著者
山田 一郎 橋本 力 呉 鍾勲 鳥澤 健太郎 黒田 航 Stijn De Saeger 土田 正明 風間 淳一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-23, 2012
被引用文献数
1

単語の上位下位関係を自動獲得する研究はこれまで活発に行われてきたが,上位概念の詳細さに関する議論はほとんどなされてこなかった.自動獲得された上位下位関係の中には,例えば「作品→七人の侍」や「作品→1Q84」のように,より適切と考えられる上位概念「映画」や「小説」と比べて広範囲な概念をカバーする上位概念(「作品」)が含まれることがある.このような上位概念を検索や質問応答などのタスクにおいて利用すると,より詳細な上位概念を利用する手法と比較して有用でないことが多い.そこで本論文では,自動獲得した上位下位関係を,Wikipedia の情報を利用することでより詳細にする手法を提案する.例えば「作品→七人の侍」から,「作品→映画監督の作品→黒澤明の作品→七人の侍」のように,単語「七人の侍」の上位概念(かつ,単語「作品」の下位概念)として,2種類の中間ノード「黒澤明の作品」,「映画監督の作品」を生成することにより,元の上位下位関係を詳細化する.自動獲得した 1,925,676 ペアの上位下位関係を対象とした実験では,最も詳細な上位概念となる一つ目の中間ノード(「黒澤明の作品」など)を重み付き適合率 85.3%で 2,719,441 個,二つ目の中間ノード(「映画監督の作品」など)を重み付き適合率 78.6% で 6,347,472 個生成し,高精度に上位下位関係を詳細化できることを確認した.さらに,生成した上位下位関係が「対象–属性–属性値」として解釈できることについても報告する.
著者
宇宙科学研究所編 山田 隆弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
pp.3-200, 1997
被引用文献数
1

本報告は, 宇宙実験・観測フリーフライヤー(SFU)の成果をまとめたものである。SFUは, 汎用・多目的のフリーフライヤーであり, 飛行後に回収され, 再飛行を行うことができる。SFUは, 1995年3月18日に宇宙開発事業団のH-IIロケットにより種子島宇宙センターより打ち上げられ, 軌道上で各種の実験・観測を行った。その後, 1996年1月13日にNASAのスペースシャトルにより回収され, 1月20日にケネディ宇宙センターに帰還した。本報告は, SFUのコアシステム(共通部分)について飛行の成果をまとめたものである。SFUの搭載実験の成果については, 別の報告書にまとめられる。本報告書の第1章では, SFUミッションの概要, SFUの開発の経緯, SFUの運用の概要について述べる。第2章では, SFUコアシステムの各々の部分について, (1)概要(主要な機能性能等), (2)軌道上での運用の結果, (3)回収後の試験・検査で判明したことを述べる。第3章では, 打上げ前から帰還後までの各運用のフェーズ毎に運用の結果を説明する。
著者
高瀬 公三 馬場 守ジルベルト 西 理佳子 藤川 英雄 山田 進二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.327-330, 1995-04-15
被引用文献数
2

発育鶏卵漿尿膜(CAM)及び鶏腎培養細胞(CK)由来の鶏アデノウイルス(FAV)寒天ゲル内沈降(AGP)抗原の反応性を実験感染鶏血清及び野外鶏血清を用いて比較し, 次の成績を得た. 実験感染鶏血清の両由来抗原による陽性率はFAVの株(血清型)の違いによって異なり, ヘテロ抗原での陽性率はホモ抗原でのそれに比べて低く, またヘテロ抗原での抗体価もホモ抗原の抗体価に比べて低い傾向を示した. さらに, CAM由来抗原を用いた方がCK由来抗原の場合よりも高い陽性率, 又は高い抗体価の得られる場合が多かった. CAM由来抗原を用いて野外鶏血清を検査したところ, 用いる抗原(血清型)によって抗体陽性率は異なったが, 複数の抗原を混合することにより, 陽性率は高まった. このことから, FAVの血清疫学調査にはCAM由来の複数の血清型のAGP抗原を用いて行うことが望ましいと考えられた.
著者
山田 敏元 大桃 スワニ・マスミ ペレイラ パトリシア 猪越 重久 田上 順次
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.27, pp.170-171, 1996-03-28

