag対で構成されるACM型腐食センサーを用いて,降雨の影響を受ける無塗装普通鋼板の経時腐食挙動を評価するための方法を提案することを目的とした.そのために,無塗装普通鋼板を用いた大気暴露試験を行った.また,試験体の表裏面における腐食環境と平均腐食深さの関係を定量評価するために,それらの腐食環境をACM型腐食センサーによりモニタリングした.
著者
山本 政儀 Yamamoto Masayoshi
出版者
金沢大学自然計測応用研究センター
雑誌
平成15(2003)年度科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書 = 2003 Fiscal Year Final Research Report
巻号頁・発行日
vol.2002-2003, pp.7p., 2004-03-01

本研究は、陸上環境における放射性物質の最大のリザーバーである大地、すなわち土壌中でのPuのスピシエーション(存在状態、存在形態)を重点的に行なった。フィールドとして国内のPu汚染レベルの数〜数百倍高い旧ソ連核実験場セミパラチンスク内外の表層土壌を用いた。土壌の粒径分画、磁気分画とバイオイメージングアナライザー法を組み合わせて、種々の粒径の放射性物質を含む粒子Hot-particle(放射能の強い粒子)を定量的に探査する手法をまず確立し、それら粒子の特性を走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型蛍光X線分液装置(SEM-EDX)等で観察し、全体及び個々の粒子のPu測定も実施して、粒子特性とPuの関係、全体としての粒子Puの存在割合を明らかにする。また、微粒子に対しては、アルファー・トラック法を併用してPuの存在特性を考察することを目的に研究を進めてきた。 セミパラチンスク核実験場周辺のドロン村で採取した高濃度Pu汚染土壌を用いた。この地域の^<239,240>Pu及び^<137>Cs蓄積量はそれぞれ530-14,320Bq/m^2,790-10,310Bq/m^2であった。その後、試料をサイズ別に<0.45,0.45-32,32-88,88-125,125-250,250-500,500-2000μmに分画し、それぞれの分画中のPu濃度の測定を測定し、アルファー・トラック法でHot-particleの存在を確かめた。その結果、土壌の125μmを境にして<125μmで^<239,240>Pu濃度が高く更にHot-particle数が多いことが解り、土壌の再浮游からの吸入被曝経路の重要性が示唆された。Hot-particleの探査については、数-数十μmの勢多くのHot-particleの存在を確認(Pu由来)したが、定量的評価には更なる検討が必要で有り、顕微鏡下での自動測定を放医研の研究者と共同で研究を進めている。
著者
安福 千香 市村 信太郎 山本 ひかる
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.106-110, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
18

先天性両側性横隔膜弛緩症の治療経過中に悪性高熱症を発症し,悪性高熱症の原因遺伝子解析の結果から先天性ミオパチーを合併していると診断した症例を報告する. 症例は,出生直後から呼吸障害を呈し,両側性横隔膜弛緩症と診断して横隔膜縫縮術を施行した.麻酔薬による悪性高熱症を発症したために行った遺伝子解析の結果,1型リアノジン受容体(RYR1)遺伝子のバリアントが同定され,この結果から遺伝学的に先天性ミオパチーと診断した. 先天性横隔膜弛緩症は新生児期の呼吸障害の原因となりうる先天性疾患であり,両側例はまれであるとされる.横隔膜弛緩症と神経筋疾患の合併例は過去にも報告されており,既報からは神経筋疾患を合併する先天性横隔膜弛緩症は両側例が多い可能性が示唆され,両側性横隔膜弛緩症と診断した場合は神経筋疾患の合併を念頭に置いて診療を行うことが望ましいと考える.
著者
首藤 祐介 山本 竜也 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.137-147, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

行動活性化療法は生活の中で強化される経験を増やす行動を活性化することを目的とした、抑うつのための構造化された短期療法である。本事例においては、大うつ病性障害により休職に至った29歳の男性に対して活動スケジュールと回避行動への介入を中心とした14回のセッションと2回のフォローアップ(1回45分)を実施した。その結果、活動が増加するとともに、Self-rating Depression Scale(SDS)の得点が65点から37点に減少していた。1年後もSDSの得点が37点であり、長期間効果が維持されることが明らかになった。このことから、行動活性化療法は回避行動や反すう、生活習慣の乱れによって抑うつ状態にあるクライアントに効果が期待でき、復職支援にも有効であると考えらえる。
著者
山本 政人 Masato Yamamoto
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-54, 2011-03-28

本論文は日本におけるアタッチメント理論の受容とその後の研究の発展について検討したものである。Bowlby のアタッチメント理論は1970 年代に日本に紹介されたが、実証研究が盛んになったのは、1980 年代に入り、Strange Situation procedure(SSP)が導入されたことによってであった。しかし、SSP は日本の乳児に強いストレスを与えるため、Cタイプの出現を促進すると考えられた。また、アタッチメントのタイプと気質には明確な関連が見られなかったため、SSP による研究は衰退した。1990 年代に入り、内的ワーキングモデル概念が注目され、アタッチメント研究は再び盛んになった。特に、アタッチメントの世代間伝達に関する研究は活発に続けられてきた。世代間伝達だけでなく世代間の相互作用を明らかにすることや、児童虐待の防止につながる実践的研究を推進することが今日の重要な課題である。
著者
山本 竜也 首藤 祐介 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.247-256, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
20

本研究では、Reward Probability Index (RPI)日本語版を作成し、その信頼性・妥当性を検討した。研究協力者は、大学生392名(男性199名、女性191名、不明2名、平均年齢=19.61)であった。探索的因子分析の結果、RPI日本語版は、「報酬量」、「環境的抑制」、「報酬獲得スキル」の3因子、原版より1項目を削除した19項目から構成される尺度となった。RPI日本語版の内的一貫性(Cronbach’s α=.86)、および、再検査信頼性(級内相関係数=.88)は十分にあった。仮説検定では、RPI日本語版とBehavioral Activation for Depression Scale–Short FormやEnvironmental Reward Observation Scale、Beck Depression Inventory、Center for Epidemiologic Studies Depression Scaleとの相関係数は、仮説を満たしており、構成概念妥当性が確認された。したがって、RPI日本語版は報酬知覚を測定する尺度として、有用であると考えられた。
著者
二村 昌樹 山本 貴和子 齋藤 麻耶子 Jonathan Batchelor 中原 真希子 中原 剛士 古江 増隆 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.66-72, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
12

【目的】アトピー性皮膚炎患者が抱えるステロイド外用薬を使用することへの不安を評価する質問票として,12の設問で構成されるTOPICOP(TOPIcal COrticosteroid Phobia)がフランスで開発されている.本研究ではTOPICOP日本語版を作成し,その実行可能性を調査した.【方法】原文から翻訳,逆翻訳の工程を経て日本語版を作成した.次にアトピー性皮膚炎患者(小児患者の場合は養育者)を対象にして,TOPICOP日本語版とともにその回答時間と内容についての無記名自記式アンケート調査を実施した.【結果】回答者は287人(平均年齢38±7歳,女性83%)で,TOPICOPスコアは平均41±18点であった.半数以上の回答者が,ステロイド外用薬が血液に入る,皮膚にダメージがある,健康に悪いと考え,特定部位に使用する不安,塗りすぎの不安,漠然とした不安を感じ,安心感が必要としていた.TOPICOPは全体の68%が5分未満で回答できており,87%が記入に困難は感じず,79%が内容を理解しやすいと回答していた.【結語】TOPICOP日本語版は短時間に回答できるステロイド不安評価指標で,日常診療や臨床研究に今後広く活用できると考えられた.