著者
河合 佑亮 山田 亨 山川 一馬 西田 修
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.277-286, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
38

要約:【目的】ICUにおける身体抑制に対する患者・家族,医療者の思いや考え,代替法についての考えを説明する。【方法】MEDLINE,CENTRAL,CINAHL,医学中央雑誌から検索期間の制限を設けずに2019年4月28日に論文を検索した。対象論文をメタ統合し,各レビュー所見の確信性をConfidence in the Evidence from Reviews of Qualitative research(CERQual)アプローチで評価した。【結果】対象は16論文であった。身体抑制について,患者は安全確保のため問題ないとする一方で,人権侵害などのため実施すべきでないと考えていた(エビデンスの確信性:低)。家族は仕方ないと考えながらも,身体抑制を最小限にする配慮をありがたいと感じていた(非常に低)。医療者は有害事象を危惧しながらも安全確保のため実施し(高),代替法として,手厚い人員配置などの体制整備や生活者としての個人を尊重するケアの提供が重要と考えていた(高)。【結語】身体抑制に対する患者や家族,医療者の思いや考えが説明された。より確信性の高い説明のためには,患者や家族を対象にした複数の質的研究が必要である。
著者
山田 文雄
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.55-68, 2021 (Released:2021-03-10)
参考文献数
129

九州大学農学部動物学教室の教授であった内田照章先生の追悼記念として,本稿では特にネズミ研究に注目して,今から100年前に創設された同教室と,73年前から開始されたネズミ被害対策研究の取り組みを述べ,わが国のネズミ被害や対策の歴史との関係を述べた.ネズミ被害の多かった太平洋戦争後の1950–1980年代において,同教室は四国,九州,奄美群島,沖縄諸島および海外の南洋諸島におけるネズミ対策研究や基礎的研究を行い,また従来からわが国で広く使用されていた殺鼠剤と天敵動物に関する効果の評価や天敵動物の使用上の警告などを行った.このような取り組みは,わが国では当時としては先駆的であった.今後の課題としては,生物多様性と生態系保全のために,特に,捕食性哺乳類が元来生息していなかった島嶼の外来種ネズミと定着した天敵動物の外来種対策を総合的に実施する必要があると考える.
著者
建石 由佳 小野 芳彦 山田 尚勇
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.25(1988-HI-018), pp.1-8, 1988-05-09

日本文の表面の情報から、構文や意味によらないでその文章の読みやすさを評価する式を、読みやすさと関係のある表面情報のうちの4種類、すなわち(1)文の平均の長さ(文字数)、(2)各文字種(英字、ひらがな、漢字、カタカナ)について、その文字種の連(同一文字種の文字の一続き)の相対頻度、(3)文字種ごとの連の平均の長さ、(4)読点の数の句点の数に対する比、から線型式により求めた。主成分分析により、読みやすさに関係のある成分を見つけ、その計算式を評価式とした。この成分はサンプルとしてとった科学技術系の日本文におけるスコアの分布が、読みやすさについての経験的知識とよく一致した。また、このスコアを読みやすさの指標に使えることを、クローズ法と、それにかかる時間の計測とを用いた実験により確かめた。
著者
山田 奨治 和泉勇治 加藤寧 柴山 守
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.52, pp.43-50, 2002-05-31
被引用文献数
1

古文書の翻刻作業の効率をたかめるためには,標準的なくずし字辞典を電子化し,検索の利便性を向上させることが有効であろう.また,デジタル化された文字画像を使って,ある文字に類似した文字を一覧的に検索することが可能になる.類似文字検索を実現するさいに鍵となるのは,文字の特徴量と文字間の類似度の設定方法である.われわれは,オフライン日本語手書き文字認識技術で使用されている文字特徴量と文字間類似度にストローク情報を加味することで,類似文字検索機能をもった電子くずし字辞典を開発した.Developing an computerized dictionary of histroical characters would be effective to improve the reading speed of historical documents. Using the digitized character images, we can also browse characters similar to an example. A key issue for implementing the search function of the similar characters is how to define the character feature and the similarity between two characters. We developed a computerized historical character dictionary by using some character features and similarities, which are used in Japanese off-line hand-written OCR technology, and using stroke information in addition to them.