リン酸を歯面処理剤として用いるレジンボンディングシステムとセルフエッチングプライマーを歯面処理剤として用いるレジンボンディングシステムのエナメル質-レジンの接合界面のSEM観察を詳細に行ったところ、リン酸を用いるものでは、エナメル質の脱灰が大きく、表層下約20μmに亘ってエナメル小柱中のハイドロキシアパタイト結晶が著しく溶解され、疎な構造を示していた。一方、セルフエッチングプライマーを用いたものでは、エナメル質の脱灰の程度は弱く、アパタイト結晶の溶解も低かった。
著者
山田 洋一 堀本 ゆかり
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1476-GbPI1476, 2011

【目的】理学療法士(以下PT)養成校での教育目標は、「ある程度の助言の下で基本的理学療法が行えるレベル」とされ、卒業後、所謂「一人前」と言われるレベルまでの教育は、所属施設を中心に行われている。しかし、臨床現場における教育方法に、決められた手法はない。養成校教育での教育目標はブルームによる「認知領域」、「精神・運動領域」、「情意領域」の3つの領域「Taxonomy」に分けられているが、卒後教育ではあまり使用されることはない。特に、「情意領域」は、臨床実習で重要視されている反面、卒後教育では個性として解釈されるように思われる。今回の調査では、多項選択肢、自由記載等による無記名「自己認識アンケート」と「PRESIDENT版ゴールドバーグ性格検査」を医療施設に勤務するPTに行い、臨床現場で働くPTの意識調査を行い、「性格特性」との関連に知見を得たので報告する。<BR>【方法】静岡県内の医療施設を無作為に抽出し、そこに勤務するPTに郵送で調査を行った。調査期間は平成22年10月18日から10月22日までとし、5施設67名から回答を得た(回収率:100%)。対象者の内訳は、平均年齢29.5±6.5歳、平均経験年数6.4±5.7歳(男性42名、女性25名)最終学歴は、大学院1名、大学6名、短大1名、4年生専門学校23名、3年生専門学校36名である。統計解析は(株)日本科学技術研修所 JUSE StatWorks Ver.4.0を使用し、数量化1類で解析した。<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に準拠し、対象者には本研究の意義を説明し、同意を得たうえで実施した。<BR>【結果】まず、「免許取得後、一人前と判断する経験年数」は、経験年数に関係なく、概ね10年前後と回答しているものが多かった。「自己意識で治療技術と学術面のいずれの重要度が高いか」の質問では、経験年数が低いほど「治療技術向上」の重要度が高いと回答した。さらに「論文等への興味の有無」で層別化したところ経験年数が上がるにしたがい、「興味がない」と回答した者は「治療技術向上」の重要度が増加し、「興味がある」と回答した者は「学術的向上」が増すという傾向を示していた。<BR>「PRESIDENT版ゴールドバーグ性格検査」の結果では、「神経症傾向」が高い者のほうが「治療技術」の重要度が高い傾向がみられた。また、今後の自己課題の内容を問う設問では、臨床能力・問題解決能力・教育力・折衝力・リーダーシップ力・マネジメント力のうち「外向性」が低い者ほど「問題解決能力」が課題であると回答していた。さらに、目的変数を「一人前と判断する経験年数」とし、相関係数行列で関係性の強い変数を選択し数量化1類で解析したところ、今後必要とされる要因では「教育力」、「治療技術」、「マネジメント力」、性格特性では「外向性」が選ばれた(重相関係数 0.752)。選ばれた変数の中でも特に「教育力」の分散比が大きい傾向であった。<BR>【考察】ノーマンは人間の性格特性を「神経症傾向」、「外向性」、「開放性」、「調和性」、「誠実性」の因子に収斂されるとした。この性格特性と職業適性の間には高い相関性があるとしている。我々の業務の中心は患者と向き合い、理学療法を通して医学的側面から患者の社会適応性を高めることである。しかし、それ以外に日常的にそれぞれのポジションによる管理業務や調整、採算の効率化、教育なども行っていかなければならない。今回の回答で、解析上、PTが「一人前」になるための条件として「教育力」が選択されたことは、治療技術向上だけではPTとしての完成形ではないという意識の現れであると思われる。卒後教育に多くを依存する治療技術の習熟にはある程度のトレーニング期間が必要である。日常業務の中で上質な治療技術を提供し、患者貢献に役立てたいと思う若手の焦りは当然であろう。しかしながら、専門理学療法士制度にも垣間見るように理学療法は科学的根拠に基づく治療技術のスタンダード化を求められている。根拠のある治療技術の習得の基盤は学術的実績の積み重ねであることを認識することが重要と思われる。<BR>また、若手の教育では性格特性を踏まえて、教育法を選択しキャリア構築することが重要と思われる。中堅職員の育成に向け、早期に臨床的技術・学術・性格という3要素を考慮し、職場内教育を展開することは、組織の戦略上重要な課題であると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】専門理学療法士制度では、臨床技術・学術の双方の能力が求められている。この数年急増している若手職員の教育の如何では、PTの質の低下は加速する事が懸念される。さらにそれは彼らが教育する臨床実習生にも波及していく。若手のリテラシーの低下が懸念されるなか、より効率的な若手教育に向け意識や要因を分析し、教授方法を検討することは急務であると考える。
著者
山田 真知子 大坪 繭子 多田 邦尚 中野 義勝 松原 賢 飯田 直樹 遠藤 宜成 門谷 茂
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.25-33, 2017
被引用文献数
6

