著者
大野 能之 樋坂 章博 山田 麻衣子 山本 武人 鈴木 洋史
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.119-130, 2012 (Released:2018-04-02)
参考文献数
29

腎機能障害時には、各薬剤の腎排泄寄与率を正しく把握しておく必要がある。腎排泄寄与率とは、全身クリアランスに対する腎のクリアランスの割合を指す。この時重要なのが、基本的には未変化体の尿中排泄率である。不活性の代謝物を含めた腎排泄率が高くても、活性本体の未変化体の排泄が少なければ、腎機能の低下は薬効にさほど影響しない。ただし、内服薬の場合は、投与された薬剤が全身循環する割合、すなわちバイオアベイラビリティを考慮し、補正しなければならない。その他、腎から排泄される代謝物に薬効や毒性がある場合は、腎機能に応じて投与量を調整する必要がある。また、特に血中濃度半減期が極端に長い薬剤の場合は、体内から排泄が終了するまで、十分時間をとって観察されたデータを用いるべきである。 腎機能障害がある場合に、そうでない場合と同程度の血中濃度を維持する方法としては、一回あたりの投与量の減量と、一回あたりの投与量の減量はせず投与間隔を延長をする方法の2つが考えられる。投与量の調整は比較的簡便である一方、薬剤によっては血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要することが懸念される。このような場合、速やかな効果発現を求めるのであれば、治療初期は通常用量で使用し、血中濃度が治療濃度域に達した後に減量するなどの対応が必要になる。 投与間隔を調整する場合には、1 回の用量は変わらないため、血中濃度のピーク値は通常使用時と同程度まで上がり、投与間隔をあける分、トラフ値も同程度となる。しかし、高濃度または低濃度の時間が継続するため、効果や副作用の面から望ましくない場合もある。こうした長所、短所を理解したうえで、個々の薬剤及び患者ごとに適切な投与設計を行うことが重要である。
著者
山本 一敏 後藤 洋三 柿本 竜治 山本 幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_589-I_602, 2021 (Released:2021-07-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

2016年熊本地震の被災地自治体の技術職員に実施したインタビューとアンケート結果から,地震発生時の応急復旧と地元建設業とコンサルタントへの支援要請の実態を調査した.技術職員の不足や技術と経験が不十分である等の理由から2/3程度の施設で被災規模の把握に2週間以上を要していた.BCPや震災対策マニュアルの作成と訓練,管理施設の資料の整備,外部への支援要請などが不十分だった自治体もあり,限られた技術職員で社会インフラ施設の機能を迅速に回復するためには,これらの改善が必要である.
著者
山中 悠紀 水野 智仁 石川 成美 笹倉 祐太 山本 亜衣 石井 禎基
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.571-574, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

〔目的〕無償のソフトウェア(フリーウェア)による動作解析の実用性を検討すること.〔対象と方法〕大学生11名(男性5名,女性6名)にデジタルビデオカメラで矢状面から撮影した立ち上がり動画を画像上のマーキング箇所の座標値が取得できるフリーウェアで解析させ,作業時間と自覚的疲労度を評価するとともに,算出した股,膝,足関節角度と2次元動画解析ソフトウェアで求めた角度との差を分析した.〔結果〕115枚の画像解析に要した平均時間は約20分,自覚的疲労度はVASで30.0 mm程度であった.2種類の解析方法で算出した角度の最大値の差は股関節屈曲で0.12±0.25°,膝関節屈曲で0.14±0.30°,足関節背屈で1.02±0.38°であった.〔結語〕フリーウェアによる動作解析法は実用的である.
著者
鶴本 一成 林 洋克 伊野 匠 山本 大樹
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.5-11, 2023-03-20 (Released:2023-03-20)
参考文献数
15

2015年4月25日に発生したネパール大地震に対し、手術等が可能な国際緊急援助隊医療チームが派遣された。1次隊はバラビセ村で診療を行っており、2次隊は1次隊の活動を引き継いで活動を開始した。医療調整員はこれまでの派遣同様の診療受付・バイタルサインの測定などの他、転院搬送が必要な患者を、現地救急車にて搬送する際に同乗し患者管理を行った。5月12日に発生した余震によりバラビセ村から撤収し、カトマンズ市内の病院で支援を行った。病院では救急車などで来院した患者の搬入、独歩で来院した患者のトリアージの他、他国医療チームがフィールドクリニックの展開準備をしていたため、配置・設営などの助言および補助、さらに臨床工学技士・臨床検査技師が行う治療・医療機器のメンテナンスの補助を行った。医療調整員は機能拡充チームとしての活動および病院支援を行った。今後の機能拡充チームとしての活動は、他職種のより一層の理解と現地ニーズに応えるための柔軟性が求められる。
著者
上岡 裕美子 篠崎 真枝 橘 香織 山本 哲 宮田 一弘 青山 敏之 富田 美加
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-101, 2021-04-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
13