5 0 0 0 OA 七十五日

著者
山田清作 編
出版者
米山堂
巻号頁・発行日
1923
著者
安野 洋一 堀江 順子 宮下 文 山田 一雄
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.679-683, 1983 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8

白髪染による接触皮膚炎を繰り返すうちに, 次第に前額部, 頸部, 前胸部などに紫褐色, 網状の色素沈着を来たした70歳の女性例を報告した。組織学的に苔癬型反応を認め, lichenoidtypeのpigmentedcontact dematitisと診断したが, パッチテストは多くのリール黒皮症患者で陽性反応が認められる頬紅中の赤色219号 (R-219) やSudan I (1-phenylazo-2-naphthol;PAN) などでは陰性であり, p-phenylenediamine (PPD) などの染毛剤のみが陽性を示した。また着用時に掻痒の訴えがあった衣類とその関連物質のパッチテストも同時に施行したが, 明かな陽性所見は得られず, 本例は白髪染に含まれるPPDに起因するものと考えた。
著者
山田 賢 及川 大地 友永 省三 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2011-04-09 (Released:2011-05-27)
参考文献数
33

グルコース由来のエネルギー合成経路において、チアミン (ビタミンB1) は重要な働きを有する。チアミン欠乏は、認知機能障害などの中枢神経障害を引き起こすが、これは脳内におけるエネルギー合成障害が主要因であると推測されている。しかしながら、その詳細な作用機構は未解明なままである。本研究では、この中枢神経障害発症の作用機構の解明を試みた。マウスにチアミン欠乏飼料を給餌し、更にグルコースを腹腔内に投与した。その後、マウスの慣れ学習および短期記憶への影響を観察し、脳内のモノアミンおよびアミノ酸含量を測定した。 行動試験の結果、チアミン欠乏によって慣れ学習が阻害され、過剰なグルコースの投与によって短期記憶障害が引き起こされた。しかしながら各学習阻害は、もう一方の処理による影響は受けなかった。また、チアミン欠乏は海馬内におけるL-リジン含量を変化させ、過剰なグルコースの投与は大脳皮質内のドーパミンおよびノルアドレナリン含量に影響を与えた。以上の結果から、チアミン欠乏による中枢神経系の障害は、エネルギー代謝障害のみに起因するものではなく、他のメカニズムも関与する可能性が示された。
著者
山田 友幸
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.1-16, 2013-12-20 (Released:2014-06-28)
参考文献数
10

John Searleʼs discussion of the gaps in rational action raises serious problems for the commonsense view that an explanation of an agentʼs action in terms of her reason for doing what she did is a species of causal explanation. The purpose of this paper is to give an overview of the problems Searle's discussion raises and examine the relation between the experienced gaps and the neurobiological processes in the brain.
著者
山田 あすか 讃岐 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.881-887, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
12

放課後のこどもたちの活動の場である学童保育拠点は,就労支援や児童福祉の観点から,ますます拡充が求められている。その際,コストや整備期間の短縮といった観点からは地域資源の活用が有効であると考えられる。本研究では,都内の学童保育拠点の設置状況(単位面積あたり拠点数,1拠点あたり定員)が異なる3つの区を対象としたケーススタディとして,学童保育拠点の配置と,定員の過不足についての検証を行う。また,定員が不足する場合には拠点増設を想定し,[将来想定]条件での将来的なニーズの把握とそれに対応した拠点整備効果の検討を行った。拠点分布に偏りがある場合の利用圏域の調整など現有資源の有効活用,ならびに地域資源の活用を想定して拠点の圏域と定員の調整を行い,将来的な利用児の増加に対する対応可能性を示した。この成果は,高学年児童も受け入れる学童保育制度への移行や,1人あたり面積の拡充等に向けた道筋となる資料として一定の価値があると考える。
著者
内山田 康
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.158-179, 2008-09-30

アルフレッド・ジェルは、美学的な芸術の人類学の方法は行き止まりに突き当たると言った。それはどのような行き止まりだったのか。この行き止まりを超えることはどのようにして可能だとジェルは考えていたのか。このような疑問に突き動かされて本稿は書かれている。ジェルのArt&Agency(以下AA)を批判したロバート・レイトンは、ジェルが芸術の人類学を議論する時、文化や視覚コミュニケーションを重要視しない点を批判した。もしも見直す時間が残っていたら、ジェルは、このような点を書き改めたに違いないとレイトンは言う。レイトンはジェルの作品全体の中にAAを位置づけなかったから、このような仮定が立てられたのだろう。私はAAをジェルのより大きな作品群の中に位置づけなおして、ジェルの芸術の人類学が前提とした認識論へ接近しつつ、その芸術の人類学で重要な役割を果たした再帰的経路の働きと、図式の転移について考察する。
著者
水野 貴秀 川原 康介 山田 和彦
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.250-256, 2012-07-05

小惑星探査機「はやぶさ」は小惑星イトカワとの往復を果たして,2010年6月13日,オーストラリアウーメラ砂漠に帰還した.小惑星表面の貴重なサンプルが入った再突入カプセルは,大気圏突入後,再突入カプセルが発するUHFビーコン信号を追跡するビーコン追跡システムによって捕捉追尾され,再突入後約1時間で発見された.ビーコン追跡システムは地上4箇所に設置された簡素な電波方向探査局とヘリコプターで構成された柔軟性の高いシステムで,「はやぶさ」プロジェクトでの再突入カプセルの回収成功により,重量リソースの少ない数十kgクラスの小型再突入カプセルの回収手法として,本システムが有効であることが実証された.本報告は,カプセル回収に用いられたビーコン追跡システムを紹介し,電波方向探査局の配置やヘリコプターによる捜索等の運用結果について解説している.