<p> 我が国5海域における珪藻<i>Skeletonema</i>属の種組成を,遺伝子解析(LSU rDNA D1-D3)と微細形態の特徴から種を同定し,明らかにした。亜熱帯域の沖縄海域では<i>S. grevillei</i>,温帯域の有明海,富山湾,女川湾および亜寒帯域の噴火湾では<i>S. dohrnii</i>が優占し,<i>S. japonicum</i>が混在した。高水温期に塩分の低かった有明海や富山湾では<i>S. costatum</i>が,塩分30以上の女川湾や噴火湾では順に<i>S. grevillei</i>と<i>S. pseudocostatum</i>が出現した。</p>
著者
望月 博文 山田 朗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.73-76, 2013

プログラミングにはパズルを解くような楽しさがある.しかし,プログラムの作成を行うためにはプログラム言語の習得が必要であり,その難解なルールを覚えなくてはならない.そこで,プログラミングの持つ楽しさのみを取り出すために,カードを並べることでプログラム言語を記述する代わりとすることを試みた.更にフローチャートとあみだくじの類似性を利用して,遊びながらプログラミングの学習ができるカードゲームを開発した.
著者
山田 浩之
出版者
広島大学大学院教育学研究科
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
no.58, pp.27-35, 2009

Owing to the decrease of the population of 18 year-old from the late of 1990s in Japan, around the half of private universities are short of their quotas. Such universities are called "Border-Free Universities", which do not have the obstacles to enter and are accepting applications for admission on the recommendation systems. In this article, the significance and the problems of student surveys at "Border-Free Universities" will be discussed. Firstly, the problems of current student surveys are examined. Secondly the characteristics of the students of "Border-Free Universities" are clarified using the survey results of universities in the west of Japan in 2008. Finally, from the examination above, three topics are discussed. 1) Universities in Japan are stratified and classified in a few types. "Border-Free Universities" are completely different from other types, so that the unique research frameworks to examine such universities. 2) The activities of each university affect the student behaviors, so the difference of each university should be examined. 3) To clarify the relationship between the activities of each university and student behaviors, fieldwork and other qualitative methods are required in the research at "Border-Free Universities".
著者
伊藤裕一朗 山田 雅之 宮崎 剛 世木 博久 伊藤 英則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.249-258, 1996-02-15
被引用文献数
6