背景 : 理学療法学生において効果的な臨床参加型実習に向けた実習前の客観的臨床能力試験 (OSCE) のあり方を検討するため, 実習前OSCEと実習到達度との関連を明らかにすることを目的とした. 方法 : 理学療法学科4年生79人を対象に, OSCEと知識試験成績, 実習中の経験症例種類数, 実習到達度を分析した. 結果 : OSCE成績は知識試験成績, 経験症例種類数, 実習到達度と有意な相関関係にあった. 特にOSCEの実施技術要素は実習到達度の診療補助および評価分野と有意な相関を認めた. 考察 : OSCEは臨床ではない状況で能力を評価するものであるが, 実習終了時点での臨床実践力と関連性があることが示唆された.
著者
中安 英彦 塚本 太郎 南 吉紀 石本 真二 藤井 謙司 栗田 充 青木 良尚 麥谷 高志 鷲谷 正史 山本 行光 石川 和敬 冨田 博史 元田 敏和 二宮 哲次郎 濱田 吉郎 舩引 浩平 津田 宏果 牧 緑 小野 孝次 廣谷 智成 LIFLEXチーム Nakayasu Hidehiko Tsukamoto Taro Minami Yoshinori Ishimoto Shinji Fujii Kenji Kurita Mitsuru Aoki Yoshihisa Mugitani Takashi Washitani Masahito Yamamoto Yukimitsu Ishikawa Kazutoshi Tomita Hiroshi Motoda Toshikazu Ninomiya Tetsujiro Hamada Yoshiro Funabiki Kohei Tsuda Hiroka Maki Midori Ono Takatsugu Hirotani Tomonari LIFLEX Team
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-10-004, 2010-09-30

宇宙航空研究開発機構では,次世代の再使用宇宙輸送システムの様々なコンセプトについて検討してきたが,その中の有望なものの一つとしてリフティングボディ形状の往還システムがある.これは翼をもたず,胴体の形状によって揚力を発生するタイプの機体であり,構造の軽量化,高い容積効率,極超音速域での空力加熱特性の観点から優位性があるとされている.一方,リフティングボディ形状は揚抗比が小さく,また低速時の安定性/ 制御性が弱いため,ALFLEX(小型自動着陸実験1996)のような翼胴型の機体に比較して滑走路への進入/ 着陸時に困難がある.そこで,リフティングボディ形状の往還システムを実現するうえで最も重要な技術課題の一つとなっている自動着陸技術の蓄積を主目的とした飛行実験を,小規模で低コストな機体を用いて行うことを計画した.本報告では,飛行実験計画および実験システムの概要と,地上試験やヘリコプタを用いた懸吊飛行試験を含む開発のプロセスについて詳述する.
著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.8, pp.588-593, 2008 (Released:2009-10-01)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

【目的】シラカバ花粉にアレルギーを有する患者は, 交差反応性のために, リンゴなどの果物や野菜を食べる時の口腔や咽頭の過敏症をしばしば訴える. こういった現象は現在では時に随伴する全身症状とともに, 口腔アレルギー症候群 (OAS) と呼ばれて注目されており, IgEを介したアレルギーと考えられている. われわれは問診にて伴いやすいOASの原因食物の関係について調べ, 食物を分類した. 【方法】対象は, 1995年から8年間に札幌市南区にある耳鼻咽喉科診療所を受診, シラカバ花粉に対するIgEが陽性で, 問診にてOASの既往を有する272例 (15歳から65歳) である. OASの診断は問診により, 様々な食物を食べた後のOASのエピソードの有無を尋ねた. OASを引き起こすことの多い, 14種の食物 (リンゴ, モモ, サクランボ, ナシ, プラム, イチゴ, キウイ, メロン, カキ, ブドウ, スイカ, トマト, マンゴーとバナナ) について, クラスター分析を用いて, OASを伴いやすい食物の分類を行い, 次にカッパ統計量を用いて, 個々の食物間の伴いやすさを確認した. 【結果】14種のOASの原因食物は2種のクラスターに分類された. 1つはバラ科の果物であり, もう1つはバラ科以外の食物である. バラ科の果物 (リンゴからイチゴ) は互いに関連していた. メロンとスイカは伴いやすかった. メロンとキウイはバラ科の果物とは関連は少なかった. バラ科以外の食物 (キウイからバナナ) は互いに関連しており, 伴う場合があった.
著者
小方 直幸 山本 清 福留 東土 両角 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、高等教育政策の世論の構造と形成機能を萌芽的に解明することにあり、全省庁の政策案件のパブリック・コメントデータベースをe-GOVを基に作成した上で、文科省に考察対象を絞り、局別のパブリック・コメントの構造を明らかにした。局により案件数や公募タイプ別の案件分布が異なり、意見数についても公募タイプの相違を超えて、局別の特性の存在が析出された。他方で、意見の反映状況は、行政手続法に基づく案件に限定されてしまい、意見のまとめ方も定型的なフォーマットが存在しておらず、マクロの量的な分析から得られる知見に一定の意義はあるものの、意見反映までを見据えた考察には限界があることも、改めて明らかとなった。
著者
山本 竜太 金只 直人 水町 光徳
出版者
産業応用工学会
雑誌
産業応用工学会論文誌 (ISSN:21875146)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.52-57, 2013
被引用文献数
5