5 0 0 0 OA 腹診の全て

著者
山田 光胤
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.573-582, 2009 (Released:2010-03-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

日本漢方は,診察法として腹診の手法を行う。腹診は,四診,すなわち望,聞,問,切診の中の切診の一部ではあるが,診断である証の判定の為に,最も有力な情報が得られる手技である。また,腹診は,東亜諸国,諸地域に伝承されている伝統医学の中で,日本で,唯一,独自に発展した診察法である。なお,現代行われている腹診は,主に古方,傷寒論系医学におけるものであるが,折衷派医学にも影響が及んでいる。さらに,腹診は,形式的認識ではあるが,手技,手法である故,一応の修練,習熟が必要である。本稿で,古昔より長年にわたって集積された腹診の知見を解説する。
著者
荻堂 優子 山田 徹太郎
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.345-350, 1998 (Released:2010-08-25)
参考文献数
16

消炎鎮痛外用剤中に含まれるクロタミトンによるアレルギー性接触皮膚炎の3例を報告した。症例1は79歳の男性で, モーラス®を貼付し紅斑が出現した。48時間貼布試験でクロタミトンを含んだ経皮消炎鎮痛剤と10%クロタミトンに陽性だった。症例2は48歳の女性で, 経皮消炎鎮痛剤を貼付し, 紅斑が出現した。24時間貼布試験でクロタミトンを含んだ経皮消炎鎮痛剤と0.5%クロタミトンに陽性を示した。症例3は39歳の女性で, セルタッチ®を貼付し, 紅斑が出現した。24時間貼布試験でクロタミトンを含んだ経皮消炎鎮痛剤と0.5%クロタミトンに陽性を示した。3症例ともクロタミトンを含んでいない経皮消炎鎮痛剤では貼布試験は全て陰性だった。
著者
山田 斗志希 上山 輝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.285-295, 2019

本稿は,5つのコンテンツ形態(映画・アニメーション・ゲーム・小説・漫画)における物語に登場する250体の悪役の発言の分析を行った結果をまとめたものである。悪役の発言はすべてテキストデータとして扱い,分析は,テキストマイニングを使った「共起ネットワーク分析」と「クラスター分析」を行った。その結果,発言によって分類されたクラスターと個々のクラスターの悪役の特徴とに関連性が見られた。また物語の作り手がどのように悪役を作っているのかについて分析結果をもとに考察した。
著者
熊崎 由衣 南山 泰之 池内 有為 上島 邦彦 岡山 将也 山田 一作
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.59-64, 2020 (Released:2020-06-19)

研究データの流通・利用の促進に当たっては、データに明確な利用条件が付与されることが重要である。研究データ利活用協議会・研究データライセンス小委員会では、研究データの利用条件を分かりやすく表示、または確認することを目的として「研究データの公開・利用条件指定ガイドライン」を策定し公開した。ここでは策定の背景や検討内容、ガイドラインの概要について紹介する。
著者
薛 玉婷 郷原 皓彦 佐々木 恭志郎 山田 祐樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.360-375, 2017-11-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
69
被引用文献数
1

Onomatopoeiae alter perception of a visual stimulus. Given that language affects emotional processing of visual stimuli and visual textures with high viscocity are perceived disgusting, the present study investigated whether onomatopoeiae that represent viscocity modulate disgust for visual textures. We presented a mimetic word a kind of onomatopoeiae simultaneously with a visual texture, and asked observers to rate disgustingness of the texture visually (Experiments 1, 3, and 4) or auditorily (Experiment 5). Three Japanese mimetic words (betobeto, sarasara, and reherehe) were used for representing high, low, and no viscocities, respectively. The results in Experiments 1,3, and 5 commonly showed that in Japanese observers the rated disgustingness was significantly modulated by the mimetic words. However, the effect was not observed in Chinese observers (Experiment 4). Moreover, Experiment 2 showed that the mimetic words also modulated apparent moistness of the textures. Lastly, Experiment 6 revealed that the mimetic words modulated the disgustingness of the texture within a temporal window of around 1800 ms. The present findings suggest that sound symbolism of onomatopoeiae is integrated with stimulus information that induces disgust regardless of modality.