本論文では 編物の紐状態を3次元紐図形としてとらえ これを表現し 紐図形の模様表示を支援するためのシステムについて述べる. このシステムは編み手順を表す記号列から編物のできあがり模様の3次元イメージを計算機を用いて生成し これを表示する. この紐図形生成の過程では ライデマイスター移動処理と力学的移動処理に基づく変形処理を逐次的に紐の交差点に対して施す. また 複数の交差点移動を効率的に行うために適応型移動係数を提案し その効率を評価した. さらに いくつかの例を通してこのシステムで提案した方法の有用性 および生成される図形の妥当性を示す.In this paper, string states of knitting patterns are represented by three-dimensional string diagrams, and a system for supporting knitting pattern displaying is described. This system generates and displays a three-dimensional knitting pattern from a table of notations which represents a knitting process. To generate a string diagram, this system repeatedly performs a transformation processing based on both Reidemeister movements and a string-tension movement, to crossing points of the string diagram. Also, an adaptive move coefficient is presented to execute the string-tension movement efficiently, and its effect is evaluated. The usefulness of the proposed methods and the validity of generated diagrams are verified by some examples.
著者
永井 英明 池田 和子 織田 幸子 城崎 真弓 菅原 美花 山田 由美子 今井 敦子 遠藤 卓 大野 稔子 河部 康子 小西 加保留 山田 三枝子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.628-631, 2008

Human Immunodeficieny Virus (HIV)感染者の中で, HIV感染症は安定しているが中枢神経系の後遺症のために長期療養が必要な患者の増加が予想されている. 彼らを受け入れる可能性のある施設として, 介護老人保健施設, 特別養護老人ホーム, 療養型病床保有施設, 障害者施設等入院基本料の施設基準取得病院の4施設に対してHIV感染者の受け入れについてのアンケート調査を行った. 11, 541施設中3, 723施設(32.3%)から回答が得られた. HIV感染者を受け入れる基準を決めている施設は1.6%にすぎず, 75.5%は受け入れを考えていなかった. 受け入れられない主な理由としては, 院内感染のリスク・不安, 診療経験がない, 職員不足, 設備・環境が整っていない, 医療費の問題などが挙げられた. HIV感染者の受け入れを可能にするためには, 職員に対する積極的な研修活動が最も重要と思われた. さらに診療報酬の面からの支援および医療面での拠点病院の支援が必要であることが明らかになった.
著者
山田 正
出版者
京都大学
雑誌
木材研究資料 (ISSN:02857049)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-19, 1971-03-20
著者
山田 慎也
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.193, pp.95-112, 2015-02