In this paper, sound quality of high resolution audio (HRA) is investigated in the view point of auditory perception. Perceptual characteristics of HRA have been examined by listening tests compared with the standard audio CD and the compressed MPEG audio layer-3 (MP3) qualities. The listening tests were carried out by the paired comparison, and the participants were asked to discriminate among HRA, CD, and MP3. Jazz music was selected out as the original HRA. Both CD and MP3 quality audio files were prepared from the original HRA file by the authors. It is found that the participants prefer the audio format with richer information, that is, HRA is most desirable and CD is better than MP3. The questionnaires filled in by participants indicate that subjective characteristics of HRA include much presence, high spatial clarity, and wide spaciousness. Additionally, perceptual discrimination in quantization distortion is also focused on in between 16 bits and 24 bits resolution. As the result of the listening test with 28 participants, the difference of the quantization resolution was discriminated with the accuracy of 60.3 %. Concerning the perceptual discrimination of HRA, quantization resolution is an important factor as well as its wide frequency range.
著者
大濱 嘉恭 山本 吉朗 逆瀬川 栄一
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成27年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第68回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.198-199, 2015-09-10 (Released:2018-02-16)

近年,永久磁石の高性能化に伴い,高効率のPMモータが様々な分野で利用されるようになってきた。PMモータのトルク制御には,回転子位置に応じた電流制御が必要で,そのため,通常はエンコーダやレゾルバなどの位置センサが用いられる。一方,位置センサが除去できれば,モータの小形化,軽量化,低価格化が実現され,耐環境性,信頼性も改善されるので,位置センサレス制御が望まれている。本稿では,PMモータの位置センサレス制御の演算に用いられるd,q軸インダクタンスの測定法について述べる。
著者
山本 豊 笠原 良二 平 雅代 武田 修己 樋口 剛央 山口 能宏 白鳥 誠 佐々木 博
出版者
一般社団法人 日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌 (ISSN:13499114)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.89-105, 2021-08-20 (Released:2022-09-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The survey on the variety, amount and producing countries of crude drugs for medicinal use was conducted among member companies belonging to Japan Kampo Medicines Manufacturers Association in fiscal 2017 and 2018. The results showed that total amount of use and number of items of crude drugs were 25,326 tons of 263 items in 2017, and 26,391 tons of 264 items in 2018, respectively. Comparing production ratios among countries, Japan, China and the other countries produced 10.0%, 83.2% and 6.8% of total amount of use in 2017, respectively. Similarly, each ratio turned to 10.4%, 83.6% and 6.0% in 2018.
著者
山本 詩織 秋元 真一郎 迫井 千晶 山田 研 壁谷 英則 杉山 広 髙井 伸二 前田 健 朝倉 宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.77-82, 2022-06-30 (Released:2022-07-07)
参考文献数
24

This study examined the thermal kinetics in wild deer and wild boar meats by low temperature cooking process as well as its bactericidal effect. The thermal processing so as to heat the inner-core of the samples at 65℃ for 15 min, 68℃ for 5 min, 75℃ for 1 min in steam convection oven exhibited faster elevation rate of the internal temperature of wild deer meat than wild boar meat, while their sterilization values after the thermal processes were estimated to be almost equal. Naturally contaminated fecal indicator bacteria were not recovered from all samples after the above-mentioned processing. Spike experiment resulted that approximately 6.6–7.8 log CFU/g of STEC O157 and/or Salmonella spp. were not recovered from the wild deer meats after the three types of thermal cooking. Thus, these data indicated aptitude of these low temperature cooking conditions to minimize the microbiological risks in the game meat.
著者
山本 雄二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-90, 2016-11-15

G.H.ミードの考えは多くの場合、誤解され、変形された上で日本のアカデミズムに受容されてきた。どのように変形されてきたのかを、ミードのオリジナルテクストの語用論的分析によって明らかにし、またどのように理解されるべきかもまた示した。同時に、テクストの日本語への翻訳そのものが無理解と通俗的発想とによってすでに変形されているかについても実例を示しながら明らかにした。
著者
山本 順一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.78-83, 2016-02-01 (Released:2016-04-01)

本稿は,OCLCの「世界図書館統計」やアメリカ連邦政府の労働統計局の統計,そして博物館・図書館サービス機構(Institute of Museum and Library Services)の『アメリカの公共図書館調査 2012会計年度』とピュー調査研究センター(Pew Research Center)が2013年に公表した『デジタル時代における図書館サービス』等を用いてアメリカ公共図書館の実態を数値で明らかにしつつ,21世紀の専門職ライブラリアンに求められる知識とスキルを確認しようとし,日本の公共図書館界の現実と重ね合わせ,「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)が提示する基本的方向性と一致することを確認しながら,日本にはアメリカのような(専門職)ライブラリアンの知識とスキルを育て,専門職を活かす社会の仕組みが十分には整っていないことを指摘し,このままでは日本の公共図書館総体の近未来が決して明るいものではないことを述べた。