本稿では,徳島県勝浦郡勝浦町のビッグひな祭りの事例を通して,地域固有の特徴ある民俗文化ではないごく一般的な民俗が,その地域を特徴付けるイベントとして成功し,地域おこしを果たしていく過程とその要因について分析し,現代社会における民俗の利用の様相を照射することを目的としている。徳島県勝浦町は,戦前から県下で最も早くミカン栽培が導入され,昭和40年代までミカン産地としてかなり潤っていたが,その後生産は低迷し,他の地方と同様人口流出が続いていた。こうしたなかで,地域おこしとして1988年,ビッグひな祭りが開催され,途中1年は開催されなかったが,以後現在まで連続して行っている。当初役場の職員を中心に,全国で誇れるイベントを作り出そうとして企画され,その対象はおもに町民であった。しかも雛祭り自体は勝浦町に特徴あるものではなく,また地域に固有の雛人形を前面に出したわけではない。各家庭で収蔵されていた雛人形を,勝浦町周辺地域からあつめて,巨大な雛段に飾ることで,イベントの特性を形成していった。さらに,町民が参加するかたちで,主催は役場職員から民間団体に移行し,開催会場のために土地建物を所有する。こうして民間主催のイベントにすることで,行政では制約が課されていたさまざまな企画を可能とするとともに,創作的な人形の飾り方を導入することで,多様な形態での町民の参加が可能となり,その新奇性からも町内外の観覧者を集めることに成功した。そして徳島県下から,近畿圏など広域の観光イベントとして成長していった。さらに,このノウハウとともに,集まった雛人形自体を贈与し,地域おこしを必要とする全国の市町村に積極的に供与することで,全国での認知も高まっていった。こうした状況を生み出す背景となったのは,実は戦後衣装着の人形飾りを用いた三月節供の行事が全国に浸透し,大量に消費された雛人形が各家庭で役目を終えたままとなっているからであり,それらを再利用する方法がみいだされたことによる。さらに自宅で飾られなくなった雛人形を観光を通して享受していくという,民俗の現在的な展開をも見て取ることができる。This article aims to reveal how folk customs manifest themselves in the modern society. To this end, the Big Hina-doll Festival in Katsuura Town, Katsuura District, Tokushima Prefecture, is used as a case study to analyze how and why a folk custom has developed to an event that represents and revitalizes a community even though it is not original or indigenous to the community.Katsuura Town, Tokushima Prefecture, was the first town in the prefecture to start orange cultivation before World War II and prospered as an orange-growing town until around the late 1960s to the early 1970s. Then, with the decline of orange cultivation, the town, like so many others, suffered depopulation. Against this backdrop, the Big Hina-doll Festival was held to revitalize the town in 1988, since when it has been held annually up to the present time except for one year. This was originally designed for town people and led by the town office staff who aimed to make it a nationally recognized festival. Although neither hina-doll festival nor hina dolls were unique to the town, the event distinguished itself by displaying a great number of hina dolls collected from households in and around the town on a huge red-carpeted staircase.Then, with more town people joining the management, the festival was transferred from public to private hands, and a private association possessed premises as a venue for the festival. Thus, by privatizing the festival, a variety of limitations due to being a public event were removed. Moreover, the adoption of new creative ways of displaying hina dolls enhanced the flexibility for town people to participate in the festival. This novelty drew a large audience from in and around the town, and the festival gradually grew to an event that attracted tourists from all over the prefecture and the Kinki Region. Furthermore, the town increased the national recognition of the festival by providing its knowhow, as well as collected hina dolls, for municipalities requiring revitalization programs all over Japan.The reason behind this success was because the festival was recognized as a new opportunity to reuse hina dolls which had spread throughout the country since the end of World War II along with the custom of the Girls' Festival in March and then been packed away at households as their daughters grew up. This also reflects the contemporary development of folk customs that hina dolls are shared through tourism after they were no longer used at home.
著者
内山田 康
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.53-76, 2011-06-30

ミーナークシー寺院の北門を守るチェッラッタンマンは、偉大な神に否定された卑しい女神なのか。菜食の神々と肉食の神々の関係は、カースト間関係と相同のロジックを持ち、両者は相補的で階層的な関係にあるとするデュモン、ビアドゥー、フラーらの構造的な思考からこぼれ落ちたパーソンの過剰を本稿は取り上げる。パーソンは階層的に差異化した存在者ではない。パーソンは変態する。パーソンは他のパーソンの中に現れる。私は本稿において、高位の神の分身とされる低位の神の本性を、答えが予め決定している階層性の公準において捉えるのではなく、パーソンに内在する生成する差異とその外在化において探求する。すなわちアンチテーゼでチェッラッタンマンを捉えるのではなく、テーゼにおいてチェッラッタンマンは誰かを問う。南インドの周縁の伝統には、パーソンの連続性に関る古い主題と古いロジックが残っている。このロジックを辿ると、高位の神と低位の村の神の間に、差異と連続性が現れる。古い南インドの存在論のパースペクティヴから見ると、チェッラッタンマンとミーナークシーは、反復から生まれた相互の分身と捉えることができる。持続の中で、ミーナークシーは部分的にチェッラッタンマンの未来となり過去となる。私は全体性のパースペクティヴが捨象した契機を、存在への問いに導かれて記述することを試みる。